知っとこ 旬な話題を深堀り、分かりやすく。静岡の今がよく見えてきます

⚾プロ野球開幕 注目の静岡県勢選手をピックアップ 

 プロ野球が29日、セ、パ両リーグ計6試合が行われて開幕します。セ・リーグは昨季、38年ぶりの日本一を果たした阪神、パ・リーグは4連覇を狙うオリックスを軸に、優勝争いが繰り広げられそうです。阪神の岩崎優投手(清水東高出)や、オリックスの紅林弘太郎内野手(駿河総合高出)など、静岡県勢選手の活躍に期待がかかります。注目選手をピックアップします。

静岡県関係選手32人 阪神、オリックス軸に激しい優勝争い

 プロ野球は29日、セ、パ両リーグが同時開幕する。レギュラーシーズンはともに143試合。セ・リーグは昨季、38年ぶりの日本一に輝いた阪神、パ・リーグは4連覇を狙うオリックスを軸に、激しい優勝争いが繰り広げられそうだ。

photo03
(左から)阪神・岩崎優、オリックス・紅林弘太郎、ヤクルト・小沢怜史

 静岡県関係選手は32人が登録されている。昨季35セーブを記録し、セーブ王に輝いた阪神の岩崎優投手(清水東高出)は今季も抑えの有力候補に挙がる。オリックスの紅林弘太郎内野手(駿河総合高出)は3年連続で日本シリーズにスタメン出場し、初のベストナインを獲得するなど実績を積み上げている。
 昨季29試合に登板し6勝を挙げたヤクルトの小沢怜史投手(日大三島高出)は開幕ローテーション入りが見えてきた。楽天3年目の藤井聖投手(富士市立高出)も開幕ローテ入りへ、アピールしている。中日2年目の村松開人内野手(静岡高出)は、オープン戦でも打撃が好調でスタメン入りに値する結果を残している。
 楽天の鈴木大地内野手(小山町出身)は通算1500安打まであと41本に迫っている。昨季は5勝にとどまったDeNAの大貫晋一投手(桐陽高出)は巻き返しを狙う。昨年末の現役ドラフトで中日からオリックスに移籍した鈴木博志投手(磐田東高出、ヤマハ出身)は新天地での復活を期す。楽天9年目の堀内謙伍捕手(静岡高出)は1軍定着へ勝負の年を迎える。
 ヤクルトの鈴木叶捕手(常葉大菊川高)、DeNAの石田裕太郎投手(静清高出)ら新人も経験を積み、1軍デビューを目指す。

静岡県関係のプロ野球選手  (☆は新人、※は育成選手。氏名、位置、出身校もしくは県内社会人チームの順)
 セ・リーグ
 【阪神】
   岩崎優 投手 清水東高―国士舘大
  ※高橋遥人 投手 常葉橘高―亜大
  ※佐藤蓮 投手 飛龍高―上武大
 【広島】
  ☆赤塚健利 投手 中京学院大中京高―中京学院大、磐田市出身
   二俣翔一 内野手 磐田東高
   大盛穂 外野手 飛龍高―静岡産大
 ☆※杉田健 投手 日大三島高―日大国際
 ☆※佐藤啓介 内野手 中京大中京高―静岡大
 【DeNA】
   大貫晋一 投手 桐陽高―日体大
  ☆石田裕太郎 投手 静清高―中大
   高田琢登 投手 静岡商高
   森敬斗 内野手 桐蔭学園高、静岡市出身
 【巨人】
  ※加藤廉 内野手 島田工高―東海大海洋
 【ヤクルト】
   石山泰稚 投手 ヤマハ
   小沢怜史 投手 日大三島高
  ☆鈴木叶 捕手 常葉大菊川高
  ※フェリペ 捕手 御殿場西高
 【中日】
   村松開人 内野手 静岡高―明大

 パ・リーグ
 【オリックス】
   鈴木博志 投手 磐田東高―ヤマハ
   紅林弘太郎 内野手 駿河総合高
 【ロッテ】
   柿沼友哉 捕手 誠恵高―日大国際
  ※勝又琉偉 内野手 富士宮東高
 【ソフトバンク】
   杉山一樹 投手 駿河総合高
 【楽天】
   藤井聖 投手 富士市立高―東洋大
   堀内謙伍 捕手 静岡高
   鈴木大地 内野手 桐蔭学園高―東洋大、小山町出身
   前田銀治 外野手 三島南高
 【西武】
   平井克典 投手 飛龍高―愛知産大
   鈴木将平 外野手 静岡高
 ☆※奥村光一 外野手 東海大翔洋高―東海大
 【日本ハム】
   安西叶翔 投手 常葉大菊川高
   奈良間大己 内野手 常葉大菊川高―立正大

