袴田さん「再審」 最後の砦の記事一覧
-
現在の日本に死刑制度は必要?① 制度の現状と国際的潮流【賛否万論】
現在の静岡市清水区で1966年に一家4人が殺害された事件で、死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第15回公判が22日に静岡地裁で開かれ、検察側は再び死刑を求刑、弁護側は無罪を主張し結審しました。判決は9月26日。司法の判断が注目されます。半世紀近くに及ぶ獄中生活で死刑執行の恐怖にさらされ続けた袴田さんは、仮釈放後もその影響とみられる拘禁反応に苦しんでいます。袴田さんの人生に大きく影響を与えた死刑。その在り方について国内では意見が分かれています。初回は死刑に対する政府の世論調査や国際的潮流、制度の仕組みなどの観点から考察していきます。 (社会部・薬袋貴信) 懸念や廃止 世界から勧告
-
再審法改正 全弁護士会決議 全国52団体「直ちに実現を」【最後の砦 刑事司法と再審】
日本弁護士連合会(渕上玲子会長)は29日、国に再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正を求める決議が静岡県弁護士会をはじめ、全国52の全ての弁護士会で採択されたことを明らかにした。渕上会長は「全国の弁護士の総意だ。冤罪(えんざい)被害者、その親族の多くが高齢化している現状に照らせば、もはや一刻の猶予もない。直ちに法改正を実現すべき」と訴えている。 日弁連によると、全国で唯一、採択していなかった第一東京弁護士会が同日の総会で決議した。本県弁護士会は昨年2月に決議している。 渕上会長は声明で、現在の再審法は施行から75年にわたって一度も改正されていないと説明。その上で、再審請求審の手続き規定はな
-
社説(5月24日)袴田さん裁判結審 長期審理の弊害 反省を
現在の静岡市清水区で1966年6月、みそ製造会社専務の一家4人が殺された事件で、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん(88)のやり直しの裁判(再審)が結審した。検察側は確定審と同様に死刑を求刑、弁護側は無罪を主張した。判決は9月26日に言い渡される。 事件からまもなく58年。袴田さん側にはあまりにも長い闘いだった。最高裁での死刑確定は80年12月。釈放された10年前まで「死刑囚」として常に死と隣り合わせの日々を送ってきた。緊張下での長期拘留の影響で、袴田さんには「拘禁反応」が残って意思疎通が困難とされ、法廷に立つことができなかった。 なぜこれほどまでに時間がかかったのか。失った時間は
-
袴田さん、大きな節目も変わらぬ日常【袴田さん再審結審】
再審公判が結審し、検察が改めて死刑を求刑した22日、袴田巌さんは浜松市中央区の自宅などで変わらぬ日常を過ごした。支援者によると、ここ最近は体調は良いものの、「体力はだんだん落ちている印象がある」という。 袴田さんは朝と昼に果物や野菜を食べた後、午後3時ごろから支援者とともに日課のドライブに出発した。東名高速道浜名湖サービスエリア(SA)などを巡った後にJR浜松駅を訪れ、姉ひで子さんと合流して同10時ごろに帰宅した。 死刑求刑を報じるニュース番組を見せないようにするため、自宅でテレビを見られないように配慮したという。ただ、ドライブなどに同行した支援者の白井恵さん(57)は「巌さんはいつもよ
-
58年の苦しみ、巌の言葉で語る 姉ひで子さん最終意見陳述【袴田さん再審結審】
58年分の思いを、弟が残してきた言葉で伝えた。1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)のやり直しの裁判(再審)を巡り、姉ひで子さん(91)は22日の最終意見陳述で、静岡地裁の裁判官3人を前に〈遠からず真実を立証して帰りますからね〉と弟が母親に宛てた手紙を読み上げた。直前に検察官が極刑を求刑したが、動じない。心神喪失の状態にあるとして出廷が免除された弟、無実を信じて逝った両親、きょうだい―。家族の「艱難(かんなん)辛苦」を胸に刻み、正義の実現を願って「弟巌を人間らしく過ごさせてください」と声を震わせた。 ひで子さん気負いなく 思い込めた4分間 白色の上着に華や
-
弁護団「濃い判決を期待」/地検「有罪立証できた」 公判終了後に双方会見【袴田さん再審結審】
袴田巌さん(88)のやり直しの裁判(再審)が結審した22日、弁護団と静岡地検の双方が公判終了後に記者会見を開いた。弁護団は「論理的で気持ちのこもった弁論を展開できた」と自信を示し、検察側の論告については「揚げ足取りに終始していた」と批判した。▶▶【一問一答】ひで子さん/弁護団 会見で思い語る ▶▶【一問一答】ひで子さん/弁護団 会見で思い語る 弁護団は静岡市民文化会館で会見した。判決が9月26日に指定されたことを受け、角替清美弁護士は「無罪を書くだけならあっという間に書ける。事件と向き合い、濃い内容の判決を書くために4カ月が必要なのだと理解したい」とした。 年明け早々、西嶋勝彦団長が急
-
袴田さん再審結審、判決は9月26日 検察が再度死刑求刑 弁護側無罪主張、姉ひで子さんが最終意見
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(88)の再審第15回公判が22日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれ、検察側は一審同様に死刑を求刑した。弁護団は無罪判決と謝罪を求め、証拠の捏造(ねつぞう)は明らかだとして「捜査機関の不正、違法な行為をはっきりと認定することが必要」と指摘。心神喪失の状態で出廷が免除された袴田さんに代わり、姉ひで子さん(91)が補佐人として「弟巌を人間らしく過ごさせてくださいますよう、お願い申し上げます」と最終意見を述べ、結審した。判決は9月26日に言い渡される。 死刑囚の再審は5例目。先の4
-
検察側論告要旨【袴田さん再審結審】
袴田巌さんの22日の再審第15回公判で、検察側の論告要旨は次の通り。 【はじめに】 犯人は事件当時、みそ工場で働き、2階の従業員寮で寝泊まりしていた被告であり、金品を得るために犯行に及んだことが認められる。「5点の衣類」を除いたとしても被告が犯人であることを示す証拠が多数ある。 【5点の衣類】 衣類の血痕の付着状況や血液型から、被害者や犯人の血と考えられる。被告の負傷部位と衣類の損傷箇所も符合する。みそタンクは被告の作業場であり、隠し場所として選ぶことは自然である。 事件から1年余り過ぎて発見されたのは、事件後に8トン余りのみそ原料がタンクに仕込まれ、誰も衣類に気付けなかったためで
-
Q&A 再審制度 新証拠あれば救済 見直し求める声も【袴田さん再審結審】
1966年に現在の静岡市清水区で一家4人が殺害された事件で、死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審公判が22日に静岡地裁で結審しました。検察側は再び死刑を求刑、弁護側は無罪を主張しています。 Q 再審制度とは。 A 有罪判決の確定後、無罪であることが明らかな証拠が新たに見つかったとき、救済のため裁判をやり直す制度です。本人のほか、弁護士や家族も再審開始を裁判所に申し立てることができます。 Q すぐに認められるのですか。 A 非常に難しく、長年「開かずの扉」とも言われてきました。最近になってDNA型鑑定など科学技術の進展や、裁判所の指揮による証拠開示をきっかけに認められる事件も出てきて
-
過去の死刑再審 求刑維持 「適切な判断を」と放棄も【袴田さん再審結審】
戦後、死刑事件の再審公判が開かれるのは袴田巌さん(88)で5件目で、過去の4件では、検察側はいずれも確定審同様に死刑を求刑した。ただ、その他の再審では「適切な判断を求める」として求刑を放棄したケースもある。 戦後、死刑事件で初めて再審無罪となったのは1948年に熊本県で祈禱(きとう)師一家4人が殺傷された免田事件だ。福岡高裁が79年、死刑が確定していた免田栄さんの再審開始を認める決定を出した。検察側は再審公判でも有罪立証を続け、死刑を求刑。熊本地裁八代支部は83年、無罪を言い渡した。 財田川、松山、島田の各事件で死刑が確定していた3人に対しても、再審公判で検察側は求刑を維持し、いずれも再
-
弁護側最終弁論要旨【袴田さん再審結審】
袴田巌さんの22日の再審第15回公判で、弁護側の最終弁論要旨は次の通り。 【緒論】 検察はまたしても、冤罪(えんざい)を作ろうとする極悪非道の論告を行った。再審公判で検察側が示した証拠は、これまで再審請求審などで無価値だと裁判所が評価したさまつな事情を主張したものばかりだ。むしろ捜査機関が当初から袴田さんを犯人と決めつけ、証拠を作り上げたことを示す数々の証拠が明らかになった。 【5点の衣類】 衣類を隠すとすれば犯行直後以外にない。検察側が主張するように当時のタンクのみその量が80~200キロだとしても、底からわずか約1・5~約3・35センチの高さにしかならず衣類を隠すことはできない。
-
【全文】袴田ひで子さん最終意見陳述
ひとたび狙われて、投獄されれば、肉体深く食い込む虐待、あの虚偽、虚構の、覆われた部屋、あの果てしなく、底知れぬ眩暈(めまい)、最早(もはや)正義はない、立ち上がって、眩暈(めくら)む、火花、壁に飛び散る赤い血、昔の悲鳴のように、びくりとし、立ち上がっても、投獄されれば、最早帰れない、最早正義はない。十三夜のお月さんが、南東に昇った 7 時の獄である。息子よ、お前はまだ小さい、分かってくれるか、チヤンの気持ちを、勿論分かりはしないだろう、分からないと知りつつ声の限りに叫びたい衝動に駆られて成らない、そして、胸いっぱいになった、真の怒りをぶちまけたい。チャンが悪い警察官に狙われて逮捕された、昭和
-
【一問一答】小長光健史・静岡地検次席検事 袴田さん再審結審
-求刑した理由について。 「論告で申し上げた通り。勤務先会社の専務取締役方に侵入し、未成年の子ども2人を含む一家4名を全員殺害し、売上金を強奪するとともに放火して専務取締役方を全焼させた、極めて悪質な事案であることなどを踏まえて死刑を求刑することとした」 -捏造された証拠だという弁護側の主張について。 「私自身が弁論内容詳細を把握できていないが、論告で申し上げた通り捏造(ねつぞう)できるようなものではないということは立証できたと考えている。各点申し上げた通りであるので。現実的に無理だと思う。着衣の関係等だが、いろいろな点でそこまでの捏造を現実的には行い得ないということはこれまでの立証で
-
【一問一答】ひで子さんと弁護団が会見 結審の思い語る 袴田さん再審
ひで子さん「一安心」/小川主任弁護士「素晴らしい弁論ができた」 ひで子さん「やっと終わったとほっとしている。午前の裁判はあまり聞いていなかった。死刑と言ったとき、私はあまり聞こえなかった。これで勝ったようなもんだと。皆さんもお疲れだと思いますがありがとうございました。9月26日に判決が出るそうです。それまでは一服しようと思います。巌に静岡に行くはのきょうでおしまいだでねと言ったの。「あ、そう」と言われたが、多分わかっている思う。9月26日にもう一回行くだけでおしまいだよ、と言った。26日になったら巌に説明しようと思います。巌は妄想の世界にいるから分かるかどうかわからないけど、説明しようと思い
-
袴田さんに検察が死刑求刑 弁護団は無罪求める
現在の静岡市清水区で1966年、一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審公判が22日、静岡地裁で開かれ、検察側は改めて死刑を求刑した。弁護団は無罪と謝罪を求め、姉ひで子さん(91)が最終意見を述べて結審した。判決は9月26日。
-
島田事件・赤堀さん安らかに 静岡でしのぶ会 生まれた縁に感謝【最後の砦 刑事司法と再審】
島田市で幼女が連れ去られ殺害された「島田事件」で死刑が確定後、1989年に再審無罪となり、今年2月に94歳で亡くなった赤堀政夫さんをしのぶ会が18日、静岡市内で開かれ、県内外から集った支援者や弁護士ら約50人が改めて別れを惜しんだ。汚名をすすいだ活動を一人ずつ振り返るとともに、赤堀さんを介して生まれた縁に感謝した。 赤堀さんは昨年12月に誤嚥(ごえん)性肺炎にかかり、今年2月に退院後は老衰で亡くなるまでは名古屋市の施設で過ごした。支援者として付き添ってきた島谷直子さんが「最後は穏やかに人生を全うされた」と報告。全員で黙とうした。 赤堀さんは静岡地裁で再審が始まるまで、死刑囚として仙台の拘
-
袴田さん姉・ひで子さん「58年の戦い あと少し」 浜松・再審公判報告会【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、再審公判中の袴田巌さん(88)=浜松市中央区=の支援団体は18日、再審公判の報告会を同区で開いた。冒頭、姉ひで子さん(91)があいさつし、22日の結審を前に「58年という年月は本当に長く、これで終わると思うとほっとする。巌が無罪になることは当たり前と思っている。もうしばらく頑張っていく」と心境を述べた。 報告会には主任弁護人の小川秀世弁護士と笹森学弁護士が出席した。小川弁護士は捜査手続きについて解説。後に正確性、適法性などの検証ができないなどの問題点を挙げ「無法地帯になっている」と指摘して取り調べの可視化を求めた。 笹森弁護士は捜
-
再審法改正へ「最初の一歩」の意義強調 超党派国会議連総会で台湾の弁護士講演 麻生氏も初出席
規定が乏しく冤罪(えんざい)被害者の救済につながっていないと指摘される再審法(刑事訴訟法の再審規定)を巡り、改正の早期実現を目指す超党派の国会議員連盟は16日、第4回総会を国会内で開いた。この10年間で2回にわたり再審法が改正された台湾で立法委員(国会議員)として主導的な役割を担った弁護士が講演。与野党で一致できる点から改正が始まった経緯を振り返り、最初の一歩を踏み出せたことが「非常に大きかった」と強調。法改正が裁判所や検察庁の意識に前向きな変化をもたらしていることも指摘した。 来日したのは、台湾全国弁護士連合会の尤美女理事長。2012~20年に立法委員を務めていた。総会には議連最高顧問の
-
死刑囚の肩書「取り除いてあげたい」 袴田さんの姉、静岡の支援集会で訴え
現在の静岡市清水区で1966年、一家4人を殺害したとして死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(88)の再審無罪を求める集会が11日、同市葵区であった。再審公判で有罪立証を続けた検察側が22日の次回公判で論告・求刑を予定する中、参加者は「死刑求刑を許さない」とけん制。姉ひで子さん(91)は「普通の人間として過ごさせたい。『死刑囚』というものを早く取り除いてあげたいと思っている」と望んだ。 ひで子さんは会場を埋めた約280人の参加者を前に、涙ぐみながら「後押しがあったから再審開始になりました。ありがとう」と感謝した。22日の最終意見陳述については「私の意見というより巌が書いた手紙を読もうと思
-
袴田さん弁護団が意見書 被害者遺族の陳述に反対 静岡地裁に提出
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)のやり直しの裁判(再審)を巡り、弁護団は10日、静岡地裁(国井恒志裁判長)に対し、被害者遺族の意見陳述を認めるべきではないとする意見書を出した。次回公判は22日。 次回の第15回公判は検察側の論告・求刑と弁護団の最終弁論、袴田さんの姉ひで子さん(91)の最終意見陳述を経て結審する予定。 弁護団によると、殺害された専務夫妻の孫から意見陳述の申し出があった。口頭での陳述ではなく、袴田さんに対する処罰感情などを記した書面を提出することを希望しているという。 弁護団は意見書で、再審公判は前
-
袴田さん無罪論告を 支援団体 静岡地検に要請【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)のやり直しの裁判(再審)を巡り、袴田さんの支援団体は8日、静岡地検に22日の次回公判で無罪論告するよう要請した。静岡地裁に対しては、傍聴席を拡大するよう改めて要求し、前回公判で弁護人らに支援団体のバッジを外させたことなどに抗議した。 22日の次回公判では、検察の論告・求刑や弁護団の最終弁論が行われる。支援団体は地検への要請書で、これまでの有罪立証を「抽象的な可能性を指摘するばかりで、弁護人の主張にも明快な反論がなされていない」と指摘した。「袴田さんに再び死刑を求刑することは断じて許され
-
静岡から再審法改正機運を 県弁護士会がPT 市町議会へ働きかけ強化【最後の砦 刑事司法と再審】
静岡県弁護士会(梅田欣一会長)は今春、再審法改正プロジェクトチーム(PT)を立ち上げた。袴田巌さん(88)の再審公判が静岡地裁で最終盤を迎えた中、戦後一度も改正されたことがない同法の改正を地元から訴える。当面は、法改正を求める国宛ての意見書を可決するよう市町議会への働きかけを強めていく方針。 再審法は、刑事訴訟法の再審規定を指す。19カ条しかなく、冤罪(えんざい)被害者の早期救済につながっていないと指摘されてきた。日本弁護士連合会は国会議員への要請活動に力を入れ、3月には超党派による議員連盟が誕生。加入議員は230人を突破した。 県議会は同月、国に法改正を求める意見書を全会一致で可決した
-
袴田さん再審公判 地裁が支援バッジの装着制限、パーカの文字にも要請 識者「不要な規制」
袴田巌さん(88)の再審公判で、静岡地裁が弁護団に支援団体のバッジを外すよう要請したり、傍聴した男性支援者の上着に入った「HAKAMADA」の文字をテープで隠すよう制限したりしたことを巡り、地裁は26日、理由や根拠、判断者を尋ねた取材に「いずれも回答しない」とした。識者からは「不要な規制」との指摘が上がっている。 市販のパーカを着用していた男性によると、24日の第14回公判の傍聴に際し、地裁の職員からまず、胸につけた支援団体のバッジをしまうよう指示された。その後、職員が背中の「FREE HAKAMADA」の文字に気づき、「事件と関係するようなアピールは隠してください」と求めたという。従わな
-
再審格差への対応 最高裁「承知せず」 改正議連総会【最後の砦 刑事司法と再審】
冤罪(えんざい)被害者の救済につながっていないと指摘される再審法(刑事訴訟法の再審規定)の早期改正を目指す超党派の国会議員連盟は25日、第3回総会を国会内で開き、最高裁に問題意識を尋ねた。「再審格差」が存在するとの批判がある中、その対応を最高裁内部でしているかどうかについて担当者は「今の時点で承知していない」と述べ、再審無罪事件の検証は「していない」とした。 最高裁事務総局刑事局の近藤和久第2課長が再審制度の概要などを説明し、質疑に移った。議連事務局長の井出庸生衆院議員(自民党)が現行法に規定のない証拠開示について「(裁判官として)条文があった方がやりやすいか」と質問したのに対し、近藤氏は
-
袴田さん再審立証終了 「何と言おうと巌は無実」 ひで子さん、気持ち代弁へ
24日に弁護団と検察側双方の証拠調べ手続きをほぼ終えた袴田巌さん(88)の再審公判。5月の次回公判で、袴田さんの姉ひで子さん(91)は弟に代わって意見を述べる。「58年闘ってきた。検察が何と言おうと巌は無実です」。弟が自分の口で訴えたかったであろう言葉を伝えようと思う。 袴田さんは長い間身体を拘束され、死刑執行の恐怖と隣り合わせの拘置所生活で精神に支障を来した。静岡地裁は「心神喪失状態にある」と判断し、再審公判への出廷を免除。ひで子さんは補佐人として審理の行方を法廷で見続けてきた。 24日の第14回公判では、袴田さんが第1次再審請求した1981年に自ら書いた意見書が証拠として採用された。
-
【特別寄稿】検察は「間違い」への姿勢を間違えた 袴田さん再審公判を傍聴して デイビッド・T・ジョンソン/ハワイ大教授
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の第14回公判が24日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれ、検察側と弁護団の双方が立証をほぼ終えた。最終盤を迎えた袴田さんの再審は海外の研究者の目にどう映るのか。日本の刑事司法に詳しく、実際に地裁で傍聴した米国・ハワイ大のデイビッド・T・ジョンソン教授(社会学)が静岡新聞に寄稿した。 静岡で4人を殺害した罪で68年に死刑判決を受けた袴田巌氏の再審裁判を傍聴するため、3月に静岡に行った。袴田氏は、200時間を超える取り調べの末に強要された自白や、検察側が殺害当夜に袴田氏が着ていたと主張す
-
In Hakamada’s Retrial, Prosecutors Are Wrong about Being Wrong David T. Johnson, Professor of Sociology, University of Hawaii
In March I went to Shizuoka to watch the retrial of Hakamada Iwao, who was sentenced to death in 1968 for the murder of four people in Shizuoka.Hakamada was convicted on the basis of highly dubious evidence, including a confession that was coerced after more than 200 hours of interrogation, and five
-
袴田さん再審、立証終了 5月22日結審へ 弁護団「無罪判決に自信」
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第14回公判が24日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。犯行着衣とされた「5点の衣類」に付着した血痕と袴田さんのDNA型は「一致しない」と結論づけた鑑定を前回に引き続き主な審理テーマとした。「信頼性に疑問がある」とする検察側は、意見書や捜査報告書などの証拠を提示しながら説明。その後、弁護団が反証し、公判を通じた双方の立証はほぼ終了した。静岡地裁は、5月22日の次回公判で検察側の論告・求刑と弁護団の最終弁論などを実施するとした。 終了後の記者会見で弁護団は、立証活動を振り返り「
-
掛川で東海北陸7県議会議長会議 再審法改正 国に要望へ 静岡県提起
圏域の共通課題を協議する東海北陸7県議会議長会議(座長・中沢公彦静岡県議会議長)が22日、掛川市内で開かれた。静岡、愛知、三重、岐阜、富山、石川、福井の各県議会が提出した10議案を審議し、いずれも原案通り決定した。議決事項は要望書として各省庁に提出する。 本県は刑事訴訟法の再審規定(再審法)改正を提起した。再審請求手続きでの証拠開示に制度的保障がないことや、再審開始決定後も再審公判に移行するまで長期間を要している実情などを問題視し、国に議論の加速を求める内容。鈴木澄美副議長による提案理由説明の後、中沢議長が袴田事件に言及し「県内では関心が非常に高い。袴田巌さんが再審請求に長年、苦労されたこ
-
村山弁護士「再審法改正を」 袴田さん支援団体が勉強会 浜松市【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、再審公判中の袴田巌さん(88)=浜松市中央区=の支援団体は20日、袴田事件の裁判や再審法改正について考える勉強会を同区で開いた。2014年に静岡地裁の裁判長として袴田さんの再審開始を決定した村山浩昭弁護士が講演し、「冤罪(えんざい)で苦しんでいる人たちをより早く救済する道をつくらなければいけない」と再審法改正の必要性を訴えた。 袴田さんが有罪とされてきた要因を解説した。有罪判決の構造として、5点の衣類が中核的証拠となっていると述べ「犯行現場付近で血が大量に付着した衣類が見つかり、別の機会にズボンの端布が袴田さんの実家から発見されたこ
-
袴田さん弁護団「DNA型鑑定結果は無罪の証明に」 検察は否定 再審第13回公判
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第13回公判が17日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。犯行着衣とされる「5点の衣類」のうち、白色半袖シャツに付着した血痕と袴田さんのDNA型は「一致しない」と結論づけた鑑定について、弁護団は高い信頼性があるとして「無罪を証明すると同時に、衣類が捏造(ねつぞう)されたことを強く示唆する」と主張。一方、検察側は「鑑定結果は信用できず、犯行着衣ではないことを示す証拠とはなり得ない」と対立した。 DNA型鑑定を手がけたのは、弁護団が推薦した本田克也筑波大教授(当時、現名誉教授)。再
-
袴田さん弁護団「地裁は逃げずに判断を」 評価割れてきたDNA型鑑定【再審第13回公判】
「きちんと判断してほしい」ー。再審第13回公判終了後の記者会見で、弁護団の伊豆田悦義弁護士は、DNA型鑑定に関する冒頭陳述に込めた思いを語った。 第2次再審請求審で、再審開始を認めて袴田さんを釈放した2014年の静岡地裁決定は、弁護団が推薦した筑波大の本田克也教授(当時、現名誉教授)が手がけたDNA型鑑定について、手法や説明を「全てが全面的に信用できるとまでは判断していない」としつつ、批判的な検討を加味しても「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」と捉えた。 一方、地裁決定を取り消した18年の東京高裁決定は本田鑑定の証拠価値を否定した。審理を差し戻した20年の最高裁決定では、裁判官5人のうちの
-
袴田さんへの処罰感情 遺族が書面で陳述へ 5月に静岡地裁【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の静岡地裁で続くやり直しの裁判(再審)で、専務の遺族が意見陳述を申し出たことが16日、関係者への取材で分かった。処罰感情などを伝える意向とみられる。 関係者によると、被害者遺族の意見陳述は5月22日の第15回公判で、検察側の論告・求刑に先立つ形で行うことを想定している。口頭での陳述ではなく、意見を記した書面の提出を望んでいるという。同公判では弁護団の最終弁論と袴田さんの姉ひで子さん(91)による最終意見陳述も予定され、結審する見通しだ。 袴田さんの再審は昨年10月に始まり、検察側は有
-
袴田さん再審「判決公判の傍聴席拡大を」 支援団体が静岡地裁に要請
現在の静岡市清水区で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の支援団体は11日、再審公判の傍聴席を拡大するよう静岡地裁に要請した。判決を含めてあと4回の公判が見込まれる中、とりわけ判決公判では傍聴希望者の殺到が予想されると指摘。「予期せぬ混乱を防ぐためにも、傍聴席の拡大やモニターによる傍聴を可能に」と訴えた。 要請したのは、各地の支援団体でつくる「袴田巌さんの再審無罪を求める実行委員会」。これまでも同様の申し入れをしてきたが、実現には至っていない。また、司法行政文書の開示を申し立てたところ、地裁が傍聴席の拡大要請に対する意思決定の記録については存否を答えず、抽選
-
再審法改正目指す国会議連 麻生氏が最高顧問に 加入議員拡大、法務省などに聞き取り
規定の不備によって冤罪(えんざい)被害者の救済につながりにくいと指摘される再審法(刑事訴訟法の再審規定)を巡り、早期の改正を目指す超党派の国会議員連盟(柴山昌彦会長)は9日、第2回総会を国会内で開き、自民党の麻生太郎副総裁が最高顧問に就く役員案を承認した。入会議員は設立時点の134人から210人に拡大。日本弁護士連合会と法務省の双方への聞き取りも実施した。 日弁連は、再審法改正実現本部の鴨志田祐美本部長代行が現行法の問題点を指摘した。袴田巌さん(88)の再審が確定するまでの経緯を例に挙げ、①検察官の手元に眠る証拠を開示させるルールがない②再審開始決定に対する検察官の不服申し立てが許されてい
-
「死刑制度に関心を」 福岡事件支援者、浜松で講演
福岡市で1947年に商人2人が射殺された福岡事件で、無実を訴えながらも強盗殺人罪で75年に死刑が執行された西武雄元死刑囚らの再審運動を支援する熊本県玉名市の僧侶古川龍樹さん(64)が6日、浜松市中央区で講演した。福岡事件の概要を説明し、死刑制度について「執行順番の決定基準など私たちには知らないことばかり。もっと関心を持つべきだ」と訴えた。 福岡事件では、実行犯とされ「誤射」を主張した石井健治郎さん(2008年死去)は恩赦で無期懲役に減刑された一方、首謀者とされた西さんは死刑が執行された。 古川さんによると、当事者や親族の死去、存命親族の協力が得られないなどの事情により、現在の刑事訴訟法で
-
戦後一度も改正されない再審制度 仕組みと課題
日本の再審制度は、裁判のやり直しを求める手続き(再審請求手続き)と、やり直しの裁判(再審公判手続き)の2段階の構造になっています。再審の開始が確定すると、再審公判に移る流れです。これら再審に関する規定は刑事訴訟法の第4編再審(435~453条)にあり、再審法とも呼ばれています。 国内で初めて再審制度が法で定められたのは、治罪法(1882年施行)によってです。明治刑訴法(1890年)に続く大正刑訴法(同1924年)は無罪を有罪にするといった被告側にとって不利益な再審も認めていましたが、現行刑訴法(1949年)は日本国憲法に照らして廃止しました。しかし、それ以外は大正刑訴法をほぼ引き継いだため
-
最大の争点「5点の衣類」とは 犯行着衣かねつ造か
事件発生から1年2カ月後の1967年8月31日、現場近くのみそ工場で、タンク内から血痕が付着した白色半袖シャツ、ねずみ色スポーツシャツ、鉄紺色ズボン、白色ステテコ、緑色ブリーフが見つかりました。これらは「5点の衣類」と呼ばれています。 犯行着衣と認定も...「色」に疑問 すでに始まっていた袴田さんの公判で、検察側はパジャマを犯行着衣だと主張していました。しかし、衣類の発見後に冒頭陳述を変更し、衣類を犯行着衣に改めました。袴田さん自身は当初から、自分の衣類ではないと訴えていました。控訴審では三度、ズボンの着装実験が行われましたが、いずれもはくことができませんでした。ただ、裁判所は、ズボンの
-
イチからわかる「袴田事件」 事件と裁判の経緯を担当記者が解説
1966年6月30日未明、旧清水市(現在の静岡市清水区)のみそ製造会社専務方から出火し、焼け跡から一家人の遺体が見つかりました。県警は強盗殺人事件として捜査を開始し、同8月、当時30歳だった住み込み従業員の袴田巌さんを逮捕しました。 「自白」 袴田さんは日本フェザー級6位にまで駆け上った元プロボクサーです。引退後、みそ会社で働いていました。逮捕後の取り調べは1日平均12時間、最大16時間20分に上り、起訴される直前に「自白」しましたが、裁判では一貫して無実を主張しました。 1968年の静岡地裁判決は「自白の獲得にきゅうきゅうとして物的証拠に関する捜査を怠った。厳しく批判され、反省されな
-
「コミュニケーション重視」 静岡地検 小長光次席検事が会見
静岡地検の次席検事に着任した小長光[こながみつ]健史氏(52)が3日、静岡市葵区の同地検で記者会見を開いた。「警察だけでなく、裁判所や弁護士会との関係性についても相互理解が大切。庁内ではいろいろな職員と話をして、風通しの良い職場環境をつくりたい」と、内外でコミュニケーションを重視する考えを語った。 福岡市出身で2000年に任官した。東京地検を皮切りに神戸、岡山地検や最高検などに勤務し、東京地検の刑事部副部長を経て1日付で着任した。県内の勤務は初めて。 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定している袴田巌さん(88)の再審公判については、「4月
-
島田事件 赤堀さん 名古屋市内で納骨 5月、静岡でしのぶ会
島田市で幼女が連れ去られ殺害された「島田事件」で死刑が確定後、1989年に再審無罪となり、今年2月に94歳で亡くなった赤堀政夫さんの四十九日の法要と納骨式が2日、名古屋市の寺で営まれ、晩年に寄り添った関係者10人が参列した。赤堀さんを支援してきた市民団体「島田事件対策協議会」は、しのぶ会を5月18日に静岡市で開く。 赤堀さんは再審無罪で自由の身となり、名古屋市で長く暮らした。遺骨は、赤堀さんの生活を支えた大野萌子さん=2013年死去=の眠る墓に納められた。 参列者は赤堀さんとの思い出を懐かしんだ。趣味のカラオケや通院に付き添ってきた水野幸治さん(81)=名古屋市=は「マイクを握ったら離さ
-
【袴田さん再審公判】3日間の証人尋問終了 血痕黒褐色化「揺るがしようのない立証」 弁護団総括
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第12回公判が27日、静岡地裁(国井恒志裁判長)であった。証人尋問の最終日を迎え、検察・弁護側双方の証人計5人全員に同時に尋ねる「対質」が行われた。1年以上みそに漬かった血痕の色調という争点を巡り、弁護側証人の3人は専門的知見を踏まえて赤みは失われて黒褐色化すると改めて証言。検察側証人からも弁護団の主張に沿うような見解が示され、弁護団は公判終了後の記者会見で「揺るがしようのない状況まで立証できた」と3日間を総括した。 対質は証言台の前に五つの椅子が並べられ、裁判官が証人5人に質問
-
【袴田さん釈放10年】雪冤いまだ実現せず 進む「老い」 体の衰え目立つ
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)が、静岡地裁の再審開始と死刑・拘置の執行停止決定で釈放されて27日で10年の節目を迎えた。検察の不服申し立てが退けられる形でようやく再審は始まったが、雪冤(せつえん)は実現していない。死刑囚の身であり、老いは避けられない。日本弁護士連合会(日弁連)や支援者は同日、救済を妨げている原因は再審法(刑事訴訟法の再審規定)の不備にあり、「法治国家なのにルールがないのは異常状態。失われた10年だ」として地元・静岡の地から早期の法改正を訴えた。 再審公判の重大な局面となる証人尋問が行われた27日
-
【袴田さん釈放10年】日弁連、再審法改正訴え 静岡市で街頭活動
袴田さんの釈放10年に合わせ、日弁連の再審法改正実現本部は27日、再審公判が開かれた静岡市葵区の静岡地裁の前や青葉シンボルロードで再審法改正の必要性を訴える街頭活動を展開した。静岡地裁の裁判長として袴田さんの再審開始と死刑・拘置の執行停止を決めた村山浩昭弁護士も参加。「再審運動の象徴が袴田事件であり、袴田巌さんであり、ひで子さん。静岡から法改正(の必要性を)を発信するのは当然」と指摘した。 村山さんは実現本部の一員。県弁護士会や支援団体とともに街頭に立ち、問題点をまとめたパンフレット入りの特製バッグを通行人に配った。村山さんは「初めての経験だが、法改正に向けて必要なことはなんでもやる」と決
-
【袴田さん釈放10年】日弁連会長、再審法改正へ知事らと面談
日弁連の小林元治会長らは27日、川勝平太知事や難波喬司市長との面談に臨み、再審法改正への賛同を要請した。 県弁護士会の杉田直樹会長らが同席した。川勝知事との面談で、小林会長は今月11日に再審法の早期改正実現を目指す超党派の国会議員連盟が発足したことに触れ「国民世論が盛り上がっている」と強調。静岡地裁で続く袴田巌さんの再審公判にも触れ「夏ごろには判決が出るのではないか。それに合わせて再審法の改正ができれば」と願った。 面談終了後、小林会長は「(知事は)趣旨は十分理解したとの回答だった。何らかの対応をしてもらえるのでは」と期待を込めた。 難波市長は報道陣の取材に対して「(再審開始までに)こ
-
弁護側証人「赤みの保持あり得ない」改めて説明 【袴田さん再審公判】 釈放10年、日弁連は再審法改正訴え
