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都道府県「明日はわが身」 能登地震受け防災対策強化 専門家は一過性懸念

 能登半島地震は、全国どこでも大災害が起きうることを再認識させた。各都道府県は「明日はわが身」と危機感を募らせており、2024年度予算案で防災対策を強化する動きが相次いだ。専門家は意識の高まりが一過性に終わるのを懸念、対策の積み重ねを訴えている。

能登半島地震で寸断された石川県輪島市の道路=1月
能登半島地震で寸断された石川県輪島市の道路=1月


 点検
 高知県は2月、南海トラフ地震対策推進本部の会合を開いた。能登地震では多数の建物が倒壊したほか、孤立地域が発生しており、従来の対策が十分かどうか点検する必要があると判断した。
 南海トラフ巨大地震が発生した場合、最大30メートル超の津波が予想され、さまざまな対策を練ってきた。それでも能登地震で新たに見えたものがある。陸路寸断が物資輸送や救助に与えるダメージの大きさは、その一つだ。担当者は「県内にも中山間地域で道路が細い場所がある。明日はわが身だ」と気を引き締める。
 同じく南海トラフ地震の脅威に直面する和歌山県は、避難所の環境改善を進める。「昔ながらの避難所運営でいいのか、能登地震が考えるきっかけになった」と担当者。トイレトレーラーと、シャワーなどに使える防災コンテナを1台ずつ購入する予定だ。

 弱点
 自らの弱点が明らかになったとする声も多い。能登地震で被災した富山県は「これまで災害が少なく、住民の防災意識が高くなかった」と話す。今後は自治会ごとにつくる自主防災組織を強化したい考えで、防災資機材を整備する際の補助拡充などに乗り出す。
 北海道は、太平洋側で日本海溝・千島海溝巨大地震の発生が懸念され、津波対策などを進めている。そこに日本海側で能登地震が起きた。「太平洋側に比べ、日本海沿岸地域の対策が十分ではなかった」と担当者。市町村による防災訓練への支援を充実する。
 京都府は、備蓄品の保管場所や輸送方法を見直す方針。能登の支援で物資を輸送した際、倉庫前の道路が狭く、作業がしにくいなどの課題が見つかった。

 計画
 静岡大防災総合センターの岩田孝仁特任教授(防災政策)は、これらの動きを評価する。その上で「大慌てで措置すべきものもあれば、腰を据えて整備すべきものもある。きちんと計画を立てたほうがいい」とくぎを刺す。
 災害直後は対策を求める住民の声が高まる。これに急いで応えようとしすぎると、計画性を欠く恐れがある。岩田氏によると、東日本大震災後、被災地以外の自治体で「津波避難タワー」を最善とは言えない場所に設置したケースがあるという。
 岩田氏は「購入した資機材を継続的に運用するための予算も確保しなければならない」と指摘し「目先の対策で終わらず、災害に強いまちづくりも視野に入れた議論が必要だ」と話した。

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