⚾岩崎優 「継続」が生んだストレート武器に 「アレ」再び

 ※2024年1月25日 静岡新聞【しずスポ】から。記事下に昨シーズンを振り返る動画もあります

自主トレでキャッチボールをする阪神・岩崎=草薙球場(写真部・二神亨)
自主トレでキャッチボールをする阪神・岩崎=草薙球場(写真部・二神亨)
 32歳にして、野球人生の充実期を迎えている。プロ野球・阪神の守護神として38年ぶりの日本一に貢献し、セーブ王を獲得した岩崎優投手(静岡市清水区出身、清水東高出)が地元・草薙球場を拠点に(1月)20日まで、自主トレーニングを行った。約2週間取り組んだのは「1年間“完走”できる体づくり」。今季、再びの「アレ」を目指してブルペン陣を引っ張る遅咲き左腕のピークは、まだ先にある。
 プロ11年目を迎えるベテランは「個人タイトルにこだわりはない」と言い切る。「ブルペン全体でレベルを上げたい」と自主トレに加わるチームの後輩に惜しみなく知識と経験を伝えている。そのうちの一人、22歳の左腕及川雅貴投手は「コントロールの良さ、プロで長くやるにはどうしたらいいのかを学んでいる」と参加理由を明かす。「(岩崎は)シャイとかポーカーフェースとか言われるけれど、そんなことなくて話しやすい。だから人が集まる」と、その人柄も慕っている。
 野球好きの父久志さん、ソフトボール選手だった母恭子さんのもと、4人兄弟の次男として育った。野球を本格的に始めたのは中学から。硬式のクラブチームではなく清水四中の軟式野球部だ。肩肘の酷使を心配した久志さんが「野球は体ができてからで十分」と兄弟に少年野球チームへの入団を認めなかった。岩崎は「中学に入ればできる。それまでは今できることをやればいい」と素直に受け入れ、小学校の6年間は水泳に打ち込んだ。
 高校、大学でも公式戦での目立った実績はなかったが、「常に先を見てやっていた」と焦りはなかった。岩崎といえば股関節の柔軟性を生かした下半身の粘りと、しなやかな腕の振りから繰り出される伸びのあるストレート。「一番の武器」と自認する投球フォームを固めたのはプロに入ってからと言う。大学までは体の力がなく完成形ではなかった。ただ、その間も「毎日シャドーピッチングを欠かず続けてきた」。
 決して野球エリートではなかったが、自らの努力で今の姿につなげた。「(置かれた環境に)文句を言うのはすごく簡単。目標があるなら今できることを継続してやっていくことで先が開ける」
 (運動部・結城啓子)
 いわざき・すぐる 1991年6月19日生まれ。清水東高、国士舘大を経て2013年ドラフト6位で阪神入り。21年の東京五輪に日本代表として出場し、金メダル獲得に貢献した。23年は湯浅京己投手の故障で5月から抑えを任され、35セーブを記録。初のセーブ王に輝いた。18年ぶりのセ・リーグ優勝、38年ぶりの日本一を決める試合でいずれも胴上げ投手となり、同期で23年7月に脳腫瘍で亡くなった横田慎太郎さんのユニホームを掲げて宙を舞った。185センチ、89キロ。