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第12回公判が27日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれ、弁護側証人の石森浩一郎北海道大教授(物理化学)への反対尋問が行われた。袴田さんが釈放されて同日で10年。日本弁護士連合会は地裁前で、再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正を求める街頭活動を展開した。 石森氏は尋問で、1年以上みそに漬かった血痕について「赤みを保つことはあり得ない」と改めて証言した。みそタンクで発見されて犯行着衣とされた「5点の衣類」は、みその仕込みが始まるまでの3週間で赤みを失っていたとの前提の下、蒸した大量
-
血痕の赤み「残らない」弁護側証人3人が断言【袴田さん再審公判】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第11回公判が26日、静岡地裁(国井恒志裁判長)であり、前日に続いて証人尋問が行われた。再審開始の大きな根拠となった鑑定を手がけた弁護側の証人3人は「1年以上みそに漬かった血痕に赤みが残ることはない」と断言。旭川医科大の清水恵子教授(法医学)は、検察側が反論の証拠として提出した共同鑑定書について「抽象的な可能性論を繰り返すだけで仮説の域を出ておらず、われわれの鑑定結果を左右しない」と強調した。 ▶関連記事 証人全員に質問27日実施 弁護団「色問題」立証に自信 5点の衣類は事件
-
弁護団「色問題」立証に自信 証人全員に質問27日実施【袴田さん再審公判】
静岡地裁で続く袴田巌さん(88)の再審公判は25、26の両日、1年以上みそに漬かった血痕に赤みが残るかどうかをテーマに検察・弁護側双方の証人計5人全員が証言した。検察側は、この「色問題」を再審請求審で担当してきた東京高検の検事を「最も精通している」(静岡地検の奥田洋平次席検事)として投入。一方の弁護団は立証に自信を深める。尋問最終日となる27日は5人の証人全員を証言台の前に並ばせ、裁判所の主導で質問していく「対質尋問」を予定。関係者は「裁判官がどんな質問をするかを見れば心証が分かるのでは」と注視する。 ▶関連記事 血痕の赤み「残らない」弁護側証人3人が断言 袴田さんの第2次再審請求の
-
再審規定「問題」 袴田事件で見解 静岡市長会見
静岡市の難波喬司市長は26日、刑事訴訟法の再審規定について「不十分で、大いに問題がある」との認識を示した。市役所静岡庁舎で行われた定例記者会見で記者の質問に答えた。 難波市長は、同市清水区で発生した一家4人殺害事件で、元プロボクサー袴田巌さん(88)の再審開始決定が確定するまで9年を要したことを念頭に、「今のように時間がかかる状況ははっきりいって異常だ」と強調した。再審規定の見直しに行政としてどう関わるかはまだ整理できていないとしつつ、「市として何ができるのか考えていきたい」と述べた。
-
【袴田さん再審公判】5点の衣類「白すぎる」 検察側証人から思わぬ“援護”
長期間みそに漬かった衣類に付着した血痕の赤みは残りうるのか、消えるのかー。静岡地裁で続く袴田巌さん(88)のやり直しの裁判(再審)は25日、犯行着衣とされる「5点の衣類」の血痕の色変化を巡り、専門家の証人尋問に入った。検察側証人は、再審開始の決め手となった弁護団の鑑定を疑問視。一方で衣類の生地について「白すぎる」と述べ、検察側が再審請求審で実施したみそ漬け実験に苦言を呈する場面も。弁護団からは思わぬ〝援護射撃〟に驚く声が上がった。 証人として出廷したのは池田典昭九州大名誉教授と神田芳郎久留米大教授。共に法医学者で池田氏は日本法医学会の元理事長、神田氏は現理事長。検察側は池田氏の供述調書と、
-
袴田さん再審で証人尋問開始 血痕の赤み「否定できず」 検察側・法医学者指摘【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第10回公判が25日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれ、3日間にわたる証人尋問が始まった。犯行着衣とされる「5点の衣類」に付着した血痕の色調変化を巡り、検察側証人で法医学者の神田芳郎久留米大教授は血痕に赤みが残る可能性について「いろんな状況を考えれば否定できない」と述べた。 弁護団はこれまでの再審公判で、再審請求審と異なり立証責任は検察にあるとして「血痕の赤みが残ることが間違いないと立証できなければ反証としては不十分だ」とけん制している。 神田氏は尋問で、再審開始を認めた20
-
【追想メモリアル】複数の「再審」に関わる 「袴田事件」弁護団長/西嶋勝彦さん(1月7日死去 82歳)
長男は内輪の葬儀で「仕事と酒の人生でした」と振り返ったという。 仕事の方は弁護士1年目の1965年から、事務所の先輩に誘われ「八海事件」に携わる。山口県で起きた夫婦殺害事件で、主犯とされた被告の判決は死刑、無罪、死刑と変遷していた。同県で一家6人が殺された「仁保事件」の被告(一、二審死刑)も同じ拘置所にいた縁で弁護し、どちらも無罪を勝ち取った。 さらに島田市で女児が殺害された「島田事件」や「徳島ラジオ商殺し」などの再審請求にも関わるようになり、「袴田事件」の弁護団長に。一家4人をあやめ、放火した犯人として死刑が確定した袴田巌さんは静岡地裁で再審公判中。今年の年賀状に「もうすぐ死刑台から取
-
袴田さん支援団体 早期の無罪訴え 釈放10年前に浜松で【刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、再審公判中の袴田巌さん(88)=浜松市中央区=の釈放から10年を迎える27日を前に、支援団体は20日、早期の無罪判決を求める街頭演説や署名運動を開始した。24日までJR浜松駅前で連日行う。 活動するのは「浜松 袴田巌さんを救う市民の会」。初日はメンバー約10人がのぼり旗を手に立ち、マイクを使って「速やかな無罪判決を」「検察は証拠の捏造(ねつぞう)を認めるべき」などと訴えた。再審法の改正を求める署名への協力も呼びかけた。 同会の寺沢暢紘共同代表は「釈放されたのに10年間も審理が引き延ばされた。少しでも早く袴田さんの名誉と尊厳を回復さ
-
再審公判の警備 静岡地裁「必要」 弁護団の中止申し入れに【最後の砦 刑事司法と再審】
一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審公判を巡り、弁護団が静岡地裁に対し、傍聴者を監視する警備員の配置や傍聴落選者に速やかな帰宅を促す掲示をやめるよう申し入れたことについて、地裁は19日、意見として聞くとした上で「円滑な審理を行うという観点から必要な警備・掲示を行っている」と回答した。弁護団への取材で分かった。 再審公判では、傍聴スペースの四隅に警備員が配置されている。傍聴者は筆記用具を除いて携帯電話などの持ち込みが禁止されているほか、金属探知機を使用した所持品検査を受ける。 弁護団は2月、こうした地裁の対応を「過剰で不必要な制限」として中止するよう申し入れた。
-
再審法の改正求め 静岡県議会 意見書可決 「公平性損なう」【最後の砦 刑事司法と再審】
静岡県議会は18日、戦後一度も改正されていない再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正を国に求める意見書案を全会一致で可決した。冤罪(えんざい)被害者の人権救済について、国はもちろん「地方自治体にとっても重要課題」と受け止めた上で、わずか19カ条しかない現行法では再審請求審の適正さが「制度的に担保されず、公平性も損なわれている」と指摘している。 意見書では、捜査機関の手元に残された証拠が再審段階で明らかになり、冤罪被害者を救済する大きな原動力になった事例が多いと説明。だが、証拠を開示させる規定がないため、裁判官や検察官の対応によって差が生じているとした。再審開始決定に対して検察官が不服を申し立
-
袴田さん支援団体 「冤罪」巡る勉強会 主任弁護人が講演 浜松市
現在の静岡市清水区で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、再審公判中の袴田巌さん(88)=浜松市中央区=の支援団体は17日、冤罪(えんざい)の原因と対策を考える勉強会を同区の浜松復興記念館で開いた。弁護団の主任弁護人の小川秀世弁護士が講演し、袴田事件について「虚偽の検証調書や実況見分調書などにより事件自体がゆがめられた」と述べた。 小川弁護士は被害者全員に多数の刺し傷があり、誰も逃げられず、隣人が物音を聞いていないとの状況などから「犯人は複数犯で、袴田さんでないことは明らか。事件を正確に把握していれば、本来疑われる余地もなかったはず」と訴え、「捜査機関による故意の違法行為が冤罪の一番の原因
-
「袴田さん無罪に」 静岡地裁に請願書 東京の支援団体【刑事司法と再審】
一家4人を殺害したとして死刑が確定したものの、静岡地裁でやり直しの裁判(再審)が始まった袴田巌さん(88)の支援団体「無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会」(東京)は14日、無罪判決を求める請願書を静岡地裁に提出した。7368人分の署名を添えた。 同団体は1980年に発足。請願書提出後に県庁で記者会見した門間幸枝副代表は「一刻も早く無罪になることを願う」と話した。 袴田さんの再審公判は、25~27日の証人尋問などを経て5月22日に結審する。早ければ8月にも判決が言い渡される可能性がある。
-
再審公判「警備過剰」 袴田さん支援団体、地裁に是正求め要請書
現在の静岡市清水区で1966年、一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審開始を認めた2023年の東京高裁決定から13日で1年を迎えた。その後、再審開始が確定し、同年10月に静岡地裁で再審が始まった。審理は終盤に入り、5月にも結審する見通し。一方、支援者は公判開廷日の警備が過剰で傍聴機会も制限されているとして地裁の対応を疑問視してきた。同日、是正を求める要請書を改めて提出。「あしき前例にしてはいけない」と訴えた。 要請したのは、各地の支援団体で構成する「袴田巌さんの再審無罪を求める実行委員会」。申し入れは今回が5度目で、これまでと同様、再審公判開廷日の地裁庁舎内への立ち
-
再審法改正へ「立法府の英知結集を」 日弁連が院内集会 袴田さん姉「一歩ずつ」
日本弁護士連合会(小林元治会長)は12日、不備があると指摘してきた再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正を求める集会を都内の参院議員会館で開いた。改正実現を目指す超党派の国会議員連盟が前日に誕生したことを受け、小林会長は「不合理な状況が続き、冤罪(えんざい)に苦しむ人を見続けている。もはや看過できず、立法関係者には英知を出してほしい」と期待。与野党の議員が法改正への決意を表明した。 静岡地裁で再審公判が続く袴田巌さん(88)の姉ひで子さん(91)も浜松市から駆けつけ、議連の立ち上げを「本当にうれしい。全部いっぺんに変えるのは難しいだろうから、一つずつでも進んでくれれば良いと思っている」と喜ん
-
再審法改正へ国会議連設立 超党派134人で始動「成し遂げる」
規定が乏しく、冤罪(えんざい)を訴えている人の救済につながっていないと指摘される再審法(刑事訴訟法の再審規定)の早期改正実現を目指す超党派の国会議員連盟が11日、設立された。134人が入会し、会長には元文部科学相の柴山昌彦衆院議員が就いた。柴山氏は「(法改正は)大変困難な道だが、必ず成し遂げなくてはいけない。さまざまな当事者、関係団体の話を聞きながら成果に結びつけていく」と述べた。 議連の呼びかけ人は自民党の麻生太郎副総裁のほか、公明党の山口那津男代表、立憲民主党の泉健太代表、日本維新の会の馬場伸幸代表、国民民主党の玉木雄一郎代表ら与野党の幹部がそろい踏みとなった。衆院第1議員会館で開かれ
-
【再審法改正・国会議連設立】「高き山」越えられるか 静岡県内議員ら、超党派集結の意義強調
再審法(刑事訴訟法の再審規定)改正実現の難しさは、戦後一度も改正されてこなかった歴史そのものが物語る。11日に誕生した早期改正実現を目指す超党派の国会議員連盟。議員たちは困難さを認識しているからこそ、議連が立ち上がったことの意義を強調した。県内からも与野党の議員が複数参加。「必ず法改正につなげていく」と誓った。 越えるべき山は「相当高い」|。議連の幹事長に就いた逢坂誠二衆院議員(立憲民主党)はその理由に、再審法が改正されずに「塩漬け状態」であること、法務・検察が「法的安定性」を理由に法改正に否定的であることなどを挙げた。事務局長の井出庸生衆院議員(自民党)も当初は「島の見えない海に船をこぎ
-
再審中の袴田さん、米寿88歳に 姉ひで子さんや支援者が祝福
現在の静岡市清水区で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定し、静岡地裁でやり直しの裁判が行われている袴田巌さんが10日、88歳の誕生日を迎えた。浜松市中央区の自宅で誕生日会が開かれ、姉のひで子さん(91)や支援者が米寿を祝った。 支援者からケーキをはじめ、花束や緑色のシャツ、爪切りが手渡されると、袴田さんは時折笑顔を見せたり、カメラに向かってポーズを取ったりした。「年を数えるのは23歳で終わった」と袴田さん。緑色のシャツは「毎日の生活で着ていく」と話し、誕生会が終わると早速、このシャツに着替えて日課のドライブに出発した。 ひで子さんは「お互い良い年齢になった」とほほ笑みながら「(
-
社説(3月8日)再審法改正議連 世論喚起へ先頭に立て
刑事事件のえん罪被害者の速やかな救済につながる法整備を目指す超党派の国会議員連盟(議連)が近く発足する。立法府の国会を構成する議員が動き出した意義は大きい。しかも議連の呼びかけ人には党首や大物議員が名を連ねる。日本弁護士連合会(日弁連)が求めている刑事訴訟法の裁判のやり直し(再審)に関する規定(再審法)改正に向けた一歩になる。 再審法は戦後一度も改正されていない。日本の再審制度は、再審を開始するかどうかを判断する再審請求審と、有罪か無罪かを決める再審の2段階構造で、再審請求審に何十年もかかるケースが目立つ。日弁連は再審法に通常の裁判のような具体的な規定が乏しいのが原因として、証拠開示のルー
-
100年手つかずの「法」 宿題解決 共通の思いを【最後の砦 刑事司法と再審㉗第6章 遠き「黄金の橋」⑤完】
島田市で1954年に幼女が誘拐・殺害された「島田事件」で死刑が確定し、89年に静岡地裁で再審無罪となった赤堀政夫さんが、2月22日に死去した。享年94。荼毘(だび)に付された日、長年の支援者だった鈴木昂さん(84)は、藤枝市の自宅で「果たせなかった宿題がある」と語った。 死刑制度の廃止に加え、再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正だ。79年に財田川、免田、松山の3事件の再審開始が相次いで認められた後、島田事件の支援団体が編集した折り込み通信は〈なぜ再審がなかなか開かれず、開かれたとしてもそれまでに何十年もかかるのか〉と疑問を呈した。 振り返れば、島田を含めた四つの死刑事件が再審無罪となった
-
「究極的には命の問題」【最後の砦 刑事司法と再審㉖第6章 遠き「黄金の橋」④福岡事件㊦】
福岡事件の再審運動を姉とともに両親から引き継いだ古川龍樹さん(64)=熊本県玉名市=は、事件について「司法の問題が凝縮されているし、その悲劇も極まっている」と心底感じる。 石井健治郎死刑囚が恩赦によって無期懲役に減刑された日、西武雄死刑囚の死刑は執行された。古川さんらは西さんの遺族を探し、説得し、2005年に第6次再審請求にこぎ着けた。しかし間もなく、請求人となった遺族が亡くなり、判断が示されることなく手続きは終了を余儀なくされた。現在は再審請求すらできない状況にある。 古川さんの父、泰龍さんが開山した生命山シュバイツァー寺の名は、托鉢(たくはつ)中にノーベル平和賞受賞者アルベルト・シュ
-
再審法改正へ「静岡県 先頭に」 日弁連会長 知事と27日面会【最後の砦 刑事司法と再審】
日本弁護士連合会の小林元治会長は6日、静岡新聞社の取材に対し、川勝平太知事と27日に面会することを明らかにした。不備が指摘される再審法(刑事訴訟法の再審規定)について、改正への賛同を求める。小林会長は「県民の代表として先頭に立っていただけるとありがたい」と述べた。 27日は、2014年に静岡地裁が袴田巌さん(87)の再審開始と死刑・拘置の執行停止を認める決定を出し、袴田さんが釈放されてから10年の節目を迎える。また、終盤に入った袴田さんの再審公判で法医学者らの証人尋問が予定される。 これに合わせ、日弁連の再審法改正実現本部のメンバーが本県を訪れる。街頭活動などに参加し、袴田さんの地元から
-
恩赦実現へ転換迫られ【最後の砦 刑事司法と再審㉕第6章 遠き「黄金の橋」③福岡事件㊥】
社会党の神近市子衆院議員らは1968年、再審特例法案を国会に提出した。連合国軍の占領下に起訴され、裁判で死刑が確定したものの未執行の死刑囚を対象とした。神近議員は、政治的影響や旧刑事訴訟法時代の悪癖が残る人権軽視の捜査などによって冤罪(えんざい)の可能性が高いためだ、と理由を説明した。 やり直しの裁判は主に、無罪を言い渡すべき、または原判決より軽い罪を認めるべき明らかな証拠を新たに発見したときに始まる。法案では、再審開始要件の「明らかな証拠」を「相当な証拠」に緩和。検察官による再審開始決定への異議申し立てを禁じることも盛り込み、現在の法改正運動にも通じている。 神近議員は、時間的な制約で
-
教誨師 支援運動の礎に【最後の砦 刑事司法と再審㉔第6章 遠き「黄金の橋」②福岡事件㊤】
再審特例法の制定を模索した神近市子衆院議員が、島田事件の主任弁護人を務める鈴木信雄弁護士に協力を依頼したのはなぜか。神近議員からの手紙に理由の一端がのぞく。〈福岡事件では「類似事件関係者と連携して新しい運動を展開しよう」とされているようです。これはぜひ必要〉―。 「福岡事件」とは、戦後間もない1947年に福岡市で起きた殺人事件。軍服の闇取引の最中に、中国人と日本人の商人2人が射殺された。西武雄さん=当時(32)=が首謀者、石井健治郎さん=同(30)=が実行犯とされ、計7人が強盗殺人罪で起訴された。西さんは「取引の手付金として現金を持ち帰ったが、事件とは無関係」として無実を主張。石井さんは抗
-
再審法改正議連、呼びかけ人に与野党"大物" 自民麻生氏や公明山口代表ら 11日に設立総会
戦後一度も改正されず、不備が指摘されている再審法(刑事訴訟法の再審規定)の早期改正を目指す超党派の国会議員連盟に関して、自民党の麻生太郎副総裁や公明党の山口那津男代表ら26人が呼びかけ人になっていることが4日、関係者への取材で分かった。11日に設立総会が開かれる。 立憲民主党の泉健太代表や日本維新の会の馬場伸幸代表、国民民主党の玉木雄一郎代表も名を連ねた。呼びかけ人の代表は柴山昌彦元文部科学相。一方、静岡地裁で再審が行われている袴田巌さん(87)の地元である県内関係の議員は呼びかけ人には入っていない。 設立総会に向け、議連の事務局は4日、全国会議員に対し入会案内を出した。 再審法の改正
-
再審法改正「超党派の課題」 信念貫いた自民元重鎮【最後の砦 刑事司法と再審㉓第6章 遠き「黄金の橋」①政治的立場違えど】
〈罪なくして死刑が執行されるという日本裁判史上最大の不名誉を救う道は、御研究中の法律が一日も早く制定される以外にないと信じます〉。後に冤罪(えんざい)と認められる「島田事件」の主任弁護人、鈴木信雄弁護士(1898~1979年)が67年、社会党法務部会部長の神近市子衆院議員(1888~1981年)に宛てた文章は〈お手伝させていただく道があれば本懐でございます〉として、こう続く。〈世論を興すための運動の費用に寄付をさせていただくとか、法務省に陳情するとか、超党派の問題として自民党に呼びかけるとか(自分は自民党の古い所属です)〉 当時、神近議員らは「死刑囚に対する再審特例法」の制定を検討してい
-
再審法改正、超党派の国会議員連盟誕生へ 3月中に設立、袴田さん姉期待「前進」
規定が不十分なため冤罪(えんざい)を訴えている人の救済につながっていないと指摘される再審法(刑事訴訟法の再審規定)を巡り、法改正の早期実現を目指す超党派の国会議員連盟が3月中に設立されることが、29日までの複数の関係者への取材で分かった。 静岡地裁で再審公判が続く袴田巌さん(87)は、再審を求めてから実際に開始されるまでに42年の歳月を要した。日本の再審制度は再審請求手続きと再審公判手続きの2段階構造になっている中、再審法の条文は19しかなく、再審を開くかどうかを判断する再審請求手続きについて審理をどう進めていくかの具体的なルールが乏しい現状がある。 さまざまな課題のうち、日本弁護士連合
-
再審法改正は義務教育「鍵」 京都の高校生が探究 冤罪被害「誰でも可能性」【最後の砦 刑事司法と再審】
一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の裁判をやり直すことが決まるまでに40年以上が費やされ、改めて不備が指摘される再審法(刑事訴訟法の再審規定)。戦後一度も改正されておらず、その理由を探る高校生たちが京都市にいる。活動で見えてきたのは、再審制度が十分に理解されていない現実。生徒は「冤罪(えんざい)を身近に感じられる体験型の学習や、再審を巡る課題を知ることができる学習を義務教育に取り入れることが大切」と提案する。 京都府立嵯峨野高2年の久下あすかさん(17)、杉浦花菜さん(17)、鈴木結香さん(17)、福原遼介さん(17)の4人は、課題探究活動のテーマに再審法を選んだ。昨
-
傍聴者監視 中止を静岡地裁に求める 袴田さん弁護団
静岡地裁で昨年10月から行われている袴田巌さん(87)の裁判のやり直し(再審)で、傍聴者の常時監視や手荷物を強制的に預けることは「過剰で不必要な制限」だとして、袴田さんの弁護団は26日、同地裁の国井恒志裁判長に中止を申し入れた。 袴田さんの再審公判では、警備員が傍聴席の四隅で傍聴者の方を向いて着席している。傍聴者は筆記用具を除いて携帯電話やスマートウオッチなどの持ち込みは禁止され、金属探知機を使用した所持品検査も行われている。申し入れ書では携帯電話がポケットに入っているのを忘れてボディーチェックを受けた人が傍聴できなくなる事例もあったと指摘し、「あまりにも行き過ぎた対応」と主張。県庁で会見
-
「島田事件」赤堀さん死去 死刑廃止や適正捜査願う 配慮と感謝、優しい人柄
1954年に島田市内で幼女が殺害された「島田事件」で死刑確定後に再審無罪となり、22日に94歳で死去した赤堀政夫さんは、死刑制度の廃止や違法捜査、障害者差別の根絶を晩年まで願い続けた。一方、周囲への配慮と感謝を絶やさない優しい人柄で知られた。 ※画像タップで拡大してご覧になれます 「皆さん、どうもありがとう」。89年1月31日、静岡地裁で再審無罪判決が言い渡されて釈放された赤堀さんは、地裁前で右拳を突き上げ、集まった支援者に生還をアピールした。35年ぶりに自由の身となった。 冤罪(えんざい)ながら死と隣り合わせだった日々の記憶はいつまでも鮮明だった。「35年と口で言うのは簡単
-
静岡県弁護士会の次期会長 梅田欣一さん【時の人】
弁護士の道を志したのは大学時代。在野で正義の実現を目指すことが自分の性分に合っていると直感した。「市民のお役に立てる弁護士会にしていきたい」。静岡県弁護士会の次期会長として立志の頃の決意を改めて胸に刻む。 取り組みの具体例として「土曜日法律相談」の活性化を挙げる。2018年4月にスタートしたが利用件数は低迷。「平日に仕事をする方にとっては需要があるはず」と周知方法などを見直して利用者拡大を図る。 1月1日に能登半島地震が発生し、災害時の支援の大切さを再認識した。「熱海土石流(21年)や台風15号(22年)による被害では、支部を超えて会員が生活再建などの被災者支援に当たった。今後も弁護士会
-
フランス出身ジャーナリスト西村さん 刑事司法の課題考える 浜松、袴田さん支援団体
現在の静岡市清水区で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、再審公判中の袴田巌さん(87)=浜松市中央区=の支援団体は17日、刑事司法について考える勉強会を同区の浜松復興記念館で開いた。フランス出身ジャーナリストの西村カリンさんが講師を務めた。 同国のラジオグループや日刊紙の特派員で、AFP通信東京特派員も務めた西村さん。逮捕後の袴田さんの取り調べについて「(捜査機関側が)一方的にしゃべっていて違和感がある」などと指摘。再審に向けた手続きも複雑で「再審がなるべく行われないようにしていると思える」と語った。 冒頭、袴田さんの姉ひで子さん(91)があいさつし、「再審公判も折り返しを越えた。終わ
-
「5点の衣類」血痕 検察「不自然でない」弁護団「赤み消える」 袴田さん再審で主張、けん制
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)のやり直しの裁判(再審)は15日、犯行着衣とされる「5点の衣類」に関する審理が本格化し、ヤマ場を迎えた。弁護団が「衣類が1年以上みそ漬けにされたことが間違いない、との証明なくして有罪はない」とくぎを刺す中、検察側は「犯行着衣だと指し示すさまざまな証拠がある。付着した血痕に赤みが残る可能性があれば、犯行着衣だと否定されない」と主張を始めた。 「赤みが残る抽象的な可能性しか立証できないと暗に認めた」。公判終了後の記者会見で、弁護団の間光洋弁護士は検察側の冒頭陳述をそう評した。これまで第2次
-
血痕の色巡り応酬 袴田さん再審 公判ヤマ場に【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審第9回公判が15日、静岡地裁(国井恒志裁判長)であった。犯行着衣とされた「5点の衣類」に付着した血痕の色を巡り、検察側は「長期間みそ漬けされた血痕の赤みが残る可能性がある」と改めて主張した。弁護団は「抽象的な可能性を指摘しているに過ぎず、赤みが残ることが『間違いない』と立証されたとは言えない」と批判し、赤みが残る5点の衣類は「捏造(ねつぞう)を示している」と訴えた。 最大の焦点となっている血痕の色変化について、弁護団と検察側が同じ日に主張・立証するのは初めてで、審理はヤマ場を迎え
-
「捏造、徐々にエスカレート」袴田さん弁護団が指摘 再審第8回【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審第8回公判が14日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。弁護団は、捜査機関が人権を無視した取り調べで獲得した袴田さんの「自白」に基づき、侵入・脱出方法や被害金に関する証拠を作り出したと指摘。事件直後から行われてきた捏造(ねつぞう)が「徐々にエスカレートし、集大成として(犯行着衣の)『5点の衣類』が作られた」と強調した。一方、検察側は「根拠が極めて薄弱だ」と反論した。 弁護団は冒頭陳述で、侵入・脱出方法についての実況見分調書や捜査報告書は内容が虚偽だと主張した。侵入口とされる高さ
-
検察も取り調べ録音再生 弁護団は「的外れ」と批判 袴田さん再審第8回公判【最後の砦 刑事司法と再審】
14日に静岡地裁で開かれた袴田巌さん(87)の再審第8回公判で、検察側が取り調べ録音テープの一部を法廷で再生した。袴田さんの「自白」を有罪立証に用いないと改めて明言する一方、自白が無実を示していると分析した弁護団の心理学鑑定を「明らかに誤っている」と指摘。その立証に使用した。ただ、弁護団は「的外れ」と切り捨てた。 検察側は、犯行動機や侵入・逃走経路の自白部分を取り上げ、「取調官の想定に迎合しながら供述していたものではない」などと主張した。「凶器」の購入先に関する自白についても「実際に経験しなければ困難な内容」であり、「取調官から誘導されることなく供述できていたことがテープから認められる」と
-
袴田ひで子さん91歳に 「裁判 早く終わって」
現在の静岡市清水区で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定し、静岡地裁でやり直しの裁判が行われている袴田巌さん(87)の姉ひで子さんが8日、91歳の誕生日を迎えた。浜松市中央区の自宅で食事会が開かれ、袴田さんと支援者から祝福を受けた。 裁判は5月に結審する方向で調整が進んでいる。ひで子さんは「裁判が終わると、とてもいい1年になると思う。肩の荷が下りる。早く終わってほしい」と願った。 部屋は誕生日を祝うきらびやかな装飾が施され、支援者からセーターや花束、くつ下などのプレゼントを受け取った。袴田さんからは、かわいらしいピンク色のクマのぬいぐるみが手渡された。クマについて袴田さんは「力
-
傍聴席拡大を要請 袴田さん支援団体 4度目【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定したものの、静岡地裁でやり直しの裁判(再審)が行われている袴田巌さん(87)の支援団体は6日、再審公判の傍聴席拡大などを求める要請書を地裁に提出した。同様の要請は4回目だが、実現に至っていない。 袴田さんの再審公判は地裁で2番目に広い傍聴席48席の法廷で行われている。要請書では「裁判の公開は憲法の要請」と強調し、設備や人員を最大限活用して傍聴機会を増やすことを改めて求めたほか、空席が出た場合の補充を可能にする方法の検討も要望した。傍聴席の抽選に外れた人に速やかな帰宅を促す看板の文言の撤回、再審公判当日の警備体制について示した
-
袴田さん弁護団 「証人尋問却下を」 静岡地裁に意見書
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、弁護団は5日、検察側が請求した証人尋問を却下するよう求める意見書を静岡地裁に提出した。同日、弁護団が明らかにした。 事件では、1年2カ月後に現場近くのみそタンクでシャツやズボンなど「5点の衣類」が見つかり、袴田さんの犯行着衣とされた。弁護団は、衣類の血痕に赤みが残っているのは不自然として、捜査機関の証拠捏造(ねつぞう)を指摘している。一方、検察側は「血痕に赤みが残り得る」とした法医学者7人の共同鑑定書などを証拠に挙げる。 検察側は共同鑑定書を手がけた法医学者ら2人の尋問
-
大川原社長(吉田出身)が講演 人質司法「冤罪の温床」 静岡で袴田さん支援集会【刑事司法と再審】
生物兵器製造に転用可能な装置を無許可で輸出したとして逮捕・起訴され、後に起訴が取り消された横浜市の「大川原化工機」の大川原正明社長(74)=吉田町出身=が4日、静岡市清水区で講演した。実体験に基づき、弁護士の同席が容疑者の権利として認められていない取り調べや、否認すると勾留され続ける「人質司法」の問題を指摘。冤罪(えんざい)の「温床になっている」と強調した。 大川原さんは2020年3月に逮捕・起訴され、初公判直前の21年7月に起訴が取り消された。6回目の請求で同年2月に保釈が認められるまで11カ月にわたり身体を拘束された。東京都と国に損害賠償を求めた訴訟で、警視庁公安部の警察官が事件を「捏
-
「証人尋問請求 却下を」 袴田さん弁護団 意見書提出へ【刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判で、弁護団は31日、検察側の証人尋問請求を却下するよう求める意見書を静岡地裁に提出する考えを明かした。 事件から約1年2カ月後に現場近くのみそタンクでシャツやズボンなど「5点の衣類」が見つかり、袴田さんの犯行着衣とされた。弁護団は、衣類の血痕に赤みが残っているのは不自然として、捜査機関による証拠の捏造(ねつぞう)を指摘。一方、検察側は「血痕に赤みが残り得る」と主張し、法医学者7人の共同鑑定書などを証拠に挙げる。 証人尋問は3月に予定されている。弁護団は血痕に赤みが残らないと
-
再審法改正「実現する年に」 国会議員らが決意新た 市民団体、都内で集会
刑事裁判のやり直しに関する刑事訴訟法の規定(再審法)は不十分で不備があるとして、市民団体「再審法改正をめざす市民の会」は30日、法改正の実現に向けた集会を都内の衆議院第二議員会館で開いた。法改正を求める3万8206人分の署名を国会に提出。袴田巌さん(87)の再審判決を控える中、参加者は「正念場の一年。法改正を実現する年にしなくてはならない」と決意を新たにした。 市民の会の共同代表で、映画監督の周防正行さんが自民党の鈴木貴子衆院議員に署名を手渡した。鈴木議員は「国家権力によって事実がねじ曲げられることがあってはならない。政権与党こそ(法改正に向け)リーダーシップを果たさなくてはいけない」と述
-
袴田さん支援団体 再審公判のポイントを解説 浜松で勉強会
現在の静岡市清水区で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、再審公判中の袴田巌さん(87)=浜松市中央区=の支援団体は27日、裁判のポイントを解説する勉強会を同区の浜松復興記念館で開いた。弁護団の笹森学弁護士がリモートで講演し、犯行着衣とされたズボンの共布について発見されるまでの経過に不可解な点があると解説した。 裁判で検察側は、事件後に現場近くのみそタンクで見つかった「5点の衣類」が犯行着衣と主張している。共布は「5点の衣類」の後に袴田さんの実家で発見され、確定判決は衣類と袴田さんをつなげる重要な証拠と位置づけた。 笹森弁護士は実家の捜索が別の証拠品を目的にしていたことや、袴田さんの母親
-
袴田さん姉ひで子さん「絶対勝つ」 福井で集会、死刑廃止求める
1966年の静岡県一家4人殺害事件で死刑が確定し、静岡地裁で再審公判中の袴田巌さん(87)の姉ひで子さん(90)は27日、福井市内で開かれたシンポジウムで「絶対勝つと思っている」と訴え、「冤罪で苦しんでいる人とともに闘っていきたい」と死刑廃止や再審法改正を求めた。 シンポジウムは中部弁護士会連合会が主催。死刑廃止や再審手続きの問題点を考えるために企画し、市民ら約80人が参加した。 ひで子さんがあいさつし、拘置所での面会を繰り返した年月、2014年に釈放された瞬間を回想。再審開始となり「皆さまのお力添えがあったからこそで、本当にありがとうございます」と述べた。 拘禁症状が変わらない袴田さ
-
袴田さん再審弁護団 新主任に小川秀世事務局長 静岡地裁に変更届
現在の静岡市清水区で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定したものの、静岡地裁でやり直しの裁判が行われている袴田巌さん(87)の弁護団は23日、西嶋勝彦団長の急逝を受け、小川秀世事務局長を新たな主任弁護人とする変更届を地裁に提出した。 7日に82歳で死去した西嶋さんは長年にわたり主任弁護人を、小川弁護士は副主任弁護人を務めてきた。 刑事訴訟法は、複数の弁護人がいる場合は主任を定めるとしている。一方で当面は団長を置かず、小川弁護士は事務局長を続ける。小川弁護士は取材に「これからも(弁護団の)みんなで力を合わせて無罪判決を勝ち取りたい」と述べた。 西嶋さんは90年に袴田弁護団に加わ
-
記者コラム「清流」 語らない議員たち
楽観視し過ぎていた。裁判のやり直しに関する法律(再審法)の国会議員アンケート。忙しくても答えてもらえるよう設問を絞り、回答依頼の電話も掛けた。 与野党が対立するようなテーマではない。日弁連は各地の単位会ごと地元議員を訪ね、問題点を説明。にもかかわらず、自民党の回答率は2.9%。380人中11人しか答えなかった。 興味がない、票につながらない、責任を負いたくない、検察ににらまれたくない―。口を閉ざす理由を、そう解説する議員がいた。 県内も自民党議員の半数以上が無回答。裏金事件に揺れ「信頼回復を」と勇ましいが、都合のいいことしか語らない姿が不信を招いていると気づかないのか。 再審法の改正
-
社説(1月21日)再審法改正 県内国会議員が先頭に
