願い - 袴田事件 再審開始までののり

1966
630
- 事件発生

旧清水市(現静岡市清水区)でみそ製造会社の専務方から出火。焼け跡から専務一家4人の遺体が発見され、強盗殺人・放火事件として捜査。

1966
818
- 袴田巌さん 逮捕

静岡県警が住み込み従業員だった袴田巌さんを逮捕。当初否認したが、拘留期限間際に「自白」した。

1966
1115
- 静岡地裁 初公判

「私はやっていません」「全然やらなかったです」―と全面否認。

1967
831
- 5点衣類 発見

工場のみそタンク内から、血染めのシャツやズボン、ステテコなど「5点の衣類」が見つかった。巌さんは衣類に「名前が入っていない」とし、所有物ではないと主張。

「これは真犯人が動き出した証拠。これでますます有利になった」(1967年9月の袴田さんの手紙)

1968
911
- 死刑判決

静岡地裁は5点の衣類を「犯行着衣」と認定。殺害後に巌さんがタンクに入れたと判断した。巌さんは東京高裁に控訴。

1976
518
- 東京高裁控訴棄却

控訴審の実験で、巌さんは5点の衣類のズボンをはけなかった。しかし高裁は、巌さんの体重が拘留中に増加したことなどを根拠に、事件当時はズボンがはけたはずと判断した。

1980
1119
- 最高裁上告棄却

12月に判決訂正申し立ての棄却を決定、巌さんの死刑判決が確定。

1981
420
- 第1次再審請求

弁護側が静岡地裁に再審請求。

2008
324
- 第1次再審請求終了

静岡地裁の再審請求棄却、東京高裁の即時抗告棄却を経て、最高裁が弁護側の特別抗告を棄却。第1次再審請求が終了、請求から約27年が経過していた。

2008
425
- 第2次 再審請求

巌さんの姉・ひで子さんが第2次再審請求を申し立て。

2014
327
- 再審開始 決定

死刑と拘置執行停止

再審請求審で静岡地裁が巌さんの再審開始を認めると同時に、死刑と拘置の執行停止決定。逮捕から約48年ぶりに釈放された巌さんは78歳になっていた。

2023
320
- 再審開始 確定

差し戻し後の即時抗告審で、検察は、再審開始を認めた東京高裁決定について、特別抗告を断念。再審開始が確定した。

事件から57年―。重い扉がようやく開いた。
2023年10月27日、巌さんの再審公判が静岡地裁で始まった。

弟の無実を訴え続けてきた姉のひで子さんが補佐人として、
巌さんに代わって証言台に立った。
再審公判は10回以上を重ね、2024年5月で結審するとみられ、大詰めの段階だ。

巌さんは、半世紀近い拘束によって精神に障害を来す 「拘禁反応」で、正常な会話は難しい。
再審公判は心神喪失の状態にあるとして、出廷免除を受けた。

現在は浜松市内でひで子さんと暮らし、
支援者らと日課の散歩やドライブに出かけているが、
無罪判決を得るまでは「確定死刑囚」のままだ。

「真の自由をお与えくださいますようお願い申し上げます」―。
再審初公判で法廷に響いたひで子さんの訴え。

今度こそ いは くのか。

巌さんは判決後の手紙で、「事実誤認」と厳しく批判。「法廷で見た血染めのズボンは小さく、自分にはけそうになかったが、一審では装着を試す機会がなかった」として「従って私が問題のズボンをはく時に無罪が決定するのです」

検察は地裁決定を不服として即時抗告。東京高裁は2018年6月、一転して再審請求を棄却したが、巌さんの釈放は維持した。最高裁は2020年12月、高裁決定を取り消し、審理を高裁に差し戻した。
高裁は2023年3月、検察の即時抗告を棄却。重要証拠が捜査機関に捏造(ねつぞう)された可能性が極めて高いと指摘した。