30年冬季五輪招致 時間稼ぎも逆風収まらず 札幌、IOCと揺らぐ蜜月【大型サイド】

 札幌市が目指す冬季五輪招致は前提としてきた2030年の実現が困難な情勢となった。国際オリンピック委員会(IOC)は開催地決定を延期する「時間稼ぎ」をしてまで、運営能力の高い札幌の選定へ注力してきたが、東京五輪・パラリンピックの汚職、談合事件による日本国内の逆風は収まらない。34年の開催を望む札幌経済界の意向もIOCを刺激したとみられ、蜜月とされた関係には揺らぎものぞく。

IOC理事会に出席したバッハ会長=2022年12月、ローザンヌ(IOC提供・共同)
IOC理事会に出席したバッハ会長=2022年12月、ローザンヌ(IOC提供・共同)
定例記者会見をするJOCの山下泰裕会長=2月、東京都新宿区
定例記者会見をするJOCの山下泰裕会長=2月、東京都新宿区
IOC理事会に出席したバッハ会長=2022年12月、ローザンヌ(IOC提供・共同)
定例記者会見をするJOCの山下泰裕会長=2月、東京都新宿区

 ▽猶予期間
 「そろそろ、大丈夫そうか」。汚職事件が発覚した昨夏以降、IOC側からの再三の問いかけに、日本側はこう答え続けるしかなかった。「まだ厳しい。状況は良くない」
 複数の関係者によると、IOCのバッハ会長と日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長は札幌決定のタイミングを探ってきた。昨年9月、安倍晋三元首相の国葬でバッハ氏が来日した際に直接向き合ったほか、同10月のソウルでの国際会議でも面会。その後も水面下で協議を重ねてきた。
 IOCは昨年12月、開催地決定を24年以降に先送りする方針を唐突に決めた。表向きは気候変動などへの対応を理由としたが「札幌のために、策を尽くして待った」(JOC幹部)と猶予期間を設けたのが実情だった。
 ▽見切った
 それでも日本側の支持率に向上の兆しはみられず、地元経済界からは34年の開催を求める声も強まり始めた。完了が31年以降と見込まれる北海道新幹線の札幌延伸や、それに伴う札幌駅周辺などの再開発計画が具体化するにつれ「工事中に五輪を迎えるのはどうなのか」(地元関係者)との意見が表面化してきた。
 この話を今年2月上旬に聞いたIOC幹部が怒りをあらわにしたという。スウェーデンのオリンピック委員会が招致検討を表明したのは、その直後のことだ。IOCが手を回したとの見方は強く、ある五輪関係者は「日本は見切られた」と解説する。
 同委員会のウトマン会長は共同通信の取材に対し、1月にローザンヌのIOC本部でバッハ氏らと会談していたことを明らかにした。4月21日には「持続可能で民主的な大会であれば」との条件を付けた意向調査で、国民の約7割から支持を得たと発表。JOC関係者は設問などに関し「IOCから細かく指示が出ているのだろう」とみる。
 日本の招致関係者の間には、スウェーデンに大きく傾く流れを食い止める覇気が乏しい。招致活動で主導的な役割を担ってきた担当者は「今の状況で、IOCが札幌を選べないのは当然だ」と、半ば諦めたような口調でつぶやいた。

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