えん罪を訴える人の刑事裁判のやり直し(再審)手続きに長い年月を要する現状を改めるため、日本弁護士連合会(日弁連)が求めている刑事訴訟法の再審規定(再審法)の改正は、国会議員の多くが賛同しなければ実現しない。しかし、静岡新聞社が全国会議員を対象にしたアンケートの低い回答率をみる限り、不備が指摘される再審制度への問題意識は議員間で広がっていないのは明らかだ。 アンケートは現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審開始も踏まえて実施した。回答者は国会議員711人のうち187人で、回答率は26・3%。法改正の鍵を握る与党の自民は2
-
袴田さん「関係ない」無実の訴え 取り調べ録音再生 再審第7回公判 【最後の砦 刑事司法と再審】
無実を訴える声は次第にその力を失っていった。17日に静岡地裁で開かれた袴田巌さん(87)の再審第7回公判で、袴田さんの取り調べの録音テープが再生された。「何で殺さなきゃなんないの」。当初から犯行を強く否認していた袴田さんに対し、捜査機関が犯人と決めつけて謝罪や反省を迫り、“自白”に追い込む様子が生々しく流れた。 「袴田さんがまだ元気な頃です」。弁護人が前置きして再生した任意同行時の取り調べの様子。袴田さんは「動機がないよ何にも」「関係ないものはないですよ、本当に」などと力強く強調していた。しかし、警察官や検事は「ほんとのことを言わなきゃ」「袴田。袴田。黙ってたって
-
袴田さん弁護団「衣類は捏造、決着済み」 検察側の蒸し返しと批判 再審第7回公判
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審第7回公判が17日、静岡地裁(国井恒志裁判長)であり、前日の第6回に引き続き弁護団が反証した。事件から1年2カ月後に見つかり犯行着衣とされた「5点の衣類」の色に関する実験や鑑定に基づき「衣類は捏造(ねつぞう)だと示している。巌さんは無罪」と強調。再審請求審で決着がついた論点を検察側が蒸し返しているとして「再審公判を長期化させている」と批判した。 袴田さんの取り調べ状況を踏まえ、「捜査機関が犯人に仕立てた」とも主張。取り調べの録音テープを一部再生した。犯人と決め込む警察官や検事が自
-
袴田さん弁護団「被害者縛られていた可能性」 複数犯説巡り新主張 検察側は反論 再審第6回公判
「被害者は縄のような物で縛られて刺殺された」。16日に静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた袴田巌さん(87)の再審第6回公判で、弁護団の主張が法廷に響いた。従前からの複数犯説を裏付けようと、再審請求審で開示された県警の写真記録を基に新たな見立てを展開した。一方の検察側は閉廷後の会見で、「縄で縛ったような痕跡は認定できない」と反論し、主張は早々に対立した。 「これは今まで具体的に話してこなかったんですが」。同日予定していた審理が終盤を迎えた午後4時40分ごろ、弁護団の小川秀世事務局長は神妙な面持ちで新しい主張を説明し始めた。写真は露出やピントが合っていないため判然としない部分があるとしつつ、
-
「5点の衣類」発見経過や損傷…血痕問題以外からも「捏造疑い」 袴田さん弁護団 再審第6回公判
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審第6回公判が16日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。事件から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかったズボンやシャツなど「5点の衣類」について、袴田さんの犯行着衣だとする検察側に弁護団が反論。最大の争点とされる衣類に付着した血痕の色を巡る問題を抜きにしても、犯行着衣とするには「合理的な疑い」が生じ、捜査機関による捏造(ねつぞう)の疑いが浮かび上がると訴えた。 また、遺体の写真を分析し直した結果、被害者は縄などで縛られ身動きが取れない状態で犯人に刃物で刺されたとの新たな主
-
ボクシング新田会長 袴田さん支援に尽力【ニッポン スポーツ人の肖像】
ボクシング世界王者の誕生、人間教育を目指す。川崎新田ジムの新田渉世[しょうせい]会長(56)は横浜国大教育学部で学んだ。「悩みを抱えて入門する子も多い。教育者の端くれとして話を聞き、問題の解決に向かうが、強い選手を育成するのがプロスポーツの本分でもある」と情熱を燃やす。元プロボクサーで無実への戦いを続ける袴田巌さんの支援にも尽力する。 反骨の少年時代 小学6年生の時、ボクシング漫画の名作「あしたのジョー」に夢中になった。「人間はなぜ生き、死ぬのか」と悩む哲学的な少年だった。リングで真っ白に燃え尽きる主人公の姿に感動し「生きるとはこういうこと。俺はプロボクサーになる」と決めた。 減量を
-
袴田さん弁護団「被害者縛られていた」 複数犯説、裏付け主張へ【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)のやり直しの裁判(再審)で、弁護団が、被害者は犯行当時に縄などで縛られ、身動きが取れない状態で犯人から刃物で刺されたとの新たな見立てを主張する方針を固めたことが14日までに、複数の関係者への取材で分かった。 弁護団は再審公判で、事件について袴田さんの犯行ではなく、複数人による犯行だと説明している。専務一家4人の遺体が撮影された写真を精査したところ、首や腕に縄などで縛られていた痕跡がうかがえるという。単独犯の場合、一人で被害者全員を縛らなくてはならない。多数の刺し傷があったことも踏まえ、
-
袴田さん弁護団長・西嶋氏が死去 日本の再審裁判をリード
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、静岡地裁でやり直しの裁判が続く袴田巌さん(87)の弁護団長を務める西嶋勝彦氏が7日午後11時17分、都内の病院で死去した。82歳。近年は間質性肺炎を患っていた。13日、近親者で葬儀を済ませた。同日、弁護団が会見して明らかにした。 福岡県出身で、65年に弁護士登録。「八海事件」や「仁保事件」、「徳島ラジオ商事件」など、多くの冤罪(えんざい)事件・再審事件に関わった。静岡県内でも、89年に静岡地裁で再審無罪が言い渡された「島田事件」や、三島市で発生した「丸正事件」の再審弁護団員として活躍。冤罪事件に半生をさ
-
「意見表明と議論が基本」井柳美紀/静岡大教授 【最後の砦 刑事司法と再審㉑第5章国会議員アンケートより④インタビュー】
静岡新聞社が全ての国会議員を対象に行った再審法に関するアンケートで、回答したのは4分の1に当たる187人だった。正直に「勉強不足で分からない」とした上で設問に無回答のまま返信した人もいたが、4分の3はそれさえしなかった。政治思想から地方政治まで詳しい静岡大人文社会科学部の井柳美紀教授(政治学)は、現状をどう分析するのか。 ―4分の3の議員が答えなかったことへの見解を。 「関心がないのか、意見がないのか。何も示さないのが不思議。どうなのか、と聞きたくなる。国民の代表である国会議員が意見を表明し、議論するのが代議制民主主義の基本であるべきだろう」 ―結果全体の感想は。 「回答率は与党の低
-
「単なる体裁」疑念も 見守りたいと異口同音【最後の砦 刑事司法と再審⑳第5章国会議員アンケートより③刑事手続の在り方協議会】
「ちょうど昨日開催された会議において、再審請求審における証拠開示について協議が行われ、次回以降も行われることとなった。充実した議論がなされるよう、引き続き法務省としても尽力してまいりたい」 2023年11月9日の参議院法務委員会。小泉龍司法相が答弁で言及した「会議」とは、「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」を意味している。 再審請求審での証拠開示について、16年に改正された刑事訴訟法の付則第9条3項は〈政府は、この法律の公布後、必要に応じ、速やかに、検討を行う〉としている。法務省が検討課題を整理する場として設置したのが、在り方協議会だ。 静岡新聞社の国会議員アンケートで、複数の
-
支持者意識と隔たり 司法への干渉と敬遠か【最後の砦 刑事司法と再審⑲第5章国会議員アンケートより②県民調査との比較】
静岡新聞社が2023年12月に18歳以上の静岡県民617人を対象に行った意識調査で、再審法制を整えるべきと回答したのは65・5%だった。前年より7・6ポイント上昇した。整える必要がないとしたのは3・9%。逆に2・8ポイント少なくなった。 再審法制の見直しについて政府・与党の姿勢を問うと、「検討している姿勢は全く見えてこない」「あまり見えてこない」が72・3%と圧倒的。支持政党別に見ると、自民党支持者の60・1%が、公明党支持者の71・4%がそう答えていた。 一方で再審法に関する国会議員アンケートでは、自民党議員のうち答えたのは2・9%。公明党議員は15・3%に過ぎなかった。与党を支持する
-
与党議員の“沈黙” 法改正 目立つ無関心 何も答えないのが無難【最後の砦 刑事司法と再審⑱/第5章 国会議員アンケートより①】
静岡新聞社が全国会議員(711人)を対象に実施した再審法(刑事訴訟法の再審規定)に関するアンケートで、与党議員(自民党・公明党)の回答率はわずか4・6%にとどまった。与党以外の議員が61・4%だったのとは対照的だ。日本弁護士連合会(日弁連)や冤罪(えんざい)被害者は法改正を求めるが、実現の鍵を握る与党議員の“沈黙”は何を意味するのか。 自民党議員(380人、2023年11月の調査開始時)のうち、回答者はたった11人(回答率2・9%)に過ぎない。「外務大臣の立場にあり、所管外の事項についてのお答えは差し控えたい」と避けた上川陽子衆院議員(静岡1区)を含め、「そもそも
-
再審法「改正必要」185人 国会議員アンケート 自民回答率3%未満 【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)のやり直しの裁判(再審)に関連し、静岡新聞社は、刑事訴訟法の再審規定(再審法)について全国会議員(711人)を対象にアンケートを実施した。回答した187人(回答率26・3%)のうち、185人が法の不備と法改正の必要性を認めた。改正する必要がないとした人はゼロだった。自民党議員(全380人)の回答率は2・9%、公明党(同59人)も15・3%にとどまったが、自公以外(同272人)は61・4%と差が見られた。 再審法は19の条文しかなく、規定の不備が無実の人の救済を妨げているとして日本弁護士
-
法改正 かぎ握る 国会議員の見解は 本社アンケート詳報【最後の砦 刑事司法と再審】
静岡新聞社が全ての国会議員を対象に行った再審法(刑事訴訟法の再審規定)に関するアンケートの自由記述欄では、個別の設問には無回答とした議員を含め117人が再審法に対する見解や思いをつづった。長年にわたって法の不備を指摘してきたのは、袴田巌さん(87)や弁護団だけではない。再審を求めて闘う国内各地の関係者にとって、法改正は共通の悲願だ。立法府を担う国会議員はその願いをかなえることができるはずだが、現状や在り方についてどう考えているのか。考えを一部抜粋する。 (衆は衆院議員、参は参院議員。所属政党は調査開始時点。無は無所属) 袴田事件経過 制度の欠陥 「再審格差」解消必要 ■現行再審法に対する
-
憲法「現実に合わない」最多 静岡新聞社県民意識調査20年 情勢激動、揺れる改正論
静岡新聞社が2004年末に開始した日本国憲法に関する県民意識調査は、23年末で20回目を迎えた。この20年間で集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法の成立(15年)、ロシアのウクライナ侵攻(22年)など国内外の情勢は揺れ動き、県民の憲法観、とりわけ戦力不保持などを定めた9条を巡る考え方に影響を及ぼしてきた。一方で有識者は「憲法は国のあり方についてのグランドデザイン(全体構想)だ」と指摘し、9条に限らず幅広い視点で憲法論議を活発化させる必要性を訴える。 (社会部・木村祐太) 9条は国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄し、戦力を保持しないことを定める。政府は自衛隊の存在について憲
-
【2023年 十大ニュース 静岡県内】袴田さんの再審始まる/清水立体工事現場で橋桁落下
静岡新聞社は県内の今年の十大ニュースを選んだ。1位は袴田巌さん(87)の再審開始。2位は静岡市清水区で発生した国道1号静清バイパスの立体化工事現場での橋桁落下事故。3位に静岡、浜松両政令市長選で新市長誕生、が入った。 ①袴田巌さんの再審始まる 再審開始の決定を受けて笑顔を見せる袴田ひで子さん(右手前)=3月13日、東京・霞が関 ドライブを終え帰宅する袴田巌さん。散歩中に再審開始が認められたが、拘禁症状がある袴田さんの体調に配慮し、決定内容は伝えられなかった=3月13日、浜松市中区 現在の静岡市清水区で1966年、一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さ
-
2024年5月にも結審か 袴田さん再審公判
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)のやり直しの裁判を巡り、弁護団は25日、来年5月下旬に結審する方向で協議が進められていることを明らかにした。ただ確定的ではなく、証人尋問などの日程次第で変更の可能性があるとしている。 同日、静岡地裁と静岡地検、弁護団の3者による年内最後の打ち合わせが非公開であった。終了後に取材に応じた弁護団によると、審理が順調に進めば検察側の論告・求刑と弁護団の最終弁論が来年5月下旬に実施される見通しという。 地裁は、来年3月までの公判日程については指定済み。袴田さんの犯行着衣とされた「5点の衣類」
-
ひで子さん「再審法改正 早く実現を」 日弁連、都内で集会
日本弁護士連合会(小林元治会長)は23日、不備を指摘している再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正機運を盛り上げようと、市民集会を都内で開いた。申し立てから42年の歳月を経て再審が開始された袴田巌さん(87)の姉ひで子さん(90)らが参加した。ひで子さんは「巌だけが助かればいいとは思っていない。何とか早く、再審法改正をお願いしたい」と訴えた。 ひで子さんら参加者は、「布川事件」で再審無罪となり、8月に76歳で亡くなるまで冤罪(えんざい)の根絶に奔走した桜井昌司さんをしのびつつ、再審法改正実現への決意を述べた。 パネル討論では、袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会事務局長の山崎俊樹さん(6
-
袴田巌さん再審開始 「5点の衣類」ヤマ場へ【追跡2023①】
2023年が終わる。長く閉ざされていた袴田巌さん(87)の再審の扉が開かれ、5回の公判が行われた。静岡市清水区の国道1号静清バイパスでは立体化工事中の橋桁が落下し作業員2人が死亡。6月の台風2号では県内各地で大きな被害が出た。4月の統一地方選で静岡、浜松の両政令市に新しい市長が誕生。サッカーJ1復帰を目指した県内J2チームは明暗が分かれた。悲喜こもごもの今年のニュースを振り返り、その後を追った。 「良い年でした。何年かかろうが、良い年に向かって頑張っている。だから、来年はもっと、素晴らしい年になると思っている」 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死
-
犯人性「成り立たず」 袴田さん弁護団主張 再審第5回公判 静岡地裁
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した後、裁判のやり直しが認められた袴田巌さん(87)の再審第5回公判が20日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。大きな争点となっている「犯行着衣」のほかに袴田さんの犯人性を裏付ける事情があるかどうかを巡り、検察側と弁護団の双方が主張・立証を展開。弁護団は検察側の言う犯人性は「成り立たない」とした。 弁護団は、袴田さんの逮捕当時に「血染め」と報道され、事件から約1年2カ月後に現場近くのみそタンクで「5点の衣類」が見つかるまで検察側が犯行着衣と説明していた袴田さんのパジャマを展示。鑑定のために生地があちこち
-
検察側「袴田さんに犯行動機あった」 再審第5回、犯人性巡り主張立証 静岡地裁
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した後、裁判のやり直しが認められた元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審第5回公判が20日午前、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。検察側は「犯行着衣」とする衣類のほかにも、袴田さんが犯人だと考えられる事情が存在すると主張した。午後は弁護団が反論する。 事件から約1年2カ月後に現場近くのみそタンクでシャツやズボンなど「5点の衣類」が見つかり、検察側は再審公判でも袴田さんの犯行着衣だと説明した。一方、弁護団は捜査機関によって捏造(ねつぞう)された証拠だと訴えている。 この日の冒頭陳述で検察側は、給料以上の
-
犯罪報道のあり方講演 袴田さん支援団体が浜松で勉強会
1966年に現在の静岡市清水区でみそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で死刑が確定し、再審公判中の袴田巌さん(87)=浜松市中区=の支援団体は16日、市民向けの勉強会を同区で開いた。フリージャーナリストの浅野健一さん(75)が犯罪報道のあり方について講演した=写真=。 共同通信記者、同志社大大学院教授などを務め、約40年にわたって袴田さんを支援している浅野さんは捜査段階での犯人視報道について「新聞各紙が袴田さんを犯人と決めつけて報じた。また、再審初公判の報道ではそうした姿勢への言及がなされなかった」と指摘。その上で「再審をきっかけに逮捕記事を検証し、犯罪報道の大転換を進めるべきだ」と訴
-
「5点の衣類」展示、法廷に緊張 静岡地裁職員、破損恐れ慎重に扱い 袴田さん再審第4回公判【最後の砦 刑事司法と再審】
視線が一点に注がれた。静岡地裁で11日に開かれた袴田巌さん(87)の再審第4回公判。確定判決が袴田さんの犯行着衣とした「5点の衣類」のうちズボンとステテコが展示された。一般の人の眼前に現れるのは確定審以来となったが、経年による変化が見られ、破損を懸念する地裁の意向で扱いに慎重さが目立った。 5点の衣類は事件から約1年2カ月後、現場近くのみそタンクで見つかった。国井恒志裁判長は展示の冒頭で「においに敏感な方は退席していただいて構いません」と呼びかけた。普段は施錠している扉を開け、扇風機も回したが、みそなどの臭気は感じなかった。「破損の恐れがある」として、ビニール手袋をした地裁職員2人が取り扱
-
「5点の衣類」法廷で一部展示 弁護団「捏造以外あり得ない」 再審第4回公判
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した後、裁判のやり直しが認められた袴田巌さん(87)の再審第4回公判が11日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。事件発生から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかった「5点の衣類」を巡り、弁護団が袴田さんの犯行着衣ではなく捜査機関による「捏造(ねつぞう)以外あり得ない」と主張。衣類の一部を証拠物として法廷で展示した。 ▶緊張走る法廷の様子 5点の衣類はシャツやステテコなど。発見直後に撮影されたカラー写真では生地は白く、衣類に付着した血痕は赤みが残っていた。弁護団は再審請求審で、長期間みそに漬かってい
-
袴田さん再審第4回 5点の衣類、展示へ 姉「大事なところ」 静岡地裁
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した後、裁判のやり直しが認められた袴田巌さん(87)の再審第4回公判が11日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。事件発生から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかった「5点の衣類」を巡り、検察側が前回に引き続き、衣類は袴田さんの犯行着衣で犯行後にタンクに隠したものだとする立証を行った。午後から弁護団の反証に入り、衣類の一部を法廷で展示する。 袴田さんの姉ひで子さん(90)は浜松市内の自宅を出発する際、報道陣の取材に「今日は大事なところ。弁護団がうまく反論してくれると思う」と期待した。 5点の衣類は
-
「傍聴機会増加を」 袴田さん支援団体、静岡地裁に要請書【刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定したものの、静岡地裁でやり直しの裁判(再審)が始まった袴田巌さん(87)の支援団体は7日、再審公判の傍聴機会を増やすよう求める要請書を地裁に提出した。袴田さんの再審第4回公判は11日に予定されている。 これまでにも同様の申し入れをしてきたが、実現に至っていない。要請書の冒頭で、地裁側に誠意ある対応が見られないとして「断固抗議する」と記した。その上で、傍聴席が最も多い法廷を使うこと、空き法廷を利用しビデオリンク方式で傍聴できるようにすること―などを要請。再審公判について「わが国の司法が信頼を取り戻す絶好の機会でもある」とも主張
-
姉ひで子さん「再審法改正を」 都内集会にオンライン出席
1966年の静岡県一家4人殺害事件で死刑が確定し、静岡地裁で再審公判中の袴田巌さん(87)の姉ひで子さん(90)が3日、東京都内で開かれた集会にオンラインで出席した。拘禁症状が残り意思疎通が難しい袴田さんの現状に触れ「いまさら体を元に戻してほしいとは言わない。巌の苦しみを再審法改正につなげてほしい」と訴えた。 ひで子さんは約70人の参加者に「巌は今でもとんちんかんなことを言っています。でもまともなことを話すこともあり、(症状は)行ったり来たりです」と報告した。 集会には他の再審事案の当事者らも参加。滋賀県日野町の強盗殺人事件で無期懲役が確定し、今年2月に大阪高裁で再審開始決定が出た阪原弘
-
袴田さん再審公判「5点の衣類」法廷へ 弁護団、展示の方針
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、弁護団は30日、確定判決が袴田さんの犯行着衣と認定した半袖シャツやズボン、ステテコなど「5点の衣類」について法廷で展示する意向を明らかにした。 同日、静岡地裁で法曹三者による非公開の打ち合わせがあった。終了後に取材に応じた弁護団によると、5点の衣類の状態などを直接確認した上で、裁判官らと展示方法について話し合ったという。12月11日の第4回公判で展示する方針。 5点の衣類は事件から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかり、血痕には赤みがあった。袴田さんの再審開始
-
袴田さん「どこまでも勝つ闘い」 浜松市の集会であいさつ
1966年に静岡県清水市(現静岡市)でみそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で死刑が確定し、再審公判中の袴田巌さん(87)が25日、地元の浜松市で開かれた死刑廃止を求める集会に現れ「自分の闘いは、どこまでも勝つための闘いだ」とあいさつした。支援者が26日、明らかにした。 10月に再審公判が始まって以降、袴田さんが公の場で話すのは初めて。 支援者の猪野待子さんによると、袴田さんは集会の30分前に会場に到着。両手でマイクを握り、30人ほどの参加者に「負けて勝つということではなく、勝って勝つ。どこまでも勝つということを基本として闘いを進んでいます」と語った。 拘禁症状が残り意思疎通が難し
-
袴田さん再審第3回公判 「犯行着衣」の捏造否定 検察「非現実的で不可能」
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審第3回公判が20日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。事件から約1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかった「5点の衣類」を巡り、検察側が袴田さんの犯行着衣だと改めて主張した。弁護団が捜査機関によって捏造(ねつぞう)されたと指摘していることについては「非現実的で実行は不可能」と強く否定した。 袴田さんの再審開始を認めた2014年の静岡地裁決定は、血痕がついたシャツやズボン、ステテコといった5点の衣類を捜査機関が捏造した疑いがあると指摘。検察側の即時抗告を棄却した今年3月の東
-
袴田さん支援団体「傍聴機会拡大を」 静岡地裁に再要請
現在の静岡市清水区で1966年、一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、袴田さんの支援団体が16日、傍聴機会の拡大を静岡地裁に要請した。 10月の初公判では一般傍聴席26席に対して傍聴整理券が280枚、今月10日の第2回公判でも26席に対して89枚が配られ、ともに抽選になった。支援団体は1人でも多くの市民が傍聴できるよう柔軟な対応を訴えてきたが、20日の第3回公判を前に改めて要請した。 要請書では、空き法廷を利用しビデオリンク方式で傍聴できるようにすることなどを要望。「設備面、技術面ともに問題ないと思われる。にもかかわらず、実行しないのであれば『開かれた
-
袴田さん姉・ひで子さん「無実勝ち取れると確信」 和歌山で講演
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定後、裁判のやり直しが決まり再審公判中の袴田巌さん(87)の姉ひで子さん(90)が15日、和歌山市で講演し「絶対に無実を勝ち取れると確信しています」と強調した。 静岡地裁で10月から始まった再審公判には、拘禁症状が残る袴田さんに代わり、補佐人のひで子さんが出廷している。初公判の罪状認否で「巌に真の自由をお与えください」などと述べた内容を紹介すると、会場から拍手が湧き起こった。 支援者の山崎俊樹さん(69)は、再審開始決定に道筋をつけた血痕の赤みの変化を調べる「みそ漬け実験」の取り組みを紹介。弁護団の小川秀世
-
袴田さん再審第2回、弁護団が反証「外部の複数犯」 「凶器」展示、取り調べ録音再生も
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定後、裁判のやり直しが決まった袴田巌さん(87)の再審第2回公判が10日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。犯人はみそ工場関係者であり、犯人の行動を袴田さんが取ることができたとする検察側の主張に対し、弁護団が「到底認められない」と反証をスタート。証拠調べでは、確定判決が凶器とした「くり小刀」などが展示され、取り調べの録音テープの一部も再生された。 公判の冒頭、検察側は起訴状に記載した専務の年齢を「42」から「41」に訂正した。その後、再審公判の大きな論点のうち、犯人がみそ工場関係者と強く推認され、その犯人
-
くり小刀、雨がっぱ…実物証拠、何語る 袴田さん再審第2回、弁護団が展示 見入る傍聴者
実物は何を語るのか―。静岡地裁で10日に開かれた袴田巌さん(87)の再審第2回公判で、弁護団は確定判決で凶器とされた「くり小刀」や事件現場に落ちていた雨がっぱなどを展示した。事件の鍵を握るとされる重要な証拠の数々。傍聴者は身を乗り出すようにして、柵の向こうの実物やモニターに見入った。 みそ製造会社の専務一家4人の殺害に使われたとされる「凶器」が法廷に現れたのは同日午後1時半ごろ。弁護団の田中薫弁護士がガラスケースに入ったくり小刀を検察官から受け取り、証言台隣の投影機に慎重に据えた。約12センチの刀身はさび付いていた。 他に展示した実物は、雨がっぱのポケットから発見されたとされるくり小刀
-
袴田さん再審第2回、記事証拠不採用に異議 弁護団「虚偽リーク明らか」 静岡地裁は棄却
袴田巌さんの第2回再審公判で、弁護団は、事件直後の新聞記事を静岡地裁が証拠として採用しなかったことに異議を申し立てた。 採用されなかったのは、「従業員『H』浮かぶ」「血ぞめのシャツ発見」の見出しが躍る1966年7月4日付の記事など。弁護団は、袴田さんのパジャマに付着していたとされる血痕は肉眼で分からないほどだったのに「警察が事実に反する虚偽の内容をリークしたことが明らか。事件から4、5日の段階で袴田さんを捜査対象にし、世論を作ろうとした。われわれの主張に関連する重要な証拠」と訴えた。検察側は「リークというのは全くの臆測。裁判の事実認定に影響を与えるものではなく、異議には理由がない」と反論し
-
「死刑廃止すべき」 袴田ひで子さんら 静岡・清水区で研修会
現在の静岡市清水区で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定し、今年10月に静岡地裁でやり直しの裁判(再審)が始まった袴田巌さん(87)の姉ひで子さん(90)が4日、同区で開かれた研修会で講演した。事件の発生直後から再審初公判までを振り返り「巌は絶対に無実だと思っている。(国内外の)皆さんから支援をいただいて巌は幸せ者だ」と述べた。 研修会は「袴田事件を通して死刑廃止を考える」と題して、国際人権団体アムネスティ・インターナショナル日本(東京)が企画した。袴田さんの弁護団事務局長を務める小川秀世弁護士も登壇し、死刑事件でさえ、ずさんな捜査や誤判があり得ることを強調。「人は不完全な存在で
-
袴田さん再審 証人尋問で検察側、3人撤回意向 3月実施で調整
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)のやり直しの裁判(再審)で、静岡地検が証人尋問を巡り、請求した証人5人のうちの3人を撤回する意向であることが1日、分かった。審理計画などを話し合う協議が同日、静岡地裁で開かれ、終了後に弁護団が明らかにした。=関連記事2面へ 証人尋問は当初、来年1月と2月に行われる予定だったが、書証の取り調べに時間がかかり、ずれ込む見通し。3月に実施する方向で調整しているという。3人の証人尋問が撤回されることで尋問自体は同月で終わるとみられるが、結審は早くても4月以降になる。 確定判決が袴田さんの犯行
-
参院予算委 減税 賃上げ時期に併せて 可処分所得を首相「下支え」
岸田文雄首相は1日の参院予算委員会で、所得税と住民税の減税を来年実施する理由として、賃上げの時期に併せたと説明した。「来年は賃上げにとって大事な時期だ。賃上げにしっかりとつなげるため、そのタイミングで減税を考えていく」と述べた。1回限りとするのは「一時的に可処分所得を直接下支えする手法が効果的だ」と強調。将来的な消費税減税の可能性を否定しなかった。 日本維新の会の東徹氏は「物価高に消費税減税以外では対応できない場合は検討するのか」と質問。首相は「絶えず経済や社会保障の議論は続けなければならない。大きな議論が行われた結果として、消費税について対応を考えることを全く今から否定するものではない
-
死刑廃止テーマに研修会
国際人権団体アムネスティ・インターナショナル日本(東京)は11月4、5の両日、全国規模の研修会「“袴田事件”を通して死刑廃止を考える」を、静岡市清水区の清水テルサで開く。参加無料。 4日午後1時半からの講演には袴田巌さん(87)の姉ひで子さん(90)が登壇し、死刑執行におびえ続けた袴田さんの獄中生活などを語る。弁護団の小川秀世事務局長も参加する。その後、死刑制度をテーマに参加者同士で討論を行う。 5日は午前9時半から議論のまとめと振り返りを行い、午後は希望者を対象に事件現場でフィールドワークも予定している。 袴田さんは同区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人
-
袴田さん再審、検察の不服に反論 開始認めた裁判長
1966年に起きた静岡県清水市(現静岡市)の一家4人殺害事件で、死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審開始を認める決定を2014年に出した当時の静岡地裁裁判長村山浩昭氏が、決定を不服として検察が即時抗告したことに反論する意見書を東京高裁に提出していたことが30日、分かった。村山氏が取材に明らかにした。 村山氏によると、意見書は即時抗告の直後に提出した。検察が「科学的根拠がなく、再鑑定が必要不可欠」とした「5点の衣類」に関するDNA鑑定や、血痕の赤みの変化を調べたみそ漬け実験は既に地裁で検討済みであり、即時抗告は早期に棄却されるべきだなどと指摘したという。 高裁は18年に決定を取り消し、そ
-
袴田さん再審公判の展望語る 弁護団の西沢弁護士登壇 浜松【刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区でみそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、静岡地裁で再審公判が始まった袴田巌さん(87)の支援集会(JR東海労働組合主催)が29日、浜松市中区で開かれた。弁護団の西沢美和子弁護士が再審の展望などを語った。 西沢弁護士は27日に開かれた再審初公判について「いまだに有罪立証できると思っている層が検察に一定数いることがあらためて分かった」とし、「弁護側としては逐一反論し、早期の無罪確定へ頑張りたい」と声に力を込めた。出廷が免除された袴田さんの代わりに意見陳述した姉ひで子さんが「裁判所、弁護人、検察の方々には大変お世話になりました」と述べたことについて、「検察にも
-
袴田さん再審初公判 42年、費やした時間とエネルギー 日弁連「実現の過程にも思いを」刑事司法の正念場強調
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審公判が27日、静岡地裁で始まった。再審を初めて申し立ててから42年が過ぎ、ようやくたどり着いた舞台。再審支援に取り組む関係者は「公判だけに注目するのではなく、再審が実現するまでにどれほどの時間とエネルギーが費やされたのか、プロセスにも思いを致すべき」と強調する。 論点三つ 再審公判は当面、犯人がみそ会社の関係者と推認され、犯人の行動を袴田さんが取ることができたか▽事件から約1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかった「5点の衣類」が袴田さんの犯行着衣かどうか▽袴
-
法改正、市民の力が国会動かす 再審開始など決めた元地裁裁判長・村山浩昭弁護士 袴田さん再審初公判
袴田巌さんの再審を社会はどう受け止めるべきか。2014年に静岡地裁の裁判長として袴田さんの再審開始と死刑・拘置の執行停止を決めた村山浩昭弁護士に尋ねた。 ―再審公判が始まり、再審法制そのものへの関心も高まっている。 「近年、再審開始決定が出たり取り消されたりする中、社会的にクローズアップされてきた。でも、救済されるべき事件は今起こったのではなく、当事者にとっては、ずっと存在していたという認識が正しい」 ―1980年代に死刑囚の再審無罪が4例続いた。当時も再審法の改正を求める声が上がっていたが、なぜ実現しなかったのか。 「当時は刑事関係の法改正がほとんど行われていない時代だった。再審は
-
信じた57年、今度こそ 初出廷の姉、力強く主張 袴田さん再審開始
