2014年、取材ノートから(4)お菓子放浪記
記者の思い入れに任せた年末回顧企画「2014年、取材ノートから」は、大みそかの今日が最終回。静岡市在住のノンフィクション作家、西村滋さんの小説「お菓子放浪記」について書きます。1976年の刊行以来、テレビドラマや映画にもなった戦争孤児の物語です。今年10月に初めて舞台化された会場で、西村さんにお話を聞くことができました。(宮)
ニコニコ笑顔で背筋を伸ばし、戦後の日本についてすらすらと語る御年89歳。演劇関係者有志によるミュージカルに感謝する半面、「この物語が求められるようでは、日本はいい時代とは言えません」。感覚は驚くほど冷静です。「本や舞台で追体験しなければ、悲劇を忘れてしまう。人間はいつまでも未熟な存在です」との言葉が印象に残りました。
お菓子に憧れる主人公の少年シゲルは、西村さん自身がモデルです。喫茶店で偽物を出され、店員と口論する場面もあります。「本物と偽物を見極めてください」と西村さん。原発問題や憲法改正の判断を迫られる国民への、強烈なメッセージでもあります。
取材ノートをめくり、日本が戦争をせずに年を越せる幸せをあらためて考えさせられました。今年も本紙と併せてご愛読ありがとうございました。皆さまどうぞ良いお年をお迎えください。
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