工事中含め全量戻し、JR東海社長が表明 方法「今後検討」【大井川とリニア】
JR東海の金子慎社長は26日、東京都内で開いた定例記者会見で、リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題で県や利水者が求めてきた「工事期間中を含めたトンネル湧水の全量戻し」に応じる意向を表明した。ただ、全量を戻す方法には言及せず、今後検討するとした。
県は2014年、環境影響評価(アセスメント)で県内のトンネル湧水に関し「工事中や供用後、全て現位置付近に戻すこと」と同社に要請。金子社長が18年10月に全量戻しの方針を表明したが、その後、同社は工事中のトンネル貫通前は全量を戻せないと説明し、県側が反発している。
金子社長はこの日の会見で、「(全量戻しを表明した18年10月当時は)工事期間中について議論していたわけではない」と説明。工事期間中を含めて全量戻しに取り組むかについて改めて問われると「(県や流域から)戻すべきだという要請をされているので、それはそれできちんと受け止める。応えたい気持ちはある」と述べた。全量を戻す方法は「これからも検討していきたい」と回答した。
中下流域の水が減る可能性については17日の記者会見で「蓋然(がいぜん)性がない」と答えていたが、「そうは言っていない。蓋然性が低いということを言った」と真意を強調した。また、減水対策を問う質問に対してはモニタリング(継続的な観測)の必要性を強調したが、モニタリングで水量の減少が判明した場合の具体策には触れなかった。
■リスク踏まえ水量観測 JR東海社長一問一答
26日に行われたJR東海の金子慎社長の定例記者会見での主なやりとりは次の通り。
―トンネル湧水の全量戻しに関し、工事期間中は含まないと考えたのはいつの段階か。
「(全量戻しのためのポンプを設置すると)県に回答した2018年10月当時は、大井川の水量が減るか、それを測れるかが焦点だった。工事のどの段階かは議論になっていない。それはそれとして、今は『(工事期間中も)戻すべきだ』と要請されている。それはそれできちんと受け止めている。(方法は)何とかこれからも検討していきたい」
―現時点で工事期間中も含め、全量を戻したい思いはあるか。
「要請にお応えしたい気持ちはある」
―モニタリング(継続的な観測)の結果、水が減るとなった時の対策が重要だ。流域は具体的な対策を望んでいる。
「モニタリングは推論や調査したことが、本当にそうなるのか確認していくことだ。モニタリングして適切な処置をとるのが必要だと専門家会議で議論されている。リスクを認識、想定し、リスクが起きた時の対策をあらかじめ作っていくことは大切だ」
―17日の記者会見で、大井川の中下流域の水量が減る可能性について「蓋然性がない」と発言した。意図は。
「蓋然性がないというのは、日本語としておかしい。そうは言っていない。蓋然性が低いということを言った」