ものづくり最前線の記事一覧
-
ズボンのポケットに収まる ヒップポケットインボトル エムアイファクトリー(伊豆の国市)【静岡ものづくり最前線】
ズボンの後ろポケットに収まり、持ち運びに優れたペットボトルを開発した。ウイスキー水筒「スキットルボトル」を現代風にし、利便性とデザインを追求した自信作となっている。 ボトルはキャップ部分を含めた高さが15センチ、横8センチで、厚さは最も厚い部分で3・6センチ。ポケットからスムーズに出し入れできるよう、角をとことん滑らかにした。持ち歩く際に500ミリリットルは多過ぎるという消費者の声を受け、容量を半分の250ミリリットルにした。 ボトルの素材は一般的なペットボトルに比べ硬くて厚く、凍らせることも可能。ボトル自体が薄いため、凍らせても溶けやすい。 ボトルのラベルの片面は縦10センチ、横8セ
-
利便性と正確性を追求 実験用ホモジナイザー 三丸機械工業(三島市)【静岡ものづくり最前線】
乳製品や調味液などの食品を中心に医薬品、化学製品の品質向上に使用される高圧式ホモジナイザー(均質機)の卓上実験機を開発した。使いやすさと正確性を追求し、大学や企業の研究機関から評価が高く、問い合わせが続く。 ホモジナイザーは、液体の中にある粒子を細かく砕いて均質化する機械。主力の高圧式は液体に高い圧力をかけて特殊なバルブを通過させ、液体中の粒子を細かくする。 実験機は小型ながら最大100メガパスカルの高圧実験を可能にした。女性研究者が増える中、鈴木隆社長(75)は「誰でも簡単に使えるようにしたい」と操作性を重視。ボタン一つで圧力値を設定でき、効率良くデータを取得できる。 ライン生産と同
-
キャンドルライトのシェード 3Dプリンターで造形 かえで工房(伊東市)【静岡ものづくり最前線】
3Dプリンターを使って生み出す独特な形状のシェード。人気シリーズ「しずく」は滴状の流麗なデザインの覆いに大きさの異なる緻密な穴を多数開け、隙間から内部のLEDキャンドルライトの柔らかな明かりがこぼれる仕様とした。 西川昌弘代表(72)が50年に及ぶソフトウエア技術者としての知識と経験を生かし、CADやプログラミング言語を用いて設計、製造する。素材となる樹脂の層をらせん状に重ねる手法で、つなぎ目のない美しい仕上がりを実現した。 2023年5月に本格的に販売を始めた。カラー展開は単色と2色の組み合わせの全30色。今後、色数を増やしたグラデーション模様や絵柄入りといった商品の幅を広げる。 大
-
工法、質感 本物そのまま 跳び箱型の小物入れ ミヤノ工芸(浜松市浜名区)【静岡ものづくり最前線】
くぎを使わずに木材を組み上げる工法「ロッキング」など、長年の跳び箱製造で培った技術を生かした独自商品を開発した。ラワン合板を使用してマット部分には帆布を張り、本物の跳び箱と同じ質感にこだわった。1段目を外すことで小物を収納できる。 創業当時から1990年ごろまで、跳び箱を含め、家具やピアノなど木工製品を幅広く製造していた。現在の主力事業はシステムキッチンの部材加工にシフトしたが、木材を組み上げる機械を有効活用し、これまでにさい銭箱やスマホスタンド、跳び箱型の貯金箱などの商品も製作した。 ロッキングと家具製造のノウハウを組み合わせている点が特徴。小物入れは縦約38センチ、横約31センチ、高
-
薄切り時に刃離れ良く 独自の片刃包丁 ユイ(南伊豆町)【静岡ものづくり最前線】
洋包丁と和包丁のそれぞれの長所を兼ね備えた包丁「プロシード」を開発した。一般向けに販売しているが、料理人からも問い合わせが増えているという。 片刃で切れ味が良い和包丁と、ステンレス製でさびにくい洋包丁の特長を取り入れた。刃先の角度と厚さの改良を重ね、薄切り時に刃に食材が付きにくい「刃離れの良さ」を実現。細やかな作業に向き、特に野菜の調理に効果を発揮する。 開発の発端は渡辺典子社長(36)が南伊豆町内のレストランで働いていた際、シェフが洋包丁を片刃に研いで使っていたこと。影響を受けて当時は一般販売されていた同様の包丁を使用していたが、2017年ごろに市場から商品がなくなった。その後メーカー
-
濃厚な素材の味楽しむ さつまいもジェラート エナジーファーム(川根本町)【静岡ものづくり最前線】
耕作放棄された茶畑を活用し栽培されたサツマイモ「紅はるか」を使ったジェラートを開発した。ジェラートにはふかしたサツマイモと、その皮も入っていて濃厚な素材の味を楽しめる。 温度13~15度、湿度50%以上で最低2カ月熟成した紅はるかを使用。紅はるかはねっとりと甘い味が特徴で、熟成によってさらに糖度が増す。また、通常捨てられてしまう皮をむく際に一緒に削れる実の一部も1割ほど使用し、フードロス削減につなげる。皮の近くの実は高糖度で、ジェラートの濃厚な甘みに一役買っている。 高齢化や後継者不足などによって耕作放棄地が増加する川根本町で、放棄地をサツマイモやユズ、栗などの栽培地に再利用している。ジ
-
住宅の快適性を手作り 木造トレーラーハウス IDK(富士市)【静岡ものづくり最前線】
住宅会社の職人が手作りする木造トレーラーハウス。一般的な住宅の水準を上回る高気密、高断熱の快適性をオーダーメードで実現する。 熊本地震の発生当時、仮設住宅に木造を求める現地の声を井出克広社長が聞いたことが事業化のきっかけ。「被災地の企業では対応しきれないことを迅速に」との構想を形にした。 平時からの事務所や店舗など柔軟な改築が可能。セカンドハウスやグランピング施設、企業の宿舎などとしての活用を提案する。 全長11メートル、幅3・4メートル。リビングをはじめ、キッチンや洗面所、風呂、トイレを備える。高さ2・5メートル超の室内にはロフトを組み込むことができ、大人数での楽しみが広がる。断熱材
-
炭酸に負けぬ茶葉 厳選 牧之原産深蒸し茶のスパークリングティー 高柳製茶(牧之原市)【静岡ものづくり最前線】
牧之原市産深蒸し茶の一番茶のみを使用したスパークリングティー(発泡性茶飲料)。茶の強い香りと爽やかな後味が人気を集め、県内外の高級料理店からの注文も増えている。 リーフ茶の需要が低迷する中、「生産者が最も買ってほしいのは高値の一番茶。茶業界全体のためにも農家が喜ぶ商品を作らなくては」(高柳敬将社長)と高品質の茶葉を届ける方法を模索し、清涼飲料製造のベネフィッティー(静岡市葵区)と共同開発した。 葉に含まれるアミノ酸やカテキンなどの成分を分析し、うま味や苦みなどを数値化。強めの炭酸に味や香りが流されないよう、濃い原料のみを厳選することにこだわった。 冷蔵して酒の代わりに肉料理などとペアリ
-
純正技術でニーズ対応 三ケ日ミカン柄の自動車シートカバー サンショウ(浜松市中央区)【静岡ものづくり最前線】
地元浜松特産の三ケ日ミカンのポップで鮮やかなデザインをあしらった軽自動車、小型車向けシートカバー。国内全車メーカーと取引がある純正の内外装品製造会社の技術を生かし、カーライフを彩る一般向け自社ブランド製品としてEC(電子商取引)販売する。 シートカバーは無地で重厚なデザインや色調が多い純正品に対し、プリント柄など小ロットのニーズに応えようと開発を進めた。難燃性や耐光性、耐久性など、日頃求められる純正レベルの設計基準を満たすなど、ノウハウを生かした。 ミカン柄のデザインは、4年前から産学交流がある静岡文化芸術大の学生が地元名産をモチーフに描いた案を選んだ。難燃加工生地を使い、生地裏にはウレ
-
本格的な日本茶 手軽に 「つゆひかり」のプレミアムティーバッグ 山亜里製茶(御前崎市)【静岡ものづくり最前線】
