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社説(1月16日)東アジア文化都市 重層的交流の突破口に

 中国の成都、梅州両市、韓国の全州市の計3都市と日本代表の静岡県が文化・芸術を通じて相互理解を深める国際事業「東アジア文化都市」の開催年を迎えた。本県の伝統文化や芸術活動を内外に広くアピールすると同時に、県民がその価値を再認識する機会としたい。
 中国政府が日韓でビザ発給を停止するなど、3カ国は必ずしも良好な関係とは言えない。だが、厳しい情勢下だからこそ地方都市同士の交流は欧米、アジアを包摂した重層的な外交の実現の突破口となり得る。
 県は5月2日の開幕式典、9~11月をイベントの集中開催期間とすることなどを決めたが、プログラムの中身は構築段階だ。作業を急いでほしい。
 文化都市の狙いの一つは、観光振興や国際競争力強化である。富士山世界遺産登録10周年の関連事業、県舞台芸術センター(SPAC)による「ふじのくに→←せかい演劇祭」、静岡国際オペラコンクールをはじめとした世界規模のイベントを軸に「訪れて良し」の地域を内外に示す必要がある。
 大規模な催しと同時に、実行委員会は市町や地域のさまざまな文化団体と連携した事業も予定している。こうした機会に草の根の活動を掘り起こすことは、文化都市静岡の永続性に直結する。助成を通じて地域文化の担い手を育てるべきだ。
 県には東京五輪・パラリンピックで行った文化プログラムの実績がある。文化事業1340件を認証し、ロゴマークの使用を認めた。各地で共通のロゴが掲げられ、コンセプトへの理解が進んだ。東アジア文化都市でも同じ方法論が有効だろう。事業の意義や実施内容について、県民への周知は遅れている。県はまず、昨年末に発表したロゴを、各地域の団体と連携して多用し、広く浸透させてほしい。
 食文化の訴求にも力を入れたい。県は本年度から県産食材や食文化を観光に結び付ける「ガストロノミーツーリズム」を進めているが、これを加速させる好機だ。
 中国、韓国の計3都市には、それぞれ特色ある食の文化がある。中国の成都は四川料理、梅州は客家[はっか]料理で知られ、韓国の全州はビビンパの発祥地だ。例えば、本県と中韓3都市で、各地の料理が食べ比べられる「東アジアキッチン」を数カ月ずつ展開してはどうだろう。空き店舗を活用すれば、市街地のにぎわいづくりにも役立つ。
 東アジア文化都市は2014年から毎年開催されてきた。県民の創造力を結集して節目の10年目を成功させ、さらなる文化力向上の契機としたい。

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