「弟、巌に代わりまして無実を主張いたします」「真の自由をお与えくださいますようお願い申し上げます」。57年にわたり訴え続けた言葉が、静岡地裁の202号法廷に響き渡った。27日に同地裁で始まった袴田巌さん(87)の再審公判。袴田さんの姉ひで子さん(90)は補佐人として証言台に立ち、3人の裁判官に向かって弟の潔白を力強く主張した。今度こそ訴えは実るのか―。無罪判決を勝ち取る闘いのゴングが鳴った。 検察官と弁護団は午前11時の開廷直後から火花を散らした。検察官が袴田さんに関する住居侵入、強盗殺人、放火の罪の起訴状を読み上げた後、弁護団は専務を除く家族3人の殺害現場とした「居間」が具体的にどの部屋
-
「真実知りたい」傍聴希望者続々 「席拡大せず」に不満も 袴田さん再審初公判
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定後、今年3月に裁判のやり直しが決まった元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審初公判が開かれた静岡地裁では27日、午前8時ごろから傍聴希望者が続々と訪れ、整理券を求める行列ができた。地裁によると、一般傍聴席26席に対し、傍聴整理券を280枚配布した。 抽選に当たり、廷内で袴田さんの姉ひで子さんの意見陳述に心を動かされた傍聴者がいた一方、落選した傍聴希望者からは不満の声が漏れた。傍聴席を巡っては袴田さんの支援団体などが傍聴機会の確保を求めて地裁に席数の拡大を要望したが、実現しなかった。 同9時45分に地裁前の
-
「弟は無実、真の自由を」姉ひで子さん訴え 袴田さん再審初公判、検察は有罪主張
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定後、今年3月に裁判のやり直しが決まった元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審初公判が27日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。袴田さんは心神喪失状態にあるとして出廷を免除された。罪状認否で、姉ひで子さん(90)が補佐人として「弟に代わって無実を主張します。真の自由をお与えください」と述べ、弁護団も無罪を訴えた。一方、検察側は有罪の立証に入った。 検察は有罪主張 事件の1年2カ月後に現場近くのみそタンクで赤みが残る血染めのシャツやズボンなど「5点の衣類」が見つかり、袴田さんの犯行着衣とされた。しかし再審
-
袴田さん、普段と変わらぬ日常 浜松の自宅周辺で過ごす 静岡地裁で再審初公判
静岡地裁で再審の初公判が開かれた27日、出廷を免除された袴田巌さん(87)は浜松市中区の自宅でテレビを見たり、ドライブに出かけたりと普段と変わらない1日を過ごした。 袴田さんは午前9時45分ごろに起床すると、朝食の果物盛り合わせを味わったり、テレビを見たりして過ごした。午後2時過ぎに支援者の運転する車で日課のドライブに出発。天竜川の堤防など同市周辺を巡り、JR浜松駅でウナギを食べてから午後7時過ぎに帰宅した。 ドライブに同行した「袴田さん支援クラブ」の清水一人さん(74)によると、袴田さんは問いかけに対して反応するなど「相手を意識した言動をする時がある」と良い兆候を見せる場面が増えている
-
袴田さん再審初公判 冒頭陳述の要旨
【検察側】 袴田巌さんの27日の再審初公判での検察側冒頭陳述要旨は次の通り。 事件概要と争点 昭和41年6月30日夜、当時の清水市で発生した住居侵入、強盗殺人、放火事件。被告人が深夜、商店の専務取締役であるAさん方に金品を手に入れる目的で侵入した。家人に発見されたことをきっかけに、最初にAさん、妻Bさん、次女のDさん、長男のCさんを相次いでくり小刀で突き刺した。Aさんが自宅に持ち帰っていた商店の売上金の一部を奪い取るとともに、犯行を隠ぺいするために被害者の身体に混合油をまいて火を点け4人を殺害し、Aさん方を焼損させた事件。争点は被告人が犯人であるか否か。 事件当時の行動 被告人が犯人
-
被害者年齢に誤り 静岡地検、起訴状記載訂正へ 袴田さん再審
静岡地検は27日、袴田巌さん(87)の起訴状に記載され、同日の再審初公判でも読み上げた被害者年齢のうち、みそ製造会社の専務について「42歳」ではなく「41歳」だったとの認識を示した。閉廷後、記者からの指摘で確認し直した奥田洋平次席検事は「41歳が正しい。再度計算するが、起訴状を訂正することになるかもしれない」と述べた。 1966年9月の起訴当時も専務の年齢は42歳と記されていて、当初から誤っていた可能性が出てきた。奥田氏は再審初公判を終えた記者への説明の場で「もともとの起訴状に(今回)むやみに従ってしまったかもしれない」と釈明した。 初公判を前に、記者が年齢に誤りがないか問い合わせても広
-
社説(10月28日)袴田さん再審開始 審理尽くし早期結審を
現在の静岡市清水区で1966年6月に起きた、みそ製造会社専務の一家4人が殺された事件で、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん(87)の裁判やり直し(再審)が静岡地裁で始まった。 初公判では、検察側が改めて袴田さんの犯行だとして有罪を求め、弁護団は有罪立証を放棄すべきと訴えた。罪状認否では、出廷を免除された袴田さんに代わって姉ひで子さん(90)が補佐人として法廷に立ち、無罪を主張するとともに「弟に真の自由を与えてほしい」と訴えた。 事件発生から約57年。最高裁での死刑確定からも約43年が経過し、あまりにも年月がかかりすぎた。長期の収容によって袴田さんには意思疎通が十分にできない拘禁反応
-
袴田巌さん再審 初公判タイムライン速報
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審初公判が27日午前11時から静岡地裁で始まりました。現場で取材する静岡新聞の記者が、タイムライン形式でお伝えします。(※更新終了) 時系列 ▶ 午前8時 支援者集合 ▶ 8時15分 整理券の配布を待つ傍聴希望者 ▶ 8時30分 整理券の配布始まる ▶ 8時50分ごろ ひで子さん出発「やっと始まる」 ▶ 足利事件の菅家さん「警察、検察は袴田さんに謝罪を」 ▶ 9時45分 抽選結果発表 ▶ 10時15分 ひで子さん、静岡地裁に到着 ▶
-
袴田さん再審初公判が開廷 静岡地裁
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑確定後、裁判のやり直しが決まった袴田巌さん(87)の再審初公判が27日午前、静岡地裁で開かれた。袴田さんは再審公判への出廷免除を認められていて、姉ひで子さん(90)が補佐人の立場で出廷した。
-
袴田さん再審 きょう27日初公判【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定後、今年3月に裁判のやり直しが決まった元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審公判が27日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で始まる。死刑囚の再審は5例目。先の4例は全て無罪が確定している。 弁護団は、再審公判について「第一の目的は速やかな無罪判決。そして、裁かれるべきは警察、検察の捜査・公判活動の過ちだ。裁く側の裁判所も裁かれる立場にある」と位置づける。 捜査機関の証拠捏造(ねつぞう)によって袴田さんは犯人に仕立て上げられたと弁護団が主張する一方、検察側は改めて有罪を立証する。再審請求審と同様、真っ向から対立す
-
姉ひで子さん「代わりに無実訴える」 袴田さん 静岡地裁出廷免除受け
現在の静岡市清水区でみそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審を巡り、静岡地裁が袴田さんの出廷を免除したことを受け、姉のひで子さん(90)が25日、取材に応じた。罪状認否で陳述することになり「緊張は全然しない。代わりに無実を訴えるだけ」と心境を述べた。 今回の判断について、これまでも免除を求めてきた経緯から「書類を出したり、診断書を出したりしてくれて。良かったと思っている」と弁護団への感謝を口にした。一方で、結審が新年度にずれ込むことが不可避な情勢となったことについては「裁判だから長くなることもある。まあ来年中には結審すると思う」と淡々と受け止めた。
-
袴田さん出廷免除 本人なき公判 重い意味【最後の砦 刑事司法と再審⑰/第4章 我れ敗くることなし⑤完】
袴田巌さんは確定死刑囚として過ごした東京拘置所で、日付と天気から始まる日記を書き、三つ折りにして家族に送っていた。姉ひで子さん(90)は「日にちを忘れちゃいかん、ということだろう」と代弁する。 1980年代の後半から文面に「電波」や「悪魔」といった単語がたびたび見られるようになり、字体が崩れていった。89年2月7日付では余白に〈右手から電波が入りますと右歯が痛いように感じ、左手から電波が入りますと左歯が痛いように感じます〉と、わざわざ赤ペンで書いている。 ひで子さんは「死刑が確定するまでは大変に元気だった。確定して死刑囚がいる房に行くでしょ。そしたら、面会しても『電気ガスを出すやつがいる
-
請求審でテープ開示 響く肉声、実態収録 「どうしようもない」【最後の砦 刑事司法と再審⑯/第4章 我れ敗くることなし④】
1980年12月に死刑が確定した袴田巌さんは翌81年4月、裁判をやり直してほしいと静岡地裁に申し立てた。控訴審から弁護人を務める福地明人弁護士は「いわば捜査側に“弱点”がある事件。すぐに死刑が執行されてしまう懸念があり、1日でも早く再審請求しなければと考えた」と振り返る。現在でこそ国は再審請求中の死刑執行をいとわないが、かつては執行しない運用をしていた時期もあった。「他の担当事件をほったらかしにしてでも、(袴田さんの)命を救うためにとにかく急いだ」 〈普通の人から見れば、恐らく死刑囚は過去の者です。死刑囚は社会から隔離され、この世の空気とは全然違う世界と風土の中に自
-
静岡地裁、袴田さんの出廷免除 27日に再審初公判 弁護団「年度内結審は厳しい」
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)のやり直しの裁判(再審)を巡り、静岡地裁(国井恒志裁判長)は24日、袴田さんの出廷を免除する考えを示した。同日、法曹3者による非公式の協議が地裁であり、国井裁判長が「(袴田さんは)心神喪失の状態にあると考えているため、強制は求めない」と述べたという。協議終了後、弁護団が会見で明らかにした。 一方、書証の取り調べに想定以上の時間を要することが決定的で、結審が新年度にずれ込むことが不可避な情勢という。年明けから予定していた証人尋問は早くても2月以降となり、論告や最終弁論は4月
-
袴田さん支援団体 有罪立証の撤回、静岡地検に要請 【刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定している袴田巌さん(87)の再審公判が27日に始まるのを前に、袴田さんの支援団体「浜松 袴田巌さんを救う市民の会」は24日、静岡地検に有罪立証の撤回を求める要請書と、要請の趣旨に賛同する760人分の署名を提出した。 同会は要請書で、有罪立証は「袴田さんを今でも犯人だと信じて『死刑にしろ』と言っていることを意味する」と指摘。「公益の代表者である検察官は誤判をただす職業的な責務を負っている」と強調した。署名はJR浜松駅前での街頭活動に加え、県内外の有志に会報を送って協力を呼びかけた。 共同代表の寺沢暢紘さん(
-
はけない犯行ズボン 潔白の裏付けも届かず【最後の砦 刑事司法と再審⑮/第4章 我れ敗くることなし③】
そのズボンを私にはかせてほしい―。みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして、1968年に一審静岡地裁で死刑判決を受けた袴田巌さんは、東京高裁に宛てた控訴趣意書の冒頭で強く要請した。 事件発生から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで発見され、地裁判決が袴田さんの「犯行着衣」と認定したシャツやズボンなど「5点の衣類」。検察官は当初、パジャマ姿で犯行に及んだと主張していた。 控訴趣意書で、袴田さんは〈刑事らがパジャマでは(有罪判決に)持って行けないと考え、偽証をした〉とねつ造を疑った。事件4日後の捜索で見落としがあったとしても、みそを仕込んだ際に〈必ず発見されているはず〉と説明。〈やはり、(
-
5点の衣類出現 無罪確信も死刑判決 「事実誤認」手紙に憤り【最後の砦 刑事司法と再審⑭/第4章 我れ敗くることなし②】
出現は唐突だった。それは半世紀以上、裁判の焦点であり続けることになる。 みそ製造会社の専務一家4人が殺害される事件が起きて1年2カ月後の1967年8月31日、工場のみそタンクから、血染めのシャツやズボン、ステテコなど「5点の衣類」が麻袋に入った状態で見つかった。 強盗殺人などの罪に問われた住み込み従業員、袴田巌さん(87)の裁判が静岡地裁で進行していた。パジャマで犯行に及んだのだと検察官は立証し、付着した血痕が被害者の血液型と一致すると主張。しかし、同年6月の手紙に袴田さんが〈東京の専門家に見てもらったところ、血液型は分からないと返された〉と書いたように、信ぴょう性に疑問符がつき始めてい
-
「冤罪検証、心理学活用を」 袴田事件題材、静岡大でワークショップ
法と心理学会(理事長・指宿信成城大教授)の第24回大会が21、22の両日、静岡市駿河区の静岡大で開かれた。法学者や心理学者、弁護士ら約100人が参加。一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判が27日から静岡地裁で始まるのを前に、袴田事件を題材にしたワークショップなどを通じて意見を交わした。 袴田事件が題材のワークショップは誤判研究に取り組む笹倉香奈甲南大教授の企画。袴田さんの弁護団員で静岡大卒業生の戸舘圭之弁護士、著書「冤罪(えんざい)学」を出版した元裁判官の西愛礼弁護士、バイアスの実例に詳しい藤田政博関西大教授が登壇し、冤罪事件の予防や無実を訴える人の救済に、法
-
那覇で再審見直し、機運を「袴田事件契機に」 元静岡県弁護士会の坂田さん、弁護団招きシンポ
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定したものの静岡地裁でやり直しの裁判(再審)が始まる袴田巌さん(87)を事例に、再審や死刑制度について考えるシンポジウムが21日、那覇市で開かれた。弁護団の小川秀世事務局長、2014年に地裁で袴田さんの再審開始決定を手がけた村山浩昭元裁判長に講師を依頼したのは、かつて静岡県弁護士会に所属していた坂田吉加弁護士(沖縄弁護士会)。再審を巡る法制度の充実を求める声が高まる中、坂田さんは「冤罪(えんざい)は誰にでも起こりうる。袴田事件を通じ関心を持ってもらい、行動に移すきっかけになれば」と期待する。 坂田さんは兵庫県
-
「私はやっていない」裁判所に信頼と期待 袴田さん、当初は楽観視【最後の砦 刑事司法と再審⑬/第4章 我れ敗くることなし①】
「私はやっていません」「全然やらなかったです」―。1966年11月の静岡地裁での初公判。現在の静岡市清水区でみそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして強盗殺人などの罪に問われた袴田巌さん(87)は起訴内容を全面的に否認した。以来57年もの歳月を闘い続け、ようやくやり直しの裁判(再審)を勝ち取った。戦後5例目の死刑再審。しかし、精神に不調を来しているとして弁護団は袴田さんの出廷免除を求める。なぜ再審の実現はこれほどまでに時間がかかるのか。袴田さんが発してきた言葉に問題の本質を見る。 事件の発生は66年6月30日未明。専務=当時(41)=の自宅から出火し、焼け跡から専務と妻=同(39)=、長
-
袴田さん支援団体が学習会 27日再審初公判、姉ひで子さん「やっと決着つく」
現在の静岡市清水区でみそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、再審開始が決まった袴田巌さん(87)の支援団体は21日、再審公判の進み方を確認する学習会を浜松市中区で開いた。袴田さんの姉ひで子さん(90)も出席し、27日の再審初公判に向けて「57年闘ってきて、やっと決着がつく。ひと安心。無罪以外にないと思っている」と声に力を込めた。 弁護団の西沢美和子弁護士がこれまでの地裁、地検との3者協議の概要や検察の立証方針、再審制度の問題点などについて解説した。西沢弁護士は「事件のあった57年前の証拠をいまさら持ち出して立証しようとし、さらに時間をかけるのはとんでもないこと」としつつも、
-
袴田さん再審初公判、傍聴席拡大実施せず 静岡地裁【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審初公判を巡り、支援団体などが求めた傍聴席の拡大について、静岡地裁が実施しない方針であることが19日、分かった。地裁は静岡新聞社の取材に「(担当裁判官3人で構成する)裁判体の判断を踏まえ、庁として判断した」と説明している。 再審初公判は27日に開かれる。傍聴希望者には整理券を配り、抽せんする。配布場所は地裁だが、抽せん結果が出るまでの待機場所として地裁前にある同市葵区の駿府城公園も使う。 当日は多数の傍聴希望者が地裁を訪れることが予想される。近隣裁判所から応援職員の派遣を受けるかどうかについては、
-
法と心理学会、21日から静大で大会 袴田事件題材の発表も
法と心理学会(指宿信理事長)の第24回大会が21、22日の両日、静岡市駿河区の静岡大で開かれる。法学者や心理学者、弁護士ら実務家が集い、研究報告を通じて議論を深め、知見を共有する。一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判が27日から静岡地裁で始まるのを前に、袴田事件を題材にしたワークショップや発表も予定されている。 静大での開催は初めて。100人ほどの参加が見込まれている。虐待や事件、事故の被害を受けた子どもらの負担を軽減しながら正確な情報を聞き取る「司法面接」をはじめ、刑事裁判における心理学鑑定の証拠価値、再審無罪事件での目撃供述の分析などワークショップや報告の
-
事件検証 社会に問う冤罪事件の本質/高峰武 熊本学園大特命教授【最後の砦 刑事司法と再審 番外編 公判直前インタビュー㊦】
1983年に日本で初めて死刑囚から再審無罪となった免田栄さん=2020年に95歳で死去=。釈放後の第一声は「自由社会に帰ってきました」だった。免田さんが亡くなるまで交流を続け、受け継いだ膨大な資料の整理と分析に今なお取り組む元熊本日日新聞記者で、熊本学園大特命教授の高峰武氏(71)は「事件は現在進行形」と実感する。免田さんは社会に何を問いかけてきたのか。 ―無罪判決後、記者としてどんなことをしたか。 「一過性の報道で終わらせてはいけない、追跡・検証したい、と思い同僚の甲斐(壮一)さんと『検証 免田事件』を始めた。休まずに、しかもニュースの邪魔にならずに続けられるようにと希望したところ、読
-
「風雪に耐える捜査」を/伊藤鉄男 元最高検次長検事【最後の砦 刑事司法と再審 番外編 公判直前インタビュー㊥】
1983年、無実を訴え続けた死刑囚がやり直しの裁判(再審)で初めて無罪となった「免田事件」。元最高検次長検事の伊藤鉄男氏(75)は、熊本地検時代に再審公判で主任検事を務めた。有罪立証を維持し、免田栄さん=2020年に95歳で死去=に改めて死刑を求刑。無罪判決が言い渡されると、その場で免田さんの釈放を指揮した。事件の教訓として「風雪に耐える捜査」の重要性を説く。一方、袴田巌さん(87)の再審公判で検察が有罪立証することには理解を示す。 ―免田事件の再審公判で有罪立証を続けた理由は。 「最高裁で死刑が確定した事件であり、再審開始決定の内容も本質を突いているように思えなかった。証拠は少ないけれ
-
袴田さんに無罪の心証/熊田俊博 元裁判官【最後の砦 刑事司法と再審 番外編 公判直前インタビュー㊤】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判が27日、静岡地裁で始まる。死刑囚の再審は5例目で、89年に同地裁が無罪判決を言い渡した「島田事件」以来となる。島田事件の再審開始決定に主任裁判官として関わった熊田俊博氏(74)が静岡新聞社の取材に応じ、袴田さんの第1次再審請求審にも携わったと明らかにした上で「記録を読み、無罪だと思った」と当時の心証を振り返った。弁護士に転身後、県公安委員長も歴任。経験を踏まえて伝えたい教訓とは何か。 ―島田事件の第4次再審請求審と袴田さんの第1次請求審が、同じ時期に静岡地裁に係属していた。
-
袴田ひで子さん、仙台で市民集会参加 再審向け「頑張る」【刑事司法と再審】
1966年に静岡市清水区で起きた一家4人殺害事件で死刑確定後、再審開始が決まった袴田巌さん(87)の姉ひで子さん(90)が14日、仙台市で「袴田事件を考える市民集会」に参加した。ひで子さんは「再審に興味を持ってくださることが私たちの励みになっている。頑張っていきたい」と力強く語った。 再審裁判は初公判が27日に静岡地裁で開かれ、来年3月までに結審する見込み。 集会では、弁護団事務局長の小川秀世弁護士が事件の経緯や再審公判の争点を解説した。確定判決で犯行着衣とされた「5点の衣類」について「捜査機関の捏造(ねつぞう)の可能性を否定できず、むしろ強く疑われる」と強調した。 巌さんを50年以上
-
袴田さん姉「再審頑張る」 市民集会、拍手で後押し
1966年に静岡県で起きた一家4人殺害事件で死刑確定後、再審開始が決まった袴田巌さん(87)の姉ひで子さん(90)が14日、仙台市で「袴田事件を考える市民集会」に参加した。ひで子さんは「再審に興味を持ってくださることが私たちの励みになっている。頑張っていきたい」と力強く語った。 再審裁判は初公判が27日に静岡地裁で開かれ、来年3月までに結審する見込み。 集会では、弁護団事務局長の小川秀世弁護士が事件の経緯や再審公判の争点を解説した。確定判決で犯行着衣とされた「5点の衣類」について「捜査機関の捏造の可能性を否定できず、むしろ強く疑われる」と強調した。 巌さんを50年以上支え続けたひで子さ
-
初公判27日午前11時 袴田さん再審 静岡地裁、年内の公判期日指定
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)のやり直しの裁判(再審)に向け、静岡地裁(国井恒志裁判長)は13日、年内の公判期日を正式に指定した。初公判は27日午前11時に開廷する。 その他の指定期日は11月10日、同20日、12月11日、同20日。地裁で2番目に広い法廷を使用する。地裁は年度内に結審したい意向を示し、来年3月末までの期日は追って指定する。 一方、弁護団が訴えている袴田さんの出廷免除については現時点で可否を判断していない。弁護団は今月10日、出廷が難しいことを伝える追加資料として、袴田さんが釈放後に書き連ねたノー
-
袴田さん再審公判 「一番広い法廷で」 情報公開研究会が要望
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)のやり直しの裁判(再審)に向け、大学教員や弁護士らでつくる「司法情報公開研究会」は13日、傍聴機会の十分な確保を求める要望書を静岡地裁に提出した。 同会は袴田さんの再審公判が静岡地裁で2番目に広い傍聴席48席の法廷で開かれる可能性が高いとみて、より傍聴席の多い一番広い法廷の使用を要望した。また、2001年に大阪教育大付属池田小(大阪府)で起きた児童殺傷事件の判決公判で一部の遺族のために別室にテレビモニターが用意された例を踏まえ、同じように法廷以外の場所でも再審公判を傍聴できるようにするこ
-
袴田さん姉・ひで子さん「あと半年で決着」 名古屋で講演
1966年の静岡県清水市(現静岡市清水区)の一家4人殺害事件で死刑確定後、裁判のやり直しが決まった袴田巌さん(87)の姉ひで子さん(90)は8日、名古屋市で講演し「57年間闘って、やっと再審開始となった。あと半年で決着がつく」と述べた。再審初公判が27日に開かれ、来年3月に結審する見通し。 弁護団事務局長の小川秀世弁護士も登壇し、確定判決で犯行着衣とされた「5点の衣類」について写真を交え解説。「裁判所は再審請求審ではっきりと捜査機関の捏造の可能性を指摘し、合理的な疑いが生じていると言っている。(再審で)それを変えることはできない。無罪は確実だ」と話した。 先月29日には、静岡地裁の裁判長
-
裁判長、袴田さんと面会 再審公判の出廷免除可否判断か【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、静岡地裁の国井恒志裁判長が9月に袴田さんと面会していたことが5日、関係者への取材で分かった。27日に初公判を控える中、袴田さんの出廷を免除するかどうかを判断するためとみられる。 関係者によると、9月29日に静岡地裁浜松支部で面会した。検察官と袴田さんの姉ひで子さん(90)、弁護団が立ち会った。袴田さんは年齢を問われ「23歳」と答え、ひで子さんは普段の様子を説明したという。 弁護団は袴田さんの出廷免除を求めている。拘禁反応により、訴訟能力が認められないと
-
袴田さん再審 ボクサーら検察に「“試合”棄権を」 都内で要請行動
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審公判を控え、日本プロボクシング協会袴田巌支援委員会が3日、検察当局に対し、有罪立証方針の取り下げと手持ちの全証拠を開示するよう求める要請行動を都内で繰り広げた。 世界ボクシング協会(WBA)、世界ボクシング評議会(WBC)ライトフライ級統一王者の寺地拳四朗選手らが参加した。同委員会の新田渉世委員長は公判を試合にたとえ「棄権してほしい。しないのなら、公平な条件で戦うべきだ」と指摘。参加者は白色のバンデージを右拳に巻いて「潔白」をアピールし、東京高検や最高検の庁舎前でシ
-
袴田さん再審、初公判10月27日 出廷可否判断は保留 静岡地裁
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判に向けた静岡地裁(国井恒志裁判長)と静岡地検、弁護団による6回目の3者協議が27日、地裁であった。初公判を10月27日に開くことが事実上、決まった。終了後に弁護団が明らかにした。 地裁が前回の協議で提示した来年3月27日まで12回の公判候補日を、地検と弁護団の双方が受け入れた。地裁は年内の5期日について、10月中旬に正式に指定する。袴田さんの出廷免除については弁護団に資料の追加提出を求めた上で可否を判断する考えを示した。 静岡市葵区で記者会見した袴田さんの姉ひで子さん(90
-
年明けから証人尋問 袴田さん再審 審理計画
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判はどのように進められていくのか。静岡地裁で開かれた27日の3者協議で、その大枠が少しずつ見えてきた。 10月27日の初公判では、罪状認否で袴田さんの姉ひで子さん(90)が保佐人として意見を述べる予定という。その後、静岡地検と弁護団の双方が冒頭陳述を行い、証拠調べに入る。年内で書証などの取り調べを終わらせ、年明けからは証人尋問が実施される見通しだ。 初公判を含めた年内5期日のうち前半の3回で、犯人がみそ会社関係者と推認されるかどうか▽事件から約1年2カ月後に現場近くのみそタン
-
「有罪立証 通用せず」 袴田さん再審巡り 弁護団が地検に反論
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、弁護団は26日、静岡地検の主張に対する反論書を静岡地裁に提出した。証拠として無価値と評価されてきたささいな事情を、あたかも重要な間接事実であるかのように主張していると指摘。「検察官自身、有罪立証として通用するはずがないのは十分理解しているはずだ」と批判している。 27日には地裁と弁護団、地検による3者協議が開かれ、再審の公判日程などが話し合われるとみられる。 弁護団によると、地検は再審公判で、袴田さんの自白調書45通のうち確定審で証拠能力が認められた起訴当日付の1通
-
袴田さん弁護団も証人尋問請求へ 法医学の専門家想定【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、弁護団は19日、静岡地裁に証人尋問を請求する方針だと明らかにした。法医学の専門家を想定しているという。 事件では、1年2カ月後に現場近くのみそタンクからシャツやズボンなど「5点の衣類」が見つかり、袴田さんの犯行着衣だと認定された。一方、袴田さんの再審開始を認めた今年3月の東京高裁決定は、長期間みそに漬かった衣類の血痕に赤みは残らないと結論づけた弁護団の鑑定書などを重視。衣類は捜査機関によって捏造(ねつぞう)された可能性が極めて高いと言及した。 静岡地検
-
袴田さん姉・ひで子さん 再審へ「もうしばらく支援を」浜松で集会
現在の静岡市清水区でみそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直しが認められた袴田巌さん(87)の支援団体は16日、袴田さんの再審の展望などを考える集会を浜松市中区の浜松復興記念館で開いた。姉のひで子さん(90)は、10月27日にも再審の初公判が開かれる見通しとなったことを受けて「もうしばらくの支援をお願いしたい」と呼びかけた。 ひで子さんは出席した支援者ら約40人を前に「いよいよあと半年ほどで結審する。いい結果が出ると思う」と話した。袴田さんが長期にわたって収監され、事件から57年が経過したことにも触れ「とにかく長かった。刑務所にいた巌は、特に大変だったはずだとつ
-
初公判、10月27日提示 袴田さん再審で静岡地裁 「年度内に結審したい」
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定したものの、今年3月に裁判のやり直し(再審)が決まった袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、静岡地裁(国井恒志裁判長)は12日、弁護団と静岡地検との第5回3者協議で、初公判の候補日として10月27日を提示した。国井裁判長は「本年度内に審理を終わらせたい」と述べ、来年3月27日まで計12回の公判候補日を伝えた。 協議終了後に弁護団が記者会見し、明らかにした。弁護団は初公判の期日を受け入れる考えで、早ければ次回9月27日の3者協議で指定される。地検は「争点整理が煮つまっていない」と懸念しつつ、特に反対意見は述べな
-
「巌にいい結果 期待」袴田さん再審公判日提示 姉ひで子さん、声弾ませる
「巌は無罪ですから」「いい結果が出ることを期待しています」―。12日に静岡地裁から袴田巌さん(87)の再審公判の候補日が示されたことを受け、弁護団とともに静岡市葵区で記者会見した姉のひで子さん(90)は思わず声を弾ませた。弁護団も地裁の提示を歓迎し、迅速な審理の実現へ決意を新たにした。 弁護団によると、同日開かれた3者協議では地裁から候補日程を記した1枚の書面が示されたという。「びっくりした。衝撃を受けた」と笹森学弁護士は想定外だったことを明かした。ただ、地裁は地検の補充捜査に基づく有罪立証を許容する方針で、間光洋弁護士は「この期に及んで(有罪立証を)許すのは受け入れられず、納得できない」
-
有罪立証の断念、再要請 袴田さん再審巡り弁護団
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定したものの、今年3月に裁判のやり直し(再審)が決まった元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、弁護団は7日、静岡地検に対し、有罪立証の方針を撤回するよう改めて申し入れた。 申し入れ書で、事件から約1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかり、袴田さんの犯行着衣とされた「5点の衣類」に関し、付着した血痕の色以外にも「確定判決の認定に疑いを生じさせる事実は多数存在する」と批判。長期間みそに漬かっていたにしては緑色ブリーフの色が鮮やかなことに加え、半袖シャツの表側にも裏側にも別々に血痕をそぎ取ったような
-
静岡地検意見書「まるで論告」 弁護団が反発、袴田さん再審前に攻防【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定後、裁判のやり直しが決まった袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、袴田さんの有罪を立証するとしている静岡地検は31日、主張を詳細に説明した意見書を静岡地裁に出した。弁護団は記者会見で「論告を先出しするかのような内容。裁判官に予断を与え、裁判を有利に進めたいとの狙いがあるのではないか」と勘ぐった。 地検が用意した二つの意見書のうち、袴田さんの犯人性を立証できると補充的に論じた意見書は66ページからなる。間光洋弁護士は「公判前に分厚い意見書を出すのは異例」と指摘。ただ、ざっと目を通した限りでは「新しいことは全然書かれていない」とし
-
袴田さん弁護団「証拠調べ請求却下を」 検察も意見書、有罪主張を補充【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、今年3月に裁判のやり直しが決まった袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、弁護団と静岡地検の双方が31日、新たな意見書を静岡地裁(国井恒志裁判長)に提出した。弁護団は地検の有罪立証方針を批判するとともに、地検が請求した証拠調べについて「必要性が認められない」として却下するよう要請。地検は有罪主張を補充した。9月12日に次回の3者協議が予定され、意見書を踏まえて今後の進め方などが話し合われる。=関連記事31面へ 弁護団が静岡市内で記者会見し、概要を説明した。弁護団は意見書で、再審公判で検察官に求められているの
-
袴田さん再審 「地検の有罪立証不可能」弁護団、近く意見書
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、今年3月に再審開始が決まった袴田巌さん(87)の弁護団は近く、静岡地検が有罪を立証することは不可能などと改めて指摘する意見書を静岡地裁に出す。29日、関係者への取材で分かった。 事件では、発生から約1年2カ月後に現場近くのみそタンクから血痕に赤みが残る「5点の衣類」が見つかり、袴田さんの犯行着衣とされた。一方、袴田さんの再審開始を認めた3月の東京高裁決定は、弁護団の化学鑑定などを踏まえ、1年以上みそに漬かった衣類の血痕の赤みが消えることは「合理的に推測できる」と評価。5点の衣類は、捜査機関によって捏造(
-
旧天竜林高事件 2次再審請求「来月にも」 元校長、申し立て方針
旧天竜林高(浜松市天竜区)を舞台にした大学推薦入試を巡る調査書改ざん・贈収賄事件で、加重収賄罪などで有罪判決が確定した北川好伸元校長(75)が26日、第2次再審請求を9月中にも静岡地裁浜松支部に申し立てる意向を示した。浜松市中区で開かれた支援者集会で明らかにした。 事件を巡っては、中谷良作元天竜市長(91)=贈賄罪で罰金刑確定、再審請求中=が北川元校長に2回目の現金を渡したとされる日のアリバイが焦点になっている。北川元校長の弁護団は、アリバイに関する新たな事実を示すことなどを主張の柱にする方針。北川元校長は「少しでも早く再審を請求し、司法のひずみを正すために訴えていく」と言葉に力を込めた。
-
袴田さん支援団体 浜松で勉強会 再審法改正 必要性訴え
