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楽しく走って地域見守り「しずおかランニングパトロール」

(2018/8/21 00:00)
駿府城公園周辺で6月下旬に行った試走会=静岡市葵区
駿府城公園周辺で6月下旬に行った試走会=静岡市葵区
神戸メリケンパーク内をランニングする「ひょうごふれあいランニングパトロール」の登録ランナー=3月、神戸市中央区
神戸メリケンパーク内をランニングする「ひょうごふれあいランニングパトロール」の登録ランナー=3月、神戸市中央区

 健康増進のためのランニングを楽しみながら、地域防犯の担い手として見守り活動も行う「しずおかランニングパトロール(SRP)」が今秋、静岡県内で始動する。静岡新聞社・静岡放送と県警、特別協賛企業(シラトリ、杏林堂薬局、セキスイハイム東海)などの民間企業・団体が推進する新しいスタイルの防犯プロジェクト。ボランティアランナーの募集が21日から始まるのに合わせ、アドバイザーを務める常葉大浜松の木村佐枝子准教授に狙いや今後の展望を尋ねるとともに、いち早く同様の取り組みを始めた他県での状況を探った。

 ■ランナー募集、9月17日まで
 「SRP」は健康増進のためのランニングを防犯に結び付ける活動。兵庫県で先行的に展開されている「ひょうごふれあいランニングパトロール(ふれパト)」を参考にした。子どもや女性、高齢者の犯罪被害防止▽県民一人一人の防犯意識アップ▽地域住民の連携、絆づくりへの寄与-などを目的に掲げる。防犯ボランティアの高齢化が進む中、現役世代や学生、企業・団体にも見守り活動の輪を広げ、地域活性化につなげる狙いがある。
 本県では活動推進母体として8月8日、「SRP推進委員会」を発足させた。県警が防犯面の助言・指導や犯罪発生情報の提供などを行い、広報啓発は事務局を務める静岡新聞社が担う。特別協賛企業のセキスイハイム東海と杏林堂薬局は活動に必要な場所の提供などの支援、シラトリは参加者募集をはじめ、必要な物品やランニング知識の提供などで貢献する。
 登録ランナーは約100人を目標に、9月17日まで応募を受け付ける。10月13日の結団式では活動マニュアルの配布や講習を行う。
 県内各地での本格始動は11月から。3人以上のチームを組んで専用Tシャツを着用し、自主的なパトロールを毎月1~2回程度展開する。メンバーが集うイベントや講習なども随時計画する。

 ■円滑運用へ試走会 緊急時の対応も確認
 静岡新聞社と県警の担当者約10人が6月下旬、静岡市葵区の駿府城公園周辺で試走会を行った。効果的な走行方法やペース配分をはじめ、緊急事態に遭遇した際の対処方法も確かめた。
 ランニングパトロール中に直面する可能性が高いのは、不審者による声掛け事案やひったくり事件などに加え、交通事故もある。自転車の運転者がけがをしたと想定した確認訓練では、県警生活安全企画課の警察官が被害者役となり、他のランナーが通報や交通誘導、応急手当てといった役割をこなした。
 狭い道を走るケースもあるため、試走会に参加した担当者らは「10人以上で走るのは交通の妨げになって危険」と分析した。走行ペースについては「会話ができ、周囲を十分に確認できる余裕のある配分を徹底すべき」との認識を共有した。

 ■兵庫の先行事業、好発進
 「ふれパト」は兵庫県警が提案し、スポーツ用品大手アシックスと神戸新聞社が協力して始めた。登録ランナーを募集し、3月の結成式を経て、4月から兵庫県内で本格的に展開している。
 登録ランナーは神戸市を中心に、兵庫県内の各地から応募が殺到。結成式の時点で予定の2倍を超える216人が登録するなど、活動は“好発進”したという。
 研修を受けたランナーが活動の招集、コース設定、安全管理を行うリーダー役を担当する。原則4人以上で走り、夜間でも目立つ専用ロゴ入りの黄色いTシャツを着て、市街地を定期的にパトロールする。
 新聞紙面やホームページ、フェイスブックなどによる情報発信にも力を注いでいる。コースの検索・記録や投稿、パトロール中の写真レポートといった機能があるスマートフォン専用アプリを活用し、ランナーは危険な場所などの写真をアップして最新情報を共有できる。

 ■常葉大健康プロデュース学部 木村佐枝子准教授インタビュー
 ―ランニングパトロールなどの防犯活動が必要とされる背景は。
 「近年は新潟市の女児殺害事件など、子どもが襲われる凶悪事件が後を絶たない。共通するのは下校中、1人になったわずかな時間に狙われている点だ。一方、防犯ボランティアの平均年齢は60代以上が大半で高齢化が顕著になっていて、担い手不足が叫ばれている。政府が示した『登下校防犯プラン』は五つの対策を掲げ、推進には警察、学校、自治体の三者が地域住民と連携することが不可欠としていて、新たな試みを必要とする機運が高まっていると言える」
 ―活動への期待は。
 「防犯ボランティアの平均年齢で最も高い割合を占めているのは60代。10代と20代は合わせても全体の2%ほどでしかない。若い世代の参加低迷は大きな課題だ。だが、ランニングは10~50代の幅広い年代で人気がある。この人々を取り込むことなどができれば課題の解決につながり、防犯の形を大きく変えられると期待している」
 ―継続への課題は。
 「防犯活動は自主的に細く長くやることが大切。忙しい現役世代や若い学生らに参加してもらうには、『楽しい』『地域に貢献している』と感じる要素を積極的に取り入れる工夫が求められる。個人に加え、企業の参加を促すべきだ。サッカーやバスケットボールなど、県内のスポーツ関連団体も取り込めたら活動は軌道に乗る。東、中、西部などで地域の核となるグループを育て、つなげることも重要」
 ―大学がSRPに協力できる部分とは。
 「常葉大浜松のボランティアサークルの学生は地元都田小児童の下校に付き添い、自宅近くまで送り届ける『まもろーる』を2014年から続けている。児童や地域との友好な関係構築や、先輩から後輩への引き継ぎは特に重視してきただけに、経験は何らかの形で生かせるはず。健康プロデュース学部の学生はランナーのケアやマネジメントの面でも協力できるだろう。学生はお金はないが、アイデアや意欲であふれている。産官学の連携・協働の活動として他大学とのネットワークも生かせれば、SRPの拡大発展に貢献できると思う」

 きむら・さえこ 1964年生まれ。神戸学院大大学院人間文化学研究科後期課程修了。京都外大学生相談室インテーカー(相談窓口担当者)を経て現職。人間文化学博士、臨床心理士、社会福祉士などの資格を持ち、専門は災害心理学や社会貢献学、ボランティア教育と幅広い。地元小学生の下校を大学生が見守るボランティア活動「まもろーる」などを通じ、地域連携による安全安心教育を研究している。

 ※静岡新聞2018年8月21日付朝刊掲載 →紙面PDFファイル
 

木村佐枝子准教授
木村佐枝子准教授
紙面イメージ(2018年8月21日付朝刊)
紙面イメージ(2018年8月21日付朝刊)

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