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清水港整備 袖師地区の未来像は

 静岡市とENEOSは、同社遊休地を拠点に清水港周辺での次世代型エネルギー推進と地域づくりに関する基本合意を近く締結する方針を固めました。この遊休地は、サッカースタジアムの建設候補地として注目された経緯もありますが、具体化には至っていません。これまでの動きをまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・村松響子〉

静岡市とエネオス合意へ 清水港で水素利活用促進

 静岡市と石油元売りのENEOS(エネオス)は、清水港周辺での次世代型エネルギー推進と地域づくりに関する基本合意を近く締結する方針を固めた。脱炭素社会の実現に向けて連携を強化し、水素エネルギーの利活用などを進める。13日までの関係者への取材で分かった。

清水港
清水港
 清水区袖師地区にある同社清水油槽所の遊休地を活用し、太陽光など再生可能エネルギー由来の水素をつくり出す。水素ステーションを整備し、地域のモビリティ(乗り物)に供給することも視野に入れる。エネルギーの効率化や多様化を図り、地域の防災力向上につなげる。  県とエネオスは昨年7月に基本合意書を交わし、同社遊休地に次世代型エネルギーの供給拠点を整備する方針を打ち出した。市としても今回の基本合意をきっかけに、清水港周辺エリアを水素エネルギー利活用の先駆地にすることを目指す狙いがあるとみられる。
 
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 同社遊休地は地元住民などから新サッカースタジアムの建設地として期待する声が上がっているが、具体化には至っていない。
 清水港周辺のまちづくりを巡っては今月8日、地元の企業経営者らでつくる清水経済人倶楽部が脱炭素の鍵となる水素の利活用を田辺信宏市長に要望していた。
〈2021.7.14 あなたの静岡新聞〉⇒元記事

ENEOSは昨年、県とも基本合意書

 静岡県とENEOS(エネオス)は16日(※2020年7月16日)、清水港の同社清水油槽所の遊休地(静岡市清水区袖師地区、約20ヘクタール)を中心に次世代型エネルギーの供給拠点を構築し、魅力的で持続可能な地域づくりに向けて連携することなどを盛り込んだ基本合意書を取り交わした。川勝平太知事と同社の大田勝幸社長が県庁で合意書に署名した。

合意書を締結するエネオスの大田勝幸社長(左)と川勝平太知事=16日午後、県庁
合意書を締結するエネオスの大田勝幸社長(左)と川勝平太知事=16日午後、県庁
 同所ではJXTGエネルギーが液化天然ガス(LNG)火力発電所の建設計画を進めていたが、景観への影響や環境悪化を理由に地元で反対運動が起き、2018年に中止を発表した。以降は活用の方向性が定まっていなかったが、今回の合意で道が開ける。
 エネオスが再生可能エネルギーなどの供給体制を整備し、県が協力することで一致した。同社によると、遊休地内や市内の一般家庭、ビル、工場などに太陽光発電を中心にした自立型エネルギーの供給体制を整備する。蓄電池などの最新技術を活用し、地域内のエネルギー需給の安定化、効率化に取り組む。供給手段の多様化により、災害時でも一定量の電力供給が可能になるとしている。モビリティ(乗り物)の新付加価値サービスや水素の活用も検討するという。
 県は本年度内に策定する清水港港湾計画に、同社の取り組みを反映させる。
 県によると、魅力的で持続可能な地域づくりに向けた連携については、県や静岡市、企業などでつくる公民連携協議会が今後、遊休地のうち同社が使用しない区域について、具体的な活用策を検討していくという。
 川勝知事は「どのような次世代型のエネルギー基地ができるのか楽しみ。今後、多くの人に愛される地域になればいい」と期待感を示した。大田社長は「総合的なサービスの展開を通じ、魅力的で持続的な地域づくりに役立ちたい」と述べた。さらに、地元で待望論があるサッカースタジアム整備の可能性にも触れ「何も決まっていないが、事業を具体化する中でいろいろ検討する場面があると思う」とした。
〈2020.7.17 あなたの静岡新聞〉⇒元記事

サッカー新スタジアム建設可能性も 具体化せず

 静岡市が2021年度、新サッカースタジアムの整備に向けて他都市の事例などの調査に乗り出すことが22日、関係者への取材で分かった。編成中の21年度当初予算案に調査費300万円を計上する見込み。19年4月の市長選で田辺信宏市長が選挙公約に挙げた新スタジアムの構想づくりがようやく動きだす。ただ、建設地の選定など課題は多く、整備が順調に進むかは未知数だ。

