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マニアック 独自の企画展で注目集める 磐田・竜洋昆虫自然観察公園【解説・主張しずおか】

 磐田市竜洋昆虫自然観察公園が、独自の企画展を展開して人気を集めている。ゴキブリやハエトリグモなど一般的には“嫌われ者”とされる虫の魅力にこだわり、マニアックな内容を次々と発信。新型コロナウイルスの影響がある中でも一定の集客力を見せている。今後も斬新なアイデアを打ち出し、県内で唯一の公立昆虫展示施設としてさらに存在感を示してほしい。

ハエトリグモがテーマの企画展。声を掛けると職員らが説明してくれる=7月上旬、磐田市大中瀬の市竜洋昆虫自然観察公園
ハエトリグモがテーマの企画展。声を掛けると職員らが説明してくれる=7月上旬、磐田市大中瀬の市竜洋昆虫自然観察公園

 1998年に開園した施設は、野外観察ゾーンなどを含む敷地面積は約1万平方メートルで、職員はわずか8人。規模が大きいとは言えないものの、生きた昆虫を中心に定期的に展示を入れ替えていて、企画展ごとに生体約100種を見られる。
 以前は未就学児や小学生親子の来園が多かったが、2018年度から始めた「ゴキブリ展」などの企画が転機となった。ツイッターやユーチューブで珍しい試みが全国に拡散。個人に情報が直接届くネットとの親和性が高いコンテンツを生み出した職員の発想が、成人層を中心に新たな昆虫ファンを開拓した。
 展示内容は北野伸雄館長(36)と20代の若手職員らが意見を出し合い決めている。ゴキブリにスポットが当たったのは、職員の柳沢静磨さん(27)の趣向から。マイナーな昆虫だからこそ、取り上げれば注目度が高いのではないかと考えた。柳沢さんは「小規模な施設のため、職員の個性を反映できることが強み」と分析する。
 見た目や生態の特徴など専門的な内容を分かりやすく伝えるポップの掲示や、来場者を対象に昆虫の人気投票を行うなど、飽きさせない試みが施設の魅力を高めている。柳沢さんが発見したゴキブリの新種や飼育の難しい昆虫など希少な生き物が紹介されることも多く、独自性がある。
 施設の来園者数は05年度にゲーム機のブームで7万6千人を超えたものの、その後半分以下の3万人台まで低迷。ただ、苦境の中で始めた変わり種の企画展が足がかりとなり、19年度には7万2千人に回復し、現在も5万人台を維持する。
 施設が今後も安定的に集客を得ていくためには、愛好家の好奇心をくすぐる新たな企画展を創出するとともに、体験型の展示などを増やしてさらに広い層が楽しめる手法なども検討したい。来園者の満足度を高める方策を常に探ることで、地域にまで人を呼び込むような施設となってほしい。

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