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沼津の居酒屋「相棒」46年の歴史に幕 食器無償配布、思い次代へ

 地域で愛された居酒屋を次代につなげようとの動きが地元沼津市で始動した。18日、店で使っていた食器や道具などを常連客や新たに開業する人らへ無償配布する取り組みが行われた。一つ一つに込められた店主の思いや、店の雰囲気を継承する。

居酒屋「相棒」で使われた食器などを無償提供するイベント「カンカンマーケット」=沼津市大手町の旧マルサン書店仲見世店
居酒屋「相棒」で使われた食器などを無償提供するイベント「カンカンマーケット」=沼津市大手町の旧マルサン書店仲見世店
居酒屋「相棒」を経営していた故宮本昌国さん(左)(提供写真)
居酒屋「相棒」を経営していた故宮本昌国さん(左)(提供写真)
居酒屋「相棒」で使われた食器などを無償提供するイベント「カンカンマーケット」=沼津市大手町の旧マルサン書店仲見世店
居酒屋「相棒」を経営していた故宮本昌国さん(左)(提供写真)

 46年の歴史に幕を閉じたのは、中心街の同市大手町の居酒屋「相棒」。6月30日に店主宮本昌国さん(74)が急逝し、閉店した。昌国さんと妻の緑さん(75)が出迎え、地酒「白隠正宗」を提供する居酒屋として、多くのファンに愛された。「(昌国さんは)包丁を握れて味を維持できれば、80歳まで仕事を続けたいと話していた」と緑さんは振り返る。
 店を次代にも知ってほしいと、常連客らが動いた。18日から沼津仲見世商店街で実施している市街地活性化に向けた社会実験「オープンヌマヅ」で、不用品を無償配布するイベント「カンカンマーケット」(循環ワークス主催)に食器などを出品することを提案した。
 会場の旧マルサン書店仲見世店では、食器を手に取り、店の看板と記念撮影する来場者でにぎわった。約1年前から店に通ったイラストレーターのマツナガマサエさん(41)は「緑さんが準備する食器の種類で、昌国さんが注文を把握していたと聞いた。人柄も料理も大好きな店だったのでさみしい」と惜しむ。
 食器は新たに開業する飲食店にも引き継がれる。同市添地町で立ち飲み屋「ITA酒場」を9月に開く板坂直美さん(43)は「相棒をはじめとする沼津の飲み屋街の雰囲気に魅了され、神奈川からの移住を決めた。沼津の歴史と思いが詰まった食器を新しい店で使わせていただく」と話す。
 緑さんは「夫は晩年、お客さんに恵まれて幸せと話していた。開店当初から使った食器も多いので、使っていただければありがたい」と感謝を述べた。
 (東部総局・菊地真生)

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