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【辺野古埋め立て】「遺骨混じる土砂使うのか 戦没者冒涜、国は断念を 収集ボランティア代表 具志堅隆松

 沖縄県名護市辺野古で進む米軍基地建設で、政府が沖縄本島南部で採取する土砂を埋め立てに使う恐れがある。だが南部は沖縄戦で亡くなった人の遺骨が今も眠っている。戦没者の血を吸ったり遺骨が混ざったりする可能性がある土砂であり、米国の基地のために海に投入するのは死者の冒涜以外の何ものでもない。

具志堅隆松氏
具志堅隆松氏

 28歳の時から40年以上、ボランティアで戦没者の遺骨収集を続けている。収集する場所は主に、沖縄戦の激戦地となった本島南部だ。
 戦後、南部では至る所に遺骨や遺体があり、集落に戻った人たちがまずやったのがその収容だったという。そうしないと畑を作ることもできなかった。一方で収容場所は、生活圏がほとんどで、人が入りにくい場所ではあまり実施されてこなかった。遺骨の数が多く、頭蓋骨だけ収容したという記録もある。
 今も遺骨は残されている。例えば、あるガマ(自然の洞窟)では、米軍の火炎放射器で焼かれたとみられる焦げた頭蓋骨の破片や、歯などが見つかった。歯はすり減っており、若い日本兵ではなく比較的年を取った沖縄の住民のものと考えられる。ガマは日本軍が防空壕に使ったり住民が避難したりしていた。ガマだけでなく丘の斜面などでも遺骨を収集してきた。
 大きな骨がそのまま見つかる例は少なく、細かい骨の場合が多い。風化して米粒ぐらいになったものもたくさんある。骨は白いと思うかもしれないが、掘り出されたものは土や石と同じような色で見分けが付きにくい。採石業者が遺骨を取り除いて残りを埋め立てに回そうとしても不可能だ。
 防衛省には、辺野古の埋め立てに南部の土砂を使わないようこれまで何度も求めてきた。防衛省側は「遺骨の問題は真摯に受け止めて事業を推進する」と繰り返すが、決して「南部の土砂は使わない」とは言わない。真摯に受け止めるなら諦めるしかない。そういう決断がなぜできないのか。
 国はかつて、戦死者の遺族の元に遺骨の箱を返したが、遺体が収容できないため中には石や砂が入っていることが多かった。戦没地から持ってきた石や砂に戦死者の魂がこもっているとして、遺骨の代わりに返した。防衛省が今やろうとしているのは、過去に国が遺族に対して行った慰霊の行為を否定することにほかならない。
 沖縄戦を巡っては、住民と日本兵のほか、多くの朝鮮半島や台湾の出身者、米兵が行方不明のままになっている。激戦地の南部には行方が分からない人の遺骨も当然、残っているはずだ。だからこれは国内だけでなく国際的な人道問題である。
 遺骨が埋まっている可能性がある南部の土地は、埋め立ての土砂を採取するのではなく、県有地などにして将来にわたり遺骨収集ができるようにしてほしい。収容できる遺骨は収容し、できない微細なものは現場に安置し、戦争で人が殺された場所、戦争と平和を考える霊域として残すべきだと考えている。(談)
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 ぐしけん・たかまつ 1954年那覇市生まれ。沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表。沖縄大地域研究所特別研究員。

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