湯を注ぐだけで家庭や職場、アウトドアなど幅広い場面で本格的な日本茶が楽しめる。深蒸しした御前崎市特産の茶品種「つゆひかり」の茶葉を1袋5グラム詰めた。まろやかな味わいと豊かな香りが特徴。茶の味や魅力を競う「日本茶アワード2023 煎茶ティーバッグ部門」で入賞した。 湯の適温は80度前後。注いでから30~60秒ほど茶葉が広がるのを待つ。取り出す際、袋の中にうまみ成分が残らないように少し揺らすのがポイント。つゆひかり茶の色は抹茶のように濃いが、のどごしはスッキリ爽やか。渋みも少ないため、お菓子づくりの材料としても人気が高い。 近年、日本茶を取り巻く環境は多様化した。急須で茶を入れる家庭が減っ
-
家族だんらんのツールに 茶育セット「みんなでちゃちゃちゃ」 丸福製茶(静岡市葵区)【静岡ものづくり最前線】
消費が低迷する茶のおいしさ、楽しさを幼い頃から感じてもらう“茶育”セット。煎茶やほうじ茶、抹茶など好きなティーバッグをコップに入れ、水を注いで5分で味わい豊かなお茶のできあがり。子供が入れたお茶を両親や祖父母らが楽しむなど、家族の距離をさらに縮めるツールとしても支持を広げる。 水出しティーバッグはやけどの心配がない上、苦みや渋み、カフェインが出にくいため子供にも飲みやすい。レモングラスや玄米などを含む計6種類が用意され、複数のお茶を混ぜ合わせれば多彩な味が楽しめる。パッケージにはかわいらしいキャラクターのイラストを描き、水を入れてできあがるまでの時間に楽しめる塗り絵
-
工程短縮し効率化貢献 特殊切削工具 三ツ安製作所(磐田市)【静岡ものづくり最前線】
自動車や二輪車、農業機械といった輸送機器部品などの特殊な切削加工に用いる工具をオーダーメードで製造している。工具一つに複数の刃先チップを組み合わせることで汎用(はんよう)品だと複数にわたる工程を1回で済むようにし、生産の効率向上とコスト削減につなげる。 工具の製造は、創業当時に手作業で行っていた自動車部品の切削加工を効率化しようと、自社向けを開発したのをきっかけに事業化した。工具の素材選定から設計、製造まで一貫して行えるのが強み。特殊切削工具を製造する企業は全国的にも珍しく、四輪・二輪の大手メーカーなどとの取引があるほか、近年は北米で需要が拡大している大型船外機向けも伸びている。電動化の進
-
使いやすさを追求 卓上型バウムクーヘンオーブン ソーキナカタ(藤枝市)【静岡ものづくり最前線】
2009年に製造したガス式6本焼きバウムクーヘンオーブンに加え、電気式1本焼き卓上型オーブンを開発した。設計や部品加工、組み立てを自社で手がけ、子どもが体験できる使いやすさを追求した。 家庭や展示会などさまざまな場所で電源コンセントがあれば、女性や子どもでも簡単に焼き上げることができる。赤外線カーボンランプヒータを採用し、炭火で焼くのと同じ焼き加減で仕上げる点を特徴とする。製品サイズは高さ61・5センチ、幅62センチ、奥行き53・7センチ、重量51キロ。顧客の要望に合わせ、新しく部品を製造するなどして迅速に対応するのも強みだ。 バウムクーヘンオーブンの製造は、リーマン・ショックをきっかけ
-
仕立て直し技術を応用 羽毛布団再生シュラフ 山昇(掛川市)【静岡ものづくり最前線】
不要になった布団の羽毛を使ったシュラフ(寝袋)を開発した。古くなって生地が汚れた布団を預かり、羽毛の洗浄や生地の取り換えで再生させる仕立て直しのノウハウを生かした。キャンプや防災用品としての需要を見込み、家庭で眠っている寝具の有効活用を提案する。 オーダーメードが基本。持ち込まれた古い布団や婚礼寝具などを解体し、中身の羽毛を洗浄した上で封筒型のシュラフに加工する。外側の生地は、肌触りを重視したポリエステルと綿の混紡、本格派のナイロンの2種類から選択できる。 シュラフ1枚に400~600グラムの羽毛を使用するのが目安。シングルサイズの布団1枚でシュラフ2枚まで、ダブルサイズなら3枚に仕上げ
-
富士山の湧水でクラフトビール 地域色強い商品も開発 ヴィ・アゲイン(御殿場市)【静岡ものづくり最前線】
富士山麓のキャンプ場に2023年1月に完成したブルワリーでクラフトビールを開発している。場内から湧き出る天然バナジウム水を活用し、フルーティーな味わいが人気を集める。 醸造所運営を担うのは勝亦孝丞さん(41)。一からビール造りの知識を身に付け、試行錯誤を繰り返して定期的に新たなクラフトビールを生み出す。「ホップの香りを最大限楽しんでほしい」とこだわりを語る。 24年1月の開設1周年を記念し、通常の3倍のホップを使用した「トリプルIPA」を製造した。アルコール度数9%でビール全体の香り、味わいが強い。醸造所のある原里地区の沈む夕日をイメージした飲みやすいペールエールや市内の飲食店「ほらあな
-
瞬間冷凍栄養そのまま 無添加手作り乳幼児食 永田屋(袋井市)【静岡ものづくり最前線】
地元の食材を使った完全無添加の手作りベビーフードの販売を開始した。瞬間冷凍により食材の栄養素はそのまま。使う際はレンジや湯煎で簡単に解凍できる。乳幼児の成長に合わせて食材の種類や大きさを変え、離乳食初期から完了期までの商品をそろえる。 永田浩憲社長の息子健人さんの妻彩華さん(27)が開発した。3児の母として育児に追われる中、市販のベビーフードに助けられた一方で、添加物が使用されたレトルト食品などを食べさせることに後ろめたさがあったという。「子育て中のお母さんが少しの罪悪感もなく使えるベビーフードがあれば」という思いから製造を決めた。 離乳食・幼児食コーディネーターとしての知識を生かして食
-
供養の在り方に新提案 てのひらぼせきIL(イル) プロジェクトチーム「SMOW」【静岡ものづくり最前線】
継承が困難で墓じまいが相次ぐ現状に着目し、自室など手元に置ける小さな墓石をデザインした。両手で包み込むような形状は、日常から故人をしのぶ気持ちに寄り添う仕草を体現した。供養の新たな在り方を提案している。 墓石はしずく型の手のひらサイズで、生活に溶け込むシンプルなデザインとした。底部には納骨する穴がある。素材はいずれも国産で、青みと高級感ある磐梯みかげ、白くて硬質な稲田石、桜色の模様が華やぐ万成石から選べる。墓じまいで残った墓石からの成形や、彫り込みも注文可能。 国産の石材は採石量が中国などと比較して圧倒的に少ない上、墓石の大きさで加工できるのはわずか数%とされる。石材営業の経験がある榊原
-
素材本来の味、最大限に 伊豆産果実の無添加ジャム 温まる合間に(熱海市)【静岡ものづくり最前線】
熱海産の「温州みかん」と狩野川流域で栽培された伊豆産のイチゴ「紅ほっぺ」を材料に、2種類のジャムを開発した。ペクチンや香料、着色料といった添加物を使用せず、素材本来のおいしさ、色合いを最大限に引き出す無添加の製法にこだわる。 2種類のジャムは、栗本遼代表(39)が起業前まで勤めていた農産物加工会社のフルーツバスケット(函南町)で委託製造する。素材への熱負荷が少なく、フレッシュ感を生かせる「低温真空二重釜」で丁寧に調理している。一緒に加える砂糖(テンサイ)、レモン果汁、寒天はいずれも国産を使用する。 子どもの頃、活気を失っていく出身地・熱海の街を目の当たりにして「地域の活性化に興味を持った
-
茶と名産品、新感覚で 静岡お茶屋かのう茶店(静岡市葵区)【静岡ものづくり最前線】
本山茶を扱う老舗製茶問屋は約10年前から、チーズ製品の開発を手がけている。第1弾の「静岡茶チーズ」は、朝比奈産の抹茶とクリームチーズを合わせた斬新な味わいが好評で、ロングセラーとなった。そこで「静岡チーズ」シリーズとして展開し、本業を生かした「ほうじ茶」と「紅茶」、地元名産の食材を使った計6種類をそろえた。 「お茶屋ならではの商品を作りたかった。ただ、お菓子は同業他社がすでに手がけていて、全く新しい商品を開発したいという思いからチーズに目をつけた」と語る店長の狩野淳司さん(51)。一からチーズの製法を学び、専用の製造機を特注した。100回を超える試作を重ね、開発にこぎつけた。店舗内に工房を
