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静岡県知事選 川勝氏優勢、岩井氏追う

 20日投開票の静岡県知事選は、4選を目指す無所属現職の川勝平太氏(72)が優勢、前参院議員の無所属新人岩井茂樹氏(53)=自民推薦=が追い掛ける展開で折り返し終盤戦へと入ります。情勢調査の結果をリポートします。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・松本直之〉
 ▶きょう投開票 静岡県知事選(6月20日)

静岡県知事選情勢 川勝氏優勢、岩井氏追う 自民票割れる

 静岡新聞社は10日から12日までの3日間、任期満了に伴う知事選(20日投開票)の電話世論調査を実施し、総支局の取材を加味して情勢を探った。4選を目指す無所属現職の川勝平太氏(72)が優勢で、前参院議員の無所属新人岩井茂樹氏(53)=自民推薦=が追い掛ける展開となっている。

川勝平太氏/岩井茂樹氏
川勝平太氏/岩井茂樹氏
 投票先を「まだ決めていない」とした人が3割いて、情勢は変化する可能性がある。投票先を決めていない人の割合を年代別でみると、10代で84・2%と高く、30代と40代がそれぞれ40・3%。20代も38・5%あった。一方、70歳以上は14・7%と少なく、50代と60代は20%台だった。
 
 ■川勝陣営
 川勝氏は支援を受ける野党各党の支持層を着実に固めている。立憲民主、国民民主それぞれの支持層の7割以上をまとめた。加えて自民支持層にも食い込み、自主投票とした公明の支持層へは5割以上に浸透する。無党派層の支持も4割と岩井氏に比べて厚い。現職としての高い知名度や発信力を生かした戦術が奏功している。
 最も力を入れてほしい政策や課題として「リニア中央新幹線の水問題」を挙げる層の6割以上の支持を集めている。地域別でも県内全域でまんべんなく支持を広げる。男女別では、女性の支持が男性を上回っている。
 川勝氏は当初、公務に専念と主張していたが、日を追うごとに選挙活動に軸足を転換。選対本部を仕切る県議の引率で企業・団体を訪ねて支援を訴え、各地で街頭演説やネット集会も重ねている。
 選対幹部は「相手候補は自民党推薦で、組織力を駆使した巻き返しが予想される。最後まで気を緩めず戦い抜く」と力を込める。
 
 ■岩井陣営
 知事選で12年ぶりの自民推薦候補となった岩井氏は、自民支持層の5割しか固め切れていない。国政で連立を組む公明の支持層の取り込みは3割にとどまり、無党派層への支持の広がりも欠く。
 知事に必要な資質として「国政や市町とのパイプ役」を重視する層の6割から支持を受ける。政策面では「経済対策・産業振興」を期待する層の支持が川勝氏を上回っている。
 地域別では静岡市で川勝氏に迫る一方、大井川流域を含む志太・榛原や岳南・北駿でリードを許す。年代別は30代で一定の支持を得るが、若年層への浸透が課題となっている。
 陣営は300を超える団体から推薦を得て、組織をフル回転させている。参院議員を11年務めたとはいえ、現職より知名度は劣るとみて、チラシのポスティングや電話での呼び掛けに力を入れてきた。ただ、自民支持層を固め切れていない現状に、序盤は控えてきた現職批判を強めるなど戦術を練り直し、巻き返しを図る。
 
 川勝平太(かわかつ・へいた)氏 72 無現③
 ▽現=知事、県スポーツ協会長、県観光協会長▽元=静岡文化芸術大学長、国際日本文化研究センター教授、早大政経学部教授 京都府出身。英オックスフォード大大学院博士号。静岡市葵区安東
 
 岩井茂樹(いわい・しげき)氏 53 無新(自民推薦)
 ▽現=無職▽前=参院議員▽元=国土交通副大臣、経済産業兼内閣府兼復興政務官、富士常葉大非常勤講師、参院議員秘書、建設会社社員 名古屋市出身。名古屋大大学院修了。三島市富士ビレッジ
 
 【調査方法】
 10~12日の3日間、県内の有権者を対象に、コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかけるRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)方式で実施した。有権者がいる世帯に電話がかかったのは3094件で、うち1048人から回答を得た。結果は県内の性別、年代別構成など有権者の縮図を反映するよう計算処理した。

■必要な資質「実行力」「決断力」 ■8割が「関心」示す

 静岡新聞社が10~12日に実施した電話世論調査では、知事に最も力を入れてほしい政策や課題、必要な資質などを尋ね、有権者の意識を分析した。知事選に「関心がある」との回答は8割を超え、注目の高さがうかがわれた。秋までに予定される衆院選の比例代表の投票先や東京五輪・パラリンピックの開催に対する考え方を併せて聞いた。