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、無実を訴え続けて今春、裁判のやり直しが決まった元プロボクサー袴田巌さん(87)の支援団体は19日、市民向けの勉強会を浜松市中区で開いた。弁護団の田中薫さんが18日で袴田さんの逮捕から57年を迎えたことに触れ、「再審までこれだけ時間がかかったことは申し訳なく思う」と述べ、再審法改正の必要性を訴えた。 第1次再審請求の申し立て時から弁護団の一員として活動する田中さんは、証拠となるはずの凶器や犯行時刻などの矛盾を示し、「(警察が)筋書きに沿った証拠づくりを進めていた」と指摘した。 現在は再審公判に向けて静岡
-
「海外から見た袴田事件は」 弁護団ら9月、イタリア・ドイツで課題や現状報告【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、無実を訴え続けて今春、裁判のやり直しが決まった元プロボクサー袴田巌さん(87)の弁護団員らが9月、イタリアとドイツで日本の再審制度の課題や死刑制度の現状を報告する。弁護団の戸舘圭之弁護士は「袴田事件には日本の刑事司法の問題が凝縮されている。世界的に見てどうなのか、というのは重要な視点。海外の見方から学んで考え、国内の議論を活性化させるきっかけにしたい」と話している。 イタリア・フィレンツェで9月6~9日に開かれる第23回ヨーロッパ犯罪学会で発表する。学会に先立つ4日は、ドイツ・ベルリンでワークショップ
-
「妄想の世界抜けてほしい」 袴田さん姉、再審無罪に期待
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定後、裁判のやり直し(再審)が決まった袴田巌さん(87)の姉ひで子さん(90)と弁護団の小川秀世事務局長が25日、都内の日本外国特派員協会で記者会見した。ひで子さんは再審で無罪判決を得ることで「(袴田さんが)パッと妄想の世界から抜けてほしいと思う」と願った。 静岡地検は再審公判で袴田さんの有罪立証を続ける方針を示している。ひで子さんは「検察の都合でしょうから、どうぞ、という感じでございます」と受け止めを語りつつ、再審法(刑事訴訟法の再審規定)の不備に言及。検察の不服申し立てで再審開始の確定までに9年が費やされ
-
「頼りがいある司法を提供」 静岡地裁・永渕新所長が抱負
静岡地裁の新たな所長に就任した永渕健一氏(61)が24日、地裁で記者会見を開いた。「県民の皆さんに頼りがいのある司法を提供できるよう、微力を尽くしたい」と抱負を述べた。=「時の人」2面へ 永渕氏は長崎市出身で、1990年に判事補任官。司法研修所教官や福岡高裁事務局長などを歴任し、2016年からは東京地裁部総括判事を務め、直近は刑事部所長代行者だった。 会見では、司法のIT化やデジタル化への対応をはじめ、若い世代を含めた県民への情報発信に力を入れていく考えを説明した。 袴田巌さん(87)の再審公判に関する質問には「個別事件の進行に関わる事項のため、回答を差し控えたい」とした。一方、不備の
-
袴田さん再審日程決まらず 静岡地裁、3者協議継続へ
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判に向け、静岡地裁(国井恒志裁判長)は19日、弁護団と静岡地検との4回目の3者協議を地裁で行った。弁護団は9月の次回協議を初公判期日に切り替えるよう求めていたが、国井裁判長は警備上の対応や他の裁判との調整などに時間が必要との考えを説明。次回も3者協議を続けることになった。 協議は非公開。終了後に記者会見した弁護団によると、地裁は袴田さんの再審公判を開く日は他の裁判を行わないことを想定しているという。国井裁判長はその調整をはじめ、傍聴希望者の整理や警備体制についても準備が必要との
-
「一刻も早い無罪を」浜松の街頭で訴え 袴田さん支援団体
袴田巌さん(87)の支援団体が19日、袴田さんの早期の無罪判決を訴える街頭広報をJR浜松駅北口で行った。「浜松 袴田巌さんを救う市民の会」のメンバーら約10人が参加した。寺沢暢紘共同代表がマイクを握り、「検察は立証を断念すべき」「一刻も早い無罪を」などと声を張り上げた。旧天竜林高を舞台にした大学推薦入試を巡る調査書改ざん・贈収賄事件についても言及し、証拠の精査や再審の開始を求めた。
-
静岡地検検事正に着任した 山田英夫さん【時の人】
現在の静岡市清水区で1966年、一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、有罪立証を維持する道を選んだ静岡地検。方針表明から一夜明けた11日付で、そのトップに就いた。「法と証拠に基づき、検察としていろいろと検討した結果。制度上も再審公判において検察は、再審開始決定に縛られるものではない」。着任会見では地検の従前の説明を踏襲した。 不祥事をきっかけに策定された「検察の理念」は、あたかも常に有罪そのものを目的とするかのごとき姿勢に「なってはならない」と自戒する。再審公判での有罪立証方針は、再審請求審の蒸し返しではないのか―。弁護団や支援者はもとより、市民の見る目
-
袴田さん弁護団、3者協議打ち切り要請 9月初公判申し立て【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審を巡り、弁護団は18日、静岡地裁、静岡地検との19日の3者協議を前に、9月に初公判を開くよう地裁に申し立てた。再審公判に向けた非公開の協議を3者で続けてきたが、「公正で迅速な裁判の妨げになっている」として打ち切りを要請。弁護団と地検の双方が主張立証方針を明らかにしていることも踏まえ、裁判の公開原則に従い、10月下旬までの協議期日を公判期日に改めるよう求めた。 弁護団は申立書で、柔軟かつ率直に議論できる利点を考慮し、4月に始まった3者協議に協力してきたと説明。しかし、
-
「有罪立証放棄を」 袴田さん再審巡り ネット署名4.6万人
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、静岡地検に対して有罪立証の放棄を求める声が広がっている。弁護団が始めたネット署名の賛同者は4万6千人を突破。弁護団と支援団体は14日、地検の主張は再審請求審の「許されざる蒸し返し」だとして、速やかに有罪立証を放棄するよう改めて申し入れた。 事件から約1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかったシャツなど「5点の衣類」について、確定判決は袴田さんの犯行着衣と認定した。しかし、第2次再審請求審で最高裁の判事2人は「5点の衣類が長期間みそ漬けされたことは当然視されたが、か
-
再審…耳にはするけど問題点って? 日弁連が特設サイト
「再審」の単語に耳なじみがあっても、手続きの中身までは知られていない。でも、実情を知ると、9割以上が再審法(刑事訴訟法の再審規定)を改正する必要があると回答した―。 日本弁護士連合会が再審や冤罪(えんざい)について10~80代の1200人を対象にインターネット上で意識調査したところ、こんな結果が出た。日弁連は13日までに、再審法の問題点や改正の必要性などを伝える特設サイトを開設した。 調査は5月中旬に実施。現行の再審法は19カ条にとどまり、再審請求審や再審公判の進め方についての規定が乏しい。担当裁判官の姿勢によって審理にばらつきが生じていることへの見解を尋ねると、43・8%が「問題」と答
-
9月に初公判を 袴田さん再審で弁護団方針 静岡地裁に申し入れへ
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)の弁護団は13日、都内で会議を開き、9月に再審の初公判を開くよう静岡地裁に申し入れる方針を決めた。 地裁は再審公判に向けた弁護団、静岡地検との3者協議の期日を今月19日と9月12日、同27日、10月27日に設定している。弁護団としては議論も含めて「公平を期すために公開の法廷で行うべき」と判断。次回で協議を打ち切り、9月以降の協議期日を再審公判期日に変更するよう求める。弁護団によると、地検は再審公判に提出する予定の新たな証拠を開示したという。 袴田さんの再審公判を巡り、地
-
大自在(7月12日)こども六法
2019年に出版された「こども六法」(弘文堂)は児童書ながら発行部数70万部を超すベストセラー。憲法や刑法、刑事訴訟法、少年法などを子ども向けに解説する。 著者は教育研究者で俳優の山崎聡一郎さん。自身がいじめられた経験やいじめる側に回ってしまった後悔を基に企画した。いじめはれっきとした犯罪になり得ると分かりやすく説く。 法律を知らない子どもたちは、いじめを目の当たりにしても「そういうものだ」と我慢してしまうかもしれない。「こども六法」の人気の理由は、学校で“犯罪”に直面しながらも違和感を言語化できなかった子どもたちに目からうろこが落ちる法解釈を与え、立ち向かう背中
-
社説(7月12日)検察が有罪立証へ 再審公判 迅速に進めよ
1966年に現在の静岡市清水区でみそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で死刑が確定したものの、裁判のやり直しが決まった袴田巌さんの再審公判で、検察側は袴田さんの有罪を立証する方針を静岡地裁に伝えた。 検察と弁護側が争うことで審理が長引く可能性が高まった。再審請求に40年以上を費やしてきた袴田さんは87歳、支え続けてきた姉ひで子さんも90歳だ。年齢を考えるとさらに裁判が長引くことは耐え難いと言えよう。袴田さんは逮捕以来の長期拘束による拘禁症状が残る。無罪を確信してきた弁護側が強く反発するのは無理もない。 争うことになった以上、迅速な裁判は不可欠だ。検察側は「引き延ばすつもりは毛頭ない」
-
請求証拠「即座に開示を」 袴田さん再審巡り弁護団【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、弁護団は11日、静岡地検に対し、有罪立証に用いる証拠を直ちに開示するよう申し入れた。静岡地裁には地検に証拠開示を促すよう訴えた。 審理計画の早期策定と迅速な公判実現に必要だと判断した。弁護団によると、地検は有罪立証を維持する方針を示した10日の意見書で、犯行着衣とされる「5点の衣類」に付着した血痕の色評価に関して、鑑識担当者の供述調書や写真専門家の供述調書、法医学者7人による共同鑑定書、法医学者の供述調書、醸造専門家の聴取報告書などを新たに取り調べ請求予
-
「捏造」是正へ検察威信 袴田さんの有罪立証方針
袴田巌さん(87)の再審公判で検察側が10日、有罪を主張する方針を決めた。3月の再審開始決定で裁判所から「証拠の捏造(ねつぞう)」の可能性にまで言及されながら、特別抗告を断念したことに内部から不満が噴出。死刑事案の中でも「象徴的」(検察幹部)とされる著名事件で、弁護側と半世紀余り対峙(たいじ)してきた検察の威信をかけて3カ月余り証拠を精査してきた。ただ無罪となる公算は大きく、組織内からは諦めの声も漏れる。 袴田巌さんの再審の流れ 無罪公算も 精査こだわる 「全く問題のない事件だと引き継がれてきた」。複数の検察関係者は危機感はなかったと口をそろえる。ところが東京高裁は3月13日、再審開
-
ひで子さん「法廷で無罪聞かせたい」 検察の有罪立証方針に冷静【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、一家4人を殺害したとして死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、静岡地検は10日、有罪を立証する方針を表明した。審理の長期化は不可避とみられるが、袴田さんの姉ひで子さん(90)は記者会見で「ここで2、3年長くなったってどうってことないですよ」とひょうひょうと受け止めた。袴田さんには半世紀近い拘束による拘禁反応があり、静岡地裁は公判への出廷を免除する意向を示す。ただ、ひで子さんは判決の主文だけは法廷で聞かせたいと考える。「裁判所で『無罪』と言われれば巌も納得すると思う」。遠くない将来、その日がやって来ることを信じている。 会見では、地検
-
検察、袴田さん有罪立証へ 血痕衣類「捏造」に反発【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、静岡地検は10日、袴田さんが犯人であり有罪だと立証する方針を静岡地裁(国井恒志裁判長)に伝えた。捜査機関による証拠の捏造(ねつぞう)を主張して無罪を訴える弁護団との間で対立は激しく、審理が長引く可能性が高い。弁護団は再審請求審の蒸し返しに過ぎないと批判し、地検に抗議した。 袴田さんの再審公判に向け、静岡地裁は弁護団と静岡地検の双方に対し、10日までに立証方針と取り調べを請求する証拠について書面で示すよう求めていた。 確定判決は、事件発生から約1年2カ月
-
大自在(7月11日)白か黒か
死刑判決が確定した袴田巌さんの再審公判を巡り10日、検察側が静岡地裁に有罪立証の方針を伝えた。東京高裁は3月、捜査機関が証拠を捏造[ねつぞう]した可能性にまで言及し再審を決定。その経緯を顧みれば、白か黒かの決着にこれ以上時間を費やすのかと違和感が拭[ぬぐ]えない。 こちらの白黒も気になる。発生から2年たった熱海土石流。崩落した盛り土周辺の開発行為に関する行政対応文書について、元はカラーだった文書を白黒化し、一部判読できない状態で公表されていた問題は、県による釈明が二転三転し訳が分からない。 問題の文書は、土石流の起点となった逢初[あいぞめ]川上流域から泥水が流れ出したことを受け、県が現地
-
証拠捏造の可能性捜査を 識者分析/西愛礼弁護士(元裁判官)【最後の砦 刑事司法と再審】
法律上、再審公判において検察官は有罪立証をすることができる。しかし、袴田事件では、有罪の証拠が捏造された可能性が複数の裁判所によって指摘されている。そうである以上、捜査機関がまず捜査すべきは有罪の可能性ではなく、証拠が捏造された可能性であるはずだ。両方の可能性を捜査し尽くしてなお有罪立証するというのではなく、有罪立証ありきで進んでいるのであれば、真実から目をそらしていると言わざるを得ない。 有罪立証をするのであれば、裁判のやり直しを求める「再審請求審」ではなく、裁判のやり直しである「再審公判」で主に行うべきであるという考えもある。ただし、今回の袴田事件では、既に2度の再審請求が行われ、40
-
「蒸し返し」袴田さん有罪立証方針に弁護団憤り 【最後の砦 刑事司法と再審】
袴田巌さんの弁護団は会見で10日、再審公判で有罪立証を維持する方針を決めた検察側を「(再審請求の)即時抗告審の完全な蒸し返しだ」と強く批判した。 検察は同日明らかにした立証の方針で、確定判決で「犯行の着衣」とされた5点の衣類について、1年以上みそ漬けされても血痕の赤みが残ることは「何ら不自然ではない」と主張。弁護側の実験結果などに基づき、「衣類に赤みは残らない」と判断した3月の東京高裁決定に反論した。 弁護団は検察側の方針を「血痕の赤みが消えていく化学的なメカニズムに触れていない」と指摘。東京高裁の裁判官は検察官のみそ漬け実験に立ち会った上で決定を出したとして、「目玉になるような新しい論
-
袴田さん有罪立証へ調整 検察 衣類血痕 補充捜査
1966年に起きた旧清水市(静岡市清水区)の一家4人殺害事件で死刑が確定し、裁判やり直しが決まった袴田巌さん(87)の再審公判で、検察側が有罪立証する方向で最終調整していることが8日、関係者への取材で分かった。弁護側は「審理に時間がかかる」などと非難した。検察は慎重に検討を重ね、期限としてきた10日、静岡地裁に方針を伝える見通し。 関係者によると、検察は、確定判決で「犯行の着衣」とされた5点の衣類に残った血痕の赤みなどについて補充捜査。有罪立証可能とみているもようで、衣類の評価が再審で再び焦点となる可能性がある。 衣類は事件から約1年2カ月後、赤みが残った状態でみそタンクから見つかった。
-
検察は有罪立証断念を 袴田さん弁護団がネット署名
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、検察当局が有罪立証を維持する方針だと報じられた8日、弁護団の戸舘圭之弁護士が検察に断念を求めるネット署名を始めた。検察が改めて有罪を立証しようとすれば審理の長期化は避けられない。「袴田さんが亡くなるのを待っていると言っても過言ではない」と検察の姿勢を批判する。 再審公判で検察が有罪立証することは法的には問題ない。「島田事件」など過去にあった死刑囚の再審4事件では、実際に有罪立証を試みた。しかし、いずれも無罪判決に至っている。 戸舘弁護士は有罪立証の維持について「メン
-
袴田さん、有罪立証で最終調整 検察側、再審公判で
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、3月に裁判のやり直しが決まった袴田巌さん(87)の再審公判で、検察側が改めて有罪立証する方向で最終調整していることが8日、関係者への取材で分かった。方針表明の期限としてきた10日、静岡地裁に伝える見通し。審理が長引く可能性があり、弁護側の反発は必至だ。 東京高裁は今年3月の決定で、確定判決が「犯行着衣」とした衣類5点の証拠を、弁護側が実施した血痕の変色状況に関する実験などに基づき、捜査機関側が捏造した可能性が極めて高いと指摘。「到底袴田さんを犯人と認定できない」と結論付けた。東京高検は最高裁への特別抗告
-
袴田さん支援団体 早期無罪判決訴え 事件57年浜松で街頭広報
旧清水市(静岡市清水区)でみそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件の発生から57年を迎えた30日、裁判のやり直し(再審)が決まった元プロボクサー袴田巌さん(87)=浜松市中区=の支援団体が、早期の無罪判決を求める街頭広報をJR浜松駅北口で行った。 地元の「袴田さん支援クラブ」のメンバーがのぼり旗を掲げ、「無罪が確定するまで、あと少しの支援をお願いします」などと通行人に呼びかけた。再審開始を認めた東京高裁決定や、東京高検が特別抗告を断念したことなどこれまでの経過をまとめたチラシを配った。 事件をめぐっては、再審公判に向けた静岡地裁と静岡地検、弁護団による3者協議が進められている。
-
「積極的な有罪立証困難」 袴田さん支援集会、弁護団が検察けん制
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、3月に裁判のやり直しが決まった袴田巌さん(87)の支援集会が25日、同区内で開かれた。検察側が再審公判での主張・立証方針を7月10日までに明らかにするとしている中、弁護団の一員で元裁判官の水野智幸弁護士は「新たな証拠を出す形での積極的な有罪立証はできないだろう」とけん制した。 事件から1年2カ月後にみそタンクで見つかり、袴田さんの犯行着衣とされた「5点の衣類」を巡り、再審開始を認めた東京高裁決定は、長期間みそ漬けの血痕に赤みは残らないとした弁護団の鑑定を評価した。 水野弁護士は集会で、4月に始まった静
-
証拠開示も命令 公正で中立な視点 常に【最後の砦 刑事司法と再審⑫/第3章・日産サニー事件の先例㊦】
「家族が一生懸命に支えていた」。福島県いわき市で1967年に自動車販売会社の宿直員が殺害されて現金が奪われた「日産サニー事件」で無期懲役が確定し、仮釈放された後に裁判のやり直し(再審)を請求した男性の元主任弁護人、折原俊克弁護士は、奔走する家族の姿が忘れがたい。 再審請求審では証人尋問が公開され、全国初と報じられた。同じく弁護人だった弓仲忠昭弁護士は公開を求めた理由について「家族だけではなく支援者も一生懸命。家族や支援者の前で行いたい、というのが出発点だった」と回想する。しかし、尋問を公開するかどうかの規定は再審法(刑事訴訟法の第4編再審)には存在しない。 弓仲弁護士は言う。「裁判官の裁
-
他の審理に広がらず 弁護士辞め不都合実感【最後の砦 刑事司法と再審⑪/第3章・日産サニー事件の先例㊥】
こんなにも、もどかしいとは想像していなかった。 裁判のやり直し(再審)が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)を40年以上支えてきた田中薫弁護士は、2014年3月に静岡地裁が再審開始決定を出した直後に弁護士を辞めた。再登録したのは今年3月。この間、差し戻し前後の即時抗告審で法曹三者の協議はもちろん、鑑定人の尋問などに立ち会えなかった。 「弁護団の会議や合宿には出ていたので、資料を見たり、話は聞いたりしていたけれど、何がどう行われているのか裁判所の中の雰囲気を全く実感できなかった」。弁護士でない一般人の立場となり、再審請求審が非公開で進められていることへの疑問が芽生えた。「自分の目で見て
-
証人尋問法廷で公開「公正さ確保、真実発見」 元裁判官、法改正の柱と指摘【最後の砦 刑事司法と再審⑩/第3章・日産サニー事件の先例㊤】
裁判のやり直しを認めるかどうかを審理する再審請求審。再審法(刑事訴訟法の第4編再審)に審理の公開・非公開についての規定はないが、事実上、非公開とされている。元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審開始を認めた静岡地裁、東京高裁の審理も非公開だった。福島県いわき市で1967年に自動車販売会社の宿直員が殺害されて現金が奪われた「日産サニー事件」は、再審請求審で証人尋問が公開された極めてまれな例だ。判断に関わった西理元裁判官(78)が22日までに静岡新聞社の取材に応じ、法改正して請求審の公開を規定することは「非常に重要」と指摘した。 西さんは88~92年、福島地裁いわき支部で日産サニー事件の再審
-
袴田さん弁護団「年内判決難しく」 3者協議10月まで日程追加
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判に向けた静岡地裁と静岡地検、弁護団による非公開の第3回3者協議が20日、地裁であり、10月末まで協議日程が追加された。終了後に記者会見した弁護団は「再審公判がいつになるのか」と懸念。目指してきた年内の判決は現時点では難しくなっているとの見方を示しつつ、早期の公判期日を指定するよう地裁に「積極的に求めていく」と強調した。 地裁は弁護団と地検に対し、7月10日までに冒頭陳述案を出すよう要請している。弁護団によると、検察官は席上、主張・立証の方針を書面で提出するとともに取り調べを請
-
再審法の改正「速やかに」 日弁連決議
日本弁護士連合会は16日に大阪市内で開いた第74回定期総会で、再審法の速やかな改正を求める決議を賛成多数で採択した。再審請求手続きでの証拠開示の制度化に加え、再審開始決定に対する検察官の不服申し立ての禁止、進行協議期日の設定義務化や審理の公開などを含めた手続き規定の整備を国に要求している。 再審法は刑事訴訟法の再審規定を指す。決議は裁判をやり直す再審が認められることは日本ではまれであり、冤罪(えんざい)被害者の救済が遅々として進んでいないと指摘。その原因は条文が19しかない現在の再審法制にあると訴えた。 政府が再審請求審での証拠開示の制度化を検討していない現状を「立法不作為とも評価し得る
-
再審無罪判決「一日も早く」 袴田さん支援団体 静岡地裁に請願
現在の静岡市清水区で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定後、裁判のやり直し(再審)が決まった元プロボクサー袴田巌さん(87)を支援する「無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会」(東京)は14日、一日も早く再審無罪判決を言い渡すよう求める請願書を静岡地裁に出した。 同会はこれまで袴田さんの再審開始を訴えてきた。今年3月に再審開始が確定したため、今回から再審無罪を求める請願書に切り替えた。提出署名は累計で15万522人分となった。 県庁で記者会見した門間幸枝副代表は「(再審開始は)遅すぎるが、(袴田さんが)生きていてくれたことがありがたい。これ以上延ばしたくない」とし、速やかな再審無罪を
-
再審法改正へ国会議員も意欲 日弁連院内集会 袴田さん姉出席
日本弁護士連合会(小林元治会長)は6日、再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正を求め、都内の衆議院第二議員会館で集会を開いた。与野党の国会議員30人が集まり、参加議員を含む89人が法改正への賛同メッセージを寄せた。小林会長は取材に「国の政策にきちんと反映させなければいけない、との大きな合意ができつつある」と述べ、議員や関係者への働き掛けを続けていく考えを示した。 集会には、再審開始が確定した袴田巌さん(87)の姉ひで子さん(90)も出席した。弁護団の戸舘圭之弁護士は「もし再審開始決定に対する検察官の上訴が禁止されていれば、9年前に再審が開始され、再審公判で無罪になっていた」と指摘し、法の不備
-
袴田ひで子さん「諦めたらおしまい」 「大崎事件」を巡り心境
「大崎事件」を巡り、福岡高裁宮崎支部が5日、原口アヤ子さん(95)の再審開始を認めない決定をしたことを受け、3月に再審開始が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)の姉ひで子さん(90)が浜松市中区の自宅前で報道陣の取材に応じ「残念な決定ではあるけれど、諦めたらそこでおしまい。元気を出して頑張っていってもらうしかない」と受け止めを語った。 原口さんとは15年ほど前に初めて会い、支援集会に駆けつけるなどして交流してきた。入院先の病院を訪ねて見舞い、激励の動画を届けてきた。一報を受け、すぐに原口さんや支援者を励ますビデオメッセージを送ったという。ひで子さんは「巌だけが助かればいいとは思っていな
-
再審冒頭陳述案、7月提出要請 静岡地裁、袴田さん弁護団と地検に 出頭免除応じる考え
現在の静岡市清水区で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、静岡地裁と弁護団、静岡地検による非公開の3者協議が29日、地裁で開かれた。国井恒志裁判長は、冒頭陳述案を7月10日までに提出するよう弁護団と地検の双方に求めるとともに、現時点では袴田さんを公判に強制的に出頭させる考えはないと述べた。協議終了後、弁護団が記者会見して明らかにした。 再審公判に向けた3者協議は2回目。4月の第1回協議で検察側は、立証方針を決めるのに「3カ月かかる」と主張している。この日の協議で国井裁判長は冒頭陳述案の提出と同時に、立証に必要な証拠の取り調べを地裁に対して請求
-
袴田事件「結論は再審無罪しかない」 浜松で支援集会
旧清水市(現静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直し(再審)が認められた袴田巌さん(87)の早期無罪判決を求める支援集会が27日、浜松市中区で開かれた。弁護団の間光洋弁護士が再審公判の要点や課題を整理し、「結論は再審無罪判決しかない。速やかな公判を求める」と訴えた。 間弁護士は、再審を認めた3月の東京高裁決定を「検察官の主張を排斥した完全勝利と言えるもの」と評価。今後の再審公判の課題として、袴田さんの出廷の是非や審議する証拠の範囲を挙げた。その上で「最短では9~10月ごろに公判開始、年内の判決を目指したい」と見通した。 旧天竜林高
-
的確な訴訟指揮を要請 袴田さん弁護団、静岡地裁に意見書、出頭の免除も
現在の静岡市清水区で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判の進め方を巡り、弁護団は25日、新たな意見書を静岡地裁(国井恒志裁判長)に提出した。静岡地検に速やかに立証方針を明らかにさせるための訴訟指揮と、袴田さんの公判への出頭免除を地裁に求めた。29日の次回3者協議で議論する。 弁護団は意見書で、前回の協議で検察官が立証方針の決定に3カ月かかるとしたことについて「裁判長は説明を検察官に求めることもなく、当然であるかのような対応をした」と抗議。迅速な裁判を受ける権利を無視していると批判し、的確な訴訟指揮を促した。また、袴田さんの公判出頭義務を免除すること
-
死刑制度の課題学ぶ 袴田さん支援団体が勉強会、浜松・中区で専門家が解説
現在の静岡市清水区で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直しが認められた袴田巌さん(87)=浜松市中区=の支援団体は20日、死刑の論理と倫理を学ぶ勉強会を同区の浜松復興記念館で開いた。 関東学院大で刑法と刑法史を専門に研究する宮本弘典教授が講師を務めた。支援者ら約30人が参加し、日本における死刑制度の現状と課題を学んだ。 宮本教授は、国内外の死刑制度の現在に至るまでの歴史的経緯を振り返り、近年の日本の死刑執行状況などを説明した。心情安定を理由にした死刑囚の面会制限などに触れ「死刑囚は社会性をすべて奪われている」と訴えた。さらに「袴田事件から教訓を学び、無罪を見抜く
-
袴田さん、元裁判長と初対面 14年に再審開始や拘置執行停止決定 姉感謝「命助けてくれた」
現在の静岡市清水区で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直しが認められた元プロボクサー袴田巌さん(87)が19日、静岡地裁の裁判長として袴田さんの再審開始と死刑・拘置の執行停止を決めた村山浩昭さん(66)と都内の集会会場で初めて対面した。袴田さんの姉ひで子さん(90)は「命を助けてくれたようなもの。ありがとう」と村山さんに直接感謝を伝えた。 村山さんは2014年、袴田さんの再審開始と死刑の執行停止に加えて「耐えがたいほど正義に反する」として拘置の執行停止も決め、袴田さんは約48年ぶりに釈放された。13年には手続きの一環で意見を聴くため収監先の東京拘置所に出向いたが、
-
袴田さん出廷免除求める 弁護団、静岡地裁に診断書を提出
静岡地裁で今後始まる袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、袴田さんの出廷免除を求めている弁護団は19日までに、拘禁反応で袴田さんには訴訟能力が認められないとする精神科医の診断書を地裁に提出した。同日、都内で弁護団の会議があり、終了後に小川秀世事務局長が明らかにした。29日の次回3者協議までに、出廷を強制しないよう訴える意見書も出す方針。 診断書は15日付。袴田さんが東京拘置所に収監されているころから関わりのある精神科医が4月に面談して作成した。長期拘禁により、袴田さんは「公判で意味のある対応をすることが不可能」とし、心神喪失の状態にあると判断。その上で、出廷を強制した場合は「身体的精神的不調
-
再審法改正、賛同求める 川勝知事と静岡市長を訪問へ 静岡県弁護士会
裁判のやり直しを求める再審請求に関する規定が乏しく、無実を訴える人の救済につながっていないと指摘される再審法(刑事訴訟法の第4編再審)を巡り、県弁護士会の杉田直樹会長らが今月中にも川勝平太知事と難波喬司静岡市長を訪ね、法改正への理解を求める方針であることが18日までの関係者への取材で分かった。日本弁護士連合会が始めた要請活動の一環。 日弁連は2月、再審請求審での証拠開示の法制化や再審開始決定に対する検察官の不服申し立てを禁止することなどを盛り込んだ再審法の改正案を公表した。今月12日には理事らが与野党の国会議員や秘書200人以上と面会し、法改正の必要性を説明している。 国会を後押しするた
-
無実の人救済、より実効性を 京都・龍谷大が研究センター新設 学者と弁護士協働「あるべき再審法」提示目指す
龍谷大(京都市)に2023年度、刑事司法・誤判救済研究センターが新設された。再審法(刑事訴訟法の再審規定)の不備によって無実の人の救済が遅れているとの指摘がある中、弁護士と協働し、実効性のある仕組みの構築を目指す。センター長に就いた斎藤司法学部教授(刑訴法)は「持続可能な刑事司法と再審制度を支える基盤を整え、実務と研究の担い手も育てていきたい」と話している。 研究員21人の過半数は刑事弁護にたけた弁護士だ。「もっと普通に、もっと安定的に誤判救済ができるようにしたいと考えたとき、実務家の努力がなければ机上の空論になりかねない」と斎藤教授。その上で「実務の蓄積を共有すると同時に、理論的観点の検
-
証拠の整理方法検討 袴田さん弁護団、静岡地裁、地検
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直し(再審)が認められた元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審公判に向け、静岡地裁(国井恒志裁判長)と弁護団、静岡地検は10日、地裁で非公式の打ち合わせをした。弁護団によると、証拠番号の振り方をはじめ証拠の整理方法などを話し合ったという。 地裁は4月の第1回3者協議で、確定審の証拠を厳選するよう弁護団と地検に求めた。弁護団は打ち合わせに先立ち、意見書を地裁に提出。「確定記録の全ての証拠を取り調べるべき」として厳選には同意できないとした上で、全てを取り調べる場合でも「効率的な審理は可能」と訴えた
-
再審無罪願って逝く 袴田さん支援の須藤春子さん 二俣事件冤罪、亡き夫重ね 「本当の笑顔見たい」あと一歩で
現在の浜松市天竜区二俣町で1950年に一家4人が殺害された「二俣事件」で、一・二審で死刑判決を受けたものの差し戻しを経て無罪に至った須藤満雄さん(2008年に死去)の妻春子さんが4日、老衰のため85歳で亡くなった。夫と同じ境遇の元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審無罪を願い続けた一人。「一日も早く、巌さんの本当の笑顔が見たいの。無罪になるまで絶対に死なない」。そう誓ってきたが、あと一歩のところで旅立った。 静岡地裁は14年3月、一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田さんの再審開始を認め、釈放した。直後、春子さんは「袴田さんはうちの主人と同じようにつらい思いをしたと思う。苦労しただろう
-
全ての確定審証拠 地裁に調査要請へ 弁護団、10日意見書提出
元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審公判に向け、弁護団は10日、確定審の全ての証拠を取り調べるよう求める意見書を静岡地裁(国井恒志裁判長)に提出する。地裁は証拠の厳選を打診していたが、弁護団は「同意できない」として反対する。 弁護団は9日に会議を開き、今後の対応などを話し合った。終了後、角替清美弁護士が報道陣の取材に応じた。検察が主張・立証の方針を明らかにしない中、速やかに方針を決めるよう地裁の訴訟指揮を求める意見書も追って提出する。 地裁は4月、再審公判に向けた弁護団と静岡地検との第1回協議で、確定審の証拠を厳選するよう弁護団と地検に検討を促した。 弁護団は再審公判で、袴田さんの犯
-
再審法 憲法に照らし検証を 静岡大・笹沼教授 袴田事件踏まえ「捜査機関は全証拠、裁判所に」
3日は憲法記念日。現在の静岡市清水区で1966年、一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の裁判のやり直し(再審)が決まるまでに長い年月がかかったことを巡り、現在の再審法(刑事訴訟法の第4編再審)は憲法上の要請を実現できていないとの指摘が聞かれる。不利益再審を廃止した以外は戦前の旧刑訴法の規定を引き継ぎ、一度も改正されていない再審法について、静岡大の笹沼弘志教授(憲法学)は「憲法に適合しているかどうかを全面的に検証すべき」と話している。 袴田さんは80年に死刑が確定し、翌81年に再審を請求した。第2次再審請求審で静岡地裁は2014年、再審開始と死刑・拘置の執行停止を認めて袴
-
調書追認裁判に閉塞感 民事経験 対話を大事に【最後の砦 刑事司法と再審⑧/第2章 語り始めた元裁判長㊥】
