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「冬の訓練未実施」69% 日本海溝地震の津波被害想定108市町村 避難所運営、防寒対策に遅れ

 日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震で津波被害が想定される北海道から千葉県までの108市町村のうち、冬に避難所の運営訓練を実施したことがない自治体が69%を占めることが18日、共同通信の調査で分かった。1月の能登半島地震では避難所の過酷な寒さが指摘され、多数が身を寄せる避難所の防寒が急務だが、対策が遅れがちな実情が浮き彫りになった。

 1995年の阪神大震災や2011年の東日本大震災など近年の災害でも、寒さなどで体調を崩して亡くなる「災害関連死」が相次ぎ、冬の避難所対策が問われてきた。国による日本海溝地震の被害想定では、低体温症で死亡するリスクが高まる人が最大約4万2千人に上る。
 調査対象は、国が指定した津波避難対策特別強化地域の108市町村(1道6県)。能登半島地震より前の昨年11~12月に実施、全自治体から回答を得た。質問の前提となる冬の期間は、「津波防災の日」の11月5日や、東日本大震災が発生した3月11日前後に訓練をする自治体があることから11~3月とした。
 冬の避難所運営訓練を「実施したことがある」と答えたのは34自治体で全体の31%。「したことはないが、今後予定している」が44自治体、「したことはなく、今後も予定していない」が30自治体で、調査時点で未実施が7割近くに及んだ。
 未実施の理由を尋ねると、複数の自治体が「高齢者が多い」「体調を崩す人が出る」など参加者への考慮を挙げた。
 一方で、未実施の自治体も多くが訓練の必要性は認識していた。毛布や灯油ストーブなどの備蓄に努める自治体は多い。
 管内の避難所全てで暖房器具が整備されていると捉えているかを尋ねた質問では、57%に当たる62自治体が「捉えている」と回答。冬を想定し、避難所全てに定員分の災害用寝具を備えていると答えたのは29%に当たる31自治体だった。
 国への要望は、防寒用の備蓄に対する財政支援や、避難所の冷暖房設置の補助などが挙がった。

 低体温症 寒さなどで熱が失われ、体の深部の温度が35度以下になった状態。激しい震えや意識障害などの症状が出て、放置すれば死亡の恐れがある。体温の調節機能が衰えた高齢者が特に発症しやすい。東日本大震災では津波で体がぬれたことで低体温症になった人が多いとされる。能登半島地震でも、死者のうち32人の死因は低体温症や凍死だったことが警察の調査で判明している。

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