
[毎週土曜日]朝7:30~11:00 ※コーナーは10:00〜
パーソナリティ 洋輔・影島亜美

番組はこちらからお聴き頂けます。
「未来に残したい静岡グルメ遺産」のコーナーです。
静岡新聞・SBSが運営するグルメサイト「アットエスグルメ」と共同企画で、大切な静岡のお店を残すためのプロジェクトをラジオでも展開していきます。
今年も県内の金融機関や商工団体などからの協力で、後継者を募集しているお店、親族内や第三者に経営を引き継いだお店、そしてこれから引き継ぐ予定の店などを取材していきます。
洋輔:4回目の今日は、静岡市駿河区丸子にある、あの有名な老舗とろろ汁の「丁字屋」さんに行ってきました。
影島アナ:私も大好きです。
洋輔:美味しいよね。私がうかがったのは、代表の柴山広行さんなんですが、頂戴した名刺にね。「14代 丁字屋 平吉」と名前が書いてあったんですよ。お店の歴史についてもたっぷりうかがいました。
洋輔:早速なんですけど、「丁字屋 平吉」こと柴山広行さんなんですね。
柴山広行さん:「丁字屋 平吉」という名前が創業者の名前でして、幕末の地図を見ると、「丁字屋 平吉」って地図に名前が書いてあるんですね。ってことは多分、江戸時代はそれこそ歌舞伎と同じような‥。
洋輔:屋号じゃないですけど、それを名乗ることによって、このお店のオーナーだよってこと‥。
柴山さん:じゃないかなと。僕の親は(丁字屋 平吉ではなく)本名だったんですけど、でもせっかく自分が(店主に)なるんであれば、なんかそういうあるもの、もったいないから復活させて使おうということで。
洋輔:へえ、素敵な思いですね。それを残しているという。改めてこの「丁子屋」さんの歴史を教えてください。
柴山さん:はい。実は来年で、430年、1596年の創業なので。
洋輔:この丸子の宿場町にずっとあるってことですよね。
柴山さん:そのようですね、はい。
洋輔:いろんなものが残されている資料館とかもあるじゃないですか。あれはどういった資料館になっているんですか。
洋輔:これは「東海道五十三次の丸子」と書いてあるこの場所に描かれているのが「丁子屋」さん。
洋輔:二人、男性かな。とろろ汁をすごい美味しそうに食べてますね。
柴山さん:とろろ汁を出してるお母さんがいて。(店の)横に(いるのが)自然薯の生産者なんですよ。これ。
洋輔:ちょっと丘を登っていこうとしている男性の絵が自然薯の生産者さんなんですね。
柴山さん:そうなんですよ。よく見るとこの藁を抱えているので、多分自然薯の添え木ですね。この木が。折れないように藁でくるんで。「丁子屋」に背を向けているということは、さっき山で掘ってきた自然薯を多分納品に来たんですね。いい自然薯が取れたんでしょうね。
若干重さを感じる巾着袋と、口元にキセル(があります)。
洋輔:本当にね、お話を伺ってると歴史がすごくて、430年ですよ。そして(歌川広重が描いた)東海道五十三次の丸子の絵に出ているところ屋さんが「丁子屋」さんじゃないかっていうとことから、430年ずっとお店をされてるっていうことに、驚きを隠せない。
影島アナ:慶長元年創業ってすごいですよ。
洋輔:場所は丸子の、それこそ駿府の工房 匠宿のすぐそばなんで。僕、実はちっちゃい頃に何回も行ったことがあって。水泳の選手だったんですけど、その試合の帰りに必ず寄ってたんですよね。なぜかっていうとうちの父、勝野洋が、もうすごく大好きで。毎回行っていた思い出の場所なんです。
影島アナ:大ファンなんですね、お父様も。
洋輔:そうなんですよ。広行さんは14代目と紹介したんですが、いつ頃からお父さんの13代目から、後を引き継ぐことになったか、また常に新しいことにもチャレンジしているそうなのでそのあたりについてもお話をうかがいました。
<丁字屋>
洋輔:いつぐらいから14代目に変わったんですか。
柴山さん:一応、2020年に正式に僕が代表取締役になってますね。
洋輔:変わってからいろんなチャレンジをしてるっていう噂を僕も聞いていて、メニューもちょっと新しいものができたっていう話も聞いたんですけどね。
柴山さん:自然薯とろろ汁屋なのに、ローストビーフを出してます。静岡産の美味しい牛肉を使ったローストビーフ。
洋輔:へえ、とろろと(ローストビーフと)何か関係があったりとかするんですかね。
柴山さん:あるんですよ。これは僕じゃなくて料理長の発想だったんですけど、自分たちはとろ汁の味付けのために、自家製の白味噌を作ってるんですね。このお味噌で美味しいお肉をちょっと漬けたらどうだろうと。型にとらわれない発想の人がいまして。(肉を)漬けてみたら、すごい美味しかったんですよ。
洋輔:それは食べたいですよ、僕も。今日食べさせてもらえますか。
柴山さん:もちろんです。ご用意しています。
洋輔:そしてもう一つあるってうかがったんですけど、もう一つはなんですか。
