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学用品購入補助や給食費無償化、民間施設オープン… 湖西の子育て支援の「今」を探りました

 湖西市は「ライフステージに合わせた切れ目のない支援」を目指し、子育て環境の充実に力を入れています。2024年度当初予算案には多子世帯の学用品購入補助や市立中の給食費無償化などを盛り込みました。市内では23年6月、歯科医院の1階にキッズスペースやカフェを備える子育て応援複合施設「オハナ・パーク」がオープンしました。湖西の子育て支援についてまとめました。

【湖西市2024年度予算】多子世帯に学用品購入補助

 湖西市新居町の歯科医院に2023年オープンした「オハナ・パーク」には、市内外の親子連れが集まる。昼食を交えたワークショップに参加した市内の20~30代の母親からは、日常生活の悩みが聞かれた。「下の子の健診と上の子のお迎え時間がかぶって大変」「一時預かりがいつもの園にもあればいいのに」―。

親子で過ごせる「オハナ・パーク」。子育て中のママたちにとって情報交換の場にもなっている=湖西市新居町
親子で過ごせる「オハナ・パーク」。子育て中のママたちにとって情報交換の場にもなっている=湖西市新居町
 年少と小1、小2の3児を育てる講師の女性は、大学授業料無償化など政府の多子世帯支援に関心を寄せつつも、扶養の範囲や所得制限など制度ごとに細かな条件が話題となることに「あまり実感がなくて、まだあてにはしていないかな」と首をひねった。
 市は24年度当初予算案に独自の多子世帯支援策として、進学時の学用品購入を補助するために658万円を盛り込んだ。第3子以降を対象に、制服や文具の購入費として中学校5万円、全日制高校8万円、定時制・通信制高校3万円を定額支給する。
 試算額の2分の1程度を公私立や所得制限などの条件を付けず一律支給する方針で、県内市町では珍しいという。23年9月に拡充した第2子以降の保育料無償化、24年度予算案に計上した中学校給食費無償化と合わせ、子育て世帯の負担軽減策を拡大した。
 保険診療適用外の不妊治療への補助や授乳相談利用券の配布、預かり保育の拡大なども盛り込んだ。「ライフステージに合わせた切れ目のない支援」をうたい、子育て環境の充実を図る。
記者の目 市民に伝わる工夫を  自治体独自の子育て支援は人口の自然増を目指すとともに、移住による社会増を呼び込む目玉事業としても関心を集める。湖西市独自の取り組みが市民だけでなく外部にも認知されるよう、積極的な情報発信が欠かせない。
 市は2024年度、政府の「こども大綱」を踏まえた子育て施策の包括的な指針として「市こども計画」を策定する。既に子育て世帯や若者世代を対象に保育の需要や生活状況を把握するアンケートを実施した。市民の声から地域の課題をどう捉え、どんな環境づくりを目指していくのか、明確なメッセージを打ち出してもらいたい。
 国や県も少子化対策を加速させる中、市独自の施策が市民に伝わりにくい面もある。市の子育て支援に対する姿勢や取り組みが市民の実感につながって初めて、新たな決断を後押しする効果を生むだろう。
 (湖西支局・杉崎素子)
〈2024.3.12 あなたの静岡新聞〉

子育て支援施策 進捗確認 「市こども計画」策定へ 

 湖西市は(2023年11月)7日、子ども・子育て会議の本年度初会合を市健康福祉センターで開いた。委員は20~24年度を対象期間とする市の子ども・子育て支援事業計画の進捗(しんちょく)状況を確認し、市の施策に意見を寄せた。市は25年度以降の次期計画について、国が年内にも公表する「こども大綱」を踏まえ、現行計画に少子化対策や子どもの貧困対策などを加えた包括的な施策の指針として、新たに「市こども計画」を策定する考えを示した。

