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プロ野球 ハラスメント騒動 特殊な上下関係 看過招く 根絶へ課題指摘する声

 プロ野球楽天でプレーした安楽智大投手(27)が後輩選手に対するハラスメント行為により自由契約となった。日本野球機構(NPB)をはじめ球界全体として根絶に取り組むというが、独特の体質を危ぶむ声がある。

 抵抗できず
 後輩選手が契約更改の席で球団に相談し、表面化した。球団による選手、スタッフらへのアンケートに、約10人が直接被害を受けたと回答。忘れ物をした際などに「罰金」として金銭を取り立て、食事の誘いを断ると深夜に電話をかけたことに加え、ロッカールームで逆立ちをさせて下半身を露出させて下腹部に靴下をかぶせる行為も確認された。プロ球界は過去にもチーム内での主力選手やコーチによる暴力行為が問題となったが、今回は極めて悪質で陰湿だ。
 企業などに助言する日本ハラスメント協会の村嵜要代表理事は、企業の中には「業績を上げるために(ハラスメントで個人を)攻め立てる。会社全体のやり方のようなものがある」と説明。プロ野球楽天を「直属の上司、部下の関係性でもないのに後輩が抵抗できない。特殊な状況」とみる。

 難しい問題
 高校、大学と上下関係に厳しい強豪野球部も多く、先輩と後輩の関係性を重視する文化が根付いている。7日に大阪市内で行われた日本プロ野球選手会の定期大会でも選手間で話し合われたが、会長を務める広島の会沢翼捕手は「難しい問題という話も出た」と言う。
 楽天の調査では安楽の行為を約40人が見たり聞いたりしたと回答した。ある球界関係者は、安楽の行為は「以前から有名だったが、周りが誰も注意できなかった」と語る。村嵜代表理事は「高校野球からの仲間内のノリみたいなものがあると思うが、プロに入っても垣根の切り替えができていない。一般企業に比べ、ハラスメントの意識、知識が乏しいと感じた」と問題点を挙げた。

 窓口設置へ
 プロ野球の榊原定征コミッショナーは「見過ごすことは許されません。より一層のコンプライアンス意識の向上を図ります」などとする談話を出した。ハラスメント行為の線引きを明確にするため、NPBは来春キャンプで全選手を対象に講習会を実施することを決定。各球団に複数の相談窓口を設け、訴えやすい環境も整える方針だ。
 村嵜代表理事はアンケートの定期的実施も必要といい「3カ月で(人間関係は)がらっと変わる。3カ月に1度のペースで実施すれば抑止力にもなる。対応のスキームをもう少し踏み込んでやった方がいい」と語った。

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