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広がるフードバンク支援

 まだ食べられるのに処分する食料品を集め、生活困窮者に届けるフードバンク。静岡県内では個々人に加え企業や行政、教育現場などさまざまな場所で支援の輪が広がっています。静岡県内の動きをまとめます。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・安達美佑〉

支援倍増 コロナ下、困窮者実態の把握に課題

 長引くコロナ禍で、認定NPO法人「フードバンクふじのくに」を頼る生活困窮者が静岡県内で増加している。食品ロスを減らす取り組みの広がりと相まって、2020年度は一般家庭向けの回収拠点が全国最多の317カ所になった。関係者は活動に手応えを感じる一方、「まだ本当に困っている人に支援が行き届いていない」と一層の協力を呼び掛ける。

各地から集まった食料品の仕分け作業に取り組むボランティア=9月上旬、静岡市葵区の番町市民活動センター
各地から集まった食料品の仕分け作業に取り組むボランティア=9月上旬、静岡市葵区の番町市民活動センター
 緊急事態宣言発令を受け、静岡県の小中学校の多くで夏休みが延長された8月下旬。県母子寡婦福祉連合会の要請を受け、同NPOはひとり親世帯を対象に県内全域で185件、計約1トンの緊急支援を行った。「金銭的にも精神的にもギリギリでした」「極端な節約で家族全員、健康に支障を来し始めていました」。利用者から同連合会に届いた手紙には、支援への感謝とともに日々の窮状が切々とつづられていた。
 19年度まで年間3千件弱で50~60トンだった支援物資は、コロナ禍が本格化した20年度に一気に6403件(前年度比223%)で計約91トン(同168%)に増えた。利用者の家族構成はひとり親世帯が全体の約1割。高齢者世帯は約2割を占める。感染収束は今も見通せず、本年度の支援実績は高止まりで5千件程度になる見込み。
 食料品の提供には食品加工会社や小売店などの協力、企業・団体からの寄贈があるほか、県内各地に設置された回収ボックスで一般家庭分も受け付けている。回収ボックスは20年度、前年より57カ所増え、同NPOは「簡単にできるボランティアとして定着しつつある」と歓迎する。
 知名度は徐々に高まっているが、20年度の統計を見ると、初めての利用が全体の約6割に上る。同NPOの望月健次事務局長(40)は「さまざまな事情で必要な支援情報を集められずにいる人は数多くいる」と現状を分析し、「各種支援団体や市町社会福祉協議会などと連携し、生活が行き詰まる前に困窮者を支えていきたい」と今後の活動を見据える。
 〈2021.09.21 あなたの静岡新聞〉

「フードバンクふじのくに」は2014年に設立

 ■2014年、設立を伝えた記事■
 企業や家庭の余剰食料を、必要とする人に無償提供するフードバンク事業の本格展開に向け、静岡県内の民間団体が事業主体になって「フードバンクふじのくに」を設立する。廃棄食品を減らしながら生活困窮者などが抱える課題の解決につながる仕組みを築き、地域社会のセーフティーネットとなることを目指す。
 事業の開始に向けて研究を重ねてきた設立準備委員会(代表・日詰一幸静岡大教授)が23日、県庁で記者会見して計画を発表した。
 中身には問題ないものの、外箱の印字ミスや破損で流通させられない食品などを企業から、家庭で余った保存食品を個人から寄せてもらい、フードバンクが運営する倉庫で保管する。その上で、事前に契約を結んだ福祉施設や支援団体に送る。
食の安全性を確保するため、賞味期限が1カ月以上残っていることなどを条件にして、預かり後はフードバンクふじのくにが責任を持って管理に当たる。
 これまでも構成団体が個々に取り組みを進めていたが、認知度の低さから十分な量の食品を確保することが難しかった。今回、福祉やボランティア分野の10を超える団体が参画したことで、準備委は「公益性が増し、企業などの協力を得られやすくなる」と期待する。
 日詰教授は事業効果に①企業の処分コスト削減や従業員のモチベーション維持②困窮者の生活の質向上③災害時の備蓄倉庫の役割―を挙げ、「食を通じて人と人とを結び、互いが助け合う社会を構築したい」と述べた。
 フードバンクふじのくには当面、任意団体として活動し、将来的にNPO法人に移行する。5月19日(※2014年)に静岡市葵区で設立総会と記念フォーラムを開く。
 〈2014.04.24 静岡新聞朝刊〉


 ■2017年に認定NPO法人に移行
 余剰食材を生活困窮者らに届け、生活安定と自立を促す事業を行う「フードバンクふじのくに」(静岡市葵区)が、寄付者に税制上の優遇措置が適用される「認定NPO法人」に移行し、31日(※2017年3月)、市役所で認定式が開かれた。市内で8番目の認定。
 認定NPO法人制度は、事業や会計、情報公開の適切な管理、市民からの支持など一定の要件を満たすと市から認定される。寄付は税制控除の対象となる。厳しい審査を通ったという信頼性の高さも寄付の拡大につながると期待される。
 認定書を受け取った吉田敬哲副理事長は「多くの人に知ってもらえる機会。支援が必要な人の思いに応えたい」と話した。
 〈2017.04.01 静岡新聞朝刊〉

