[毎週土曜日]朝7:30~11:00
パーソナリティ 洋輔・影島亜美
番組はこちらからお聴き頂けます。
長年地元で愛されている味、この先もずっと続けてほしいお店をSBSラジオ「サタデービューン」のパーソナリティ洋輔が取材していきます。
今回僕が取材に行ったのは伊豆の国市古奈、伊豆長岡駅のすぐそばにある焼き鳥屋さん「鳥栄」さんです。お店の三代目にあたるオーナーの木内朝敏(ときとし)さんにお店の歴史やこのお店を先代のお父様から引き継いだ経緯などを伺いました。
洋輔:こちらのお店入ってすぐ、ザ・焼き鳥屋さんという(感じの)カウンターがあって、和風な感じでとっても素敵なんですが、三代続く老舗の焼き鳥屋さんと伺っているんですがお店の歴史はどのぐらいになるんですか
店主の木内さん:僕で三代目になります。(創業)80年です。初代が昭和の初め頃に、もともと長岡で板前をやっていたんですけど独立しまして、今のこの場所に移転して自分でお店をやったということです。
洋輔:木内さんは料理人としてのキャリアってのはどこからスタートされたんですか。
店主の木内さん:子供の時から親が調理してるのを見てまして、中学校・高校ぐらいになりますとやっぱり自分で調理の道に進むのかなと思いまして、いろいろ自分なりに鳥を焼いてみたりいろんなもの作ってみて、従業員の皆さんに食べさせたり、親に食べさせたりして、喜んでもらった記憶があります。
洋輔:「鳥栄」さんを引き継ぐにあたってすごく長いストーリーがあると聞いてるんですが。
店主の木内さん: どこから話していいのかちょっと難しいんですけども。学生時代に東京の方にでましてアルバイトで代官山の「マダムトキ」さんていうところに面接に行って、オーナーの方のマダムがトキさんという方で「あなたもトキ(朝敏・ときとし)なの、それじゃあ、いらっしゃい」ということで代官山で少し働いておりました。
そんな時に(店の)近くに大使館その他、もろもろがあるもんですから外国の方がたくさんいらして、だんだん外国の方にも興味を持ち、21歳の時にボストンバッグ一つ持ってロサンゼルスの方へ旅立ちました。
洋輔:海外で料理をするために、海外経験をしに行ったということですか。
店主の木内さん:というよりも、いろんなものを見てみたい年頃で、何も考えずにとりあえず、ハリウッドの方へ飛び出しまして、たまたま行き着いたのがハリウッドのメルローズにあります「サンジェルマン」という店で働くことになりました。
洋輔:何年くらいアメリカの方に行かれていたんですか。
店主の木内さん:アメリカには実際には11年(いました)。ちょうど10年目ぐらいでしたかね、親もだんだん年を取ってきまして、親父が具合を悪くし、そんな時にとりあえず今まで三代目は僕だという前提で家族が動いてきて(この先)どうしたらいいか、一度日本に帰ってきて皆で話をしなさい、という言葉をもらったものですから、10年目に日本に帰ってきました。
洋輔:日本に帰ってきて、もうすぐこちらのお店で働き始めたんですか。
店主の木内さん:今の形とはちょっと違うんですけどね。2代目が鶏の卸業とお店(焼き鳥店)をやっていたものですから、最初は鶏の卸しの方を手伝ってまして、近隣に旅館がたくさんあるもんですから、そこに肉をおさめたりとか、そういう形で最初は働いていたんですね。そのうちにやっぱり何かもう少し率の良いものに変えていこうということで飲食店を中心に考えるようになってきました。
洋輔:こちらのお店を継ぐ時なんですけど静岡県事業承継・引き継ぎセンターが間に入って引き継ぎのサポートをしてくれたそうなんですが相談したきっかけはなんだったんですか。
店主の木内さん:自分が元従業員さんのところ(事業)を引き継いだ時のトラブルもありますし、家族中心でやってるもんですから、どういう風にやっていっていいのか、何をしていいのか全くわからない状態で相談したところ、いろいろサポートしていただいたということです。
洋輔:具体的にどのようなサポートをしてくれました?