-
添加物なしで素材の味 かまぼこ足平(焼津市)【静岡ものづくり最前線】
江戸時代後期創業の練り製品製造販売「足平」が戦前から手がけてきたかまぼこ。松永大社長(41)の方針で2021年に食品添加物の調味料を使わない製法を取り入れ始めた。素材そのものを引き立たせた味わいに評価が高く、22年には商品の一つ「極上蒲鉾」が全国蒲鉾品評会で最高賞の農林水産大臣賞を受賞した。 原料は東シナ海産のグチ。水揚げシーズンといわれる11月から3月に捕れた魚を元に、店頭に出す1年分の商品を生産する。すり身にする作業は松永社長一人が担う。塩と砂糖を加え、弾力があるか、なめらかさは出ているかを手の感触で確かめながら魚の身をすっていく。成形し、一定の温度で蒸すと完成。マイナス60度ほどで冷
-
究極の防災グッズ開発 合同会社ナミレ(浜松市浜名区)【静岡ものづくり最前線】
軽トラックの荷台に着脱が可能なキャビン「ナミレBOX(ボックス)」を製造・販売する。キャンピングカーやキッチンカーとしての依頼を受けるが、ソーラーパネルや換気扇、トイレ、ベッド、USBと外部電源などを標準装備にするなど「究極の防災グッズ」として開発を進めている。 キャンピングカー仕様のキャビンの長さは約2・1メートル、幅約1・4メートル、高さ約1・8メートルで重量は約280キロ。材質はアルミフレームや軽くて強度が高いアルミ複合板、断熱材を使用する。キャビン内のレイアウトはオーダーで水道などから選び、音の遮断やソーラーパネルの増設などの用途にも応える。販売価格はフル装備で税込み約170万円。
-
溶接技術と魅力形に アイアン家具/笙磨溶接(湖西市)【静岡ものづくり最前線】
工業製品の溶接で培った技術と経験を生かし、2023年からオーダーメードのアイアン家具製作を本格化した。「アイアン工房Shouma」のブランドを立ち上げ、溶接の魅力を広めようとイベント会場で子ども向け体験ブースの出展にも取り組む。 家具は顧客の要望に合わせ設計し、これまでに折り畳みテーブルや傘立て、大型犬用ケージなどを製作した。「バラバラの部品を自由に付けられるのが溶接の楽しさ。鉄の素材はおしゃれな雰囲気ながら、レザーや木など異素材との組み合わせで温かい雰囲気も出せる」と事業を立ち上げた笹瀬優介専務(34)は語る。 23年は受注生産の自社製品として「おやこベンチ」も開発した。高さ約40セン
-
イワシの削り節 水谷商店(静岡市清水区) 素材厳選 薄さこだわり【静岡ものづくり最前線】
イワシの削り節を「食べるイワシ」として売り出したのが25年前。今では、子どもたちも食べやすくと乾燥ノリを加えた「海苔(のり)いわし」、店がもともと客に提案していたレシピを手軽に楽しんでもらうために、コロナ禍の最中に発売した、乾燥ネギも混ぜた「ねぎいわし」が加わり、一層人気を集めている。 原料は熊本産ウルメイワシの煮干し。脂が少なく肉厚で味が濃いものを厳選。手作業で頭を取って、再びふかした後に天日干しする。年代物の電気式削り機の16枚のかんな刃を微妙に調整し、食べやすく、口に入れたときに香りも楽しめるように薄く削っていく。 5代目の水谷昌平さん(42)は「見た目からふわっとするくらいの『花
-
筋肉鍛えるクッション 伊藤設備工業所(沼津市) 反発力利用し運動効果【静岡ものづくり最前線】
体の深層部の筋肉、インナーマッスルを鍛えることができるクッション。本業の水道工事業で酷使した身体の痛みを和らげようとしたのが開発のきっかけ。静岡大教授との共同研究で、筋肉強化と骨盤安定化につながる運動器具として期待できると評価された。 山型の足腰用と、四角い膝・肩・背中用の2種類。ウレタンなど反発力の強い素材を詰めた。体に挟んだり乗ったりすると反発し、反発に対する抵抗力を引き出して筋肉を強化する。静岡大教育学部の杉山康司教授との共同研究で、足腰用をあおむけで内ももの内側に挟むと十分な運動効果を得る刺激が加えられていると認められた。 開発者の杉山登さん(51)は約35年前から水道工事に従事
-
油不要で使える鉄板 松和製作所(長泉町)【静岡ものづくり最前線】
金型部品製造で使用する加工技術を活用し、油をひかなくても食材がくっつかない鉄板を開発した。表面を覆うフッ素樹脂加工と違い、表面に細かな凹凸をつけてサメ肌状にし、食材の貼りつきを防いだ。 新型コロナウイルスの影響で、大手メーカーの製造が停止。受注が落ち込む中、松田和彦社長が趣味のバーベキューで使う鉄板づくりに挑戦した。金型の内側にしわ模様の凹凸をつけ、鋳造した製品の貼りつきを防ぐ方法をヒントに試作。鉄板でも貼りつき防止に効果があると確かめた。 加工には、複雑な形の製品を製造する際、高電流を流したグラファイトで鉄の表面を溶かしながら加工する技術を使用。表面がザラザラになる特性を生かした。試行
-
静岡県産食材を生かしたジェラート 伊豆高原ジェラート工房R65(伊東市)【静岡ものづくり最前線】
2022年3月に開業し、原料の食材にこだわったさまざまな種類のジェラートを提供する。フルーツや牛乳、茶など県内産の良品を厳選。アロマを意識した組み合わせや糖の使い方を工夫した製法で、食材の良さを引き出している。 ジェラートは食材が持つ香りを意識して開発している。伊東名産のダイダイとジャスミン、カルダモンを使った一品は、それぞれが相乗効果を生むように配合の分量を調整した。グラニュー糖や粉末の水あめなど複数種類の糖を組み合わせて甘さや固さ、口に含んだ際のなめらかさを追求。糖の配合により、食べた時に甘さを感じるタイミングが変化するという。 工房を立ち上げた六郷祐太朗さん(35)は千葉県出身。「
-
森林資源を有効活用 帯鋸盤 ヒロタ(島田市)【静岡ものづくり最前線】
丸太から柱材や板などを切り出す「帯鋸盤」の製造を約100年間続ける。住宅をはじめ、家具や楽器、伝統工芸など製材できる分野は多岐にわたる。7月には帯鋸盤の導入を念頭に、ケニアの木材加工の効率化や森林資源の有効活用を目指す案件化調査に向け、国際協力機構(JICA)と業務委託契約を結んだ。 国産、外国産を問わず、丸太を数センチ~ミリ単位で製材することができる。切断精度が高く、歩留まりもよいため、高品質で安定した木材供給が可能。作業の自動化、オペレーターの安全性も確立されていて、部品交換やメンテナンスも容易という。製品の耐久性が高い点も、海外での導入に適している。 今回調査するケニアは、森林資源
-
自然素材で栄養補給 フルーツバー NATURE THING(浜松市北区)【静岡ものづくり最前線】
主原料のイラン産デーツに自家製ナッツバターとオーツ麦を練り込む独自製法を確立し、100%自然素材で無添加の栄養補助食品を開発した。「いつでもどこでも素材を丸ごと食べられる」をコンセプトに「WHOLE BAR(ホールバー)」と名付けた。 脇光範代表(40)が趣味の登山を通じて栄養バーと出合い、国産品の少なさに課題を感じたことが創業のきっかけ。オーストラリアで生活していた期間に海外の商品について研究し、帰国後の2016年にフルーツバーの販売を始めた。 浜松市北区に拠点を移した21年に「自然のものを自然なまま食べてほしい」との思いから、オーブンで焼く工程を省く改良に着手。レシピを1グラム単位で
-
バナナ・パパイアのクラフトビール 熱川バナナワニ園(東伊豆町) こだわりビール名物に【静岡ものづくり最前線】
