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「姫様道中」行列に専念 若い世代と共に再興を【西部 記者コラム 風紋】

 浜松市北区細江町の春の風物詩「姫様道中」の実行委員会は、2024年3月に行われる次回行事について、運営方法を再検討する「テスト開催」に位置付け、道中行列に専念して開催することを決めた。事務局の人員不足などで存続が危ぶまれていたが、運営組織を改編して継続にこぎ着けた。若い世代も巻き込んで地域一体で楽しむ原点に立ち返り、再興のきっかけをつかんでほしい。
 江戸時代に東海道の脇街道「姫街道」を通行した公家や大名の娘の豪華絢爛(けんらん)な行列を再現した時代絵巻。地域ごとに開かれていた祭りをまとめ「町民皆が楽しめる祭りを作ろう」と、旧気賀町の自治会長や商工組合の青年団員らの発案で1952年に始まった。
 旧細江町と浜松市の合併に伴う事業費の削減や事務局の行政から民間への移行など、姫様道中は過去に何度も存続の危機に直面し、その度に議論が交わされてきた。かつて商店街を練り歩いた行列は気賀関所から都田川桜堤までのコースに変わり、2日間の日程も1日に短縮するなど、規模縮小を続けて現在に至る。
 民間の事務局は2015年から地元の細江観光委員会が対応していたが、高齢化により21年3月に解散し、その後は有志の事務局員が対応していた。今回の改編は一部の実行委員が手を上げた“突貫工事”で、長期の継続が見込める母体を整備したわけではない。このままでは近い将来、同じ道をたどることは目に見えている。
 数十年前と比べて行政の支援が得られにくくなったからこそ、継続には地域の協力が欠かせず、運営側が世代交代を進められる体制を整えることは急務だ。学校や子ども会、学生と連携した企画を行うなど、地域の子どもや若者世代が行事に関わる仕組み作りも重要になる。
 16~29歳としていた腰元の年齢制限を緩和して親子での行列参加を可能にするなど、今後の展開に期待が持てる変更点も生まれている。5日間かけていた手踊りの練習回数は減らす方針で、気軽に応募できるようになるだろう。細江町の歴史文化を継承する機会として、地域全体で行事を盛り上げてほしい。
 (細江支局・大石真聖)

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