柴山さん:これも現場スタッフからの提案という形になってるんですけど。雪手鞠っていう和風スイーツ。元々自然薯の副産物である、むかごであんこを作れるぜっていう、それも厨房からの発想であんこを作ったんですよ。沖縄にはお芋を使ったアイスとかあるじゃないですか。
じゃあ、自然薯もいけんじゃないのっていう発想で。
洋輔:でも待ってください。僕は全然、絵面が想像できないんで、実際に食べてもいいですか。
柴山さん:そのときに(くわしく)お話します。
<スタジオ>
洋輔:とろろ汁の専門店って思ってたんすけど実はその伝統の味を守りながら、新しいものを開発していて、それが丁子屋味噌のローストビーフと雪手毬の二つ。
試食させていただきました。
<丁子屋>
柴山さん:お待たせしました。
柴山さん:自家製の白味噌を使ってありますので、口に含んだ後、ちょっと目を閉じて口の中の味と向き合ってもらうとすごく幸せな気分になれるかなと思います。
そしてもう一つ、雪手毬。店内で召し上がってもらう時は、ちょっと溶け出したぐらいが美味しいんですよ。
洋輔:アイスクリームみたいに固まってますね。
洋輔:素晴らしい。砂時計の砂が全部落ちたら食べていいよってことですね。待っている間にせっかくなので丁子屋味噌のローストビーフをいただきたいと思います。
いただきます。このサシが綺麗に入ってますね。
柴山さん:お肉としてもすごい人気のある静岡和牛っていうブランド肉ですね。
洋輔:そう。一口で食べちゃいます。いただきます。美味しい。味噌の甘みと、またローストビーフのこの脂の部分の甘み等がもうマッチして。味噌なんですけど全然しょっぱさを感じず、甘みの方が強いですね。味もしっかりついてるので、やっぱりこの味噌の優しい味が包み込みますね。口の中を。
柴山さん:そうですね。あと味もすごくすっきりするし、肉の脂がすごい美味しい。甘く感じるんじゃないですか。
洋輔:そうなんです。とっても食べやすいし、お酒が飲みたくなります。
柴山:そうですね。ぜひ今度やりましょう。
洋輔:今度やりましょう。今度、ローストビーフパーティーをしましょう。では雪手毬は。
柴山さん:1回、中を割って見てもらった方がいいですかね。
洋輔:何にも想像つかないですよなんか。なかが。
柴山さん:中がむかごのあんこ。
洋輔:むかごのあんこって食べたことないんですけど。
柴山さん:多分なかなかないと思います。周りにあるのが、自然薯のアイスです。
洋輔:自然薯のアイスっていうのはどういうふうに自然薯を使ってるんですか。
柴山さん:自然薯をすりおろしてそれに牛乳を流し込んでもらって。これはアイス屋さんにお願いして作ってるんですけど。なので親子アイスっていう感じですね。
洋輔:なるほど。はい。親子丼ならぬ親子アイス。いただきます。
むかごのあんこが甘すぎず、また歯ごたえというかその食感もあって、むかごの皮の食感ですかね。すごく美味しいですね。そして自然薯のアイスがやわらかいんですけど、ミルキーすぎず、多分このむかごのあんこと相性がすごくいいんですね。
柴山さん:ちゃんと自然薯も感じるけど、アイスじゃないですか。
洋輔:アイスなんですよ。これね。ちょっと、うん。不思議体験です。これ。
柴山さん:ありがとうございます。とろろ屋でそれが出てきます。
洋輔:すごいですね。でもなんか本当にSDGsというか。もう本当に余すところなく使ってるんですね。
柴山さん:そうですね。元々むかごを農家さんは捨てちゃってたんですけど、それを使うよって「丁子屋」の先代、僕の祖父が買い出したところから始まってるんですけど、今ここまで進化してるので。やっぱ代々深まっていくというか。発想は自由だなっていうのは思いますね。
<スタジオ>
洋輔:まずは丁子屋味噌のローストビーフですよ。本当、美味しかった。自家製の白味噌で漬け込んだ静岡和牛のローストビーフなんですけど、本当にね甘みというか、この旨味がギュッと詰まってる感じがとっても美味しかったし、その後にいただいた雪手毬。自然薯の葉っぱの部分にできる実のむかごを捨てずに活用して炊いたあんこと、自然薯とミルクを混ぜて作った自然薯アイス。自然薯アイスに僕はびっくりしたんですけどね。アイスできるんだと思うね。とろみがあるんですよね、何となく、だからやわらかーい感じのアイスクリームになるから、それとまた、むかごのアイスの食感もあるし、すごく美味しかったんで。なんかいろんなね、新しい挑戦をされてるなって感じたんですけど。でも広行さんが親族内承継で14代目としてやっていこうと決意したきっかけとか、コロナのこともあったりとかで結構大変だった時期があったんですって。引き継いだ当時に抱えていた苦労話なんかをちょっと伺いました。
<丁子屋>
洋輔:14代目になるって決めたきっかけっていうのは、何かあったんですか。
柴山さん:やっぱり結婚ですね。ちゃんとしないとっていうところでもあるんですけど、いずれ(丁子屋に)帰えるだろうな、30歳ぐらいまでにっていうのはあったんです。結婚したの26歳なんですけど。
洋輔:(丁子屋に)入った時にはもうお父様が社長だった?
