




スーツをはじめとするビジネスウェアからカジュアルウェアまで幅広く手がけるAOKI。
アパレル業界にとってもSDGs、つまり持続可能な開発は大事な目標だ。
ユネスコスクールに認定されている県立駿河総合高校(静岡市駿河区)の生徒たちが、同社の活動について学んだ。
<企画・制作/静岡新聞社地域ビジネス推進局>
質の高いスーツを
適正価格で
今回、リポートするのは県立駿河総合高校報道部の部員3人。2年生の伏見菜帆さん、小田巻芽生さん、1年生の久保田海央さんだ。報道部ではSDGs活動や防災活動などの広報を担っている。SDGsの中でとりわけ伏見さんは「ジェンダー平等」、小田巻さんは「質の高い教育」に興味があり、久保田さんは「報道の仕方」に関心があるという。
AOKIの取り組みについて話をするのは広報室の比本佳奈さんと品質管理部の高橋克宏さん。「AOKIは1958年に長野市でスーツを売り歩く外商からスタートし、65年に1号店をオープンしました。当時はスーツ1着が大卒の初任給と同じぐらい高価なものでしたが、日替わりで着られる質の高いスーツを適正価格で提供したいという思いから企業活動をスタートしました」と比本さんは話す。79年にチェーン展開を開始、86年には本社を横浜へと移し、現在、AOKIとORIHICAという二つの業態で約600店舗を展開している。取り扱う商品はビジネスウェアから休日のカジュアルウェア、冠婚葬祭のフォーマルウェア、レディースアイテムのほか、コロナ禍でリモートワークの需要に応えたパジャマスーツと幅広い。
3人とも「通学路に店舗があるし、テレビCMで見ることがあるので、知名度が高く安心感がある」「価格が安く、手に取りやすい印象」と共通の企業イメージを持っていた。

業界に先駆けて
エコ商品を開発

比本さんによるとAOKIが取り組むSDGsは大きく分けて三つあるという。一つ目は「ウールエコサイクル」。お客さまが着用しなくなったスーツを店頭で下取りし、提携工場でさまざまなリサイクル製品に再生する取り組みだ。具体的には車の吸音材や玄関マット、フラワーポッドなどに生まれ変わっている。これまでに累計500万着がリサイクルされているという。比本さんは「世界の目が地球環境への配慮に向かい始めたころ、資源の有効活用、循環利用の取り組みを、業界に先駆けて1996年に開始しました。特に当社で取り扱いの多いウールには力を入れています。ウールは生分解性・難燃性などの特長を持ち、リサイクル製品も最終的には、自然の中で分解されるため、環境に配慮した取り組みです」と説明した。

「こうした取り組みをどのようにお客さまにお伝えしていますか」と久保田さんが質問すると、「AOKIの店舗にて、直接お客さまにご説明したり、ホームページ上でもお知らせしています」と比本さんは答えた。


ペットボトル由来の
ワイシャツに関心


二つ目は、洗えるスーツ、環境負荷の少ない商品、温度調整機能の付いた商品の開発を挙げた。「環境負荷の軽減に向け、特殊加工によって洗えるスーツを開発しました。スーツに付く汗などの汚れは水洗いで落ちるものが多く、自宅で洗うことによって環境負荷がかからずお手入れができ、経済的で清潔に着ていただけます」と比本さん。累計で250万着を販売したという。
そのほかにもペットボトルを細かくチップにして、糸、生地にした再生ポリエステルのワイシャツや、クールビズに合わせてポロシャツのような着心地と速乾性を実現した「ビズポロ」などの製品がある。さらに革製品で余った生地を粉砕して再利用したリサイクルレザーシューズも開発している。
小田巻さんから「ペットボトル由来のワイシャツには1着あたりどれぐらいの再生ポリエステルが使われているのでしょうか」という質問が飛んだ。「現在は30%の再生ポリエステルを使っていますが、最終的には100%を目指し、メーカーさまとともに技術開発に取り組んでいます」と答えたのは高橋さん。
「消費者にとって一つの商品を長く使い続けることも重要ですが、スーツを長く使い続ける方法はありますか?」という伏見さんの問いに対しては、「やはりお手入れが重要です。連続着用するとどうしてもダメージが早いので、一度着用したら2、3日空けるなどローテーションすることをお勧めします。また、自宅洗いができる素材であれば、ドライクリーニングと併用することが長持ちさせる秘訣です」と比本さんはアドバイスした。
業界全体で
SDGsを目指す

三つ目は販売活動のなかでの取り組み。エネルギー資源を効率的に活用することにより、経費削減とともに、環境負荷の低減にもつなげているという。ほぼ全店でLED照明を導入し、消費電力削減のためにこまめな消灯のほか、手書き伝票をやめて電子化もした。さらに同社ならではの取り組みはハンガー納品の促進だ。通常商品は段ボールに入って納品されるが、AOKIでは直接ハンガーに商品をかけて運送し、販売して残ったハンガーを工場に戻してリサイクルする活動を行っているという。「紙資源の削減の話がありましたが、過剰包装への対策は」と聞く伏見さん。商品の形状を保つ付帯物をポリエステルから別の素材に変えたり、持ち帰りの袋が必要かどうかお客様に聞くことで、ポリ袋の利用は30%ほどに減っているという。
最後に小田巻さんから「SDGsに関して他社にはない強みは」との鋭い質問に、高橋さんは「SDGsは当社だけが頑張ったから全てうまくいくわけではありません。私たち小売の先に製造、原料があります。繊維業界全体がSDGsの目標を目指して進んでいかなければなりません。AOKIの強みはお客さまと接することです。販売もできますし、回収の窓口にもなります。ウールエコはそんなお客さまの要望から生まれました。SDGsを推進する上で製造、再生原料にするための窓口になること、また店員がお客さまに説明できることがAOKIの使命だと感じています」と思いを語った。

リポートを終えて
小田巻さん
小田巻さん最初は他社との違いがあまりないと思っていましたが、同じスーツでも素材やSDGsの取り組みが全く違うことを初めて知りました。今後はお店の取り組みや目指していることを確認してスーツを買おうと思います。
伏見さん
伏見さんSDGsを親身に考え、製品に誇りを持っている熱意が伝わってきました。ぜひAOKIでスーツを購入したいと思います。
久保田さん
久保田さんこれまで直接スーツに触れる機会はなかったので、スーツを選ぶ参考になりました。SDGsを知る上で大切な知識を得ることができたので、今後の勉強に生かしていきたいです。


