島田に開校「静岡県立ふじのくに国際高」どんなところ?
静岡県教委は2024年度、島田市の金谷高所在地に整備してきた新構想高校「静岡県立ふじのくに国際高」を開校しました。多様な生き方を尊重して生徒の個性を伸ばすことを重視した、通学時間帯や科目選択の自由度が高い「フレックスハイスクール」ーというのが特徴と謳われていますが、いったいどのような学校なのでしょうか。1ページにまとめました。
通学時間や科目選択、服装など自由 新入生「独自の学習時間つくりやすい」
通学時間帯や科目選択の自由度が高いフレックスハイスクール「静岡県立ふじのくに国際高」の開校・入学式が5日、島田市金谷根岸町の同校で開かれた。志太榛原、小笠地区などから92人が入学し、新たな一歩を踏み出した。
海外への進学を視野に入れ、独自の英語学習の時間をつくりやすい点に魅力を感じて入学したという袴田英昌さん(15)=磐田城山中卒=が新入生を代表して登壇。「私たちでなければつくれない学校をつくり上げていく」と宣誓した。
同高は目指す学校像として、スポーツや芸術など多彩な活動と学業との両立支援を掲げる。3月に閉校した金谷高の校舎を増改築して開校した。
生活スタイルに合わせて通学時間帯を朝昼夕から選ぶ「3部制」と、必修科目に加えて商業・家庭・体育・音楽など充実した専門科目を生徒が自由に選択できる「単位制」が特徴。学年区分、制服、部活がなく、アルバイトも可能など、学校生活全般の自由度も他高に比べて高い。
国際的な大学入学資格が得られる教育プログラム「国際バカロレア」については2026年度、県内の県立高として初の導入も目指し、希望者が受講できる仕組みとする予定。
〈2024.04.06 あなたの静岡新聞〉
海外大学の入学資格得られる「国際バカロレア」 県立高初の導入目指す
静岡県教委は22日の定例会で、海外の大学の入学資格を得られる国際的な教育プログラム「国際バカロレア(IB)」を巡り、県立高初の導入を目指す「関心校」として、島田市の金谷高所在地に整備予定の志榛地区新構想高を選んだ。同日、国際バカロレア機構(本部・ジュネーブ)に申請した。新構想高は2024年度に開校予定。IBの導入は26年度を目指し、教員養成や施設整備に取り組む。
学校全体で探究学習やグローバル教育を重視し、語学力や論理的思考力を育むIBの教育理念を組み込んでいく構想。募集定員は1学年4学級の160人程度を見込み、このうち10人程度がIBのプログラムを全て履修する。他の生徒も選択科目として一部の授業を受けられるようにする。
県教委は今後、教育環境の整備やIBに対応した教員研修の受講、カリキュラム編成など、認定への準備を進める。予定通りに進めば、現在の小学6年生が高校に進学するタイミングで新構想高にIBプログラムが導入される。
定例会で池上重弘教育長は「大胆な試みを展開する学校。従来の新構想高以上に意識的な広報戦略を取りたい」と意気込んだ。
〈2022.07.23 あなたの静岡新聞〉
静岡大とも教育連携協定 生徒の探究学習を後押し
2024年4月に開校予定で、国際的な教育プログラム「国際バカロレア」の県内公立校初の認定を目指す県立ふじのくに国際高(島田市金谷)について、県教委と静岡大は9日、教育連携に向けた協定を締結した。大学教員や学生による授業支援、生徒と学生の共同研究などに取り組み、同校の探究学習を後押しする。
協定締結により、専門分野を持つ大学教員や学生が同校の授業で指導したり、高校生と大学生が共同でフィールドワークを行ったりする。生徒の大学施設利用や、大学における国際バカロレア教育の調査研究も想定する。
静岡市駿河区の同大で行われた締結式で、池上重弘教育長と日詰一幸学長が協定書を交わした。日詰学長は学生と生徒の交流に期待し「県の教育の充実に取り組みたい」と歓迎。池上教育長は同校について「インクルーシブな学びの場になる。今後の社会の在り方を考えると重要」と期待を寄せた。
文部科学省によると、国際バカロレアの認定を受けている学校などは全国で207校(3月末現在)。県内には私立3校があるという。
〈2023.06.10 あなたの静岡新聞〉
「個性に応じた学びの選択肢を」 県教委、多様な環境整備に力
JR富士駅近くの住宅地にある適応支援教室「アルファー」。2月上旬、富士市在住の稲村翔太さん(17)は総合の授業に取り組んでいた。仲間と交わす会話に、思わず笑みがこぼれる。アルファーは発達障害などの診断を受けた富士、富士宮市の不登校の小中高生ら約100人を受け入れる民間の教室。稲村さんは小学2年から通っている。
不登校の子どもは全国的に増え、静岡県内でも年々増加している。県教委義務教育課によると、県内公立校の2022年度の不登校は、小中学生9447人。16年度と比べて2倍以上に増え、過去最多を更新し続けている。
県教委は24年度、フリースクールの支援制度の創設に踏み切る。3千万円の予算を確保し、1団体につき100万円を上限に運営費の2分の1を補助する。昨年9月、県内24のフリースクールや市町教委、地域の教育支援センターの関係者が集う会合を初めて開いた。多様な学びの場と居場所の拡充には、学校とフリースクールが連携を深める必要がある。初会合では、利用者数の見込みがたちにくいフリースクールの性質から、経営の不安定さを課題に挙げる意見があった。
アルファーを運営する一般社団法人サン・ビレッジは、4月に新たにフリースクールを開設する予定だ。統括を務める稲垣孝一さん(26)は「開設に向けた準備や経営基盤がないと運営は厳しい」と業界の実情を吐露し、県教委の支援に関心を寄せる。
県教委はこのほか不登校への対応として、インターネット上の仮想空間「メタバース」を活用した「バーチャルスクール」も計画し、予算2千万円を充てた。
県教委は近年、多様な教育の機会を選択できる環境整備を加速させている。昨年4月に県内唯一の夜間中学、県立ふじのくに中(磐田、三島市)を開校した。不登校で形式的に中学を卒業した人や、母国で義務教育を修了せず来日した外国人たちが通う。
今年4月には島田市に単位制定時制の県立ふじのくに国際高が開校する。生徒本人が時間割を組み、学外の活動との両立を推奨する。海外の大学も受験しやすくなるよう、国際的教育プログラム「国際バカロレア」の認定も目指す。
県教委の塩崎克幸教育監(64)は、人格を形成したり社会ルールを学んだりする上で学校は重要な役割を果たすとしつつ、「今では個性に応じた学びの選択肢が広がっている。どこで学んだとしても、最終的には社会的自立につなげる視点が重要」と指摘した。
(政治部・大沼雄大)
〈2024.02.15 あなたの静岡新聞〉