温泉熱を活用し、その名の通り、ワニの飼育や熱帯植物の栽培を行っている熱川バナナワニ園。2021年からは伊豆の国市の醸造所「反射炉ビヤ」と共同で、園内の果物を使ったクラフトビールを開発、販売し好評を集めている。 クラフトビールは2種類。「伊豆バナナワニWeizen(ヴァイツェン)」は、濃厚な甘みが特徴の台湾バナナ「仙人薫」を使用。昨季まではホップが多めで苦みが強い「IPA」のスタイルで醸造していたが、果実味の強い白ビールに変更した。風味を前面に押し出す狙いで、完熟バナナの滑らかな味わいを楽しめる。バナナは最適な状態で収穫するため、1本ずつ手摘みしている。 もう1種は「伊豆パパイヤIPA」。
-
規格外のイチゴを活用 フルーツティー 就労継続支援事業所ポトラッチ(御前崎市)【静岡ものづくり最前線】
紅茶葉と粒状に乾燥させたイチゴを合わせた。お湯を注ぐと甘い香りが立ち、リフレッシュしたい寝起きや休憩中の一杯に最適だ。女性層を狙った爽やかでフルーティーな味わいが特徴で、ヨーグルトや菓子の材料に混ぜるなど多彩な組み合わせが楽しめる。 地元農家と連携し、形が整わず廃棄予定だったイチゴを活用した。施設利用者が細かくカットし、牧之原市の茶製造を手がける「ワイケイティー」が加工した。理想の味を実現するため企業側と試作を重ね、イチゴを切る大きさなどにもこだわった。 イチゴの栽培方法や農業者の苦労を理解した方が商品作りへの情熱も生まれるとの発想で、農業体験も実施。食品ロス削減をテーマに取り組んでいる
-
自然素材で素肌守る 薄手アームカバー アスカム(吉田町)【静岡ものづくり最前線】
大井川流域から切り出した間伐材を原料とした自然由来の機能性セラミック炭を染料に、オーガニックコットンで仕上げた薄手アームカバー。天然の優しい肌触りを保ちつつ、高い紫外線遮蔽(しゃへい)率を併せ持つ。 機能性セラミック炭はチップ状にしたヒノキやスギの間伐材とミネラルを多く含む特殊セラミックスを混ぜ合わせて炭化させた素材で、自然由来の炭でありながら消臭や調湿、保温効果などに優れるという。創業当初はインテリアや住宅の調湿材などの商材が中心だったが、「自然由来の素材を暮らしに生かしたい」との思いから、衣類業界にも参入した。 肌のケアを気にしがちな女性を中心に顧客を着実に伸ばしていたが保温、調湿効
-
純水洗車システム ビューティー工房おかだ(富士市) 愛車の染み ほぼゼロに【ものづくり最前線】
不純物を取り除いた純水を洗車に活用するシステム。水道水の作業では発生しやすい車体の染み「イオンデポジット」をほぼゼロに抑え、洗車後の工程となるコーティングの効果を高める。 車体を傷める要因は、酸性雨や高熱、強い紫外線、黄砂などが挙げられる。色落ちや塗装のはがれなど目に見える劣化はもちろん、わずかな汚れも気にする愛好者は多い。新型コロナウイルス禍による車の買い控えもコーティング需要を高めた。 白い輪状に浮き上がるイオンデポジットは、水道水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどが原因。水道水では90%の確率で発生していたところ、このシステムでは1%まで減少させたという。 システムを構成する
-
ウッドリバーテーブル 遊木舎西尾(藤枝市)木の節や皮有効活用【ものづくり最前線】
処分する木の節や皮など自然な部分を有効活用した新たな木製テーブルを開発した。専用のレジン(樹脂)液を脱泡機で流し入れて固め、研磨すると川のようなイメージの天板に仕上がる手法「ウッドリバー」を利用している。森の中を流れる清流を感じさせる製品が完成した。 明治時代に部品加工業として静岡市で創業した家具メーカー。開発は今年から始まった。過去に経験のない木材とレジンの異素材を組み合わせる製造方法が、西尾正勝社長(78)の好奇心と挑戦心をかき立てた。 岩手県八幡平市の栗の木を使用。専用のレジン室で22~23度の室温を保って作業し、研磨には約1週間かける。一般家庭で使ってほしいとの思いで、木のぬくも
-
溝のペンキ除去容易に 塗料缶掃除用スクレーパー/伊東塗装店(掛川市)【静岡ものづくり最前線】
塗料缶のふたの周りに付着した塗料を拭い取るへらを開発した。ふたをはめ込む溝に残ったペンキを容易に除去できる。へらの向きを変えることで、平面や外周のカーブなどにも対応可能。知的財産権の実用新案を取得した。 溝に残ったペンキが固まるとふたがしっかり閉まらなくなり、使用期限内でも中身が硬化して使用できなくなる。無理やりふたをはめ込むと外せなくなるため、使用するたびに缶に付着した塗料を取り除く作業は必須。ペンキを塗るはけを使って取り除くのが一般的という。 開発したへらは、ふたの溝の凹凸に合わせて形状を加工したシリコーン製。素材の弾力を生かして効率よく拭えるほか、先端部の突起を使って隙間の塗料も除
-
バイオエタノ-ルランプ 山本工業(湖西市) 高技術で「美」をともす【ものづくり最前線】
管楽器の金属部品を製造する技術を生かし、室内外で使えるバイオエタノールランプを昨年12月に発売した。ブランド名の「BRASSCENE(ブラシーネ)」は、真ちゅうを意味する「BRASS」と景色を意味する「SCENE」を組み合わせた。 真ちゅうの板を精密に曲げた外面はあえてコーティングを行わず、経年による色の変化を楽しめる。銀ろうの溶接と研磨の高い技術を生かし、つなぎ目を見せない美しさにこだわった。火消し用のふたもサックスのキー部分をモチーフに洗練された意匠とした。開口部が大きく、炎が揺らぐ様子を見られるのが特徴。燃料のバイオエタノールは一酸化炭素を発生させないため、屋内でも使いやすい。 開
-
医療現場の写真整理システム ロジック(浜松市中区)管理効率化、迅速に照会【ものづくり最前線】
医療現場で撮影する膨大な臨床写真の整理を効率化する。浜松医科大皮膚科学講座の本田哲也教授と共同開発し、「M.M.M(エム・エム・エム)」の製品名で販売を始めた。従来の手動作業を自動化し、時間短縮や労務負担軽減につなげる。 同医大皮膚科では、日々の診療で1台や複数の機種で撮りためた患部写真のデータに関し、パソコンへの取り込みや整理が負担となっていた。はままつ医工連携拠点と浜松商工会議所の支援で、ロジックの技術とのマッチングが実現した。 患者ごとに病名や症状、診察医師名、検索ワードなどの情報を記した「撮影コード(ID)」を発行し、患部を撮影。専用のアプリで取り込んだ画像はデータベースに格納さ
-
3Dアジャストボーラス ア・ジャストポリマー(御殿場市) 治療効果高め 負担は減【ものづくり最前線】
がんの放射線治療で使うエックス線や電子線は、体表から数ミリ~数センチ体内に入った部分で最大線量になる。表皮近くの病巣に当てる場合、人体とほぼ同じ放射線吸収率を持ち、一定の厚さを持つ医療器具「ボーラス」を皮膚の上にかぶせる。治療効果を最大化し、患者負担が少ない「3Dアジャストボーラス」を県立静岡がんセンターと共同開発した。 治療効果を高めるためには、ボーラスが皮膚に密着することが必要不可欠。しかし従来のボーラスはシート状で、曲面や凹凸部位にかぶせる場合、皮膚との間に隙間ができていた。さらにボーラスは半透明で密着具合を目で判断しづらかった。 3Dアジャストボーラスは患者の治療計画データを基に
-
海底熟成ワイン「LOVE Mare(ラブマーレ)」中伊豆ワイナリーヒルズ(伊豆市)海底に沈め波動で熟成【ものづくり最前線】
