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「緑十字機」物語 紙芝居で後世へ 終戦時に不時着、磐田の支援で帰還

 太平洋戦争終戦時に磐田市の鮫島海岸に不時着した軍用機「緑十字機」にまつわる歴史を伝える紙芝居を、地元の住民グループが製作した。搭乗していた日本の降伏軍使らが無事に東京に戻れるよう当時の住民たちが支援した海岸を“戦後平和の発祥地”とし、「次世代に平和への願いを継承したい」との思いを込めた。

鮫島海岸に不時着した緑十字機の歴史を伝える紙芝居=20日、磐田市鮫島
鮫島海岸に不時着した緑十字機の歴史を伝える紙芝居=20日、磐田市鮫島


 緑十字機は1945年8月20日、フィリピンで降伏受理協議を終えた軍使らを乗せて飛行中、燃料切れで鮫島海岸に不時着した。降伏文書を運んでいた軍使らは住民の道案内や荷物の運搬などの手助けを受け、浜松経由で東京に帰還した。
 紙芝居を製作したのは、住民有志でつくる「緑十字機不時着を語り継ぐ会」。「市民の誇り」とする平和の歴史を子どもにも分かりやすく伝えようと、2019年に製作に乗り出した。会の予算が限られているため、当初は印刷・製本などの経費が不足し、メンバーは資金集めに駆け回った。賛同者や地元の金融機関から寄付を受け、3年がかりで完成にこぎ着けた。
 作画は、三浦晴男代表(73)の保護司仲間で日本画家の浅原哲則さん(75)=袋井市=に依頼した。浅原さんは「後世に残すべき話。私が死んでも紙芝居として作品が残る。こんな機会をもらえてありがたい」と無償で引き受けた。
 14枚からなる紙芝居は、100組を用意した。このうち73組は磐田市内の全幼稚園、保育園、こども園などで使ってもらうため、31日に市と市教委に寄贈する。緑十字機の最後の離陸地として交流を続ける沖縄県伊江村にも贈る。依頼があれば、メンバーが読み聞かせに出向く。
 ロシアによるウクライナ侵攻など、緊迫感が高まっている国際情勢。三浦代表は「今だからこそ、子どもたちには紙芝居を通じ、2度と戦争を起こさせない意識を育んでほしい。いつまでも日本、世界が平和であるように」と願っている。

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