一家4人を殺害したとして死刑判決が確定した袴田巌さん(86)の再審開始を2014年、静岡地裁の裁判長として決めた村山浩昭さん(66)=21年に定年退官、現弁護士=は、刑事裁判官のイメージが強い。 古くは富山地家裁の判事補時代、「赤いフェアレディZ事件」と呼ばれた富山・長野連続誘拐殺人事件。一人に死刑、共犯者とされた別の一人に無罪を言い渡した判決に関わった。東京地裁の裁判長として、秋葉原の無差別殺傷事件を審理したことでも知られる。 静岡地裁では、袴田さんの再審開始決定の半年ほど前に、覚醒剤の使用事件で静岡県警の違法捜査を理由とした無罪判決を書いている。<(警察官が)捜索に入るなり、いきなり
-
再審進行、速やかに 高検に袴田さん弁護団
現在の静岡市清水区で一家4人が殺害された事件で、強盗殺人罪などで死刑判決が確定した袴田巌さん(87)=浜松市中区=の再審公判に向け、袴田さんの弁護団が20日、東京高検に申し入れ書を提出し、有罪立証の放棄と速やかな公判の進行への協力を求めた。 申し入れ書では、静岡地裁で10日に開かれた法曹三者協議の中で、検察が公判での立証方針を示すまで3カ月の期間を求めた点について、「検察は再審請求審で、全ての記録を十分に検討したはず。すでに方針が決められていることは間違いない。袴田さんが置かれている状況を全く考慮していない」と批判した。 提出後に記者会見した弁護団によると、申し入れ書を受け取った東京高検
-
日弁連会長、検察けん制「有罪立証、諦めるべき」 袴田さん再審公判巡り
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定した袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、日本弁護士連合会の小林元治会長は19日、速やかな公判開始と無罪判決を求める声明を公表した。同日の定例記者会見で、小林会長は「これ以上、袴田さんに過酷な時間を強いてはいけない」と強調した。 再審公判の日程は決まっていない。静岡地裁と弁護団、地検による10日の3者協議で地検は立証方針を表明せず、7月10日までに明らかにする考えを示した。 声明は、事件から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで発見され、袴田さんの犯行着衣とされた「5点の衣類」について、第1次と2次の再審
-
立証方針の早期決定要望へ 袴田さん弁護団、20日検察側に 浜松で支援団体報告会
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決を受け、今年3月に裁判のやり直し(再審)が確定した袴田巌さん(87)=浜松市中区=の支援団体が15日、市内で報告会を開いた。弁護団の小川秀世事務局長は、東京高検と最高検に20日出向き、再審公判に向けた主張や立証方針の早期決定を要望すると明らかにした。 報告会「袴田事件の現在 その課題 今後の展望」で、小川事務局長は、10日に静岡地裁で開始した再審公判に向けた法曹三者の協議で、主張や立証の方針を3カ月後までに示すと検察側が説明したことについて「すでに十分な検討をしているはず」と批判。東京高裁が3月13日の決定で
-
証拠隠しが誤判を生む 再審長期化 体質見直せ 名張毒ぶどう酒事件弁護団長・鈴木泉弁護士【最後の砦 刑事司法と再審/番外編 インタビュー㊦】
袴田事件の再審開始決定に検察が特別抗告する公算が大きくなる中、検察官抗告の是非が問われている。1961年に三重県で起きた名張毒ぶどう酒事件の再審請求では、無実を訴え続けた奥西勝元死刑囚が請求中に獄中で死亡した。約40年にわたり再審弁護を続ける鈴木泉弁護団長は「検察と裁判所の体質を見直さない限り冤罪(えんざい)はなくならない」と指摘する。 -名張事件では、弁護団が発掘した新証拠から一度は再審開始が出た。しかし検察の異議申し立てにより開始決定が取り消された。 「5次再審の歯形鑑定、再審開始決定につながった7次の毒物鑑定は大きな成果だった。科学はうそをつかない。ただ、異議審で開始決定を取り消し
-
袴田さん再審決定文 ようやくウェブに掲載 静岡地裁
裁判をやり直す再審公判を控える元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審開始と死刑・拘置の執行停止を認めた2014年の静岡地裁決定(村山浩昭裁判長)について、地裁は11日までに裁判所のウェブサイトに全文を掲載した。支援団体が載せるよう求めていた。 袴田さんの第2次再審請求を巡り、静岡地裁決定を取り消した18年の東京高裁決定と、審理不尽の違法があるとして高裁に差し戻した20年の最高裁決定は裁判所のウェブサイトに載っている一方、地裁決定のみ不掲載の対応が続いていた。 各地の支援団体で組織する「袴田巌さんの再審無罪を求める実行委員会」は21年と再審開始確定後の今年3月、掲載するよう地裁に要請。4日
-
袴田さん弁護団「心外」 3者協議開始 検察の態度を批判
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決を受け、今年3月に裁判のやり直し(再審)が確定した袴田巌さん(87)の再審公判に向けた法曹三者の協議が10日、静岡地裁でスタートした。有罪の主張・立証をするかどうかの方針を3カ月後まで示すことができないとした検察側に対し、早期の再審無罪と謝罪を求めている弁護団は「誠に心外だ」(西嶋勝彦団長)と反発した。 「全くの予想外。憤りを感じている」。1時間を超える3者協議の終了直後、弁護団の小川秀世事務局長は地裁前で報道陣の取材に応じ、検察側が態度を留保したことを批判した。 やりとりの中で、確定記録が静岡地検ではなく
-
袴田さん再審へ協議開始 検察、主張立証方針示さず「3カ月ほしい」
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の裁判をやり直す再審公判に向け、静岡地裁(国井恒志裁判長)と弁護団、静岡地検による非公開の3者協議が10日、地裁で始まった。終了後に記者会見した弁護団によると、検察は主張や立証の方針を示さなかった。「方針を決めるのに3カ月ほしい」として、7月10日までに明らかにする考えを説明した。 次回の協議を5月29日、次々回を6月20日に行う。地裁は証拠調べに必要な確定記録を選別するよう要請したという。検察は主張と立証の方針に加え、取り調べを請求する証拠の範囲についても7月10日に示す。 弁護団
-
袴田さん再審 検察、主張方針示さず
現在の静岡市清水区で一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判に向けた法曹3者の打ち合わせ協議が10日、静岡地裁であり、検察側は主張方針を示さなかった。弁護団によると、検察側は「方針を決めるのに3カ月ほしい」と求めた。
-
検察や裁判官に謝罪要求 袴田さん再審公判、弁護団方針
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定した袴田巌さん(87)の裁判をやり直す再審公判を巡り、弁護団が、袴田さんは捏造(ねつぞう)された証拠で死刑囚にさせられてきたとして、検察官と裁判官に長年の判断の誤りを謝罪するよう求めることが7日、関係者への取材で分かった。 再審公判に向けた弁護団と静岡地裁、静岡地検による3者協議が10日に地裁で開かれる。弁護団と地検の主張方針を確認し、公判日程などが話し合われる。 弁護団は速やかに無罪判決を得るため、即日結審を要望する。一日で検察側の論告求刑や弁護側の最終弁論まで行うことが難しい場合でも、判決を含め「
-
大自在(4月6日)奪われた時間
日課の散歩の途中だったであろう。浜松市中心街の路地裏でベンチに腰を下ろして一休みする袴田巌さんを見掛けたことがある。2014年に東京拘置所から釈放されて数年後の汗ばむような日。手元に目をやると、清涼飲料の缶を握っていた。 国内で長い間親しまれているおなじみの乳酸菌飲料。かつては原液を水で薄めて味わっていた。そのまま飲める製品が発売されたのは現在の静岡市清水区で発生した一家4人殺人事件で死刑判決が確定した袴田さんが東京拘置所に収監されている時だった。 袴田さんが懐かしの味として選んだのか、散歩に付き添う支援者が勧めたのかは分からない。ベンチ前の自動販売機の商品で、袴田さんが1966年に逮捕
-
決定文ウェブ掲載 「地裁が適切判断」 袴田さん再審で最高裁
最高裁の小野寺真也総務局長は4日の衆院法務委員会で、袴田巌さん(87)の再審開始と死刑・拘置の執行停止を認めた2014年の静岡地裁(村山浩昭裁判長)による決定文の裁判所ウェブサイトへの掲載について「決定が確定したことを踏まえ、静岡地裁が適切に判断する」と述べた。立憲民主党の米山隆一氏(新潟5区)への答弁。 小野寺氏は答弁の中で、最高裁は14年当時、刑事再審請求事件のウェブサイトへの掲載基準を明示していなかったと説明した。最高裁は17年、決定告知日の翌々日までに日刊紙2紙が決定を掲載した場合を掲載基準に定めた。 今年3月の東京高裁の再審開始決定を受け、袴田さんの支援団体が静岡地裁にウェブサ
-
3者協議、4月10日に 袴田さん再審公判へ初 静岡地裁
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直し(再審)が認められた袴田巌さん(87)の弁護団は29日、再審公判に向けた静岡地裁、静岡地検との3者協議が4月10日午後に地裁で開かれることが決まったと明らかにした。 検察側は協議の中で、再審公判で有罪立証するかどうかの方針を示すとみられる。弁護団は早期の無罪判決を求めていく。笹森学弁護士は、再審開始の確定から3週間で初回の協議が開かれることについて、自身も関わり再審無罪となった「足利事件」と比較しながら「相当早い」と述べた。 事件では、発生から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで血痕の赤
-
袴田さん釈放9年 静岡地裁決定のウェブ掲載、支援団体が再要請
現在の静岡市清水区で1966年、一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)が釈放されて27日で9年となった。袴田さんの再審開始と死刑・拘置の執行停止を認めた2014年の静岡地裁決定(村山浩昭裁判長)は裁判所のウェブサイトに載っておらず、袴田さんの支援団体は同日、地裁に「日本の刑事裁判史上極めて重要な判例となった村山決定は特筆に値し、広く一般に公開されてしかるべき」として掲載するよう再要請した。 地裁決定を取り消した18年の東京高裁決定と、審理不尽の違法があるとして高裁に差し戻した20年の最高裁決定はウェブサイトに載っている。支援団体によると、21年にも掲載を要請したが、地裁は
-
再審法「改正実現を」 袴田さん弁護団が不備指摘 静岡でシンポジウム
一家4人を殺害したとして死刑が確定し、今月再審開始が確定した袴田巌さん(87)の弁護士らは25日、静岡市内で開かれた再審法に関するシンポジウム(県弁護士会主催)で、検察官の手元に残されている再審の請求人にとって有利な証拠がなかなか開示されず、再審開始決定が出ても検察官の不服申し立てで救済が妨げられていると批判。各地の弁護士会や支援者と連携しながら再審法の早期改正の実現を目指す重要性を訴えた。 シンポジウムには袴田さんと姉ひで子さん(90)も出席した。袴田さんは長期拘禁の影響も見られる中で「闘いは勝たなきゃいかん」と語り、ひで子さんは長年の支援に改めて感謝した。 再審法は、刑事訴訟法の第4
-
冤罪の叫び 司法に届かず【最後の砦 刑事司法と再審/緊急連載 抗告断念㊦】
「検察がてんびんにかけたのは、袴田さんの早期救済ではない。メンツのために特別抗告するか、それとも世論のハレーションを避けるか、というてんびんだった」。日本弁護士連合会再審法改正実現本部の鴨志田祐美本部長代行(京都弁護士会)はそうみている。 みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審開始を東京高裁が認めた13日、検察は最高裁に特別抗告すると多くの関係者が予想した中、鴨志田さんは「50%」と読んだ。 再審開始決定に対する検察の不服申し立てが再審の実現を妨げているとの批判は根強い。不備が指摘される再審法(刑事訴訟法の第4編再審)の改正を求める声の高まりを受
-
法改正実現へ道筋探る 「袴田事件」テーマに集会 静岡
静岡県弁護士会は25日午後1時半から同4時半まで、集会「袴田事件からみえる再審法の問題点」を静岡市葵区の静岡労政会館で開く。不備が指摘されて久しい再審法の課題を共有し、法改正実現への道筋を考える。 再審法は刑事訴訟法の第4編再審を指す。条文が19しかなく規定の充実を求める声が上がる一方、これまで改正されたことはない。 集会は日本弁護士連合会が共催する。ドキュメンタリー映画を上映した後、再審開始が確定した袴田巌さん(87)の弁護団が再審法の問題点を報告するほか、約30年ぶりに法改正案を公表したばかりの日弁連再審法改正実現本部で本部長代行を務める鴨志田祐美弁護士の講演も予定している。 誰で
-
ねつ造 袴田さんが指摘【最後の砦 刑事司法と再審/緊急連載 抗告断念㊥】
1966年にみそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で、重要証拠が捏造(ねつぞう)された可能性を誰よりも早く指摘していたのは、死刑が確定した袴田巌さん(87)自身だ。 83年1月、東京拘置所から弁護団の田中薫弁護士に宛てたはがきにも〈血染めのズボン等についての私に対するねつ造〉と書いている。 事件から1年2カ月後、現場近くのみそタンクからシャツやズボンなど「5点の衣類」が見つかる。血痕には赤みが確認できた。一方、袴田さんの再審開始を認めた13日の東京高裁決定は、専門家の化学的知見を踏まえ、1年以上みそに漬かった衣類の血痕に「赤みは残らない」と判断した。 発見直前に隠された可能性が高ま
-
社説(3月23日)検察が抗告断念 再審公判の早期開始を
現在の静岡市清水区で1966年6月、みそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件を巡り、死刑が確定した袴田巌さん(87)の裁判やり直し(再審)開始を認めた東京高裁決定に対し、東京高検は最高裁への特別抗告を見送った。高裁での差し戻し審を経て、閉ざされていた再審の扉がようやく開いた。 差し戻し審では、弁護側は争点となった「衣類の血痕の赤み」について、赤みが消失する化学的な仕組みを説明し、確定判決が「犯行着衣」と認定した衣類5点の証拠能力に疑いがあることを明らかにした。検察側に有罪を維持できる根拠は乏しく、静岡地裁で開かれる再審公判では無罪判決が言い渡される公算が大きいとみられている。 開始日時
-
検察官抗告の禁止 「慎重に議論すべき」 法相【刑事司法と再審】
斎藤健法相は22日の閣議後記者会見で、検察官抗告を認めている現在の再審制度について「公益の代表者として当然のこと。違法、不当な再審開始決定を是正できなくなるので抗告権の排除は慎重に議論すべき」との認識を示した。 再審開始決定に対する検察官の不服申し立てを巡っては、日本弁護士連合会が再審手続きの長期化の一因になっていると指摘し「冤罪(えんざい)被害者の救済を理念とする再審制度の趣旨に反するため禁止すべきだ」と制度改正を主張している。 東京高検が特別抗告を断念し、再審開始が確定した袴田巌さん(87)=浜松市中区=について斎藤氏は「個別事件への所感は控える」と述べた。
-
無罪へ前進「うれしい」 小さな声、大きな力に 袴田さん再審確定【最後の砦 刑事司法と再審/緊急連載 抗告断念㊤】
「えぇー。私が袴田巌でございます」 拍手で迎えられた。 静岡市葵区の静岡労政会館。21日、再審開始確定後初めての集会が開かれた。 「竜との闘いでありますので、みんなの協力があって勝ち抜ける。よろしくお願いします」 袴田巌さん(87)は支援者が差し出したマイクを手に一気に話すと、さっさと壇上から降りた。会場に入ってから、わずか3分間の出来事だった。 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定したが、2014年の静岡地裁に続き東京高裁が裁判のやり直し(再審)を認め、検察当局が20日、最高裁に不服を申し立てることを断念した。 静岡地裁の決定を
-
袴田さん再審確定 ねぎらう当時知る清水区民 現場周辺は言葉少な「ずさんな捜査と裁判 多くの人生狂わせた」
57年前にみそ製造会社の専務一家4人が殺害・放火された現場がある旧清水市(現在の静岡市清水区)。再審開始が確定した袴田巌さん(87)が30歳で逮捕されるまで20代の一時期を過ごした。「無罪の公算」が各紙の朝刊で報じられた21日、袴田さんと触れ合った人々からねぎらいの声が寄せられた。一方で現場周辺の住民は言葉少な。「翻弄(ほんろう)され続けた半世紀だった」とやり場のない怒りをにじませる高齢者もいた。 袴田さんが1階でバー「暖流」を経営し、2階で生活した建物が同区の巴川沿いに残る。自身も2018年8月、姉のひで子さんと半世紀ぶりに訪問し「ここ暖流だろ」と話すなど覚えている様子だった。若いころの
-
ひで子さん「やっと再審開始」 袴田さんも来場、静岡で集会【動画あり】
一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直し(再審)が認められた袴田巌さん(87)の支援団体が21日、静岡市内で再審開始確定後初の報告集会を開いた。袴田さんと姉ひで子さん(90)がそろって来場。ひで子さんは「やっと再審開始になりました」と述べ、長年の支援に感謝した。 袴田さんの第2次再審請求審で、東京高裁は13日、袴田さんの再審開始を認める決定を出した。東京高検は20日、最高裁に特別抗告しないことを発表し、再審開始が確定した。 集会で弁護団の西嶋勝彦団長は、静岡地裁での再審公判が残されていることを踏まえて「九分九厘の勝利を祝したい」と述べた。 映画監督の周防正行さんがゲスト
-
袴田さん無罪の公算 再審開始が確定 検察、特別抗告断念 死刑事件で戦後5件目
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直し(再審)を求めてきた元プロボクサー袴田巌さん(87)の差し戻し後の即時抗告審で、東京高検は20日、再審開始を認めた東京高裁決定について、最高裁に特別抗告しないことを明らかにした。再審開始が確定し、今後、静岡地裁での再審公判に移行する。事件から57年。袴田さんに無罪判決が言い渡される公算が極めて大きくなった。 戦後の死刑確定事件のうち再審が開始されるのは5件目で、89年に静岡地裁で再審無罪となった「島田事件」以来となる。先の4件は全て再審無罪に至った。 東京高検の山元裕史次席検事は記者会見
-
「早く無罪に」決意新た 弁護団、抗告断念にうれし涙 袴田さん再審確定【動画あり】
当然の判断だと分かってはいても目にはうれし涙が浮かんだ。一家4人を殺害したとして死刑が確定し、無実を訴えて裁判のやり直し(再審)を求めてきた袴田巌さん(87)の再審開始が20日、検察の特別抗告断念によって確実になった。弁護団は都内で記者会見を開き、二人三脚で取り組んできた支援者に感謝。「袴田さんを早く無罪にしてあげたい」と決意を述べた。事件から半世紀余り。姉のひで子さん(90)は満面の笑顔を見せた。 特別抗告期限を踏まえ、会見は午後4時半に設定されていた。検察の断念が弁護団に伝わったのは、そのわずか1分前。小川秀世事務局長の携帯電話に担当検察官から連絡が入った。 「特別抗告を断念するのか
-
半世紀余「長かった」 世論喚起した支援者ら歓喜 袴田さん再審確定
「ノックアウトで勝利」 「やった、やった。長かった」―。検察が特別抗告を断念したとの一報が記者会見場に入ると、「袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会」の山崎俊樹事務局長(69)は声を上げた。 山崎さんは、みそタンクから見つかり犯行着衣とされた「5点の衣類」の不自然さを20年以上にわたって追及してきた。弁護団の実験を主導。みそ漬けの血痕が短期間で黒色化することを示した実験報告書は「無罪を言い渡すべき明らかな証拠に該当する」と評価され、その成果は袴田巌さんの再審開始に結びついた。 20日も検察の庁舎に出向き、弁護団や他の支援者とともに特別抗告を断念するよう要請行動を展開。再審開始の確定を「
-
袴田さんの再審開始へ 検察が特別抗告断念
一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審開始を認めた東京高裁決定について、検察は20日、最高裁に特別抗告しないことを決めた。再審開始が確定し、静岡地裁での再審公判に移行する。
-
袴田さん再審開始 20日抗告期限 抗告要件は憲法違反か判例違反
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)の裁判のやり直し(再審)を認めた東京高裁決定は20日、最高裁への特別抗告期限を迎えた。東京高検が同日中に抗告すると、再審開始の可否を巡る審理はさらに長引く。一方、抗告を断念した場合は静岡地裁で再審公判に移り、袴田さんは無罪となる公算が大きい。 事件では、発生から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで血痕の赤みが見て取れるシャツなど「5点の衣類」が見つかった。確定判決は袴田さんの犯行着衣と認定したが、弁護団は赤みが残っているのは不自然として捏造(ねつぞう)された証拠だと訴えて
-
袴田さん再審開始 20日抗告期限 一区切り願う/上訴権の乱用
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審開始を認めた東京高裁決定は20日、特別抗告期限を迎える。検察の最終判断を翌日に控えた19日、袴田さんの姉ひで子さん(90)は浜松市で開かれた集会で「一区切りつけてもらいたい」と改めて訴えた。刑事法の研究者が「抗告を行うことは上訴権の乱用」として断念を求める新たな動きもみられた。 姉ひで子さん、刑事法研究者 検察に断念求める 刑事法の研究者たちは18日付で声明を公表した。100人以上が名を連ね「速やかに再審公判に移行すべき」と主張する。九州大の豊崎七絵教授ら14人が呼びかけ人とな
-
袴田さん再審、20日抗告期限 公開法廷で主張尽くせ 「大崎事件」元裁判官・根本渉弁護士【最後の砦 刑事司法と再審】
強盗殺人罪などで死刑判決が確定した袴田巌さん(87)=浜松市中区=の再審請求を認めた東京高裁決定は、20日に抗告期限を迎える。再審制度の不備や不当を訴える声が法曹界を中心に一層強まる中、袴田さんと同様に審理が長期化している鹿児島県の「大崎事件」の再審請求審を裁判官時代に担当した根本渉弁護士(65)=第一東京弁護士会=が18日までに取材に応じ、「現在の制度は請求当事者にとって納得しがたい形になっている。ルールの整備が必要だ」との認識を示した。 日本弁護士連合会は請求審での検察官による不服申し立て禁止や証拠開示の制度化の必要性を主張している。 根本氏は、検察官の不服申し立てが禁止されれば、「
-
「特別抗告の理由ない」 袴田さん再審巡り 元裁判長、検察けん制 都内でシンポ【最後の砦 刑事司法と再審】
みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直し(再審)を求める袴田巌さん(87)の差し戻し後の即時抗告審で、再審開始を認めた東京高裁決定に対し検察が最高裁に特別抗告するかどうかの期限が迫る中、2014年に静岡地裁の裁判長として袴田さんの再審開始を認めて釈放した村山浩昭弁護士が18日、都内のシンポジウムで「特別抗告の理由が全くない。もし特別抗告したら、検察官の抗告は法律で禁止しなくてはいけないという意見がもっともっと高まる」とけん制した。 刑事訴訟法は、特別抗告の要件を憲法違反か判例違反がある場合とする。村山氏は高裁決定について、審理を差し戻した最高裁の課題に答えを出
-
特別抗告しない英断を 袴田さん弁護団 高検に申し入れ
1966年に現在の静岡市清水区でみそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で死刑が確定し、東京高裁で再審開始決定が出た袴田巌さん(87)の弁護団は17日、東京高検に「特別抗告をしないという英断を求める」との申し入れ書を提出した。関係者によると、高検は最高裁に特別抗告する方向で検討している。期限は20日。申し入れ書では「最高裁が万が一にも検察の主張を認めれば、袴田さんを死刑にしなければならない事態に陥ることもある」との危惧を示した。 東京・霞が関の高検前では、支援者が「特別抗告NO!」「無罪」と書かれたプラカードを掲げた。弁護団の村崎修弁護士は「特別抗告の理由が全くないのは明らか。最高裁が救っ
-
袴田さん再審 特別抗告へ 検察、高裁決定に不服
1966年に現在の静岡市清水区でみそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件を巡り、死刑が確定した袴田巌さん(87)の第2次再審請求の差し戻し審で、東京高検が再審開始を認めた13日の東京高裁決定を不服として、最高裁に特別抗告する方向で検討していることが16日、関係者への取材で分かった。期限は20日。最高裁は2020年に高裁に差し戻す決定をしており、改めて再審の可否を判断することになる。 審理さらに長期化 第2次請求では2度の開始決定が出たが、審理はさらに長期化する見通し。袴田さんは高齢で意思疎通も難しく、弁護側は特別抗告の断念を求めている。検察側への反発は必至だ。 再審開始には無罪を言い
-
「特別抗告断念を」SNSで賛同の輪 袴田さん再審開始確定願い【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、一家4人を殺害したとして死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審開始を認めた東京高裁決定に対して東京高検が最高裁に特別抗告する公算が大きくなる中、弁護団や日本プロボクシング協会袴田巌支援委員会が、特別抗告を断念するよう求める動きをSNSでも強めている。ネット署名は開始から1日で賛同者が2万7000人を超え、増え続けている。 特別抗告の期限は20日。高検が特別抗告しなければ再審開始が確定する。静岡地裁で再審公判が開かれ、袴田さんは無罪になる可能性が高い。特別抗告した場合は、再審開始の可否をめぐる審理が最高裁で続く。 ネット署名は、戸舘圭之弁護士
-
検察に反論へ鑑定書、弁護団準備 みそ漬け実験結果 袴田さん再審
強盗殺人罪などで死刑判決が確定した袴田巌さん(87)=浜松市中区=の再審開始を認めた東京高裁決定を受け、弁護団が16日、都内で記者会見し、検察側のみそ漬け実験の結果を分析した専門家の鑑定書を準備していると明らかにした。事務局長の小川秀世弁護士は「今後予想される検察側の主張への反論になり得る」として、特別抗告を検討中とみられる検察側をけん制した。 弁護団は同日、鑑定書の概要を盛り込んだ書面を東京高検に提出し、特別抗告の断念を改めて求めた。 東京高裁での差し戻し審では、事件発生の1年2カ月後にみそタンクから見つかった犯行着衣とされる衣類の血痕に、赤みが残るかどうかが争点だった。 弁護団が準
-
袴田さん再審、高検が最高裁に特別抗告へ
静岡県の一家殺害事件で死刑が確定した袴田巌さん(87)の第2次再審請求の差し戻し審で、東京高検が再審開始を認めた東京高裁決定を不服として、最高裁に特別抗告する方向で検討していることが16日、関係者への取材で分かった。
-
自白偏重が冤罪要因に 「無実発見」判事の務め 元判事・井戸謙一弁護士【最後の砦 刑事司法と再審/番外編インタビュー㊥】
袴田事件の再審開始を認めた13日の東京高裁の決定は、袴田巌さん(87)の犯行着衣とされた「5点の衣類」を捜査機関が隠した可能性が「極めて高い」と指摘した。元判事で、再審無罪となった湖東記念病院事件(滋賀県)の井戸謙一弁護団長は「自白があれば客観的な裏付けをおろそかにし、有罪方向に進んでいくことが問題」と現在の刑事司法の在り方を批判する。 -袴田事件の再審開始決定についての評価は。 「合理的な判断で、『疑わしきは罰せず』の刑事裁判の精神を踏まえた決定。新証拠の新規性も明白性もある。これで検察が抗告するようなら恥の上塗りだ。日野町事件、袴田事件と再審開始が続いたことで、他の事件の裁判官も再審
-
袴田さん再審 特別抗告、判断いかに 東京高裁決定受け検察 期限は20日 要件が壁、断念なら無罪公算
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(87)を巡り、東京高裁が再審開始を認める決定をしたのに対し、東京高検は期限の20日までに最高裁に特別抗告するかどうかを決める。決定は弁護側の主張を全面的に認めたことに加え、抗告の要件は憲法違反か判例違反に限られており、ハードルは高い。ただ過去にも再審開始決定に特別抗告したケースはあり、判断が注目される。 特別抗告すれば最高裁が改めて審理し、結論まで年単位の時間がかかるとの見方もある。袴田さんは高齢で、第2次再審請求は申し立てから15年近くが過ぎ、弁護側は抗告断念を強く求めている。抗告しなけ
-
法相に指揮権発動求める 特別抗告の阻止へ 袴田さん救援議連
袴田事件の再審開始を認める東京高裁の決定を受け、超党派の国会議員でつくる袴田巌死刑囚救援議員連盟は15日、検察の特別抗告の阻止に向け、斎藤健法相が検事総長に指揮権を発動するよう求めた。袴田さんの支援団体の要請書と弁護団の申し入れ書を法務省の佐藤淳大臣官房長に提出した。 要請書は「結論を先延ばしするためだけの抗告は無益」とし、申し入れ書は「東京高裁の即時抗告棄却決定の内容からも、袴田さんの有罪死刑判決が維持できないことは明白」として特別抗告の阻止を求めている。議連の塩谷立会長(衆院比例東海)、大口善徳世話人(同)ら役員が法務省を訪ねた。 議連によると、一両日中に斎藤氏に要請を伝えるとの返答
-
あしき「当然抗告」 証拠評価絶対と思い込み 元検事・市川寛弁護士【最後の砦 刑事司法と再審/番外編 インタビュー㊤】
東京高裁は13日、一家4人を殺害したとして死刑判決が確定した袴田巌さん(87)の裁判をやり直すこと(再審開始)を認めた。高裁の決定を不服として検察が最高裁に特別抗告するかが焦点だ。元検察官の市川寛弁護士は「今の検察庁は、再審請求事件は必ず最高裁まで争うという方針を立てているとしか思えない」と指摘する。 ―高裁決定の印象は。 「特別抗告される可能性を意識し、最高裁でも決定を守り切れるよう、丁寧に丁寧に一つずつ検察の主張を蹴っている。(審理不尽の違法を理由に高裁に差し戻した)最高裁の問いに十二分に答える決定になっている」 ―大阪高裁が2月に「日野町事件」の再審開始を認める決定を出したが、検
-
再審無罪願い「もう一踏ん張り」 袴田さん姉ひで子さん、支援に感謝【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定した袴田巌さん(87)の再審(裁判のやり直し)開始を認める高裁決定から一夜明けた14日、支援団体主催の集会が都内の参議院議員会館で開かれた。袴田さんの姉ひで子さん(90)が出席し、「巌のことを思えば私の苦労なんて何でもない。抗告があるかと思うが、せっかく再審開始になったのだから、もう一踏ん張り、頑張りたい」と涙で声を詰まらせながら、これまでの支援に感謝した。 集会には与野党の国会議員が駆けつけて袴田さんにエールを送り、検察の特別抗告の動きをけん制した。袴田巌死刑囚救援議員連盟の塩谷立会長(衆院比例東海)
-
川勝静岡県知事「再審決定良かった」 袴田さん高裁判断
川勝知事は14日の定例会見で、いわゆる袴田事件で死刑が確定した袴田巌さん(87)の第2次再審請求審で、東京高裁が13日に再審開始を認める決定をしたことについて、「証拠が捏造(ねつぞう)されていた可能性があることが表になった。もしそうであったら袴田さんは誠に気の毒だった。再審が決まって本当に良かった」と述べた。
-
再審の証拠開示制度 法相「慎重な検討必要」
斎藤健法相は14日の閣議後記者会見で、強盗殺人罪などで死刑判決が確定した袴田巌さん(87)=浜松市中区=の再審請求を認めた13日の東京高裁決定に関連し、再審請求審での証拠開示の制度化は過去の法制審議会での議論を踏まえ「慎重に検討する必要がある」との認識を示した。 再審請求審での証拠開示を巡っては、刑事訴訟法に具体的な手続きが規定されておらず、担当裁判官の姿勢次第で格差が生じているとの批判がある。 斎藤氏は、2011年から3年間にわたって刑事司法制度の在り方が話し合われた法制審議会特別部会の議論を挙げ、再審請求審の証拠開示の制度化は通常審との手続き構造の違いから「一般的なルールを設けるのは
-
「検察は抗告断念を」国内弁護士会が声明 袴田さん再審決定
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の第2次再審請求審で、東京高裁が13日に袴田さんの再審開始を認める決定をしたことを受け、静岡県弁護士会(伊豆田悦義会長)など全国各地の少なくとも13の弁護士会や弁護士連合会が、検察側に特別抗告しないよう求める声明を公表した。併せて、政府や国会に不備が指摘される再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正を訴え、死刑制度の廃止も促している。 特別抗告の期限は20日。県弁護士会は伊豆田会長名の声明で、高裁決定について、再審開始を認めて袴田さんを釈放した2014年の静岡地裁決定に続き「袴田さんの無実
-
再審の証拠開示制度 斎藤法相「慎重な検討必要」
斎藤健法相は14日の閣議後記者会見で、強盗殺人罪などで死刑判決が確定した袴田巌さん(87)=浜松市中区=の再審請求を認めた13日の東京高裁決定に関連し、再審請求審での証拠開示の制度化は過去の法制審議会での議論を踏まえ「慎重に検討する必要がある」との認識を示した。 再審請求審での証拠開示を巡っては、刑事訴訟法に具体的な手続きが規定されておらず、担当裁判官の姿勢次第で格差が生じているとの批判がある。 斎藤氏は、2011年から3年間にわたって刑事司法制度の在り方が話し合われた法制審議会特別部会の議論を挙げ、再審請求審の証拠開示の制度化は通常審との手続き構造の違いから「一般的なルールを設けるのは
-
袴田さん再審 死刑の根幹「捏造」衝撃 審理長期化、制度に課題【表層深層】
1966年の静岡一家殺害事件で袴田巌さん(87)の再審開始を認めた13日の東京高裁決定は死刑判決の根幹だった「5点の衣類」について、捜査機関による証拠捏造の疑いを強く示唆し、検察に衝撃が広がった。第2次請求は科学鑑定が中心となり、高齢となった袴田さんの体調などをよそに15年近く長期化。検察による抗告や不十分な証拠開示が原因とされ、再審制度の課題も浮かぶ。 ▽前提 「巌さんに早く無罪の声を聞かせてあげることが不可欠だ」。決定後、弁護団の小川秀世事務局長は力を込めた。一方で検察関係者は「相当厳しい判断だ。血痕の赤みだけで再審開始になるとは…」とうなだれた。 ステテコなど「5点
-
「この日を待っていた」袴田さん姉ひで子さん涙 無実信じ57年
一度は閉ざされた重い扉が再び開いた。東京高裁が13日、袴田巌さん(87)の再審開始を認めた。袴田さんの逮捕から57年間、無実を信じ続けた姉のひで子さん(90)は目頭を押さえ、「この日を待っていた」と声を震わせた。一方、検察が最高裁に特別抗告する可能性もあり、支援者はさらなる長期化を危惧する。 雨が打ち付ける中、正午ごろから高裁正門前には支援者や報道陣計約150人が集まった。雨がやんだ午後2時2分、高裁から正門に小走りで駆けてきた弁護団の2人が「再審開始」「検察の抗告棄却」の垂れ幕を掲げると、支援者から拍手と歓声が起こった。続いて、弁護団の小川秀世事務局長と庁舎から出てきたひで子さんは支援