子ども・子育て支援事業計画の進捗状況を確認した会合=湖西市健康福祉センター
子ども・子育て支援事業計画の進捗状況を確認した会合=湖西市健康福祉センター
 新たな市こども計画は25~30年度を計画期間とする予定で、24年度中の策定を目指す。
 現行計画の進捗確認では、市が保育施設の定員や放課後児童クラブの実施状況などの項目で22年度の実績を報告した。保育施設の受け入れ状況では、3~5歳児の枠は入園の申込総数を上回る定員を確保したのに対し、0歳児や1、2歳児対象の定員が不足したと説明。育休延長による申し込みの取り下げや国の通知に基づく定員の弾力化を踏まえても需要を満たしていないとして、市は「さらなる定員の見直しなどが必要になる」と説明した。
 公募による参加者を含む委員からは、待機児童が発生している1、2歳児の受け皿確保を求める声のほか、病児保育事業の導入、市立湖西病院における小児救急医療の強化などを求める意見が上がった。
​〈2023.11.10 あなたの静岡新聞〉
ニーズ把握へ 6800人対象に実態調査 湖西市は2~3月、保育や子育て支援事業のニーズや子どもを取り巻く環境について市の実態を把握するため、就学前児童と小学生の保護者、小中学生などを対象にした計5種類のアンケートを実施する。
 対象者は計約6800人。昨年12月に政府が閣議決定した「こども大綱」を踏まえ、少子化対策や子どもの貧困対策などの包括的な指針として2024年度中の策定を目指す「市こども計画」に反映させる狙い。1月17日に市内で開いた子ども・子育て会議で説明した。
 アンケートは、就学前児童の保護者、小学生の保護者、小5・中2の児童生徒とその保護者、高校生~34歳の若者世代を対象に実施する。このうち小5・中2の児童生徒と保護者、若者世代を対象とする3種類のアンケートは、子どもの居場所の状況やひきこもり、ヤングケアラーの実態、将来の生活や働き方への意識などを調査する内容を盛り込んだ。
 保護者や小中学生は該当者全員、若者世代は1000人を抽出した広範な調査を行い、市の実態把握を目指す。対象者には2月中旬以降、郵送や学校を通じて協力を求め、ポルトガル語に対応したオンラインフォームも活用して3月4日までに回答を募る。 
​〈2024.1.19 あなたの静岡新聞〉

2023年6月、歯科医院1階に親子の居場所

 湖西市の新居関所前に(2023年6月)8日、歯科天陽堂柴田医院(柴田家孝院長)がリニューアルオープンする。津波対策の建て替えに合わせ、親子の居場所づくりを目指して1階にキッズスペースやカフェを備える子育て応援複合施設「OHANA PARK(オハナ・パーク)」を新設した。院長の妻で歯科衛生士と看護師の資格を持つ陽加さん(34)が館長を務め、子育て中の母親たちと運営する。

1階に開設された「OHANA PARK」=湖西市新居町の歯科天陽堂柴田医院
1階に開設された「OHANA PARK」=湖西市新居町の歯科天陽堂柴田医院
 新たな医院は鉄筋コンクリート造2階建てで、オハナ・パークは約220平方メートルの広さ。滑り台やボールプールがあるキッズスペースに加え、ランチを提供するカフェやスタジオを備える。スタジオではフラダンスやヨガなど、子どもや親子向けの講座を開く予定。
 20年に東京都から湖西市へ転居し、子育て支援イベントの開催にも精力的に取り組む陽加さんは、開業に向け「親子がリフレッシュできるような温かい居場所をつくりたい」と意気込んでいる。
 利用料金や利用方法などはインスタグラムで発信する。
〈2023.6.6 あなたの静岡新聞〉
 

静岡人インタビュー「この人」 民間子育て支援施設「OHANA PARK」の館長 柴田陽加さん(湖西市)

 2023年6月、湖西市新居町の新居関所前に位置する歯科天陽堂柴田医院の改装に合わせ、医院1階にカフェや子どもの遊び場を備えた親子の居場所「オハナ・パーク」を開業した。自身も3児の子育て中。35歳。

柴田陽加さん
柴田陽加さん
 ―施設をつくった経緯は。
 「都内から移住した際、親子の遊び場の選択肢が少ないと感じて自分が欲しい施設を考えた。子どもの満足はもちろん、親も楽しめる場所が欲しかった。公共施設は飲食できない場所も多いため、ママがリフレッシュできる環境を重視してカフェやランチもできる居場所にした」
 ―開設後の手応えは。
 「初めはママ友同士の利用が多かったが、親子1組での利用やリピーターも増えてきた。特に産後ママの会や赤ちゃんの撮影会が人気。保育スタッフが子どもを見るのでゆとりを持って過ごしてもらえる。『ゆっくりご飯を食べるのが久しぶり』と感動してくれる人も。子どもたちが楽しそうに遊ぶ姿を客観的に見ることで、改めて子育ての楽しさを感じてもらえるのでは」
 ―大切にしていることは。
 「副館長や料理長、保育スタッフと、それぞれ子育て中の計6人で運営している。安全管理に気を配りながらも、ほんわかした雰囲気を保ちたい。スタッフ間の上下関係が見えると緊張感が生まれてしまうので、互いに敬語は使わずフラットな関係性で運営している」
 ―課題や展望は。
 「補助金を受けていない民間施設で単独での黒字化はなかなか難しいが、地域貢献やPRを通じ運営元の医院にも貢献したい。利用者からは『こういう施設がもっと欲しい』との声も聞くため、需要は確かにあると思う。運営方法を広めることで挑戦する事業者が増えてほしい」
 (湖西支局・杉崎素子)
〈2024.3.13 あなたの静岡新聞〉