【週刊台湾ビジネスニュース】TSMC機密情報漏洩、AI監視導入、中国籍村長解職、残留農薬で不合格、平和記念式典へ台湾【2025/08/11号】

威志企管顧問股イ分有限公司(ワイズコンサルティンググループ)
台湾の最新ビジネス情報をお伝えする、週刊台湾ビジネスニュースです。

 台湾に拠点を置き、各種コンサルティング、リサーチ、日本人向け台湾経済ニュース、クラウドサービスの提供などを行う情報サービス企業グループ「ワイズコンサルティング」は、台湾経済に関する注目動向をまとめたレポートを発表しました。
 本号では、台湾積体電路製造(TSMC)の2ナノ技術機密流出事件と東京エレクトロンへの捜索、AIを活用した情報漏洩防止体制、日本産メロンなどの輸入不合格事例、さらに広島平和記念式典への台湾初参加など、半導体・安全保障・食の安全・国際交流分野で交錯する最新トピックスを多角的に分析しています。


【電子】TSMCの2ナノ機密取得で元社員3人拘束、東京エレクトロンも捜索
 台湾高等検察署(高検)知的財産検察分署は5日、ファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の技術に関する機密情報を不正に取得したとして、国家安全法違反容疑でTSMCの元社員ら3人を拘束したと発表した。不正取得されたのは、TSMCが下半期(7~12月)に量産予定の2ナノメートル製造プロセスに関する技術。TSMCのサプライヤー、半導体製造装置大手の東京エレクトロンの新竹科学園区(竹科、新竹サイエンスパーク)のオフィスなども関係先として家宅捜索を受けた。東京エレクトロンは、この件についてコメントしないとしている。

■国安法改正後、初の摘発
 台湾政府は、先端技術が流出すれば、台湾の産業や国家安全に深刻な影響を及ぼすとして、2022年の国家安全法改正で国家にとっての中核技術(核心技術、コア技術)「国家核心関鍵技術」の営業秘密を不正に取得、漏えいしたことなどに対する処罰を追加した。半導体では、14ナノ以降の製造プロセスが対象となっており、今回の事件は初めての摘発だ。違反すれば、5年以上、12年以下の拘禁刑や500万~1億台湾元(約2460万~4億9000万円)の罰金が科される。
 検察当局は7月25日から28日にかけて、TSMCの元社員で容疑者の男性ら9人を取り調べ、東京エレクトロンの新竹市のオフィスなど関係先を捜索し、電子記録やクラウドデータなどを押収した。このうち、陳・容疑者ら3人は裁判所に勾留が認められた。
 調査によると、陳・容疑者はかつてTSMCのシステムインテグレーション部門に勤務しており、転職後はTSMCのサプライヤーの東京エレクトロンの設備エンジニアとして勤めていた。旧知のTSMC社員に情報提供の協力を求めた。
 社員は在宅勤務でTSMCから貸与されたノートパソコンを用いて自宅からTSMCの社内ネットワークにリモート接続。陳・容疑者は社員の自宅に出向き、PC画面に表示された2ナノ製造プロセスの技術図面を、スマートフォンで撮影していた。また、社員は内部のファイルフォルダを開き、機密文書を印刷して陳・容疑者に手渡していたことも判明している。陳・容疑者が撮影などして入手した画像は数百枚に上るとされる。
 TSMCの内部システムでは、機密ファイルが開かれた際の操作履歴がデジタル上に残る設計となっており、機密ファイルへのアクセス頻度が異常に高いことをTSMC側が検知した。この情報に基づいて社内調査が行われ、情報漏えいが発覚し、知的財産検察分署に告訴した。
 検察当局は今後、機密情報を不正取得した動機と目的、外部に流出したかどうかを調べ、起訴する方針だ。
 TSMCは、企業の営業秘密の保護に違反し、企業の利益を損なういかなる行為も絶対に容認しないと表明した。違反者に対しては厳格に対処し、責任を追及する。核心技術の保護と全社員の利益を守るため、今後も内部管理体制と監視を強化する。
 TSMCのほか、韓国のサムスン電子、米インテル、日本政府が支援するラピダスが2ナノプロセスでの生産を目指している。6日付中国時報によると、漏えいされたTSMCの機密情報がラピダスの設備調整の参考に使われたとのうわさも浮上している。
 東京エレクトロンは、日本の幹部や法務部門の担当者を急きょ台湾に派遣し、TSMCの法務部門と連携して、情報の出所、目的、影響の範囲などについて調査を進めているという。


※本件の補足解説は、以下の動画でもご覧いただけます。