伊豆市土肥地区の名産品化を目指し、中伊豆ワイナリーヒルズと市商工会土肥支部事業部が取り組む海底熟成ワイン製造事業。海底に沈め、波動で強制的に熟成を早めることで、おいしさを引き出す。 同市八木沢沖約500メートル、水深約20メートルの海底で、約4カ月間熟成させる。引き揚げ後は、日が当たらず、年間を通して一定温度に保てる同市の観光施設「土肥金山」の坑道でさらに数カ月間、追加熟成させる。瓶には貝などが付着し、ざらざらした手触りになる。 ワインは同社生産の「伊豆ヤマ・ソービニオン2021」。ブドウの品種の「ヤマブドウ」と「カベルネ・ソーヴィニヨン」を交配させた「ヤマ・ソービニオン」を使っている。
-
古材をリノベに活用する「想いつむぎ」 青木工務店(三島市) 一点物の魅力を地域循環【静岡ものづくり最前線】
リフォーム工事や古民家の解体現場で発生する古材を引き取って建材としての価値を見いだし、一般住宅や店舗のリノベーション時に利活用を提案する。補修した古材を倉庫に集約して販売し、資源を地域内で循環させる。 解体現場から出る大量のごみを処理する度に「もったいない」と思っていた萩尾聡子社長。細工が施された魅力的な建具や素材は多く「なんとか生かしたい」と考え、新たな人の手に渡る仕組みを具現化した。リフォームでは施工を急ぐケースが多いが、萩尾社長は「古材があることで元々あった空間の魅力を引き出し、プラスαになる」と手応えを示す。 現代は既製品でつくる建築物が多い一方、古民家にある古材は一
-
大風量の小型ファンモーター アドビック(磐田市) 円筒形で局部早く冷却【静岡ものづくり最前線】
ファンと電動機が一体化していて、産業用機器の過熱を防ぐための冷却などに用いられる。鉄芯がなく、回転が滑らかなコアレスコイルを採用し、小型・軽量ながらも毎分1万4千回の高速回転を実現している。汎用(はんよう)性の高さも特徴。 直径3・6センチ、長さ4・5センチで、風量は毎分500リットル。ファンモーターは角形が一般的だが、円筒形にしたことで風を拡散させず、まっすぐ飛ばすことができる。熱源にピンポイントで圧力の高い風を当てることができ、冷却スピードも早くなるという。 送風だけでなく、空気を吸い込む力を生かし、防じん服内のちりを外部に漏らさないように回収するフィルター装置や、クリーンルーム内で
-
美容品の「dei 泥クリーム」 ハレノユ(熱海市)肌本来の機能を正常化【静岡ものづくり最前線】
4種類の泥をブレンドしたクリーム。肌の保湿、張りなどを保ちつつ、不要物を排出する肌本来の機能の正常化を促す。洗い流さず、手軽にいつでもどこでも使用できるのが特徴。普通肌にはオールインワンとして使い、乾燥肌には化粧水で潤わせた後に塗る。化粧下地としても使用できる。 熱海市伊豆山の日本フルボ酸総合研究所が開発協力し、繊細な日本人の肌に合う乳酸菌K-1や、真皮層を活性化させるフルボ酸などを組み合わせた。普通の水を使わずに、ダイダイの花びらから抽出した蒸留水(ネロリウオーター)を50%配合し、肌に潤いと栄養をもたらす。クリームを洗い流さずに使うことで、肌の汚れを吸収し、紫外線から守る効果があるとい
-
世界が認めた職人技術の釣りざお メガバス(浜松市東区)【静岡ものづくり最前線】
マスなど渓流ルアー釣りを楽しむために3年前から開発に取り組み、3月に発売した釣りざお。伊東由樹社長がデザインし、ドイツの世界的なデザイン賞「レッドドットデザインアワード2023」を受賞したこともあり、欧州、中国など国内外で需要が伸長している。 クスノキやオウダン、ビャクダンの天然樹木を用いたグリップは、人間工学に基づいた独自の形状で切削・デザインした。さおを握る手の懐とグリップの接地を増やし、さおを振る際に軸ぶれが起きにくくした。伊東社長は「山間部に生息する渓流魚を釣る際、厳しい体勢でさおを振ることが多く、体勢の負担を軽減しようとした」と話す。 険しい山道を進む渓流釣りは、持ち運びの際の
-
カレーの具 簡単時短、非常食にも 石田缶詰(焼津市)【静岡ものづくり最前線】
ルーを入れるだけで家庭の味が再現できるカレーの具。OEM(相手先ブランドによる生産)を中心に手がけてきた同社が創業60周年の節目に立ち上げた自社ブランド商品。コロナ禍の巣ごもり需要の高まりで注目が集まり、キャンプ用も市場投入した。 2014年に自社ブランド第1号として完成したのは「ママカレーの具」。調理済みの肉や野菜具材がスープごと入っている。鍋に入れて煮込み、自分好みのルーを加えると完成する。保存期間は常温で1年半と非常食としても有効。 石田雅則社長の「全国に発信できる商品を作りたい」という思いを受け、社内に商品開発チームが発足。試行錯誤の末に製品化にこぎ着けた。当初は3~4人前を想定
-
クラウンメロンの中にケーキ パティスリー季季(袋井市)【静岡ものづくり最前線】
遠州地方が誇る特産品クラウンメロンを丸ごと使用したぜいたくなスイーツ。メロンそのものの外観に、中身は果肉とスポンジ、生クリーム、季節の果物で層を重ねた。素材の味を生かした逸品は、高貴な香りと甘みが口中に広がるという。 地元特産を生かした看板商品の開発を検討していた洋菓子店「パティスリー季季」の渡辺有希子オーナーが、なじみの客の要望を受けて開発した。切り分けるとケーキが出てくる見た目のインパクトも特徴の一つだ。 注文の都度、メロンを仕入れて追熟させ、一玉一玉丹精込めて作る。誕生日ケーキや贈答品などとして毎月注文があるという。今年3月には袋井商工会議所推奨品プレミアムの認定を受けた。今後、市
-
シラスの乳酸菌を使った「静岡チーズ」 うしづまチーズ工場(静岡市葵区) 乳酸菌まで“純地元産”【静岡ものづくり最前線】
牛乳を発酵させる乳酸菌を駿河湾でとれたシラスから採取し、全ての原材料を“純静岡産”で賄った。きめ細かなミルクの味を感じられるシンプルな味わいに仕上げ、パンに塗ったり和食に合わせたりと多彩な食べ方を楽しめる。 県工業技術研究所、東海大との共同開発。シラスから抽出した乳酸菌を培地で増殖させ、牛乳に混ぜて発酵させる。3年前から開発を始め、30度の温度下で活発に動き、24時間でpHを下げて牛乳を固める―など乳酸菌の適性について検査を続けてきた。候補に挙げた80株のうち、シラスの乳酸菌がチーズ製造に最適との結果になった。 松下正明社長(48)によると、全国に数あるご当地チー
-
マグロ肥料おしゃれに 家庭菜園用肥料「つなごえ」 伊豆川飼料【静岡ものづくり最前線】
アミノ酸が豊富に含まれることから、「高級品」として扱われることもあるマグロの廃棄部分を使った肥料を、家庭菜園向けに小口で売り出した。現在は自社のECサイトでのみ販売するが、ホームセンター向けにも売り出す計画がある。 静岡県のツナ缶の生産量は全国の97%を占める。清水港周辺ではツナ缶の製造工場が多くあり、マグロの加工残さを利用した肥料は、山間部のミカンや茶農家が伝統的に利用してきた。ただ、近年は解体したマグロを輸入する業者も多く、資源を無駄にしない好循環が崩れつつある。 「『こんなにおいしいトマトは食べたことがない』と言われるほど良い農作物ができる」と胸を張るのは、3代目で取締役の伊豆川剛
-
ガスボンベ再利用のアウトドア用品 沼津高圧ガス産業(清水町)「丈夫さ」高い付加価値【静岡ものづくり最前線】
一定年数を超えると、法定検査の期間が短くなることもあり、使用されなくなるケースが多いLPガスボンベ。スクラップ業者に引き渡している廃棄ボンベをかまどや薫製機、まきストーブなどに生まれ変わらせ、付加価値の高い「リユース」を実現した。 高圧ガスを充てんするため、もともと強度や耐久性は折り紙付き。更新廃棄で劣化はなく、性能にも問題はない。清水町の共同開発事業支援補助金を受け、製造は隣接する金属加工の高田産業に依頼した。容量5~50キロのボンベを使い、希望に応じてさまざまな大きさに加工する。 2月には、同町商工会が優れた地元の新製品を選ぶ「柿田川こだわりの逸品推奨品」に認定された。担当の山本文昭