静岡市役所
静岡市役所
 市が所有し、Jリーグ清水エスパルスの本拠地となっているIAIスタジアム(同市清水区)は、老朽化やJリーグ施設基準の一部を満たしていないことから、地元住民やチーム運営会社から新スタジアム整備を求める声が上がっている。
 今回の調査対象は他都市のスタジアムの立地や収益性、整備手法など。整備に必要な合意形成のプロセスや建設までの経緯も調べる。市は調査結果を踏まえ、新スタジアムの規模や整備手法、立地などの検討を進める方針。
 ただ、スタジアム整備に向けて課題は山積みだ。石油元売りのENEOS(エネオス)と県が20年7月、JR清水駅東側の同社清水油槽所遊休地に次世代型エネルギー供給拠点を整備することで合意し、同社社長がサッカースタジアム整備の可能性にも言及したが、具体化していない。
 この遊休地が民有地だということもあり、市は昨年の市議会で「候補地の一つとして想定される可能性が高まった」と述べるにとどめた。現時点で候補地に挙がっている土地はほかになく、今後、構想づくりにエネオスや県を巻き込めるかどうかが焦点になる。
 〈2021.1.23 あなたの静岡新聞〉
 
 ■静岡市、新スタジアム候補地に初言及
 石油元売り国内最大手のENEOS(エネオス)と静岡県が7月、次世代型エネルギー供給拠点を整備することで合意した清水港の同社清水油槽所遊休地(静岡市清水区)について、同市の松浦高之企画局長は23日(※2020年9月23日)の市議会9月定例会総括質問で「(サッカースタジアムの)新しい建設場所の候補地の一つとして想定される可能性が高まった」と述べた。市が市議会で新サッカースタジアムの候補地に言及したのは初めて。
 市が所有するIAIスタジアム(同市清水区)はJリーグの施設基準の一部を満たしておらず、市内には新スタジアム建設への待望論がある。田辺信宏市長は昨年4月の市長選で新スタジアムの構想づくりに着手することを公約に掲げていた。
 今回、市が候補地に想定される可能性が高まったとした遊休地は、JR清水駅のすぐ東側で、ENEOSが液化天然ガス(LNG)火力発電所の建設を計画したが、反対運動などがあり断念した。同社の大田勝幸社長は7月の記者会見で「(サッカースタジアムについて)何も決まっていないが、事業を具体化する中で検討する場面があると思う」と発言していた。
 また、遊休地の整備について、同市の山本高匡海洋文化都市統括監は「事務レベルの意見交換で、今後の協議はENEOS、県、市、清水みなとまちづくり公民連携協議会の4者の体制で進めていくことを確認した」と説明。協議に市が参画することを明らかにした。
 〈2020.9.24 あなたの静岡新聞〉

過去には火発計画も 地元で反対運動、2018年に中止

 静岡市清水区の液化天然ガス(LNG)火力発電所の建設計画を中断している石油元売り大手JXTGエネルギー(東京都)は27日(※2018年3月27日)、計画を中止することを発表した。景観への影響や環境悪化を理由に地元で反対運動が起きていたことに加え、川勝平太知事、田辺信宏静岡市長から計画の再考を求める声が上がっていた。

火力発電所の建設予定地
火力発電所の建設予定地
 同社は「計画の見直しにさらなる時間を要することから、事業性の確保が困難と判断した」としている。
 建設計画は2015年1月に表面化し、準備会社が建設に必要な環境影響評価(アセスメント)の手続きを進めていた。しかし、地元の理解を得られていないとして17年9月に手続きの延期を発表。その後、発電所建設を前提に遊休地の一部を緑化する案などを地元経済界に示し計画続行に意欲を見せていたが、理解を得るまでには至らなかった。
 計画では、18年着工、22年運転開始を目指し、清水港に面した遊休地に計110万キロワットの発電所を設置するとしていた。準備会社にはJXTG社のほか、静岡ガスと清水建設も出資していた。
 計画を巡っては、川勝知事が17年7月の県議会で反対姿勢を示し、同年8月には地元の田辺市長が「市が目指すまちづくりの方向性と一致しない」と事業者に計画の再考を求めていた。
 〈2018.3.27 静岡新聞夕刊から〉