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長野の姉弟に在留特別許可 出生時手続きできず

 外国籍の両親の下、日本で生まれ育ったが在留資格がない長野県在住の女性と弟に昨年12月、法相の裁量で例外的に滞在を認める「在留特別許可」が出た。政府は昨年8月、条件を満たせばこうした子どもたちに許可を与える方針を示したが、2人はタイ人の母親が不法入国だったことから原則的には対象外。支援者は「地域ぐるみでの支援があると説明したことが後押しになったのでは」と推測した。

「在留特別許可」が出た経緯を話すオシカ・ジュリアナさん=長野市
「在留特別許可」が出た経緯を話すオシカ・ジュリアナさん=長野市

 2人は高校3年のオシカ・ジュリアナさん(18)と、中学3年の弟(15)。父親は日系ブラジル人3世だ。出生時に在留資格を得るはずだったが、母親が入管施設に収容されることを恐れて手続きできず、一時的に収容を解く「仮放免」の状態が続いていた。
 父親は在留資格を持ち働いていたが昨年1月に病死した。公営住宅の退去も余儀なくされ、一家の生活は困窮した。仮放免のため2人には健康保険証もなかった。
 2人は昨年5月、特別許可を求める嘆願書を東京出入国在留管理局に提出。支援する長野県上田市の行政書士竹内波美男さん(71)も意見書を提出し、管理局の求めに応じて地域での支援状況をまとめた書類も出した。竹内さんは「高校入学時に制服代を寄付する人がいたことなどを伝えた。手応えを感じて必死だった」と振り返る。
 そんな中、政府が示した方針に、ジュリアナさんは「少し希望が見えた」。しかし、親に不法入国や薬物使用などの「消極的事情」があると対象外だと知り、落胆した。
 状況が一変したのは昨年12月。弟と管理局に呼び出され、職員から日本でやりたいことを書くようにと紙を渡された。ジュリアナさんは「子どもたちに寄り添う保育士になりたい」、弟は「ゲーム会社に勤めたい」と書いた。在留を特別に許可します―。その場で在留カードを手渡され「驚いて言葉も出なかった」。
 ジュリアナさんは保育専門学校の入学試験にも合格し「いつか笑顔あふれる保育園をつくりたい」と語る。竹内さんは「親に罪はあっても子どもに罪はない。他の子も救う方法を考えたい」と訴えた。

 在留特別許可 強制送還の対象となる外国人に、法相が裁量で在留を認める制度。外国人が強制送還に異議を申し出た段階で可否を判断していたが、昨年6月に成立し、今後施行される改正入管難民法で申請制に改めた。出入国在留管理庁は今月5日、特別許可を判断する考慮事情を明確化したガイドラインを公表。地域社会への定着や子どもら家族と生活していることを在留を認める積極要素とした一方、不法滞在の長期化や社会のルール逸脱を消極要素とした。これらの事情を総合的に考慮する。

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