柴山さん:その当時はそうですね。祖父もいたけど、祖父はもう会長だったと思うので父が社長でした。
洋輔:その後は「丁子屋」さんで働きながら、その自分が社長になるまでっていうのはどんな感じだったんですか。
柴山さん:時間でいったら15年後に社長になってるんですけど、その前々からすごく業績が落ちてたんですよね。とにかくその業績を上げなきゃいけないということが目の前の大きな課題だったんすけど。僕は就職もしたこともないし、料理の勉強もしてないし、本当手探りで。
洋輔:そういう姿を見て。お父さんは何か言われました。
柴山さん:最初3年間は現場で修業というか、調理の勉強をして、その後それも業績は当然上がらないので外へ出て、旅行会社相手に営業活動とか。もうとにかくお客さんを呼ばなきゃみたいな、焦ってたんですけど、コロナ直前になり、ようやく赤字が黒字にちょっとグラフが上向きになるかなならんかなぐらいのときにコロナになったんですよ。
洋輔:すごい大変な思いをして。
柴山さん:そうですね。ただその前にちょっとちょっとやってたことがだんだん実を結び始めたんですけど。その辺から外回りの営業じゃなく、自然薯の生産者の方に、僕は出入りを始めたんですね。自然薯のことを知っとかないと、それをお客さんに伝えられないなと思って。そこから畑に行くようになったんです。そしたらすごく手間暇かけて、苦労も、もう当然思いもあるこの商品(自然薯)を、商品だけじゃないですよね。その人たちの思いとか苦労も全部ひっくるめて、レストランとして受け取って、それを最終的にお客さんに伝えられるのはレストランしかないじゃないですか。消費者と生産者はつながっていないので。そこをちゃんとつなげなきゃなっていうふうにちょっとマインドが変わったというかスタンスが変わったんですね。そっから発信する内容も当然変わってきて、作るものも例えば自然薯を使った羊羹とか、自然薯をまず知ってもらう、とろろ以外で。そういうものを作ろうということで。
洋輔:自ら自然薯の生産者さんのところに出向いて、いろんな勉強とかヒアリングをして、そこから何か光が差してきてどんどん広がっていったっていう話がすごく印象的だったんですけど、広行さん、実は少し変わった経歴を持っていて、まず関西の大学に進学した後に、就職活動をせずに学生時代から経験を積んでいた和太鼓のプロのプレーヤーとして活動されてたんですって。海外公演とかも経験があって何ヶ月も海外に行ったりとか、いろんな経験を経てその時に関西で出会った奥様と26歳の時に、結婚をきっかけに実家に戻ってきて、「丁子屋」の跡を継ぐべく、入社したそうなんですけども。やっぱりその社長になるまでの15年間の苦労って本当に計り知れなくて、大変だったというふうにおっしゃってたんですけどその苦労からどうやって抜け出してきたのかもうかがってみました。
<丁子屋>
洋輔:実際に「丁子屋」を継ぐってなった時に、プレッシャーみたいなのもありましたか。
柴山さん:なかったんだけど、実際、2020年の10月12日に襲名したんですけど、広重さんの命日。あえてそこは10月12日にこだわったんですけど。そこから一年間、毎日僕は社長を辞めたかったですね。しんどすぎて。
洋輔:それはどういったところがしんどかったですか。
柴山さん:今となっては、多分役割分担ができてなかったんだなっていう一言になると思うんですけど。現場からの話が全部社長なので、僕のところに直通。
洋輔:なるほど、それはもう1年間ずっとその皆さんの思いを受けとめてたら大変だと思うんですけど、それが打開できたきっかけみたいのがあったんですか。
柴山さん:やっぱり一つは、妻の智子さんが、事務所の僕のすぐ横にいてくれて、もうとにかく私達にふれと、仕事をふってくれと、指示してくれと。そうすれば、もうそこから先は、ふるし、自分たちが動くし、ということを言ってくれたんですよね。自分で悩んでたこともとりあえず悩みを相談するとか、共有するところから始めると割と解決も早かったりするようになって、今2025年の5年かけて、なっていってますね。