-
納豆「海の賜(たまもの)」 まるさ食品(伊東市)臭み抑え 食べやすく【静岡ものづくり最前線】
伊東で納豆作りを続ける同社の看板商品の一つ。地元の赤沢沖の海底800メートルからくみ上げた海洋深層水を使って加工し、納豆が苦手な人でも食べやすい一品が好評を得ている。 原料には北海道産のすずまる大豆を使用する。収量が多く栽培しやすい品種への切り替えが進み、「年々生産量が減ってきている貴重品」(斎藤巨明社長)だ。超軟水の海洋深層水は大豆に浸透しやすい。この水に漬けることであっさりとした味わいに仕上がり、納豆特有の臭みが抑えられるという。 商品はこれまで全国納豆鑑評会の小粒・極小粒部門で3度、賞を受けた。市内のスーパーやJA直売所で販売している。 1952年、伊東駅近くで創業した同社。水に
-
お茶廃材原料のプラ製品 ダイシン(牧之原市) 日用品も環境に優しく
持続可能な開発目標(SDGs)の推進で環境に配慮した企業努力が求められる中、茶の製造過程で生まれる廃材を原料に含んだバイオマスプラスチック製の日用品を生み出した。自動車部品の製造や組み立てが本業だが、業界ニーズの変化を見据え、循環型社会に適応するノウハウ蓄積も狙いだ。 コンセプトに「住みよい地球づくり」を掲げた事業の展開を考えたとき、県内有数の茶どころ牧之原市に本社を構える企業として、茶を活用した製品を作り上げることを一つの地域貢献と捉えた。バイオマス樹脂を生み出す特殊技術を持つ企業と連携し、茶製造時に工場内に舞う粉状の茶を活用したチップを開発。自社の成形技術を生かし、製品第1号として石油
-
富士山嶺クラフトコーラ Agrinos(アグリノス)(川根本町) 地元ユズ無駄なく使用【静岡ものづくり最前線】
コーラの実やカルダモン、シナモンなどのスパイスと自社農園で栽培したユズを原料に仕上げたクラフトコーラ。かんきつ系の鼻に抜ける爽快感と、ユズの酸味を感じる独特の後味が特徴だ。コーラと原液シロップの2種類で販売し、シロップは炭酸水のほかウイスキーや牛乳で割ってもおいしく味わえる。 川根本町奥泉の耕作放棄茶園を整備し、ユズやライム、ジャバラなどを栽培している。ユズの木は約2千本、生産は8割を占める。地元産品をPRするため、食品加工や流通販売も手がけ、6次産業化に力を注いでいる。 クラフトコーラを製造する神奈川県のメーカーと初めてコラボした。地元食材を使った商品の販売を通して地域活性化に貢献する
-
無添加の復刻ベーコン 安愚楽(浜松市北区) うまみ凝縮「秘伝」製法【静岡ものづくり最前線】
30年近く地域住民に親しまれてきた居酒屋が開発した、浜松産の豚を使用した体に優しい無添加の食品。店舗入り口にショーケースを設置し、4月から販売を開始する。「文明開花」と名付けたシリーズ商品として売り出す。 親会社の食肉卸売業サンボク(浜松市北区)が約40年前に生産していて、継承されずに途絶えた秘伝のレシピの復刻を目指したのが開発のきっかけ。当時を知る従業員の協力が得られたことで約2年前に着手した。店舗内の倉庫を燻製(くんせい)工房に改装し、レシピに改良を加えて新たな商品として生まれ変わらせた。 独自に配合したスパイスを肉に直接すり込む乾塩法で作られたベーコンは、余分な水分を与えないことで
-
ポータブル鉄板 梅沢鋳工(富士市) 鋳物の風格、本格焼き肉【静岡ものづくり最前線】
鋳造メーカーの熱意を込めた焼き肉用鉄板。加熱したら冷めにくい鋳物の特性を生かし、小型ながら本格的な焼き肉を堪能できる。 産業用機械を構成する鋳物部品の老舗。アウトドア好きの社員が社内にあった鉄板で試作したことがきっかけだ。「良い物ができそうなので商品化を」と梅沢伸英社長も初めてのBtoCに乗り気になった。 安定しない炭火などからも熱が均一に伝わり、厚いステーキも一気に焼ける。ざらざらした表層には食材が付きにくく、さびにくさから手入れも簡単だ。 一般的なキャンプ用のサイズでは重くなり過ぎることから、カセットこんろや七輪向けの小型に。五徳の形を選ばない滑り止めが裏面に付き、こんろの上でぐら
-
ニューサマーゼリー&シャーベット 花月製菓(東伊豆町) 和菓子職人の技を海外へ【静岡ものづくり最前線】
爽快な香りとさっぱりした味わいが人気のニューサマーオレンジ。東伊豆町の特産として知られるかんきつをゼリーに仕上げた。町を代表する銘菓の製造技術を国外にも伝承している。 あんこ商品が主力だったため夏季の売り上げに苦戦。特産品による菓子開発を目指し、製造している。飲料の製造時に余剰したオレンジの皮を買い取って使用。女性の購買意欲を高めようと、魚由来のコラーゲンも配合した。 冷凍しシャーベット状にしての賞味も勧めている。韓国済州島で洗剤の製造販売を手がける企業の関係者が町内へ来訪時、その味わいに感動し、製造技術の伝承を請うてきたという。内山欣洋社長(60)も現地に出向いて指導していた矢先、新型
-
瓦素材の女性向け小物 長沢瓦商店(静岡市清水区) 和の質感で生活豊かに【静岡ものづくり最前線】
瓦屋根の施工業者が、瓦と同じ素材と製法でアクセサリーとアロマストーンを開発した。自社で製造販売する初の一般小売り向け商材で、和の風合いを生かして女性をターゲットに瓦の新たな魅力を発信する。 アクセサリーは屋根瓦をモチーフにしたイヤリングやピアスなど約30点。窯を密閉して焼き上げる際に付く「いぶし銀」の色合いが特徴。アロマストーンは、鬼瓦に使われるキクとボタンの計2種類の形を用意。瓦自体が吸水性に優れることから、アロマがゆっくりと染み込み、香りが長時間持続するという。 素材は地元の静岡市清水区を流れる巴川流域の土を使用する。金属のヘラで表面を繰り返しなでて磨くことで、光沢を出した。自社のE
-
テントサウナ エイケン工業(御前崎市)、静岡県内企業協業で商品化【静岡ものづくり最前線】
キャンプ愛好家らを中心に近年人気を集めている「テントサウナ」。国内で流通する製品のほとんどが海外製の中、静岡県内企業との協業で商品化した。本業は自動車用のオイルフィルター製造。電気自動車(EV)の普及など自動車業界の変革を見据え、新事業での収益獲得を図る。 テント内部を温めるサウナストーン(石)は、「大沢石」と呼ばれる溶岩石を三島市から調達。耐水性、耐熱性に優れた材質のテントを静岡市清水区の専門店が製作する。ステンレス製のストーブは磐田市の板金加工会社と試行錯誤し、石を載せる板を厚くして耐久性を高めた。農業用ビニールハウスと同様のパイプを骨組みに使用し、幅2メートル、奥行き2・4メートル、
-
十丁十豆(じゅっちょうとまめ) 橋山食品(掛川市) シリーズ健康増進の需要に対応【静岡ものづくり最前線】
厳選した国産大豆を使い、濃厚な素材本来の風味を堪能できる自社商品を開発した。主にスーパーマーケット向けに大豆加工食品を納品してきたが、健康志向の高まりを販路多様化の好機と捉えた。自社商品のシリーズ化を進めて、個人消費者向け事業への本格参入を目指している。 仕入れ時期によって変化する大豆の個性に着眼し「十人十色」をもじって名付けた。豆腐の豆乳濃度は13%以上。舌の上にまろやかな甘みとこくが広がる。油揚げやがんもどき、豆乳など派生商品もそろえ、フィルムや容器のコストは最低限に抑えた。 開発の背景には、治療よりも予防を重視して健康増進を図ろうとする消費者意識の広がりがある。6代目橋山豪人さん(
-
スキンケアマスク キコーコーポレーション(三島市) 糸の美容液、瞬時に浸透【静岡ものづくり最前線】
