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テーマ : 経済しずおか

国産の次世代半導体 AIや自動運転支えるか 2ナノメートル量産 未到の新技術【やわらかゼミ】

 次世代半導体の国産化を目指すラピダスに国が最大5900億円を追加支援するとの記事を読んだ高校生の俊也さん。機械メーカーで働く兄遼太さんに疑問をぶつけた。

(イラスト STUDIO★SARAMY)
(イラスト STUDIO★SARAMY)


 俊也 半導体って、いろんな種類があるね。
 遼太 高度な計算に使うロジック半導体、電力を制御するパワー半導体などがある。カメラに使い、光を感知するイメージセンサーも含むよ。
 俊也 へえ。ラピダスはどれを製造するの。
 遼太 ロジックだ。半導体は、電子回路の幅が狭いほど高性能で電力消費も少ない。ラピダスは幅が2ナノメートル相当と、世界でも量産が実現していない製品を目指すよ。
 俊也 ナノは10億分の1との意味だったよね。
 遼太 そう。新型コロナウイルスの直径が100ナノメートルほど。とても微細な技術だと分かるね。
 俊也 次世代半導体は何に使う予定なの。
 遼太 人工知能(AI)や車の自動運転など今後重要になる分野での活用が見込まれる。現時点で回路の幅が最も狭いのは3ナノメートル相当で、台湾積体電路製造(TSMC)と韓国サムスン電子しか量産できないんだ。
 俊也 なるほど。それで国産化を目指すのか。
 遼太 今や半導体は日常生活から防衛産業まで深く関わる戦略物資だ。中国による台湾侵攻の可能性が指摘される中、安定供給の観点からも大きな意義があるよ。
 俊也 それで国も追加支援したんだね。5900億円の支援の内訳は。
 遼太 5365億円は半導体の微細化に必要な製造装置の導入費用などで、残りの535億円は「後工程」と呼ぶ技術の確立に充てるよ。
 俊也 また知らない単語が出てきた…。
 遼太 製造工程を整理しよう。ウエハーと呼ばれる半導体基板に電子回路を形成するのが前工程。基板を細かいチップに切って樹脂のパッケージに収めるのが後工程だ。
 俊也 じゃ、ラピダスが目指す2ナノメートル技術は前工程の話だ。後工程はさほど重要ではないのか。
 遼太 実は前工程の微細化が限界に近いと言われている。だから、後工程で複数のチップを並べて高い性能を引き出す技術が注目されているよ。
 俊也 国の支援総額は9200億円だってね。
 遼太 来年4月には試作ラインが立ち上がる。それまでに計2兆円が必要で、国からの巨額支援は続きそうだ。
 俊也 単純計算で僕も1万5千円以上払うことになるのか。
 遼太 次世代半導体を量産できたとして、販売先を確保できるのかという課題もある。国を挙げた一大プロジェクトがどうなるのか、今後も興味を持ってほしいな。

 【図表】(イラスト STUDIO★SARAMY)

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