洋輔:もう本当、奥様の存在がすごい大きいんですね。
柴山さん:めちゃめちゃ大きいです。
洋輔:素晴らしいですね。でも奥様との話し合い以外でも何か困ったこととか相談されたことっていうのは何か他にありましたか。
柴山さん:あとやっぱり商工会議所さんの事業承継計画という表を作ってもらって。これで一応目標なんですけど、2020年から2025年、10年間の予定を一緒に作ってもらいました。
洋輔:柴山さん、僕に、多分、極秘資料であろうものをすごい見せてくれてるんですけど、何年計画の何年何年何年で、いくらいくらっていう金額が全部書いてある紙を見ながら我々喋ってます。
洋輔:そうですね。方針のところに書いてありますね。お父様から柴山さんに親族内承継を実施するとか、その目標とか動きを。5年目に代表権を譲渡するとか。いろいろどうやって動いていけばいいかっていうのを書いてくれてるんですね。これ、わかりやすいですね。
柴山さん:そうですね。今もね、これ見返したりするんですよ。できるかできないかは別として、この5年間という時間を有効に使える。ちょっとずつステップアップになったなっていう気はしています。
洋輔:そっか、自分たちだけだとやっぱどうしても目の前のことでいっぱいいっぱいだったりするんですけど、何年先っていうのをこうやって数値化して見えるようにしてくれるのが商工会議所だったりするんですか。
柴山さん:そうですね。あくまで客観的に見てもらえるので、それはすごく僕のためになったと思いますね。
洋輔:その結果、事業っていうのは、上向きになってきました?
柴山さん:おかげさまで。
洋輔:よかった!理想の「丁子屋」になってきた。
<スタジオ>
洋輔:一人でいろいろ悩んでたんだけど、奥さんから、ちゃんと相談して欲しいって、言われて、広行さんが相談するようになってから、すっと物事がスムーズにいくようになったって言ってて。あと事業承継実施計画書とかいろんな資料を用意してくださってて、そんな中、やっぱりいろんなことがあるけど、引き継いだ中で大事なものもあるけど、どうしてもよくない負の遺産という言い方していいのかわかんないけど、そういうものが残っちゃってる部分もあったから、その奥さんからのサポートとか、あとは商工会議所さんとか金融機関さんのサポートで今に至ってるって話がね、すごいなんかなるほどなと思って。
広行さんに、これから事業承継をしていこうと考えてる皆さんに向けてアドバイスもうかがってみました。
<丁子屋>
柴山さん:悩みとか苦労は割と共有した方がいいなっていうのと、決して一人じゃない、自分でそう感じて思えることが、やっぱり自分の一番根底の支えになるので、それは忘れちゃいけない。忘れて欲しくないですね。
洋輔:もう、素晴らしい言葉ありがとうございます。僕の方から最後に本当にこの「丁子屋」さん。もちろん、とろろ汁とか美味しいものがたくさんあるんですけど、歴史資料館になってるので、僕、来た瞬間にいろいろ紹介していただいて見させていただいたんですけど、あれ、本物の東海道五十三次の‥。
柴山さん:そうです180年前の、はい。
洋輔:本物の東海道五十三次の浮世絵が展示されているので、もうぜひ、とにかく歴史好きはここに一回来てください。
柴山さん:そうですね。そうです。まずは。
柴山さん:でも僕も妻も、もう最初はそこまでではなかったんですよ。
洋輔:でもとろろ汁をきっかけに、歴史好きになったということ。
柴山さん:何となくこうやってたらお客さんからも聞かれるし、調べて答えてってやってるとなんか面白いなあ、ってなってきて。
洋輔:もうめちゃくちゃ詳しいので皆さん、お話を聞きに来てください。
今日はありがとうございました。
柴山さん:ありがとうございました。
洋輔:そうなんですよ。もちろん僕、この後、とろろ汁もしっかりいただいて。ざっと食べるのが正解だよっていう話も聞いて、美味しくいただきました。本当にありがとうございました。ぜひ皆さんも「丁子屋」さん、行ってみてください。
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