200層にも重ねた美容成分ヒアルロン酸の細い糸が、水にぬらすと瞬時に溶け出す。顔全体に無駄なく均一に美容液が広がり、従来のように肌に張ったまま10~15分程度の待ち時間もない。老化を防ぐとされる成分「ニコチンアミドモノヌクレオチド」(NMN)も配合した。 電極を利用してヒアルロン酸の美容液を空中に飛ばす「電界紡糸」の技術で極細の糸を作り、メッシュに吹き付けてマスクを開発した。ヒアルロン酸は浸透しやすいよう低分子に切断し、水でぬらした顔に張ると成分がわずか1秒で溶け出して肌に染み込む。まぶたの集中ケアも可能で、顔からメッシュをはがした後は何もする必要はないという。 13年間にわたり研究開発
-
郷土料理ヒントに「森島おはぎ」 食感に米屋のこだわり 森島米店(伊豆市)【静岡ものづくり最前線】
伊豆市の天城湯ケ島地区に伝わり、文豪の井上靖も愛したとされる「塩おはぎ」をヒントに開発した。米店としてもち米の調理方法にこだわり、粒をしっかりと残して米を食べている食感を得られるようにした。 開発のきっかけは新型コロナウイルスの感染拡大。団体活動やスポーツイベント向けに提供していた主力の仕出し弁当事業の需要が激減した。数百個単位の注文が入っていたこともあり売り上げはほぼ半減した。 苦境を乗り越えようと新商品の検討を始め、森嶋昭仁代表(43)が「米屋だから米をおいしく食べてもらいたい」との思いからおはぎの開発を思い付いた。全国各地の繁盛店を訪れ、販売ノウハウやブランディングを学んだ。構想開
-
顆粒オブラート「とろみの精」 協和食品工業(静岡市駿河区) 料理など用途拡大提案【静岡ものづくり最前線】
服薬時や菓子のべたつき防止に使われるオブラートを顆粒(かりゅう)に加工し、料理のとろみ付けなどに使えるようにした。片栗粉のように事前に水で溶いて熱した料理に加える必要がなく、常温でもふりかけて1分ほど混ぜるだけでとろみが生じる。 サツマイモやジャガイモのでんぷんをアルファ化して製造するオブラート。近年はカプセル薬が普及したほか、菓子の包装も改良が進んだことで需要は減少の一途をたどる。かつて全国に200社を数えたオブラートメーカーも、現在は4社しかない。安定的な需要を掘り起こすには、従来と異なる用途の提案が急務との危機感が開発のきっかけという。 オブラートを粉末にしただけと思われがちだが、
-
くるくるフラッグ エル・ティー・シー(磐田市) 応援を自由にデザイン【静岡ものづくり最前線】
スポーツ応援やイベントでの利用を想定した手持ちバナー。注文されたデザインを印刷して販売する。両端の取っ手を引っ張るとバナーが広がり、離すと丸まってコンパクトになる。商標登録した。 縦24センチ、横70センチのバナーは、PET(ポリエチレンテレフタレート)製で防水性に優れる。張力が異なる2枚のPETシートを貼り合わせることで、自然に丸まるようになっている。商品ホームページで、注文者が文字や色、写真などを自由にデザインできる。1枚から注文可能。1枚注文の場合は2530円。100枚以上を注文すると半額以下になる。 プロスポーツや部活動、コンサートなどの応援グッズとして売り込んでいる。これまでに
-
2脚型で安定性実現 スマホスタンド「ドコス」 リキュアライズ(富士宮市)【静岡ものづくり最前線】
スマートフォンに装着する2脚型のスタンドを開発した。代表の石川弘紀さんはIT企業でシステムエンジニアとして働く傍らアイデア商品の開発に挑んでいる。2脚型スタンドは実用新案技術評価「6」を取得。これまでにない2脚型を採用し、置きたい場所に置きたい角度で安定するスタンドを実現した。 開発のきっかけはスマホやスタンドに自身が感じていた不便さ。「満足できるスタンドが見つからなくて、自分で作ってみようと思った」と石川さん。2脚型の着想は植木職人の三脚を偶然見かけたことがきっかけ。安定性が確保できる3点支持をスタンドに応用しようと、自身ですぐに試作に取りかかった。 「知的財産権が無いと個人は太刀打ち
-
温泉排水を有効活用 排熱回収ヒートポンプシステム 平和エアテック(熱海市)【静岡ものづくり最前線】
温泉などから出る排水の熱を取り出して給湯に活用するシステム。従来は捨てられていた温泉地の“未利用エネルギー”を有効活用して、ボイラーに使われてきた化石燃料や事業所のコストの削減を可能にする。 宿泊施設などから出る排水をいったんタンクにためて、採熱用熱交換器で熱を回収し、ヒートポンプを通じて60度程度の湯を供給する。 温泉地の熱海市は、宿泊施設などから大量に湯が排出される。そのため、下水の温度が25度前後と他都市より高く、熱交換の効率化が図りやすい。 ヒートポンプは電気を使用するが、ボイラーに用いる化石燃料よりコスト削減効果は大きい。二酸化炭素(CO2)排出量も大
-
ジムニールーフテント カマド(御殿場市) 屋根と一体、コンパクト【静岡ものづくり最前線】
軽自動車、小型車「ジムニー」専用のルーフテント。広げると長さ2メートル10センチ、高さ96センチ、幅1メートル12センチになり、2人が横になれる。屋根の中に格納でき、純正の屋根よりわずか13センチ車高が高いだけ。ベースキャリアに取り付ける一般的なルーフテントに比べてコンパクトかつ軽量で、走行性能への影響が小さい。 屋根との接続部4カ所のロックを解除し油圧ダンパーを上げ、後部の床を広げて開設する。屋根の立て掛けとマットを敷く時間を含めても1分程度で完了する。ウエットスーツと同じネオプレーンの生地は耐熱性が高く温かい。風や光を通しにくく防音にも優れる。 2006年に立ち上げたジムニー専門店「
-
国産うなぎの炊き込みごはんの素 うなぎの井口 ウナギ食を若年層へ訴求【静岡ものづくり最前線】
地場の名産品として知られるウナギを、炊き込みご飯で気軽に食べられるよう製品化した。中高年に比べてウナギを食べる習慣の少ない若年層や忙しい共働き世帯へ訴求する。新型コロナウイルス禍での販売開始となったこともあり、移動制限の中での自宅用や贈答用としても好評という。 浜名湖産を中心とした国産ウナギで、身や皮が固く、かば焼きとしては販売できない規格外品を刻み、100度超の熱を加えて濃いめの味付けにした。さらに焦げないように糖度を調整したたれとともにパックに詰めた。内容量220グラム、税込み1580円。1本2千円以上が相場のかば焼きに比べて安価にウナギを味わえる。井口恵丞社長は「若い世代がウナギの食
-
ほととぎす漬 おもひで横丁藤枝市場(藤枝市) 武士の涙誘うほど辛い“幻の漬物”【ものづくり最前線】
江戸時代の東海道藤枝宿で親しまれていた“幻の漬物”を復活させた。奈良漬にした白ウリに和がらしを塗り、シソの葉で巻いた料理。紫色の外見とピリリとくる刺激的な辛さが特徴で、酒のつまみやお茶漬けの具として味わう。 寺川義則取締役店長によると、旧藤枝宿に軒を連ねていた一膳飯屋のうちの一軒である「東屋(あずまや)」が、ほととぎす漬を提供していたという。名付けの親は東屋で漬物入りの茶漬けを食べた武士。漬物の涙を誘うほどの辛さと、ホトトギスの名所の「木枯ノ森(こがらしのもり)」(静岡市葵区)で詠まれた短歌の一節「ほととぎす 聞くたびごとに 涙こぼるる」をかけたとされる。 その後
-
ソフトめん 羽山商店(焼津市) 手間かけた「給食の味」【ものづくり最前線】
1960年代後半ごろから「ソフトめん」を製造し、焼津市内の小中学校に届けている。20年ほど前からは店頭販売も手がけ、子育て世代を中心に懐かしい味を買い求める客が店を訪れる。 学校給食用に提供するのは1日3千食分ほど。羽山義孝社長(62)ら従業員が学校の給食準備に間に合うよう午前4時ごろから作業に取りかかる。強力粉と水、塩を機械に入れてから、練る、伸ばす、ゆでるといった工程のほとんどが手作業。羽山社長は「手間をかけて、おいしくてよいものを届けたい」と語る。 ゆであがった麺は「蒸熱殺菌庫」と呼ばれる機械に入れ、80~90度で15分間の殺菌処理を施す。この工程を経ることで、麺の芯まで水分が浸透