 【必要な資質は】
 ■「実行力」が突出 32%
 知事に必要な資質は「実行力」と回答した人が32.6%と突出した。「決断力」が16.3%で続いた。新型コロナウイルス感染症対策など山積する県政課題に対し、目に見える成果を期待する有権者の意識が表れているといえそうだ。
 12.8%が「バランス感覚」、10.0%が「リーダーシップ」を選択した。「国政や市町とのパイプ役」は9.2%。「親しみやすさ・人柄」5.9%、「政策立案力」4.7%、「堅実さ」1.9%などは比較的低かった。
 男女別でみると、いずれも実行力と決断力が高い割合を占めた。男性はリーダーシップ、国政や市町とのパイプ役、女性は親しみやすさ・人柄、政策立案力を重視する傾向もうかがえた。
 年代別では、30代を除く各年代で実行力がトップで、10代と40代では4割を超えた。
 
 【知事選への関心】
 ■「大いにある」「ある程度」8割 
 知事選への関心を尋ねたところ、「大いに関心がある」が31.1%、「ある程度関心がある」は50.0%に上り、計81.1%が関心を示した。「あまり関心がない」は14.6%、「全く関心がない」は3.2%だった。
 年代別で関心があるとした層が最も高かったのは70歳以上で90.0%。60代の86.3%、30代の84.6%が続いた。一方、10代は52.6%にとどまった。男女別は男性が82.6%、女性が79.8%だった。
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政策 コロナ対策重視 リニア、経済に注目

 最も力を入れてほしい政策や課題は「新型コロナウイルス対策」が28.8%でトップだった。収束が見通せない中、ワクチン接種や感染対策などで強いリーダーシップへの期待が高まっている。「リニア中央新幹線の水問題」が20.1%、「経済対策・産業振興」が17.9%で続いた。

最も力を入れてほしい政策や課題は
最も力を入れてほしい政策や課題は
 年代別では30代を除く全ての世代でコロナ対策が1位となり、10代(18、19歳)は4割超に上った。30代は経済対策が最多の33.2%だった。
 リニア水問題を地域別にみると、大井川流域の志太・榛原が30.1%、中東遠が24.6%に上った。岳南・北駿、静岡市、浜松市・湖西市は10%台にとどまり、地域によってばらつきがあった。
 リニア水問題と回答した人の投票先は、川勝平太氏が66.4%に上ったのに対し、岩井茂樹氏は7.5%だった。一方、経済対策は岩井氏が48.3%で、川勝氏の22.8%を上回った。
 ほかに重視する政策は「医療・福祉」9.9%、「子育て・教育」7.7%、「防災対策」5.8%、「中部電力浜岡原発対応」2.3%など。経済対策は男性、医療・福祉や子育て・教育は女性で高くなる傾向がみられた。

立候補者に聞きたい! LINEで募集した質問を川勝氏、岩井氏にぶつけました【NEXT特捜隊×知事選】

 読者の疑問に応える静岡新聞社「NEXT特捜隊(N特)」は、静岡県知事選(20日投開票)を前に、立候補者に聞きたい質問を、LINEでつながるN特通信員から募集した。生活に根ざした切実な訴えや当事者ならではの問題意識を反映した質問が集まり、「夫婦別姓」や「静岡市清水区のサッカースタジアム構想」など6問を候補者にぶつけた。2候補からは11日までに回答が寄せられ、それぞれの考えや信条を知ることができた。

静岡県庁
静岡県庁
 子どもの学力向上にどう取り組むのかを尋ねたのは、元小学校教員の女性(61)=沼津市=。2013年度、全国学力テストで静岡県の小学国語Aの成績が全国最下位だったことを受け、当時の知事で現職の川勝平太氏(72)は、平均点以上の小学校長名を公表した。女性は「ただでさえ忙しい教育現場にとって大変な負担だった」と振り返る。
 川勝氏は校長名を公表したことについて「テストの実施要綱に違反したものではない。子どもたちの学力はその後、向上した」と主張。今後は「子どもを大切にするには、先生を大切にする」との考えの下、情報技術(IT)教育に力を入れるとした。
 一方、新人で前参院議員の岩井茂樹氏(53)=自民推薦=は「教育現場に混乱をきたしたことは共感できない」と当時の判断を批判。その後の学力テストの成績向上は「教員のさまざまな努力の成果」とし、「デジタル時代だからこそ、人との交わりを大切にする教育を重視したい」と答え、現職との違いが鮮明になった。

 来春結婚を控えているという学生(24)=清水町=がただした「選択的夫婦別姓」導入に関する考え方も、候補者間で意見が分かれた。岩井氏は「多様な意見があり、現時点ではどちらともいえない」とした一方、川勝氏は「社会環境が整ってきた」と、前向きな姿勢を示した。
 最も多くの質問が寄せられたのが、リニア中央新幹線と大井川の問題。代表して、流域に住む会社役員杉山みつ江さん(67)=掛川市=の「生活にも関わる大井川の水をどう守るか」との声を届けた。
 川勝氏は「地元関係者と水資源保全などで合意ができるまでは徹底的に対話路線を貫く」とし、治水・利水に支障が出るようであれば河川法に基づいた「拒否権」を発動すると宣言した。対する岩井氏も「流域のみなさんの理解が得られない限り、着工は絶対に認められない」と強調。JR東海や国、流域住民との考え方の違いを埋めるために円卓会議の設置を提案した。
 (尾原崇也)

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