動 画

  • 岩崎優投手 23年シーズン振り返る

⚾紅林弘太郎 「侍ジャパン」デビュー ゆくゆくはメジャーも

 ※2024年3月21日 静岡新聞【しずスポ】から

地元で楽天とのオープン戦に出場したオリックス・紅林=草薙球場(写真部・小糸恵介)
地元で楽天とのオープン戦に出場したオリックス・紅林=草薙球場(写真部・小糸恵介)
 187センチの大型内野手として将来を嘱望されてきたプロ野球オリックスの紅林弘太郎(22)=駿河総合高出=が念願の日本代表、侍ジャパン入りを果たした。3年連続で日本シリーズにスタメン出場し、初のベストナインを獲得。球界をけん引する存在へ、成長を続ける若武者からこの先も目が離せない。
球界けん引へ 若武者成長中  今月6、7日に行われた欧州代表との強化試合で代表デビュー。第1戦の代表初打席で初安打、初打点を記録し三塁守備でも見せ場をつくった。第2戦は遊撃手を担い「(オリックス本拠地の)京セラドームだったので気負わずできた」。守備の名手、源田壮亮(西武)や史上最年少三冠王の村上宗隆(ヤクルト)、球界屈指の好打者近藤健介(ソフトバンク)とも交流。「バッティングのこと、普段の練習の意識などを聞いて本当にいい時間になった」という。
 一方で最も刺激を受けたのが「大学生」というのが紅林らしい。「(明大の)宗山(塁)君の守備がうますぎて。僕は多分負けていた。大学生が本当にすごかった」。トップ選手の仲間入りを果たしながらもプロ4年間の実績にあぐらをかくことなく、常に危機意識を持ち続けている。
 駿河総合高時代、紅林の将来性を見込んだ望月俊治監督(58)は多くの刺激を与えた。高1で社会人チームの練習に参加させたのもその一つ。紅林は「上のレベルとの力の差を肌で感じた」と振り返る。ただ、望月監督は社会人のコーチから「(卒業後)すぐにプロに入れてください」と助言されたという。
 同校OBの杉山一樹投手(26)のソフトバンク入り(2018年ドラフト2位)はプロを強く意識するきっかけとなった。母校を訪れた杉山がブルペンで投球する姿にひたすら部員が感嘆する中、紅林だけは「この球を打たなきゃプロで通用しないんですよね」と発奮材料に替えていた。
 オリックスから米大リーグへと旅立った吉田正尚外野手=レッドソックス=、山本由伸投手=ドジャース=がたどった道のりを身近で見てきた。「自分もゆくゆくは挑戦してみたい気持ちがある」。新たな一歩を踏み出す日が来るかもしれない。
 (運動部・結城啓子)
 くればやし・こうたろう 2002年2月7日生まれ。藤枝市出身。高3春にU―18(18歳以下)代表候補合宿に参加。19年のドラフト2位でオリックス入り。1年目は2軍で全86試合に出場し、20年11月3日の楽天戦で1軍に初昇格。初打席で初安打を放った。2年目から1軍に定着し3年連続で日本シリーズにスタメン出場。4年目の23年は127試合に出場し打率2割7分5厘。初のベストナインに輝き、日本代表にも初選出された。

⚾小沢怜史 投球の力感に手応え「体力と変化球の精度上げたい」

 ※2023年12月28日 静岡新聞から

今季、自己最多の6勝を挙げたヤクルト・小沢=神宮
今季、自己最多の6勝を挙げたヤクルト・小沢=神宮
 今季29試合に登板し6勝を挙げたヤクルトの小沢怜史投手(25)=三島市出身、日大三島高出=が(2023年12月)27日までに、静岡新聞社の取材に応じた。主に先発を任された今季。「1年間1軍を目標にしていたのでそこは達成できたかな」と振り返る。来季は先発なら2桁勝利、中継ぎなら50試合登板という目標を掲げた。
 手応えを感じたのは投球の力感。「8割ぐらいを意識してやってみて真っすぐは通用した」と話す。体力には自信があるが「投げる体力は別物」。登板の合間は疲労を取りつつ、パフォーマンスを維持するためのトレーニングに「絶妙なバランス」で取り組んでいたという。
 昨季、課題に挙げていたスライダーのスピードアップと新球種の習得も実現した。フォーク、スライダー、チェンジアップに加え8月ごろからカットボールを投げ始め、投球の幅が広がった。6月28日の巨人戦は七回途中降雨コールドで幸運な完封勝利が付いた。「先発する時はいつも完投を目指している。ただ、投げる体力と変化球の精度をもっと上げていかないと」と現状に満足はしていない。
 今季のヤクルトは打線がかみ合わず、僅差の試合が多かった。「1軍のしびれる試合を経験して得るものは多かった」。思い出すのは敗戦ばかりで、中でも脳裏に焼き付いているのが9月17日の巨人戦で丸佳浩、岡本和真に浴びた連続ホームラン。「岡本さんには真っすぐをしっかりはじかれたことがなかったので、コースというより強めに投げた。ちょっと甘めにいって打たれてしまった」
 2016年のドラフト2位でソフトバンクに入団。戦力外を経てヤクルト入りし、来季はプロ8年目を迎える。厳しい世界をたくましく生き抜いてきた右腕が常に口にするのは「安心していられる立場じゃない」。危機感で自身を追い込み、成長につなげている。
 (運動部・結城啓子)
地域再生大賞