静岡駅北口に再開発ビル「M20」完成 “おまち”の未来は?
静岡理工科大グループの学校や商業施設などが入居する再開発ビル「M20」が3月25日、静岡駅北口に完成しました。2030年には葵タワーと松坂屋静岡店の間に、商業施設やオフィスが入る地上110メートルの高層ビルも計画されています。静岡マルイ撤退から3年、街中のにぎわい創出に期待がかかります。
「M20」完成式 4月から学校入居、飲食店など営業
JR静岡駅北口で建設が進んでいた再開発ビル「M20」の竣工(しゅんこう)式が25日、同所で行われた。4月から学校法人静岡理工科大グループの学校が入居し、約800人の学生が通うほか、低層階では商業施設が営業する。県都の玄関口の新たなにぎわい拠点として期待される。
ビルの名称は所在地の「御幸町20番地」に由来し、一般公募から選ばれた。2020年9月に御幸町9番・伝馬町4番地区市街地再開発組合が設立され、22年6月に着工した。総事業費は約92億5千万円。
竣工式で再開発組合の植田聞滋理事長は「若者が行きあう新たな発見の場所、静岡を象徴する場所となることを目指す」とあいさつ。来賓の難波喬司市長は「大勢の人が通行する重要な地区。未来に希望を持てる静岡市の実現に向けて大きな力となる」と祝福した。
〈2024.3.26 あなたの静岡新聞〉
JR静岡駅北口前に110m高層ビル 2030年度完成予定
JR静岡駅北口前で計画が進む市街地再開発事業で、マンションや商業施設、オフィスなどが入る地上110メートルの高層ビルが建設されることが30日までに分かった。2030年度の完成に向け、24年中に都市計画決定や再開発組合設立などの手続きに入る。総事業費は現時点で270億円を見込み、国と静岡市が補助金を支出する。市は24年度当初予算案に関連費用約3億円を盛り込む予定。
実施主体は地権者12人による再開発準備組合で、野村不動産や旭化成レジデンスなどが事業協力者に名を連ねる。市によると、再開発事業の計画は15年ごろに浮上。新型コロナウイルス禍の影響などで思うように話が進まなかったが、今年1月に原案の縦覧が実施された。今後は6月に都市計画審議会での決定を経て10月に再開発組合が設立され、25年度以降に土地と既存建物の権利変換や解体、建設工事が始まる予定。
〈2024.1.31 あなたの静岡新聞〉
おまちの未来、若手が設計 地下街→吹き抜け空間/大型建屋→分けて更新 自由な発想で提言 静岡の建築事務所
“おまち”の未来デザインを大胆に描く-。企業組合針谷建築事務所(静岡市駿河区)の若手建築家が、JR静岡駅北側の静岡紺屋町・静岡呉服町の両名店街活性化に向けた提案をまとめた。老朽化した都市機能の改良に向けて地下街を立体的な吹き抜け空間に再生したり、大型建築物を段階的に建て替えたりする斬新な発想を提言している。
紺屋町は「ロードパーク」と題し、道路の歩行者天国化と地下街の再構築を提案する。車道スペースを取り払い、地下とつながりを持った吹き抜け空間を構築。光が差し込む地下空間が静岡を訪れる人々を迎えるイメージで、憩いの広場や劇場スペースも設ける。
呉服町は戦後に建てられた、約600メートルの通りに面した防火帯建築の再設計を柱とする。鉄筋コンクリート造りの建屋は築60余年を経て老朽化が進んでいるが、改修工事には多くの商店主の合意が必要だ。解決策を検討する中で、一棟の大型共同建築を複数の建屋に分けて更新していく手法にたどり着いた。商店街機能を保ちながら、解体と新築工事を徐々に進める。
同事務所は美術館や学校、医療施設などの設計を広く手がける。発想を持ち寄って企画を練る機会が人材育成につながると考え、都市計画づくりを重ねる。仲間と一緒に紺屋町の設計を担当した堀川佳奈さんは「通常業務の合間に発想を育んだ。まちづくりに関する発想を今後に生かしたい」と話す。
提案内容を紹介する動画は、同建築事務所ウェブサイトから閲覧できる。
〈2023.3.28 あなたの静岡新聞〉
【社説】静岡マルイ撤退 街なかの空洞化を防げ
JR静岡駅北口エリアに立地するファッションビル「静岡マルイ」が来年3月下旬に閉店することが明らかになった。静岡市中心市街地で、若者らのにぎわい創出の一翼を担っていた商業施設だけに撤退の影響が懸念される。官民一丸となり、街なかの空洞化を食い止めなければならない。
運営する丸井グループによると、ピーク時の1998年に約150億円の売り上げがあったが、近年は近隣大型商業施設との競合で収益が低迷。2020年3月期は、隣接する「静岡モディ」と合わせて前期比18・1%減の23億円にまで落ち込んでいた。来年4月以降は静岡モディに経営資源を集中し、収益力の改善を図るという。
周辺エリアは松坂屋、新静岡セノバ、静岡パルコ、東急スクエアの大型店がひしめくファッション激戦区だ。消費者を引き寄せるために定期的に繰り返すテナントの入れ替えや改装、バーゲンは消耗戦の様相を呈している。
ライバルは近隣の大型商業施設だけではない。
インターネットの通販サイトは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあって利用が拡大している。低価格に抑えた衣料品を大量に生産、販売する「ファストファッション」と呼ばれるブランドも人気を集め、街なかに限らず郊外の路面店やショッピングモールなどへの進出が相次ぐ。消費者の購買スタイルが大きく変わる中、市街地の大型店は、従来型のビジネスモデルからの変革が迫られている。
かつて、駅前商業エリアは周辺の中小小売店を含めて「共存共栄」の関係だった。消費者は電車、バスといった公共交通機関で繰り出し、街なかを回遊していろいろな店でショッピングを楽しむ―そんなスタイルが、くしの歯が欠けたようにシャッターが閉まったままの店が増え、全体の集客力が細る悪循環が各地で進行している。
静岡市では7月、駅前再開発ビルの核テナントだった県内最大規模の書店が閉店し、空き店舗のままになっている。撤退する静岡マルイの跡地利用も現時点で未定だ。商都の顔である中心市街地の大型店がいつまでも無人のままでは、まちのイメージ、集客力の低下が避けられない。まずは後継テナントの早い決定が待ち望まれる。
市街地の地盤沈下は、人口減少や若者の首都圏への流出など構造的な問題ものしかかる。人々が暮らしやすく、事業者がビジネスをしやすい環境をいかに整えるか、教育や文化、福祉といった政策も含め、駅前の魅力を高めるまちづくりを改めて考える時だ。