支援団体は各所に 草の根で活動を展開

廃棄予定だった食品を使った弁当を配布する「小山町みんなの食堂」のメンバー=同町
廃棄予定だった食品を使った弁当を配布する「小山町みんなの食堂」のメンバー=同町
 ■廃棄予定の食品を弁当に 生活困窮者らに配布 小山の有志グループ
 有志グループ「小山町みんなの食堂」(高橋良子代表)が、廃棄予定だった食品を活用した弁当を無料配布する取り組みを始めた。「おいしく、楽しい社会貢献活動」の輪を広げ、フードロス(食品廃棄)と貧困という二つの社会課題の解決を目指す。
 「お待たせしました」-。8月上旬、町健康福祉会館。メンバーが出来たてのカレー50食を希望者に手渡した。肉は赤ワインとコンソメで煮込むこだわりぶりで、家族連れらが笑顔で持ち帰った。
 従来は捨てられていた牛肉と厚揚げを具材にした。町内企業に協力を求め、事業活動では必要としない部位やパック詰めした際の端切れの提供を受けた。
 家庭などで余った食品を集めて生活困窮者に提供するフードバンクに取り組む「御殿場・小山フードバンク協議会」から派生した組織。食品の供給先となる「子ども食堂」は隣の御殿場市にしかなく、小山町でも展開しようと活動を始めた。
 弁当は誰でも受け取れる。町社会福祉協議会にニーズ調査をしたところ、子どもだけでなく幅広い世代が貧困に直面していると知った。また、無料で弁当を受け取る人たちが偏見を持たれるのを懸念。食品廃棄削減という社会貢献活動に参加してもらう形式にした。
 多様な食品が集まれば調理の幅が広がり無駄を減らすことができる。メンバーは「食品を生かすには一定の量が必要。理解と支援を広げたい」。企業などから食品の提供を受ける仕組みづくりを模索。ソーシャルメディアを活用して試みを周知する。
 ゴールは「活動しなくてもいい地域」の実現。当面は学校の長期休暇中に活動する予定だ。問い合わせは小林千江子さん<電080(6912)4679>へ。
 〈2021.08.23 あなたの静岡新聞〉

 ■困窮者に食料届け 御殿場南高生が集め寄付
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集めた食品を社会福祉協議会に引き渡す生徒=御殿場市の御殿場南高

 御殿場市の御殿場南高生徒会(稲葉摩人会長)が、生活が苦しい世帯などに食べ物を届ける「フードバンク」の活動に取り組んだ。生徒が新型コロナウイルスの影響で困窮する人を支援しようと発案した。12日(※2021年2月)、集めた食品を市社会福祉協議会に引き渡した。
 思い立ったのは1年生の有志。総合学習の授業で国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)について学ぶ過程でフードバンクを知り、「学ぶだけでなく実行したい」と考えた。別の高校の活動を取り上げた新聞記事を目にし「負けられない」と刺激を受け、生徒会に持ち掛けた。
 ポスターやビデオ会議アプリを使った校内放送で趣旨を伝え、協力を呼び掛けた。賛同した生徒と教員から菓子やレトルト食品など約150点、約18キロ分が寄せられた。
 同協議会を通じて、市内で子ども食堂を運営する4団体に提供される。同協議会の窓口に相談に訪れた生活困窮者に配られる。発案者の一人、1年下條紗和さんは「(受け取った人に)少しでも笑顔になってほしい」と願いを語った。
 同協議会によると、市内の学校で組織的にフードバンクに取り組むのは初めて。稲葉会長は活動の継続に意欲を示した。
〈2021.02.14 静岡新聞朝刊〉
 

 ■食料971キロを寄付 静清信金100周年事業
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日詰理事長に目録を渡した静清信用金庫の佐藤理事長(右)=静岡市葵区

 静清信用金庫(佐藤徳則理事長)はこのほど、NPO法人フードバンクふじのくに(日詰一幸理事長)にレトルト食品や缶詰、乾麺など971キロを寄付した。
 同金庫は5月6~31日、全店舗に回収ボックスを設置して来店者や職員から食料を募った。食料は県内各自治体や社会福祉協議会などを通じて生活困窮者に届けられる。
 寄贈式で佐藤理事長は「多くの賛同をいただき、あらためて地域の温かさを感じた」と話した。目録を受けた日詰理事長は謝辞を述べ、「今後も地域社会に溶け込んだ取り組みを継続してほしい」と期待した。
 寄付は同金庫創立100周年記念事業の一環。11月にも同様の活動を予定している。
〈2021.07.01 あなたの静岡新聞〉