-
斜面の達人 テックマン(袋井市) 草刈りをスムーズに【ものづくり最前線】
アルミ合金製の本体に小型車輪を左右に配置した。アタッチメントを草刈り機のシャフトに取り付けることで刃と地面を平行に保ち、手押し感覚でのスムーズな横移動を可能にした。5、6キロの草刈り機を担いで振り回す必要もなくなり、除草作業の負担の大幅な軽減につなげた。 商品名の通り、傾斜での作業も車輪が地面に即応し、楽な体勢で行える。短い草から丈の高い草までスムーズに刈り取れる。効率性も向上し、作業時間を短縮した。今年8月から直販のみで販売を行っているが、既に30人以上が使用していて、好評を得ているという。 小野田清代表(78)が、知人の農家から草刈り作業は前かがみなど無理な姿勢で行うことも多く、体へ
-
ファイヤートング 寺脇精工(湖西市) 消費者目線で使用感探求【ものづくり最前線】
自動車部品の加工を長年手がけてきた湖西市の町工場が火ばさみ「ファイヤートング」を開発した。消費者目線で使いやすさを探求し、随所にこだわりをちりばめた。 同社初のBtoC製品。寺脇精二社長(72)は新商品開発に、趣味のアウトドアの経験を生かした。市販のU字形のトングは重さに弱く、まきなど大きめの物をつかむと変形してしまう。一方、ファイヤートングはX字形の鉄製で、ギザギザした先端部分で細かい物を「つまみ」、中央の平たい部分で大きい物を「つかむ」ことができる仕様だ。 長さ47センチ、重さ360グラム。ばねを採用したことで軽い握りでも開閉を可能にした。グリップ部分は木材を火であぶった後、手になじ
-
手元供養向け小型仏壇 藤原木工(静岡市駿河区) 暮らしになじむ仏具【ものづくり最前線】
木製の土台に位牌(いはい)を安置し、LED電球で照らす。草花などの刺しゅう模様のレース生地を、塩化ビニール素材で挟み込むことで外側の強度を高めた。 戦後創業の家具メーカー。当初はドレッサー製造を主な生業としていたが、ベッドやソファ、ガラステーブルなど生活様式の変化に対応した家具づくりに取り組んできた。近年はOEM(相手先ブランドによる生産)での家具調仏壇も手掛ける。 マンション世帯の増加や核家族化の進行に伴い、広いスペースが必要となる大型の仏壇需要は減退していて、購入しない世帯も多い。一方で、遺骨の一部を身近な場所に置く「手元供養」の習慣は広まりつつあり、現代インテリアになじむ仏具の姿を
-
孤独死防止・見守りシステム 複数人の利用を可能に エスト(浜松市西区)【静岡ものづくり最前線】
1人暮らしの高齢者が増加する中、手間や負担を省きながら、複数人の利用を可能にした「孤独死防止・見守りシステム」を開発し、20日に発売した。 人の動きと明るさに対応する二つのセンサーが、利用者を感知する。設置は本機をコンセントに差し込み、ベッドやトイレなど生活動線に向けるだけ。管理者が任意に設置した一定時間内に利用者を感知しなかった場合、合成音声による電話や無料通信アプリLINE(ライン)などが管理者に届く仕組み。 Wi―Fi経由でのインターネット接続は親機1台だけ。そこから離れた場所に置いた子機(10台まで)は無線でつながってネットワークを形成する。被災者や高齢者向けの賃貸住宅など、地域
-
キスとハモの揚げはんぺん 魚格出口鮮魚店(静岡市清水区) 冷めても柔らかな食感【静岡ものづくり最前線】
静岡市清水区の古刹(こさつ)として知られる清見寺のすぐ前にある、家族経営の小さな魚店のはんぺんが評判を呼び、遠方からの客を引き付けている。 もともとは30年以上前に近くに出店した大型店舗の鮮魚コーナーに対抗するため、先代が試行錯誤の末に開発したものだ。1年半かけて鮮魚を求めに来た客に味見をしてもらい、ようやく満足いく商品になった。 材料はニギスと呼ばれる深海魚と肉厚の駿河湾産ハモ。タマネギのみじん切りやオリジナルの調味料を加え、一枚一枚手作りで成形し、揚げる。厚さ1センチ、縦10センチ、横5センチ程度だが、全て大きさや形が微妙に異なる。常連からは「そこがいい」とほめられる。 学生が店頭
-
介護現場の臭い軽減 非接触型「おむつごみ箱」開発 サンリッチ三島【静岡ものづくり最前線】
介護現場で欠かせないおむつ交換。1人につき1日10回を超すケースもある。おむつの処理で発生する臭いを抑えて施設内の快適な環境を維持するとともに、介護従事者の負担と不快感を軽減しようと開発した。 縦40センチ、横58センチ、高さ72センチのキャスター付き移動箱。ベッドで交換したおむつを一定量ため、処分場まで運ぶのに利用する。 主力材には消臭機能の付いた合板を使用。収容量が一目で分かるよう上部の一部に透明素材を使い、ごみ袋を広げるフックや袋の落下を防ぐ金具を取り付けるなど、利便性を考慮して細部にまでこだわった。ふたはセンサーによる非接触型の自動開閉とし、感染症防止対策にもつなげる。 運営施
-
イカの吸盤取らなイカ!? 肴屋大ちゃん(伊東市) 短時間で簡単に除去【静岡ものづくり最前線】
通常は包丁で切り取ったり、こそぎ落としたりと手間の掛かるイカの吸盤取り。食材の捨てられる部分を減らし、おいしく食べてもらいたいとの思いのもと、簡単に取り除くことができる画期的な調理器具を生み出した。 商品化したのは、昔からものづくりに慣れ親しんでいるという山本大輔店主(46)。ステンレス製の器具の先端に0・8ミリのスリットを入れ、イカのげその吸盤をスリット部分に滑り込ませて動かすことで、固くて食感が悪い吸盤のリングを除去する。包丁を使った場合に比べ、大幅に時間が短縮できる。 いくつもの試作品を自作して改良を重ね、理想の形状にたどり着いた。2021年7月に特許を取得。富士市の金属加工会社で
-
アロマ専用茶葉「ちゃろま」 お茶のあおしま(島田市) 癒やしの香り引き出す【静岡ものづくり最前線】
製茶問屋として緑茶の需要減に危機感を抱く中、静岡県内では身近な茶の「香り」に着目し、緑茶を飲まない世代へのアピールにつなげようと開発した。専用の茶香炉は地元の陶芸工房「ささやき窯 楽友」が手掛ける一点物。贈り物や店舗用として人気を集め、島田市が認定する「島田の逸品」にも選ばれている。 青島光俊社長が毎シーズン厳選した県内産の一番茶のみを使い、熱の伝わり方や香りの持続力を考えた独自の形状に加工している。アロマオイルのように禁忌の心配がなく、リラックス効果に加えて消臭効果もあるのがポイント。茶香炉は茶葉を置く皿の角度や厚みを追求した。 間接照明としても利用でき、家庭で楽しむだけでなく呉服店や
-
大径木対応製材機 フジイチ(浜松市天竜区) 芯去り材注力、効率向上【静岡ものづくり最前線】
昨年冬に導入した新製材機で大径木の加工効率を上げ、天然乾燥の芯去り材の増産に力を入れている。芯を除き製材することで、1本の木から2本の柱や梁(はり)材が取れる。新たな木材利用を提案し、ウッドショックや産地の課題にも対応できる林業経営を進めている。 天竜では標準伐期を過ぎた人工林が8割を超え、木材の大径化が進む。ただ、直径40センチを超える木材の需要は乏しく、製材の工夫と新たな商品開発が業界の課題となっている。 植林から製材までを手掛ける強みを生かし、地域林業の課題解決に向けた取り組みを主導する同社。石野秀一社長は「これからも木はどんどん太くなる。山に合わせた製材をしていかなくては」と語る