静岡人インタビュー「この人」 山下孝道さん 浜松市動物園で昆虫館管理者を長年務める
浜松市役所を定年退職した15年前から、市動物園の昆虫館の管理者(館長)を務める。少年時代から独学で積み重ねてきた昆虫知識を生かし、昆虫学習会を開催し、子どもたちに自然と触れ合う喜びや正しい知識を伝えている。昆虫以外にも、野鳥や哺乳類の生態に関心を深め、遠州地方を中心に全国各地を飛び回る。4月には同園に飛来したコウノトリの撮影にも成功した。浜松市中区出身。75歳。
-昆虫の魅力は。
「底知れない奥深さがあり、フィールドに行くたびに新しい生命との出合いがある。身近な昆虫でも解明されていないことが多く、一生勉強しても追いつかないと感じることが一番の魅力」
-中でもチョウへの興味が強い理由は。
「中学生のころ、早春の山あいで『春の女神』ギフチョウに出合ったのがきっかけ。一面に咲くカタクリの花の蜜を求め、優雅に舞う姿に心を奪われた。チョウは何より羽の美しさが魅力。季節や生息場所に合わせて、はかない命をつなぐ姿に感銘を受ける」
-近年フィールドで感じることは。
「遠州地方で、今まで見られなかった南方系のチョウの進出が見られる一方で、北方系のチョウの減少が見られるようになってきていて、地球温暖化の影響を感じる。また生息環境の変化で、絶滅の恐れがある種類が増えてきている」
-昆虫との触れ合いを次世代につなぐためには。
「昆虫が怖い、触れないと感じる子どもたちが増えてきている。昆虫も人間と同じ生物。自らの足でフィールドに暮らす姿を見てみたいと思えるような正しい知識を伝えていきたい」
(浜松総局・二神亨)