店主の木内さん:まず専門家の方々をたくさん連れて来ていただきまして、会計士さんであったり、司法書士さんであったりとか。将来おきそうなトラブルであるとか、そういうものをみんなで考えながら、第三者を交えて、引き継ぎがスムーズにできたと思います。
洋輔:もともと木内さんのおじい様が80年前に作ったお店ということで本当に歴史を感じる雰囲気があったんですが、木内さん自身は若い頃に、ロサンゼルスのフレンチレストランでも修業されて地元に帰ってきた。本当にボストンバッグ1個持って行ったって、かっこいいですよね。
今では弟さん、妹さん、奥様も一緒に仕事をされていて、お店の雰囲気もね、皆さんとっても仲良くワイワイしてる感じで良かったんですよね。
そんな「鳥居」さんの自慢のメニューを頂きました。
洋輔:お店の看板メニューをご用意いただいたんですが、メニューを紹介してください。
店主の木内さん:代々続くタレに漬け込みました唐揚げ、そして商工会さんのお土産にもなっております手羽先の甘煮、そして大人気のラーメンを今日は用意させていただきました。
洋輔:ラーメンも2つあって、醤油と塩。
店主の木内さん:初代はずっと醤油でやってたんですけど僕たちの代になって塩味を作ってみたところ、大人気になりまして今は両方あるということです。
洋輔:手羽先からいただきます。うーん、美味しい!熱々で甘辛いタレが最高ですね。
店主の木内さん:ちょっと企業秘密なもんですからタレのあれ(レシピ)は教えられないんですが、じいちゃんからの引き継ぎのタレで、ベースは醤油とお酒と砂糖であとは内緒でいろいろ入っています。
洋輔:本当に味がしっかりしていてお酒がすすみそう。続いては唐揚げをいただきます。衣がサクサク。鶏がやわらか。味もしっかりしみていて、でもさっぱりしているんですね。
店主の木内さん:(鶏肉を)ちょっとうすめのタレに一晩漬けまして、最後仕上げのタレに漬け込んでから衣をつけて揚げています。
洋輔:2回、違うタレに漬けてから揚げているんですね。本当に美味しい。ラーメンをいただきます。塩味から。鶏の香りがすごくよくて、体にしみわたるこの鶏のエキスというか。
店主の木内さん:鶏ガラだけでとっていますんでちょっとクドそうに感じますけどあっさり食べて頂けるようになっていると思います。
洋輔:最高の味ですね。美味しい。
店主の木内さん:ラーメンだけは初代から何も変わらない感じで作ってまして、麺を作っている方も、もう50年以上付き合ってまして。
洋輔:初代からずっと続いている醤油の味の方もいただきたいと思います。懐かしい味がするのは何ですかね。
店主の木内さん:何ですかね。まあ難しい工程は何もなく、本当に鶏ガラをたくさん使ったスープとお醤油で仕上げたようなあっさりしたラーメンということです。
洋輔:こちらのラーメンを目当てに来る方もいらっしゃるんですか。
店主の木内さん:今現在はラーメンだけでも構わないよ、という形で食べに来ていただける方もたくさんいらっしゃいます。
洋輔:ラーメンと焼き鳥の二本柱っていうことですね。いやーおいしかったです。
今回はお店の看板メニュー、手羽先の甘煮、鶏の唐揚げ、鶏で出汁をとったラーメンを頂いてきましたがどれも絶品でした。本当に美味しくて、焼き鳥屋さんではあるんですけどラーメンも看板メニューということでそれを目的に来るお客さんも多いんですって。
ラーメンは塩味と醤油味があってとってもシンプルで凝った具も使われていないんですが鶏のエキスがすごく美味しく出ていて、本当に鶏のプロが手がけたスープっていう感じでした。また絶対行きたいなと思います。
お店の今後の展望についても聞いてきました。
洋輔:木内さんがお店をされているうえで大切にしてることは何ですか。
店主の木内さん:先代の父親からよく言われてることですが、とにかく来て頂いたお客様を大切にしろと、そしてそのお客様に対して一生懸命やりなさいということをいつも教わっています。お客様を大切にしてるとそのお客様が宣伝をしてくれる、そして(この店に)お客様を送ってくれる。それが一番の宣伝で、一番「鳥栄」のためになる、という話をもらってます。
洋輔:アメリカでいろんな修業をされてきたと思うんですけど、今どのように役に立ってると思いますか。
店主の木内さん:そうですね、一番はやっぱり僕の中ではやっぱり言葉の壁がありまして、どうしたらいいかわからなかったんですけど、よく自分の中で思って考えてやってみたことでその人が何を言ってるかを一生懸命考えて聞く。そうするとその人が言いたいことがすごく伝わってくる。そして今お客さんを一生懸命見ているとお客さんが欲しいものが見えてくるんですね。ラーメンを食べていればお水が欲しいのかな、そんな形のサービスができたらいいなと思っています。
洋輔:なるほど。言葉の壁に当たったからこそ見えた、その言葉じゃない所のね。
店主の木内さん:そういうことをしているとお客さんに本当に喜んで頂いて、気持ちよく帰っていただけるなと、今実感しています。
洋輔:最後になりますけども、今後の展望とかお店をどうしていきたいか教えてください。
店主の木内さん:そうですね。先ほど申しましたけど一生懸命やって、とにかくみんなに好かれるお店、そしてまた行ってみたい、行きたいなと思わせるような店を作っていけたらなと思っております。
洋輔:ありがとうございました。未来に残したい静岡グルメ遺産、今回は伊豆の国市古奈にある焼き鳥屋さん「鳥栄」にお邪魔しました。木内さん、本当にありがとうございました。
何もわからないで勢いで海外に出た経験がある木内さんだからこそ、言葉だけではない気遣いができるんでしょうね。焼き鳥も本当においしいですし、ラーメンだけでもいいということなので皆さん是非お店に足を運んでみてください。
後継者に困っている店主さんやお店を始めてみたいという方は、ぜひ一度事業承継引継ぎ支援センターにご相談してみてください。