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「とにかくすごい富士山を撮る人」写真家・橋向真さんとは

 幼いころから何気なく見てきた富士山。しかしSNSで流れてきたその風景は、まるでアニメの1シーンのような美しいものばかりで、心が揺さぶられました。投稿主は写真家の橋向真さん。趣味で写真を撮る私にとって、憧れの人です。毎日のSNS発信や展覧会を開催するなど「とにかくすごい」瞬間を映し続ける橋向さんについてまとめました。

駿府博物館で展覧会開催 ギャラリートーク

 静岡市駿河区の駿府博物館で開催中の展覧会「すごい富士山~絵画と写真の共演~」のギャラリートークが22日、同館で開かれた。作品を出品した写真家の橋向真さん(46)が来場者を前に撮影時のエピソードや同展への思いなどを語った。

来館者を前に自身の「すごい富士山」作品について話す橋向さん=静岡市駿河区の駿府博物館
来館者を前に自身の「すごい富士山」作品について話す橋向さん=静岡市駿河区の駿府博物館
 来館者約60人が参加した。橋向さんは「北斎の作品と自分の写真が並んで夢がかなった」として、江戸時代の浮世絵師葛飾北斎の代表作富嶽三十六景の「凱風快晴」と自身が撮影した赤富士作品の共通点などを解説した。撮影の際には気象条件などを細かく調べて理詰めで挑むという。一方で、偶然が生んだ「奇跡」のような作品もあるとして、湖と雲に映った影が織りなす三つの富士山が写りこんだような作品は、狙った朝焼けが撮れずに車中で寝たことで偶然撮影できたというエピソードを紹介した。
 同展は橋向さんの写真のほかに富士山を主題とした日本画が並び、日本人の心をつかんできた富士山の描き方、捉え方を時代とともに追える内容。日露戦争の旅順要塞(ようさい)攻略を指揮し、明治天皇に殉死したことで知られる陸軍大将乃木希典直筆の富士画賛も並ぶ。
 橋向さんを招いたギャラリートークは11月19日にも実施する。会期は12月10日まで。
(教育文化部・マコーリー碧水)
 〈2023.10.23 あなたの静岡新聞〉

「見る人の心揺さぶる」景色

 ファンタジーの異世界のように、神々しい光と雲に包まれた霊峰富士。写真家橋向真さん(46)=静岡市葵区は、自身の肩書を「とにかくすごい富士山を撮る人」と定める。

すごい富士山写真「笠雲」(2021年2月1日、富士宮市の朝霧高原)
すごい富士山写真「笠雲」(2021年2月1日、富士宮市の朝霧高原)
 神聖さや不気味さ、怖さや妖しさ―。富士山を中心とした「とにかくすごい光景」が見る人の感情を動かす。「撮影対象としてはあまり好みではなかった」と話す橋向さんが富士に魅せられるようになったのは約10年前。同市清水区の山間地から富士山を囲む雲海が見えると知り、撮影に挑戦した。天候に左右されるため日を変えて何度か繰り返すうちに「スケールの大きさ」「夢みたいな景色」に心をつかまれた。

 撮影場所は静岡、山梨、長野の各県をはじめ広範囲にわたる。風向きによって雲の流れが変わるため天気予報のチェックを欠かさない。カメラで撮影した写真は、パソコンを経由せずスマートフォンへ転送。ツイッター(現・X)、フェイスブック、インスタグラムなど、すぐに交流サイト(SNS)から世界に向けて発信する。「富士山写真を始めた10年前は、SNSの普及が一気に進むなどいろいろな好機が重なった。自分の活躍の場ができた」と振り返る。作品数は100を超え、Xでの投稿は毎日続けている。
 2021年に投稿した富士の頂を覆う笠雲の写真は、アニメ映画の一場面を想起させたり自然災害の前触れと見る人がいたりとSNS上で大きな反響を呼んだ。「見慣れた富士の姿を隠してしまうちょっとした怖さや不気味さが、誰かと感想を共有したいという気持ちをかき立てたのでは」と作品の持つ高い拡散力を分析する。
 富士山の妙味は「雲」という。青く光る雲海や、空に逆さ富士を描くような巨大つるし雲など、「すごい富士山写真」において雲が果たす役割は大きい。「富士山は不動。そこに周囲の雲が動きを与え、さらに光を反射して美しく、見る人の心揺さぶる『すごい』景色を作り出す」
(教育文化部・マコーリー碧水)
 〈2023.10.20 あなたの静岡新聞〉

撮影も加工もスマホで

 富士山をスマートフォンで撮影してみよう。レタッチ(加工)で写真の質を向上させることも可能だ。写真家橋向真さん(43)=静岡市清水区=に教えを受けた。

御殿場市が撮影を勧める「富士山樹空の森」展望テラスから見た富士山=25日
御殿場市が撮影を勧める「富士山樹空の森」展望テラスから見た富士山=25日
 2013年の世界遺産登録を機に富士山撮影とインスタグラムを始め、現在のフォロワーは6万7千人。「ぱっと見て印象の強い写真が人気。やりすぎない程度にメリハリをつけるとよい」と勧める。
 撮影場所は富士宮市の田貫湖などの湖畔や静岡市清水区吉原、同区の日本平から、時間帯は光の色が変化する早朝か夕方を推奨する。雲がかかっていても、三脚で固定したスマホで「タイムラプス(低速度撮影)」機能を使って待つと、雲間から顔をのぞかせる富士山を動画に残せるかもしれない。
 富士山を強調したいなら中心に据え、花を主役にするなら富士山を左右によけるなど、構図も重要だ。「全てを見せようとするのではなく、見てほしい部分を強調するのが大事」と説明する。
 画像の加工は寒色を強調すると富士山が映える。タッチで感覚的に調整できるのがスマホの強みだ。iOS8以降のiPhoneなら、標準搭載の写真アプリでも調整できる。「露出」はいじらず「シャドウ」で暗い部分を持ち上げ、「コントラスト」「彩度」で明暗や色味を強調するとよい。有料だが、写真加工アプリ「Lightroom」の部分補正機能を使うと、選んだ箇所だけを修正できる。
 〈2021.01.31 あなたの静岡新聞〉

2023年初冠雪観測、平年より3日遅く【動画あり】

  甲府地方気象台は5日、富士山で初冠雪を観測した。平年より3日遅く、昨年より5日遅い。静岡県側も、富士宮市内や上空から本社ヘリ「ジェリコ1号」で山頂付近にうっすらと積雪している様子が確認できた。

初冠雪し、山頂付近が雪化粧した富士山=5日午前8時ごろ、富士宮市の田貫湖
初冠雪し、山頂付近が雪化粧した富士山=5日午前8時ごろ、富士宮市の田貫湖
 気象台によると、山頂付近では3日午後以降、大陸から冷たい空気が流れ込んだ影響で気温が氷点下に冷え込んでいた。山麓では4日未明から夜にかけて断続的に雨が降り、標高の高い場所では雪になっていたとみられる。山頂では5日午前3時半ごろ、氷点下3・2度が観測された。
 富士宮市の朝霧高原や田貫湖では、うっすらと雪化粧した霊峰を撮影する人の姿が見られた。同市人穴の自宅から撮影した佐野雄一朗さん(48)は「昨日は雲の隙間からちょっと雪が見えたので、晴れたら初冠雪だと予想していた。今日はバッチリ撮れたよ」と笑顔で話した。
(富士宮支局・国本啓志郎)
 〈2023.10.06 あなたの静岡新聞〉

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