-
大自在(3月14日)袴田さん
「私はやっていません」-。法廷で被告人質問に臨む赤鬼。いつも金棒を持っていることを裁判員に問われた赤鬼は、金棒は鬼にとって伝統的な風習であり、村人を脅すためのものではない-と堂々と答える。 日本弁護士連合会(日弁連)が2019年に裁判員制度10周年を記念して公開した動画「モモタロウ裁判」の一こま。鬼側の言い分を聞くうち、裁判員の一人は思い直す。「この鬼が本当は何もしていないとしたら…」。 東京高裁は現在の静岡市清水区で1966年に起きた一家4人殺人事件で死刑が確定した袴田巌さんの裁判のやり直し(再審)を認めた。当時の捜査は元ボクサーの経歴を鬼の金棒のような印象操作に使った。
-
社説(3月14日)袴田さん再審決定 早期開始 司法の責任だ
現在の静岡市清水区で1966年6月、みそ製造会社専務一家4人が殺害された「袴田事件」の裁判やり直し(再審)を求める第2次請求の差し戻し審で、東京高裁は再審開始を決定した。 事件発生から間もなく57年となる。最高裁で死刑が確定してからも42年が経過した。裁判で一貫して無実を訴えてきた袴田巌さん(87)が、司法に翻弄[ほんろう]されてきた期間はあまりにも長い。死刑囚としての長期間の拘禁は袴田さんの心身をむしばんだ。 決定に対して検察側が特別抗告をすれば、舞台は最高裁に移り、再審の可否を巡る審理はさらに長引く。これ以上時間を掛けることが果たして正しいといえるだろうか。東京高裁は決定で「確定判決
-
袴田さん再審認める 差し戻し審 東京高裁決定
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直し(再審)を求めている元プロボクサー袴田巌さん(87)の差し戻し後の即時抗告審で、東京高裁(大善文男裁判長)は13日、検察側の即時抗告を棄却し、袴田さんの再審開始を認める決定をした。東京高検は最高裁に特別抗告するか検討するとみられる。 事件では、発生から1年2カ月後に現場近くのみそタンクでシャツやズボンなど「5点の衣類」が見つかり、確定判決は袴田さんの犯行着衣と認定している。しかし、付着した血痕には赤みが残り、弁護団は「不自然」として捏造(ねつぞう)された証拠だと指摘。長期間みそに漬か
-
再審可否きょう午後決定 袴田さん差し戻し審 東京高裁
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直し(再審)を求めている元プロボクサー袴田巌さん(87)の差し戻し後の即時抗告審で、東京高裁(大善文男裁判長)は13日午後、再審開始の可否決定を出す。検察側の即時抗告を棄却して袴田さんの再審開始を認めるのか、再審請求を棄却するのか。高裁の判断に注目が集まる。 事件では、発生から1年2カ月後に現場近くのみそタンクでシャツなど「5点の衣類」が見つかり、袴田さんの犯行着衣とされた。しかし、付着した血痕には赤みが残り、弁護団は「不自然」として捏造(ねつぞう)された証拠だと指摘。長期間みそに漬かった
-
袴田さん再審可否 13日決定 高裁差し戻し審
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直し(再審)を求めている元プロボクサー袴田巌さん(87)の差し戻し後の即時抗告審で、東京高裁は13日、再審開始の可否を決定する。検察側の即時抗告を棄却して再審開始を認めるのか、再審請求を棄却するのか。高裁の判断が注目される。 事件発生から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで「5点の衣類」が見つかり、袴田さんの犯行着衣とされた。しかし、付着した血痕には赤みが残り、弁護団は「不自然」として捏造(ねつぞう)された証拠だと指摘してきた。静岡地裁は2014年、DNA型鑑定結果を最大の根拠に袴田さんの
-
袴田さんの請求審 静岡地裁決定ウェブ掲載を 支援団体要望
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の第2次再審請求審で、東京高裁は13日、再審開始の可否について判断を示す。第2次請求を巡り、静岡地裁は2014年に再審開始と死刑・拘置の執行停止を決め、袴田さんを釈放した。一転して請求を棄却した東京高裁決定、審理を差し戻した最高裁決定とは異なり、地裁決定だけ裁判所のウェブサイトに掲載されていない。支援団体が「不合理だ」として公開を強く望んでいる。 東京高裁での審理は、検察側が静岡地裁の再審開始決定を不服として即時抗告したために行われてきた。各地の支援団体で組織する「袴田巌さんの再審無罪
-
袴田さん87歳に 浜松市の自宅で誕生会 再審可否決定、目前に控え
無実を訴えながらも死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さんが10日、87歳の誕生日を迎えた。再審開始の可否を巡る東京高裁の決定を13日に控え、姉ひで子さん(90)は「再審開始を願っている」と話した。 浜松市の自宅で誕生会が開かれ、ひで子さんは革の手袋を、支援者は花束や財布をプレゼントした。袴田さんは年齢を問われ「21だと決めちゃっているんだ。それ以上、年をとらん」。ひで子さんについて「姉ということじゃあね、こき使うわけにもいかない」と言って、周囲を笑わせた。 近ごろは支援者の運転する車でドライブに出かけることが日課になっている。ひで子さんは「100歳ぐらいまで丈夫に生きてもらいたい」と目を
-
袴田さん再審開始認めた場合 法相の指揮権発動 「個別に言及できぬ」
現在の静岡市清水区で一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、再審請求中の袴田巌さん(86)=浜松市中区=について、斎藤健法相は8日の衆院法務委員会で、東京高裁が再審開始を認めた場合、検察に特別抗告を断念するよう指揮権を発動するか問われ、「個別事件についてコメントできない。コメントすること自体が検察の活動に影響を与えかねない」と述べた。立憲民主党の鎌田さゆり氏(宮城2区)への答弁。 東京高裁は13日に袴田さんの再審開始の可否を決定する。6日には袴田さんの支援団体が、検察の特別抗告の断念など指揮権の発動を求める法相宛ての要請書を国会議員有志のグループに手渡した。
-
大自在(3月9日)最終ラウンド
2004年、米国の元黒人ボクサーから1歳年上の日本の元ボクサーに激励の手紙が届いた。差出人は白人3人が殺害された事件で終身刑が宣告された後、無罪を勝ち取ったルービン・カーター氏。現役時代は「ハリケーン」の名で活躍した。 手紙は現在の静岡市清水区で発生した一家4人殺人事件で死刑判決が確定した後、無実を訴えている袴田巌さんが受け取った。同じ1966年に起きた二つの事件。カーター氏は19年の獄中生活を経て自由の身になっていたが、袴田さんはまだ東京拘置所に収監されていた。 米国ではカーター氏が身の潔白を叫び始めると、人種差別を象徴する事件として注目を浴び、支援の輪が一気に広がった。米国を代表する
-
「一日も早く自由の身に」 袴田さん救援議連 都内で集会
一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(86)の再審開始の可否を巡る東京高裁の決定が迫る中、袴田巌死刑囚救援議員連盟は6日、衆院第1議員会館で集会を開いた。与野党の国会議員ら約20人が出席し、袴田さんの姉ひで子さん(90)を前に「一日も早く袴田さんが自由の身になれるよう頑張りたい」と決意を新たにした。 支援団体は議連の塩谷立会長(衆院比例東海)に対し、斎藤健法相宛ての要請書を手渡した。要請書は、東京高裁が再審開始を認めた場合は検察官に特別抗告を断念させるよう、請求を棄却し死刑と拘置の執行停止を取り消した場合には釈放状態を維持するよう、指揮権の発動を求めている。 ひで子さんは「あ
-
証拠開示大きな役割 袴田さん再審請求審と日野町事件の共通点
大阪高裁が27日に再審開始を認めた「日野町事件」は、3月13日に東京高裁の再審可否決定を控える袴田巌さん(86)の第2次再審請求審の経過と共通点が見られる。ともに、再審開始の判断が導かれる上で検察官の手元に残されていた証拠の開示が大きな役割を果たし、再審開始決定に対して検察官が即時抗告したため請求審が長期化。関係者は速やかな救済に向け、規定が乏しい再審法(刑事訴訟法の再審規定)を改正する必要性に言及した。 「(検察官は)特別抗告すべきではない。いたずらにわれわれの時間を奪うべきではない。一日も早く再審公判を開いてほしい」。大阪高裁決定後の記者会見で、再審請求を申し立てていた阪原弘元受刑者の
-
無実の人を救済しやすく 30年ぶり 日弁連が再審法改正案
日本弁護士連合会(小林元治会長)は22日、規定が乏しいと指摘されて久しい再審法(刑事訴訟法の第4編再審)の速やかな改正を求める意見書を約30年ぶりにまとめ、公表した。証拠開示に関する具体的な手続きを盛り込み、再審開始決定に対する検察官の不服申し立てを禁止するなど、無実の人の救済という再審制度の目的が実現しやすくなるように規定を充実させた改正案を提示している。 裁判員裁判の導入に伴って通常審では証拠開示制度が整えられてきたが、再審請求審は未整備のまま先送りされてきた。検察官が裁判所に提出してこなかった再審の請求人側に有利な証拠が開示された結果、再審開始や再審無罪の大きな原動力となった事例が相
-
再審法改正に向け奔走 判断しやすい環境追求【最後の砦 刑事司法と再審⑨/第2章 語り始めた元裁判長㊦】
一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(86)の再審開始決定を静岡地裁の裁判長時代に手がけた村山浩昭さん(66)は、その当時から「裁判員の方には気付かされることが多い」と口にしていた。 「人の一生を左右するような事件についてチームを組み、真剣に議論する。互いに歩んできた人生が違うから、いろいろな経験則が提出される。量刑にもその価値観が結構反映される。非常に新鮮な経験だった」 一般の市民が刑事司法に関わる意義はどこにあるのか。村山さんは「大上段に言うと、司法は国家権力を行使する一つの場。以前は市民の手が届きにくかったと思う」と説明。その上で「市民の方と法曹三者が一緒に裁判すること
-
袴田さん支援団体 アメリカの冤罪救済学ぶ 浜松で勉強会
現在の静岡市清水区で一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直し(再審)を求めている袴田巌さん(86)=浜松市中区=の支援団体は18日、冤罪(えんざい)救済運動を学ぶ勉強会を同区の浜松復興記念館で開いた。イノセンス・プロジェクト・ジャパン(旧・えん罪救済センター)副代表の笹倉香奈甲南大法学部教授が講演した。 同組織は1990年代に米国で始まった冤罪救済活動「イノセンス・プロジェクト(IP)」がモデル。笹倉教授はIPでの実務経験を踏まえて米国の冤罪研究の歴史を振り返り「米国は30年前までは冤罪救済の意識が低かったが、30年をかけて過ちを正そうとする司法文化が築かれた」と解説した。
-
規定乏しい再審法制 請求審の審理手探り 証拠開示の重要性説く【最後の砦 刑事司法と再審⑦/第2章 語り始めた元裁判長㊤】
〈拘置をこれ以上継続することは、耐えがたいほど正義に反する。一刻も早く身柄を解放すべきである〉 一家4人を殺害したとして死刑判決が確定した袴田巌さん(86)の再審開始を認めた2014年の静岡地裁決定は、「犯行着衣」をはじめとする重要証拠が捜査機関によって捏造(ねつぞう)された疑いを指摘した。死刑の執行のみならず拘置の執行も停止。「島田事件」など過去の死刑確定事件では再審無罪判決を前に釈放されたことはなく、初めてのケースとなった。 裁判長として静岡地裁決定に携わった村山浩昭さん(66)は定年退官する前年の20年に「再審請求審の審理について」と題する論文を発表している。主に証拠開示の重要性を
-
袴田ひで子さん90歳に「再審開始だけが目標」 支援者らが誕生日祝う
現在の静岡市清水区で一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直し(再審)を求めている袴田巌さん(86)の姉ひで子さんが8日、90歳の誕生日を迎えた。浜松市中区の自宅で、袴田さんの支援者らが食事会を開いた。 再審については、東京高裁が3月13日に再審開始の可否決定を出す。ひで子さんは「再審開始だけが目標。戦いはまだ途中なので頑張るしかない」と語り、「90歳にはなったけど、健康面に心配はない。見届けたい」と声に力をこめた。 袴田さんから受け取ったという濃いピンク色のセーターを身に着けたひで子さんは「皆さんに気にかけてもらってうれしい。しばらくは続けて着ようかな」と笑顔を見せた。支
-
再審法改正の必要性を実感 袴田さん請求審元裁判長 検察の証拠開示法制化を 「国会で議論して」
袴田事件で死刑判決が確定し、裁判のやり直し(再審)を求めている袴田巌さん(86)の再審開始と死刑・拘置の執行停止を2014年に静岡地裁の裁判長として決めた村山浩昭氏が6日、静岡新聞社の取材に応じた。再審請求審を経験したことで、再審法(刑事訴訟法第4編再審)に規定が乏しいことを実感したという。法改正の必要性を認め「立法機関の国会で、きちっと議論してほしい」と強調した。 村山氏は21年に定年退官した。報道機関の対面インタビューに応じるのは初めて。袴田さんの再審開始決定に対しては検察官が即時抗告したため、確定していない。東京高裁は同日、再審開始の可否判断を3月13日に示すと弁護団に通知した。
-
袴田さん再審可否 姉ひで子さん「命ある限り戦う」 逮捕から56年、都内では支援集会
強盗殺人罪などで死刑判決が確定し裁判のやり直しを求める袴田巌さん(86)=浜松市中区=の再審開始の可否を東京高裁が3月13日に決めると明らかになったのを受け、姉のひで子さん(89)が6日、同区の自宅で取材に応じ、「(袴田さんの逮捕から)56年間戦ってきた。一区切りにしたい。再審開始をひたすら願う」と心境を語った。都内では再審開始を訴える支援者の集会も開かれた。 ひで子さんは6日午前、支援者から電話で東京高裁の決定日を伝えられた。袴田さんは昼前に起床し、午後からは支援者の自動車で外出した。「巌の中で事件は終わっているから」と、ひで子さんは決定日を告げなかった。当日、袴田さんが東京高裁に向かう
-
袴田巌さん再審可否 3月13日に判断 東京高裁、血痕の変色争点
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直し(再審)を求めている袴田巌さん(86)の差し戻し後の即時抗告審で、東京高裁(大善文男裁判長)は、再審開始の可否決定を3月13日午後に出すことを決めた。弁護団が6日、報道陣に明らかにした。 事件は、発生から1年2カ月後に現場近くのみそタンクでシャツなど「5点の衣類」が見つかり、袴田さんの犯行着衣とされた。しかし、付着した血痕には赤みが残り、弁護団は「不自然」として捏造(ねつぞう)された証拠だと指摘。長期間みそに漬かった血痕に赤みが残るかどうかが差し戻し審の焦点となった。 弁護団は、みそ
-
「袴田さん再審を」 3月19日まで訴え 浜松の支援団体
旧清水市で一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、再審請求中の袴田巌さん(86)=浜松市中区=の支援団体が3日、袴田さんの無実や再審制度の不備を1カ月以上にわたって連日訴える街頭広報をJR浜松駅北口で始めた。東京高裁の再審可否決定の時期に合わせて、3月19日まで続ける予定。 団体は同市の「袴田巌さんを救う市民の会」。初日は、メンバーが早期の再審開始決定を訴えるのぼり旗や看板を手に、東京高裁に提出する要請書への署名協力を通行人に求めた。
-
袴田さん 差し戻し審 3月中旬、再審可否決定へ 東京高裁意向
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直し(再審)を求めている袴田巌さん(86)の差し戻し後の即時抗告審で、東京高裁が、再審開始の可否を3月中旬に決定する意向を示していることが31日、関係者への取材で分かった。候補日を複数提示し、弁護団に希望日を回答するよう求めている。 高裁は弁護団の希望を踏まえ、1カ月前には決定日時を告知するとみられる。 事件は、発生から1年2カ月後に現場近くのみそタンクでシャツなど「5点の衣類」が見つかり、袴田さんの犯行着衣とされた。しかし、付着した血痕には赤みが残り、弁護団は「不自然」として捏造(ねつ
-
再審法改正項目提言へ 日弁連30年ぶり意見書 「今春公表」検討
日本弁護士連合会が、不備が指摘される再審法(刑事訴訟法の第4編再審)の改正意見書を今春にも公表する方向で検討していることが29日、関係者への取材で分かった。改正意見書は約30年ぶりとなる。再審請求審での証拠開示手続きの法制化や再審開始決定に対する検察官抗告の禁止をはじめ、再審開始の要件緩和や請求権者の範囲拡大など幅広く提言する見通しだ。 具体的には、再審開始要件の「無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したとき」の「明らかな証拠」を「事実の誤認があると疑うに足りる証拠」に緩和するほか、重大な憲法違反を理由とした再審開始も認めるべきと提案。日弁連や各地の弁護士会が公益的再審請求人になれる
-
再審公判 速やかに 袴田さん支援集会 高裁可否決定控え
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直し(再審)を求めている袴田巌さん(86)の支援集会が29日、同区で開かれた。再審開始の可否を巡る東京高裁の決定を控え、参加者は、再審開始が認められて速やかに再審公判に移行することを期待した。 弁護団の加藤英典弁護士が、東京高裁で行われてきた差し戻し後の即時抗告審について説明した。高裁が再審開始を認めたとしても検察官は最高裁に特別抗告できることから、加藤弁護士は「(再審可否を巡る)審理が長引いてしまう。言いたいことがあれば再審公判で主張すべきで、世論の後押しが必要」と訴えた。 過去に3度再審
-
虚偽自白の心理解説 袴田さん支援団体 浜松で警察官向け勉強会
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、再審請求中の袴田巌さん(86)=浜松市中区=の支援団体は21日、刑事司法に関する勉強会を同区の浜松復興記念館で開いた。袴田さんの供述鑑定をした浜田寿美男奈良女子大名誉教授が警察官のための取り調べ授業をテーマに講演した。 法心理学が専門の浜田名誉教授は取り調べ時の取調官と被疑者、それぞれの心理状況から虚偽の自白に陥るメカニズムを解説した。 有罪になると死刑が予想される場合でも、被疑者は取り調べの辛さから逃れるため、虚偽自白をすることがあると強調。取調官が無実の可能性を考慮せず、被疑者の言い分を聞かないでいると、無実の被疑者でさ
-
再審の請求人、拡大を 福岡事件支援者 浜松で講演
福岡市で1947年に商人2人が射殺された福岡事件で、強盗殺人罪で死刑判決を受けた西武雄さん(1975年執行)らの再審運動を支援する熊本県玉名市の僧侶古川龍樹さん(63)が14日、浜松市中区で講演した。再審を申し立てることができる請求人の対象拡大など、制度改正の必要性を訴えた。 講演会は、強盗殺人罪などで死刑が確定し、再審請求中の袴田巌さん(86)=同区=を支援する同市の団体「袴田巌さんを救う市民の会」が企画した。 福岡事件で、主犯とされた西さんは無実を訴え続け、実行犯として死刑判決確定後に恩赦で無期懲役になった石井健治郎さん(2008年に死去)も「強盗目的はない」と主張した。2人の再審請
-
73年の歳月 膨らむ亡き母への思慕【最後の砦 刑事司法と再審⑥/第1章 二俣事件の記憶⑤完】
地元のタブーを破ったのは他でもない、二俣事件で父親と母親、妹2人の家族4人を奪われた大橋武司さん(83)本人だった。 2009年に発行された郷土文芸誌に、事件当時の心境をつづった。悲しみというより驚きとショックで打ちのめされたこと、だんだん虚無的な気持ちに覆われていったような気がすること。自身を父親の名前に変え、「創作」という形を取った。それでも、事件を知る住民たちは「よく書いたな」と口をそろえた。 近しい人ほど気を使って聞いてこない。一方、間違ったことが流布していくことは困る。「それなら書いてやるか、と」。大橋さんは執筆の動機を明かす。 事件後、地元の高校を卒業して静岡大に進学。伯父
-
憲法が照らす再審の課題 あるべき姿は【最後の砦 刑事司法と再審】
裁判をやり直すための再審請求手続きを巡り、日本国憲法の理念に照らして法の不備を指摘する声が上がっている。静岡新聞社が18歳以上の県民570人を対象に行った憲法意識調査では、6割近くが法制度を整えるべきだと回答している。問題の所在を探り、あるべき姿を考えた。 格差解消へ請求審規定必要 「今の再審制度は憲法の理念に合っていない」。日本弁護士連合会の再審法改正実現本部(本部長・小林元治会長)で本部長代行を務める鴨志田祐美弁護士(京都弁護士会)は取材にそう強調する。 再審法とは、刑事訴訟法の第4編再審を指す。現行の刑訴法は戦後、日本国憲法のもとで制定された。500を超える条文のうち、再審に関す
-
釈放 今も確定死刑囚 袴田さん再審、開始可否決定へ【最後の砦 刑事司法と再審① プロローグ】
静かな時間が流れていく。弟と姉。珍しく「遠州の空っ風」が鳴りをひそめた12月のある日、穏やかな窓の外に時折顔を向けながら黙々と昼食を取った。 袴田巌さん(86)、ひで子さん(89)。2人が同じ屋根の下で暮らすようになって、間もなく9年を迎える。 袴田さんは現在の静岡市清水区にあったみそ製造会社の従業員だった1966年、専務一家4人を殺害したとして逮捕され、80年に死刑が確定した。無実を訴え、裁判のやり直し(再審)を求めている。 2014年、静岡地裁で再審開始が認められた。死刑の執行停止に加え、「耐えがたいほど正義に反する状況にある」として拘置の執行も止まり、約48年ぶりに釈放された。い
-
再審開始「ゴングを」 ボクサーの絆、袴田さんの闘いを支援 缶バッジ配布し周知に力
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直し(再審)を求めている元プロボクサー袴田巌さん(86)の差し戻し審は、東京高裁による再審開始の可否判断を待つ段階に入った。「ただ待つだけではダメ。むしろ、これからが頑張りどころ」―。日本プロボクシング協会の袴田巌支援委員会が、缶バッジを配るなどして袴田さんの“闘い”を広く知ってもらおうと力を入れている。 WBA・WBC世界ライトフライ級統一王者の寺地拳四朗選手(30)や前WBO世界フライ級王者の中谷潤人選手(24)らが5日、最終意見陳述のため高裁に向かう弁護団と袴
-
袴田さんの再審「開始を」 都内で支援集会 国会議員ら検察批判
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直し(再審)を訴えている袴田巌さん(86)の支援集会が12日、都内の衆議院第2議員会館であった。与野党の国会議員が足を運び、差し戻し審で袴田さんの再収監を要求した検察側の姿勢を批判。参加者は再審開始を強く求める集会アピールを採択した。 袴田巌死刑囚救援議員連盟の塩谷立会長(衆院比例東海)は「地元としては『再審開始を速やかに』という思い」と強調した。社民党の福島瑞穂党首は再審法制の不備を挙げて「超党派で力を合わせ、刑訴法の再審部分の改正を勝ち取っていきたい」と述べた。 茨城県で67年に発生
-
差し戻し審 最終意見書の内容を説明 袴田さん支援者に弁護団
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして、強盗殺人罪などで死刑が確定し、再審請求中の袴田巌さん(86)=浜松市中区=の弁護団が10日、同区内で、審理が終結した東京高裁差し戻し審での最終意見書の内容を袴田さんの支援者に説明した。 弁護団の西沢美和子弁護士は、事件現場近くのみそタンクの中で見つかり犯行時の袴田さんの着衣とされた「5点の衣類」に関連し、血液の赤みはみそに漬けると消失するメカニズムを紹介した。「衣類は犯行着衣ではなく、袴田さんの犯人性は否定された。再審開始決定を出せるだけの証拠はそろっている」と自信を見せた。 同市の支援団体「袴田巌さんを救う市民の会」が主催した。
-
差し戻し審終結 袴田さん姉「真の自由を」 東京高裁、再審請求人を追加
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直し(再審)を求めている袴田巌さん(86)の差し戻し審で、弁護団と袴田さんの姉ひで子さん(89)が5日、東京高裁(大善文男裁判長)で最終意見を陳述した。ひで子さんは「どうか再審開始のご判断を。巌はいまだ妄想の世界でございますが、真の自由をお与えください」と訴えた。 終了後に記者会見した弁護団によると、大善裁判長は「(来年)3月末までに決定を出す」と明言した。決定日時を1カ月前に告知することも表明。また弁護団の申し立てに応え、袴田さんの2人目の保佐人に選任された村松奈緒美弁護士を再審の請求人に加
-
袴田さん差し戻し審 裁判長と初面会 東京高裁
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直し(再審)を訴えている袴田巌さん(86)の差し戻し審で、袴田さんが5日、東京高裁の大善文男裁判長と面会した。関係者への取材で分かった。再審請求審で袴田さんが担当裁判官と顔を合わせるのは第1次、2次を通じて初めて。 弁護団が刑事訴訟規則に基づき、決定を出す前に袴田さん本人の意見を聞き取るよう高裁に求めていた。第2次請求審では、静岡地裁が2013年、意見聴取のために当時東京拘置所に収監されていた袴田さんを訪ねたが、袴田さんは「どうしたって死刑になる」などと言い、拒否していた。 関係者によると、
-
袴田さん差し戻し審 血痕変色巡り対立 弁護団と高検が最終意見書
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直し(再審)を訴えている袴田巌さん(86)の差し戻し審で、弁護団と東京高検は2日、最終意見書を東京高裁に提出した。弁護団は速やかな再審開始を、高検は請求棄却と袴田さんを再収監するよう求めた。高裁は年度内にも再審開始の可否を決定する方針。 事件から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかり、袴田さんの犯行着衣とされた「5点の衣類」に付着した血痕には赤みが残り、弁護団は不自然として捏造(ねつぞう)された証拠だと指摘してきた。2020年の最高裁決定は、みそに漬かった血痕の変色に影響を与える要因につ
-
袴田さん支援団体 浜松で12月集会
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(86)の支援団体が12月10日午後2時から、再審開始を求める集会を浜松市中区の市福祉交流センターで開く。 「浜松 袴田巌さんを救う市民の会」が主催。弁護団の西沢美和子弁護士が「清水こがね味噌事件(袴田事件)最終意見書報告会」と題し、東京高裁に提出予定の意見書の内容などを説明する。参加無料。関係資料のパネル展も同日午前10時半~午後1時半、同センターで行う。
-
袴田さん差し戻し審 支援団体が高検に抗告取り下げ要請
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直し(再審)を求めている元プロボクサー袴田巌さん(86)の支援団体が9日、即時抗告を取り下げるよう東京高検に要請した。高検が実施した実験からも「犯行着衣」の捏造(ねつぞう)と袴田さんの無実が「立証された」と訴えた。 高裁で続く差し戻し後の即時抗告審では、事件発生から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかった「犯行着衣」を巡り、当時の捜査資料に「濃赤色」と記された血痕の色が焦点になっている。高検は今月1日まで約1年2カ月間、みそ漬けの血痕の変色具合を調べる実験を展開。確認作業に立ち会った弁護
-
着衣血痕「検察実験も赤み消失」 袴田さん弁護団、再審開始に期待
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直し(再審)を求めている袴田巌さん(86)の弁護団が2日、県庁で記者会見した。みそに漬かった血痕の色の変化を調べるために検察側が1年2カ月続けてきた「みそ漬け実験」について、前日に色合いを確認した小川秀世事務局長は「(血痕の)赤みは全く消えている」と明かした。 袴田さんの犯行着衣とされる「5点の衣類」は、事件から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで発見された。ステテコの生地は白っぽさが残り、血痕に赤みが見て取れた。会見で小川事務局長は生地がみそ色に染まり、血痕が黒く見える検察側実験の写真を示し
-
袴田さん差し戻し審 高裁裁判長ら、検察の実験確認
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(86)の差し戻し審で、東京高裁の大善文男裁判長らが1日、みそ漬け血痕の変色具合を調べるために検察側が静岡地検で1年2カ月間続けてきた実験の確認作業に立ち会った。 袴田さんの犯行着衣とされるシャツなど「5点の衣類」は事件から1年2カ月後、現場近くのみそタンクで見つかった。衣類に付着した血痕に赤みが見て取れたが、弁護団は不自然として捏造(ねつぞう)された証拠だと主張。差し戻し審では、みそ漬けの血痕が黒色化するメカニズムを化学的に説明した鑑定書などを新証拠として提出した。
-
「布川事件」描いた映画 静岡で上映 再審無罪の桜井さん「人生前向きに」
茨城県で1967年に起きた「布川事件」で29年間身柄拘束され、やり直しの裁判(再審)で無罪となった桜井昌司さん(75)のドキュメンタリー映画「オレの記念日」が28日から、静岡市葵区の静岡シネ・ギャラリーで上映される。「失ったものを求めてもしょうがない。得たものを喜んで生きてきた」―。そんな桜井さんの生きざまを描いた金聖雄監督(59)は「皆がしんどさを抱えている今の時代に生き方のヒントになるのでは」と話している。 「記念日」は桜井さんの獄中詩だ。二十歳の秋に逮捕された日、うその自白をした日、強盗殺人の罪で無期懲役刑が言い渡され「人殺しの犯人だと裁判官が言った日」、両親が亡くなった日&hell
-
袴田さん差し戻し審 東京高裁 再審可否「年度内に決定」
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(86)の差し戻し審で、東京高裁と東京高検、弁護団の3者協議が26日、高裁であり、高検と弁護団の双方が12月2日までに最終意見書を提出することが決まった。終了後に記者会見した弁護団によると、大善文男裁判長は「めどとして、本年度中に(再審可否について)決定を出せるようにしたい」との意向を示した。決定日時を3週間前に告知する考えも伝えた。 ■12月に最終意見書 弁護団が最終意見書の要点を口頭で高裁に説明する期日が12月5日に設けられた。袴田さんの姉ひで子さん(89)が
-
袴田さん差し戻し審 東京高裁に証拠追加提出せず 弁護団方針
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(86)の差し戻し審で、弁護団が東京高裁に証拠を追加提出しない方針を固めたことが19日、複数の弁護団関係者への取材で分かった。 東京高検は弁護団が証拠を追加した場合、反論を検討するとしている。弁護団は、みそ漬けの「犯行着衣」に付着した血痕が黒色化するメカニズムを化学的に示した鑑定書などを新証拠として提出済み。7~8月に行われた鑑定人らの尋問結果も踏まえ、再審可否を巡る高裁の決定を早期に得るため、これ以上証拠を出さないことにしたという。 高裁と高検、弁護団は
-
袴田さんの再審無罪を訴え 都内で支援集会 やくみつるさんも参加
袴田巌さん(86)と「名張毒ぶどう酒事件」で獄死した奥西勝元死刑囚の支援集会が19日、東京都内で開かれた。参加者は、袴田さんと奥西元死刑囚の再審無罪判決を勝ち取るとともに、規定が乏しい再審法(刑事訴訟法の再審規定)が改正されることを期待した。 「袴田巌さんの再審無罪を求める実行委員会」などが主催した。会場に駆けつけた漫画家やくみつるさんは「(国会)議員は再審法の改正を」と注文。テレビ局員時代に奥西元死刑囚と袴田さんのドキュメンタリーを手掛けた斉藤潤一関西大教授は、2人の再審開始決定が検察側の不服申し立てで取り消された共通点を挙げて「司法は何を狙っているのか。時間稼ぎとしか思えない」と批判し
-
裁判員入門 「袴田事件」で模擬体験 浜松、中高生ら
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、東京高裁で再審請求中の袴田巌さん(86)=浜松市中区=の支援団体「袴田さん支援クラブ」は20日、刑事裁判の学習イベント「10代のための裁判員入門」を中区の浜松復興記念館で開いた。中高生を含む約30人が参加し、刑事裁判の基本などを学んだ。 同団体の白井孝明さん(57)=北区=が講師を務め、裁判員のルールを説明した。白井さんは「推定無罪の原則が刑事裁判で重要だ。無実の人を捕まえることは犯人を逃すだけでなく、事態の悪化を招く」と訴えた。 模擬裁判では「袴田事件」の概要や再審請求の争点である5点の衣類などについて説明し、参加者が裁判
-
袴田さん支援団体 刑事裁判学ぶ講座 8月20日に浜松
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、再審請求中の袴田巌さん(86)=浜松市中区=の支援団体「袴田さん支援クラブ」は20日、刑事裁判について学ぶ講座「10代のための裁判員入門」を同区の浜松復興記念館で開く。 民法改正に伴う成人年齢の引き下げで、2023年1月から18、19歳の人が裁判員の対象になることを踏まえて企画した。講座では同クラブのメンバーが無罪の推定や検察官の立証責任といった基本原則を伝えるほか、模擬裁判も実施する。 午後1時半から。入場無料。
-
袴田さんの姉「大いに期待」 差し戻し審 証人尋問終え
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(86)=浜松市中区=の再審請求審で、法医学者ら5人の証人尋問が終了したのを受け、姉のひで子さん(89)が9日、同市内で記者会見した。「結果に大いに期待している」と再審開始決定を求めた。 東京高裁での差し戻し審では、犯行着衣とされる衣類の血痕の変色をめぐり、検察、弁護団双方の証人の尋問が5日までに3日間にわたって実施された。傍聴したひで子さんは弁護側の証人について「質問に的確に答えていて安心した。検察の主張の通りにはならないと思う」と述べた。
-
弁護団鑑定「異論ない」 袴田さん差し戻し審、化学専門家が証言
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(86)の差し戻し審で、弁護団が請求した化学者の証人尋問が5日、東京高裁で非公開であり、1年以上みそに漬かった血痕に「赤みが残ることはない」とまとめた弁護団提出の鑑定書を「全く異論はない」と肯定した。 事件から1年2カ月後に現場近くのみそタンクから見つかった「5点の衣類」に付着した血痕には赤みが見て取れ、審理を高裁に差し戻した最高裁決定は血痕の変色に影響を及ぼす要因について専門的知見を踏まえて検討するよう求めた。 7月から3日間の日程で計5人が出廷した証人
-
袴田さん差し戻し審 血痕「赤み 残りうる」 検察証人言及、弁護団は批判
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(86)の差し戻し審で、検察側証人の法医学者2人への尋問が1日、東京高裁で非公開で実施された。このうち1人は、長期間みそに漬かった血痕の変色を巡って「検察官の実験から推測すると赤みが残る可能性がある」と言及した。弁護団は尋問後の記者会見で「論理的、化学的な説明はなく、検察官の主張に沿う結論だけを述べている」と批判した。 弁護団が会見で、尋問の内容を明らかにした。袴田さんの犯行着衣とされるシャツなど「5点の衣類」は事件から1年2カ月後に現場近くのみそタンクから
-
袴田さん差し戻し審 着衣血痕「赤みが残ることはない」 みそ漬け鑑定、法医学者証言
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(86)の差し戻し審で、弁護側鑑定を手掛けた法医学者2人の証人尋問が22日、東京高裁で非公開であり、終了後に弁護団が記者会見して内容を説明した。2人が「1年もみそに漬かれば血痕に赤みが残ることはない」と証言したと明らかにした。 弁護団は、2人の所属と氏名について旭川医科大法医学講座の清水恵子教授と奥田勝博講師と公表した。 事件から1年2カ月後に現場近くのみそタンクから発見された「犯行着衣」に付着した血痕には赤みが残り、弁護団は不自然だとして捏造(ねつぞう)
-
袴田さん差し戻し審 鑑定人尋問始まる 東京高裁
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(86)の第2次再審請求審で、事件から1年2カ月後に見つかった「犯行着衣」に付着した血痕の色を巡り、法医学者ら専門家の証人尋問が22日午前、東京高裁(大善文男裁判長)で始まった。同日と8月1日、同5日の3日間で計5人を尋問する。弁護団は、差し戻し審の「ヤマ場」と位置付けている。 事件現場近くのみそタンクで発見されたシャツなど「犯行着衣」の血痕には赤みが見て取れるが、弁護団は1年以上みそに漬かっていたとしては不自然だと主張してきた。審理を高裁に差し戻した2020年12月の最高裁決定は「みそ
-
裁判員裁判制度テーマに講演会 浜松、袴田さん支援団体
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、再審請求中の袴田巌さん(86)=浜松市中区=の支援団体「袴田さん支援クラブ」は16日、裁判員裁判制度について考える講演会を同区の浜松復興記念館で開いた。 関東学院大(横浜市)で刑法と刑法史を専門に研究する宮本弘典教授が講師を務めた。宮本教授は「刑事裁判では被告人の権利をいかに守るかが重要」と強調した上で、裁判員裁判制度の導入が自白を重視する刑事司法の改善につながっていないと指摘した。
-
袴田さん支援団体、16日講演 裁判員裁判の仕組みなど解説
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、再審請求中の袴田巌さん(86)=浜松市中区=の支援団体「袴田さん支援クラブ」は16日午後1時半から、裁判員裁判の仕組みなどを解説する講演会を同区の浜松復興記念館で開く。 刑法をテーマに研究する関東学院大の宮本弘典教授を講師に招く。宮本教授は「裁判員裁判のおもて裏」と題し、裁判員裁判制度が作られた経緯や背景を紹介し、運用面の問題点などを探る。 申し込み不要で、全席自由。問い合わせは同クラブの猪野さん<電090(2342)2309>へ。
-
記者コラム「清流」 前進しなきゃ意味がない
鹿児島県の「大崎事件」で、無実を訴えながらも殺人罪などで服役した原口アヤ子さん(95)の再審可否を巡る決定の速報を、袴田巌さん(86)と姉ひで子さん(89)の自宅で一緒に待たせてもらった。 袴田さんも原口さんも再審開始決定を受けた後、検察側の抗告で取り消された共通点がある。ひで子さんにその点を尋ねると、「検察官に恨みはないよ。恨んでもしょうがない」と言うから驚いた。 「悪口を言って留飲は下げられるかもしれないけれど、留飲を下げても仕方がない。前進しなきゃ意味がないの。抗告できる制度になっている以上、悪いのは制度。制度を直さないといけない」とも。 そうだった。ひで子さんはそういう人だった。合理
-
袴田さん支援団体「早期再審開始を」 浜松で街頭広報
旧清水市(静岡市清水区)でみそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件の発生から56年を迎えた30日、強盗殺人罪で死刑が確定し再審請求中の袴田巌さん(86)=浜松市中区=の支援団体が、JR浜松駅北口で早期の再審開始決定を求める街頭広報を実施した。 同市の「袴田さん支援クラブ」(猪野待子代表)が通行人にチラシを配布したほか、横断幕を掲げて袴田さんの無罪を訴えた。猪野代表は「袴田さんが心から自由になれる日が早く来てほしい」と述べた。「浜松 袴田巌さんを救う市民の会」も同日、浜松駅前で広報を行った。 袴田さんは2014年に静岡地裁の再審開始決定により釈放された。東京高裁が18年、静岡地裁の決定を
-
袴田巌さん保佐人、弁護団から追加選任 東京家裁、姉高齢を考慮
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直しを求めている元プロボクサー袴田巌さん(86)の保佐人に弁護団の弁護士が東京家裁から追加で選任されたことが29日、関係者への取材で分かった。袴田さんの姉ひで子さん(89)が既に保佐人で、再審の請求人にもなっているが、高齢であることを考慮した対応という。 弁護士1人が4月、保佐人に追加で選任された。袴田さんの第2次再審請求は東京高裁で差し戻し審が続いているが、新たに保佐人に選任された弁護士が第2次再審の請求人に加われるかどうかは再審法(刑事訴訟法の第4編再審)に規定がなく、不透明とい
-
年内にも最終意見書 袴田さん差し戻し審 弁護団と高検
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(86)の差し戻し審で、東京高裁と東京高検、弁護団による3者協議が27日、高裁であった。高裁は7~8月に証人尋問を実施した後、11月上旬に高検の「みそ漬け実験」に立ち会う意向を示したほか、弁護団と高検が年内にも最終意見書を提出する今後の流れを確認した。 袴田さんの犯行着衣とされる「5点の衣類」は事件から1年2カ月後に現場のみそタンクで見つかり、血痕の色は当時の捜査資料に「濃赤色」とあった。弁護団は差し戻し審で、みそ漬けの血痕が黒色化するメカニズムを化学的に示
-
袴田さん姉期待「来年には吉報を」 静岡で支援者集会
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(86)の支援者集会が26日、同区であった。東京高裁での差し戻し審がヤマ場を迎える中、姉ひで子さん(89)は「来年ぐらいには良い知らせが来ると思っている。裁判は(決定が)出るまで分からないが、大いに期待している」と思いを述べた。 集会は袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会が主催した。7~8月に実施される法医学者ら5人の証人尋問を前に、27日には東京高裁と東京高検、弁護団の3者協議が開かれる。 弁護団の角替清美弁護士は集会で、審理を高裁に差し戻した最高裁の
-
大崎事件の再審棄却「不当」 静岡県弁護士会が声明
静岡県など全国各地の弁護士会が23日までに、鹿児島県大崎町で1979年に男性の遺体が見つかった「大崎事件」の再審請求審で、無実を訴えながら殺人罪などで服役した女性(95)の再審開始を認めなかった22日の鹿児島地裁決定を「著しく不当」と抗議する声明を公表した。 最高裁は70年代の白鳥・財田川決定で「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則は再審請求審にも適用されるとしたほか、新旧の全証拠を総合的に判断すべきと明言している。静岡県弁護士会は伊豆田悦義会長名の声明で、鹿児島地裁決定を「新旧全証拠の総合評価を適切に行ったとは評価しがたく、白鳥・財田川決定の趣旨を大きく後退させる」と指摘した。
-
大崎事件棄却決定 袴田さん姉や元裁判官ら 法改正求める声強く
「大崎事件ほど再審制度の不備に翻弄(ほんろう)された事件はない」―。22日に鹿児島地裁で第4次再審請求を棄却された原口アヤ子さん(95)は、過去に3度再審開始が認められたものの、その都度検察側の不服申し立てで取り消された経緯がある。弁護団事務局長の鴨志田祐美弁護士は強調する。「最初の再審開始決定は20年前。検察が抗告しなかったら、20年前に終わっていたはずだ」。当事者だけでなく元裁判官たちからも、規定が乏しい再審法(刑事訴訟法の第4編再審)の早期改正を求める声が上がる。 「再審妨害」と「再審格差」。ともに鴨志田弁護士が生み出した言葉だ。前者は、再審開始決定に対して徹底的に上訴する検察当局へ
-
袴田さん姉「残念」 大崎事件、再審認めず
無実を訴えながら殺人と死体遺棄の罪で服役した女性(95)の第4次再審請求審で、鹿児島地裁が22日、女性の再審請求を棄却する決定を出したことについて、女性を励ましてきた元プロボクサー袴田巌さん(86)の姉ひで子さん(89)=浜松市中区=は「気の毒に。生きている限り頑張ってもらうしかない」と受け止めた。 女性には過去3度、再審開始の判断が示されたが、その都度検察側の不服申し立てによって取り消され、異例の経過をたどってきた。ひで子さんは自宅のテレビに請求棄却の速報が流れると、「残念。どういう理由で棄却したのかを知りたい」と話した。 女性の支援集会に駆け付けたり、入院先の病院を訪ねて見舞ったりし
-
再審法改正目指し、立法府へ要請強化 日弁連が実現本部
日本弁護士連合会が、人権救済につながりにくいと指摘されてきた再審法の改正を目指し、小林元治会長を本部長とする「再審法改正実現本部」の新設を16日付で決めた。今後、改正案を策定するほか、日弁連の総力を挙げて「メインターゲット」と位置付ける立法府への働き掛けを強める。 従前の「再審法改正に関する特別部会」は40人ほどの人員だったが、実現本部化で3倍以上に増える。県弁護士会の伊豆田悦義会長ら、日弁連の理事である各地の弁護士会長も加わる。特別部会で部会長を務めてきた鴨志田祐美弁護士は、実現本部新設の意義を「ローラー的に全国会議員を訪ねることができたり、理事が入ることで地元選出議員へのアプローチが
-
大自在(6月18日)袴田事件発生からまもなく56年
浜松市中心街で日課の散歩を楽しむ袴田巌さんを、久しぶりに見掛けた。静岡地裁の再審開始決定を受け、東京拘置所から釈放されて8年以上たつが、再審請求審は東京高裁で継続中。86歳となった今も立場は死刑囚のままである。 肩書は元プロボクサー。世界王者を夢見ていた時期もあったのではないか。ただ、袴田さんの現役時代と比べると、ベルトの価値は下がったような気もする。世界王座を認定する団体の数も、王座を目指して戦う体重別の階級も増えている。 数多くなった現役の世界王者が同じ体重で戦ったとしたら誰が一番強いのか。そんな視点でランキングを決める米国の専門誌が、バンタム級主要4団体のうち3団体の統一王者になっ
-
滋賀・日野町事件 捜査の問題点指摘 浜松で弁護団長講演
滋賀県日野町で1984年に発生した強盗殺人事件の第2次再審請求審の弁護団長、伊賀興一弁護士(大阪弁護士会)が28日、浜松市中区のクリエート浜松で講演し、冤罪(えんざい)を生み出す捜査の問題点や再審制度の課題について語った。 事件で無期懲役刑が確定し、服役中に死亡した阪原弘元受刑者の遺族が裁判のやり直しを求めている。大津地裁が2018年、捜査段階での自白の信用性や任意性を否定し、再審開始を決定。検察が即時抗告し、大阪高裁で審理が続いている。 伊賀弁護士は、捜査機関が自白とつじつまを合わせるため、犯行を再現させる「引き当て捜査」の写真をすり替えたなど、再審請求審で分かった問題を紹介。「阪原さ
-
再審法改正求め 議員会館で集い 都内
再審法改正をめざす市民の会(東京都)は27日、結成3周年の記念集会「議員と市民の集い」を都内の衆議院第1議員会館で開き、ルールが乏しい再審法制の早期整備を国会議員らに求めた。袴田巌さん(86)の姉ひで子さん(89)はビデオメッセージで「巌は人生を失った」と呼び掛けた。 再審法は、刑事訴訟法の「第4編再審」の19カ条を指す。一度も改正されたことがなく、充実化の必要性を指摘されて久しい。同会の共同代表で映画監督の周防正行さんと、2011年に再審無罪となった「布川事件」の桜井昌司さん、桜井さんをドキュメンタリー映画で描いた金聖雄さんの3人が課題を話し合った。 周防さんは「再審は司法の世界の無法
-
袴田さん差し戻し審 7、8月に証人尋問 東京高裁
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定した袴田巌さん(86)の第2次再審請求審で、東京高裁は23日、7、8月に計5人の証人を尋問する日程を示した。追って正式に決める。同日、高裁と東京高検、弁護団による3者協議が開かれ、終了後に弁護団が記者会見して説明した。 袴田さんの犯行着衣とされるシャツなど「5点の衣類」は事件から1年2カ月後に現場のみそタンクで見つかり、血痕の色は当時の捜査資料に「濃赤色」と書かれていた。弁護団は高裁での差し戻し審で、みそ漬けの血液が黒色化するメカニズムを化学的に示し、長期間みそに漬かると「血液の赤みは残らない」と
-
冤罪発生の仕組み考える講演会 浜松で袴田さん支援団体
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、再審請求中の袴田巌さん(86)の支援団体は21日、元検察官で弁護士の市川寛さん(56)を講師に招き、冤罪(えんざい)の発生メカニズムや原因を考える講演会を浜松市中区の浜松復興記念館で開いた。 市川さんは、自身が主任検察官として担当した佐賀市農協の背任事件で、起訴した組合長が無罪になった裁判を振り返った。起訴する際の検察内部でのやりとりや、暴言を伴う不法な取り調べに至った経緯について触れたほか、検察組織の抱える問題点を指摘した。 市川さんは「(冤罪を起こさせないためには)簡単に起訴させないことが重要だ」「弁護人を取り調べにしっ
-
法医学者ら5人尋問へ 袴田さん差し戻し審 弁護団、高検請求
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定した袴田巌さん(86)の第2次再審請求審で、弁護団と東京高検が法医学者ら計5人を証人尋問するよう請求したことが20日、関係者への取材で分かった。23日の3者協議で、尋問の日程を含めて決まる見通し。 袴田さんの犯行着衣とされるシャツなど「5点の衣類」は事件から1年2カ月後に現場のみそタンクで見つかり、血痕の色は当時の捜査資料に「濃赤色」と書かれていた。弁護団は高裁での差し戻し審で、みそ漬けの血液が黒色化するメカニズムを化学的に示し、長期間みそに漬かると「血液の赤みは残らない」と結論付けた鑑定書を提出
-
袴田さん支援団体 21日講演会
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして、死刑が確定し、再審請求中の袴田巌さん(86)=浜松市中区=の支援団体「袴田さん支援クラブ」が21日午後1時半から、元検察官の市川寛弁護士を招いた講演会を同区の浜松復興記念館で開く。 市川さんは佐賀地検在職中に容疑者に不当な取り調べを行い、後に無罪となった事件の経験を著書「検事失格」に記した。講演会では「私が作った冤罪(えんざい)」と題し、冤罪が生まれる仕組みを説明する。 支援クラブが18日、浜松市役所で開いた記者会見にオンライン出席した袴田さんの姉ひで子さん(89)は、ピンク色の服を披露し「巌が買ってきてくれた」と袴田さんの近況を紹介。
-
再審法改正に注力 日弁連「実現本部」設置検討
日本弁護士連合会は、規定が乏しく人権救済につながりにくいと長年指摘されてきた再審法の改正を目指し、小林元治会長を本部長とする「再審法改正実現本部」を設置する方向で検討している。この問題を2月の会長選で公約に掲げた小林会長は「再審法改正に向けた動きをつくっていきたい」と意気込む。 再審法は刑事訴訟法の第4編「再審」を指す。刑訴法には500以上の条文がある中、再審に関する条文はわずか19しかない。審理の手続きについては、事実の取り調べができるとあるだけ。裁判官が主導する「職権主義」が取られているため、裁判官の積極性次第で審理の進め方に格差が生じているとも言われる。 過去、検察官が裁判所に提出
-
再審訴え合同広報活動 「袴田事件」「旧天竜林高事件」の支援者
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、再審を求めている袴田巌さん(86)と、旧天竜林高(浜松市天竜区)で起きた調査書改ざん・贈収賄事件で再審請求中の中谷良作元天竜市長(89)と北川好伸元校長(74)の支援者らが30日、浜松市天竜区の西鹿島駅前で3人の再審開始を訴える街頭広報を実施した。 「浜松 袴田巌さんを救う市民の会」「北川好伸さんを支える会」「天竜林業高校事件を考える市民の会」の3団体が初めて、合同で広報活動を行った。約10人の支援者らが3人の無実を訴え、ちらしを配り署名活動を展開した。 北川元校長の教え子で、支える会の峰野和己副代表(61)は「先生には『う
-
袴田さんの半生描く映画制作 2023年中の公開目指す
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、再審請求中の袴田巌さん(86)=浜松市中区=の半生を伝えようと、ドキュメンタリー監督の笠井千晶さん(47)=東京都=が映画を制作している。概要などを紹介するオンラインイベントを17日に開き、「死刑囚ではなく1人の人間として、袴田さんの姿を描きたい」と語った。2023年中の公開を目指す。 笠井さんは約20年間にわたり袴田さんと姉のひで子さん(89)を取材している。映画は「拳と祈り」という仮題で、14年に静岡地裁の再審開始決定を受けて釈放された後の2人の生活の様子を中心に、袴田さんの内心に迫る内容。プロボクサーとして活躍した事件前
-
死刑制度テーマに作家坂本さん講演 浜松で袴田さん支援団体
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、再審請求中の袴田巌さん(86)=浜松市中区=の支援団体「袴田さん支援クラブ」が16日、元刑務官のノンフィクション作家坂本敏夫さん(74)を招き、死刑制度について考える講演会を同区の浜松復興記念館で開いた。 広島拘置所総務部長などを務めた坂本さんは刑務官時代の経験を交え、「死刑制度を廃止すべき」と持論を述べた。犯罪の抑止力への疑問や死刑囚の収容にかかる財政負担の大きさを理由に挙げた。死刑確定後に再審無罪になった免田栄さんらの例を踏まえ、「冤罪(えんざい)で死刑を執行された人がいないとは言い切れない」と強調した。 約40年前に東
-
袴田さん弁護団が高検実験条件批判 再審請求審で新意見書
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(86)の第2次再審請求審で、弁護団は29日、東京高検の主張に反論する新たな意見書を東京高裁に提出したことを明らかにした。高検が実施している「みそ漬け実験」の条件設定などを批判した。 間光洋弁護士が同日、都内で開かれた「検察官の再審妨害を許さない」と題する集会で報告した。間弁護士は経過と見通しを説明し「再審開始は間違いないと考えている」と述べた。 集会では、厚生労働省の局長時代に文書偽造事件で大阪地検特捜部に逮捕・起訴され、無実の罪に問われた村木厚子さんと、日弁連の再審法改正に関する特
-
釈放8年 袴田さん支援団体、街頭で再審開始訴え
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直しを求めている浜松市中区の袴田巌さん(86)が釈放されて8年が経過した27日、支援団体がJR浜松駅北口で早期の再審開始決定を訴える街頭広報を行った。 「浜松 袴田巌さんを救う市民の会」のメンバーが袴田さんの無実を訴えるチラシを通行人に配ったり、東京高裁に提出する署名を求めたりした。共同代表の寺沢暢紘さん(76)は「高齢の袴田さんに時間の猶予はない。裁判所は一刻も早く再審開始を決定すべきだ」と強調した。 袴田さんは2014年に静岡地裁の再審開始決定により釈放された。東京高裁が18年に静岡地裁の決定を取り消し再審請求
-
弁護側鑑定人、尋問へ 袴田さん差し戻し審 みそ漬け実験巡り高裁
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(86)の第2次再審請求審で、東京高裁と東京高検、弁護団による非公開の3者協議が14日、高裁であった。高裁は、みそ漬けの血液が黒色化するメカニズムを化学的に説明した弁護側の鑑定人らを尋問する意向を示した。5月23日の次回協議で期日を決定する見通し。弁護団が記者会見し、明らかにした。 犯行着衣とされる5点の衣類は、事件から1年2カ月後に現場のみそタンクで見つかり、血痕の色は当時の捜査資料に「濃赤色」と書かれていた。最高裁は2020年12月の高裁への差し戻し決定で、血液の変色に影響を及ぼす要
-
袴田さん支援表明にも署名、キエフ市長 静岡県内関係者ら案じる ボクシング元世界王者
ロシアによるウクライナ侵攻で、裁判のやり直しを求める元プロボクサー袴田巌さん(86)の支援者らもウクライナの状況に心を痛めている。攻防戦が続く首都キエフのビタリ・クリチコ市長はヘビー級の元世界王者で、袴田さんの支援に理解を示していた。ボクシングでつながる袴田さんの支援者らは、ビタリ市長らウクライナ国民の安全と早期停戦の実現を祈る。 日本プロボクシング協会袴田巌支援委員会の新田渉世委員長(54)によると、ビタリ市長は現役の世界王者だった2013年、タイで開かれたWBC(世界ボクシング評議会)の総会で袴田さんの支援表明に署名した。支援を呼び掛ける文章を熟読していたという。 新田さんは「(ビタ
-
袴田巌さん、86歳に 浜松市中区の自宅で誕生会
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さんが10日、86歳となり、浜松市中区の自宅で誕生会が開かれた。姉ひで子さん(89)は弟に帽子を贈った。誕生日プレゼントを渡すのは初めてという。 袴田さんは2月、ひで子さんの誕生日当日に「秀子おめでとう」と手書きした現金入りののし袋を贈っていた。ひで子さんは「89年間で初めてで、びっくりしましてね。帽子はそのお返しのつもり」と笑った。 再審の可否を巡る審理が今なお続く。「なるべく早く再審開始になって、拘束された気持ちを解きほぐしてあげたい」と強調した。 袴田さん
-
長期拘禁の影響説明 袴田さん弁護団、高裁に現状の報告書
第2次再審請求中の袴田巌さん(86)の弁護団が10日までに、長期拘禁の影響が色濃い袴田さんの現状を理解してもらおうと、東京高裁に報告書を提出した。 報告書では、袴田さんは現実世界と妄想世界の二つで生きていると説明した。その上で「正義を希求する不屈の精神と自己防衛本能が働いた結果、架空の世界の住人になることで生き延びてきた」などと訴えた。 報告書は、2017年からほぼ毎日、袴田さんと姉ひで子さん(89)に付き添ってきた「袴田さん支援クラブ」(浜松市)の猪野待子代表がまとめた。猪野さんは取材に「裁判官の心に訴えたかった」と話した。
-
みそ漬け実験、検察側が公開 袴田さん弁護団に 再審請求審
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(85)の第2次再審請求審で、検察側は3日、布に血液を付け、血痕をみそ漬けにして色の変化を調べる「みそ漬け実験」の様子を弁護団に公開した。関係者への取材で分かった。 検察側は昨年9月に実験を始め、静岡地検の一室で観察を続けてきた。関係者によると、3日は弁護士2人が参加し、支援者の立ち会いは認められなかった。 犯行着衣とされる血染めの「5点の衣類」は事件から1年2カ月後に現場のみそタンクから見つかり、血痕の色は当時の捜査資料に「濃赤色」と記載されていた。弁護団は東京高裁で続く差し戻し審で
-
袴田さん姉ひで子さん「残念」 名張毒ぶどう酒事件、再審開始認めず
三重県名張市で1961年、女性5人が死亡した名張毒ぶどう酒事件で、名古屋高裁が3日、2015年に獄中死した奥西勝元死刑囚の再審開始を認めない決定をしたことについて、袴田巌さん(85)の姉ひで子さん(89)=浜松市=は取材に対し「残念。この上なく残念」と繰り返した。 刑事訴訟法には再審に関する条文は19しかない。長い間不備が指摘されてきたが、一度も改正されたことがない。再審の壁は高いのが現状で、袴田さんの再審請求人でもあるひで子さんは「再審法を変えてもらわなくちゃ困る」と訴えた。
-
血痕の色変化検証 静岡地検でみそ漬け実験、公開意向も 袴田さん再審請求審
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(85)の第2次再審請求審で、布に血液を付け、血痕をみそ漬けにして色の変化を調べる検察側の「みそ漬け実験」が静岡地検で行われていることが2日、関係者への取材で分かった。関係者によると、検察側は要望があれば裁判所や弁護団に実験を公開する意向を示している。 事件から1年2カ月後に現場のみそタンクで血染めの「5点の衣類」が見つかり、血痕の色は当時の捜査資料に「濃赤色」と記載されていた。弁護団は、東京高裁で続く差し戻し審で、長期間みそに漬かると「血痕の赤みは残らない」と結論付けた専門家の鑑定書を
-
東京高検が反論意見書 弁護側鑑定「明白性なし」と主張 袴田さん差し戻し審
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(85)の第2次再審請求審で、東京高検が、犯行着衣とされる「5点の衣類」の血痕を巡り、弁護団の主張に反論する新たな意見書を東京高裁に提出したことが25日、関係者への取材で分かった。「弁護側が出した証拠は新証拠としての明白性が認められない」と主張している。 5点の衣類は事件から1年2カ月後に現場のみそタンクで見つかり、当時の捜査資料に血痕の色は「濃赤色」などと書かれていた。弁護団は差し戻し審で、長期間みそに漬かると「赤みは残らない」と結論付けた専門家の鑑定書を提出。袴田さんの犯人性は「完全
-
袴田さん「無罪判決求める集い」 巌さんと姉ひで子さん出席 静岡
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(85)の「無罪判決を求める集い」が30日、同区であった。袴田さんと一緒に出席した姉ひで子さん(88)は、東京高裁での差し戻し審について「いよいよ大詰めに来ている。とにかく勝たなきゃ」と語った。 差し戻し審で弁護団は、事件から1年2カ月後に現場のみそタンクで発見された「犯行着衣」の血痕を巡り、1年以上みそに漬かると「赤みは残らない」とする鑑定書を提出。「1年以上タンクのみそに隠されていたとは言えず、袴田さんの犯人性は完全に否定された」と主張している。一方、検察側
-
袴田さんの早期再審開始を 救う会、東京高裁に請願書提出
旧清水市(静岡市清水区)で1966年にみそ製造会社の一家4人が殺害された事件で死刑が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(85)=浜松市中区=を支援する「無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会」は20日、袴田さんの早期再審開始を求める請願書を、7100人分の署名を添えて東京高裁に提出した。 同会が93年から裁判所に提出した署名は累計で14万5578人分になった。袴田さんの姉ひで子さん(88)は提出後の記者会見で「裁判はまっすぐに巌の方を向いてやってもらいたい。再審開始を心から望んでいる」と訴えた。 袴田さんの再審請求を巡っては、静岡地裁が2014年に再審開始を認めた。東京高裁は18年に
-
刑事司法制度「改善の余地」 映画監督の周防氏、浜松で講演
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人が殺害された事件で死刑が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(85)の支援団体が18日、痴漢冤罪(えんざい)を題材にした作品を手掛けた映画監督周防正行氏を講師に迎え、刑事司法制度の課題を考える講演会を浜松市中区の市地域情報センターで開いた。 周防氏は国の法制審議会で委員を務めた経験なども踏まえ、捜査機関が被疑者の身柄拘束を続けて自白を迫る「人質司法」や、不十分な証拠開示の仕組みの問題点を指摘した。裁判前に事件の争点を絞る公判前整理手続きの導入で検察の証拠開示がある程度進んだ一方、過去の冤罪事件では警察が検察に証拠を送致せず隠していたケースがあったと
-
即時抗告取り下げを訴え 袴田さん支援者全国集会
旧清水市(静岡市清水区)で1966年にみそ製造会社の一家4人が殺害された事件で死刑が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(85)の支援者による全国集会が10日、東京都千代田区の憲政記念館で開かれた。最高裁から東京高裁に差し戻された審理で、検察側に即時抗告の取り下げを訴えるアピールを採択した。 弁護団の間光洋弁護士は事件の経過概要や差し戻し審の争点、現状を報告した。事件から1年2カ月後に現場のみそタンクから発見された「犯行着衣」の血痕の色を巡り、弁護団が11月に新たな化学的知見として東京高裁に提出した、1年以上みそに漬かると「赤みは残らない」との専門家の鑑定書などを説明した。 東京
-
袴田さん再審差し戻し1年「よく笑うように」 姉ひで子さん会見
旧清水市(静岡市清水区)で1966年に一家4人が殺害された事件で死刑が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(85)=浜松市中区=の姉ひで子さん(88)が10日、再審開始を認めなかった東京高裁決定を最高裁が取り消してから22日で1年を迎えるのを前に、浜松市役所で記者会見した。 ひで子さんは昨年の最高裁決定後、市内を歩く袴田さんに「良かったね」と声を掛ける人が増え、「巌自身もよく笑うようになった」と変化を語った。自宅で袴田さんと事件について話すことはないが、「再審開始が決まれば、喜んで報告し、語り合いたい。裁判所は国ではなく、巌の方を向いて審理してほしい」と訴えた。 袴田さんの再審請
-
元裁判官の木谷氏講演 浜松で袴田さん支援団体が集会
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人が殺害された事件で死刑が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(85)の支援団体が27日、冤罪(えんざい)防止と再審制度の課題を考える集会を浜松市中区のクリエート浜松で開いた。元東京高裁判事の木谷明弁護士(83)が講演した。 木谷氏は旧天竜林業高(同市天竜区)で起きた大学推薦入試に絡む調査書改ざん・贈収賄事件に触れて、再審請求の制度不備や法改正の必要性を指摘した。同事件で、加重収賄罪などで有罪が確定した北川好伸元校長(73)の再審請求に対し、東京高裁が一度も事実関係を審理せず請求を棄却したのは「審理手続きの規定が法律にないため、裁判官の職権でこのよう
-
袴田さん支援団体 27日、浜松で集会 冤罪と再審考える
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人が殺害された事件で、死刑が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(85)の支援団体が27日、冤罪(えんざい)の防止や再審の課題について考える集会を浜松市中区のクリエート浜松で開く。 「浜松 袴田巌さんを救う市民の会」が主催する。元裁判官の木谷明弁護士が「冤罪を防ぐために」と題して講演する。講演では旧天竜林業高(浜松市天竜区)での大学推薦入試の調査書改ざん・贈収賄事件についても触れる予定。 時間は午後1時半~3時半。入場無料。
-
袴田さん差し戻し審 検察、弁護団新鑑定反論へ 3者協議で方針
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(85)の第2次再審請求審で、東京高裁と東京高検、弁護団の3者協議が22日、高裁であった。事件から1年2カ月後に現場のみそタンクで発見された「犯行着衣」の血痕の色を巡り、1年以上みそに漬かると「赤みは残らない」との弁護団の新たな鑑定書などについて、高検側は反論する方針を示した。 弁護団が協議終了後の記者会見で明らかにした。検察側は来年2月末までに反論する。次回は同3月14日。 最高裁は昨年12月、みそ漬けされた血痕の変色に影響を及ぼす要因について専門的な知見を踏まえて検討を尽くすよう求
-
「再審法改正必要」 浜松で日弁連部会長講演 袴田さん学習会
日弁連の「再審法改正に関する特別部会」部会長の鴨志田祐美弁護士(京都弁護士会)が20日、浜松市内で講演した。現在の再審法(刑事訴訟法の第4編「再審」)について規定の不備を指摘。「法改正しなければ、冤罪(えんざい)に苦しんでいる無実の人を救えない」と強調した。 鴨志田さんは、1979年に鹿児島県大崎町で男性の遺体が見つかった「大崎事件」の再審弁護団事務局長。無実を訴える原口アヤ子さん(94)は過去に3回、再審開始決定を受けたが、いずれも検察官が抗告し、開始決定が取り消された。 鴨志田さんは、大崎事件の再審請求審を踏まえ「同じ事件でありながら裁判官のやる気次第で証拠の開示が進んだり、進まなか
-
袴田さん再審「速やかに」 犯人性否定の鑑定書提出 弁護団、開始決定へ自信 血痕赤み消失「宿題に満点回答」
「最高裁の宿題に満点回答した」―。旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(85)の第2次再審請求審で、弁護団は5日午後、県庁で記者会見を開き、東京高裁に提出した新たな鑑定書と意見書の内容に自信を示した上で「速やかに再審開始決定を求めていく」と強調した。 袴田さんの犯行着衣とされた半袖シャツなど「5点の衣類」は事件から1年2カ月後に現場のみそタンクで見つかり、衣類に付着した血痕には赤みが見て取れた。審理を高裁に差し戻した昨年12月の最高裁決定は「みそ漬けされた血液の色調の変化に影響を及ぼす要因」について専門的知見を踏まえて審
-
「犯人性完全否定」 袴田弁護団が鑑定書提出 血痕赤み否定新知見
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(85)の第2次再審請求審で、事件から1年2カ月後に現場のみそタンクから発見された「犯行着衣」の血痕を巡り、弁護団は5日、1年以上みそに漬かると「血痕の赤みは残らない」とする鑑定書などを東京高裁に提出したと発表した。「1年以上タンクのみそに隠されていたとは言えず、袴田さんの犯人性は完全に否定された」として速やかな再審開始を強く訴えた。 同日、都内で記者会見して明らかにした。提出は1日付。最高裁は昨年12月、血痕の変色に影響を及ぼす要因について専門的な知見を踏まえて検討を尽くすよう求め、審
-
袴田弁護団 新たな知見、高裁に提出へ みそ漬け血痕の赤み否定
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(85)の第2次再審請求審で、みそタンクから発見された「犯行着衣」の血痕の色を巡り、長期間、みそに漬かると血痕の赤みは残らないとする新たな化学的知見を、弁護団が専門家から得たことが25日までに、複数の関係者への取材で分かった。 専門的知見を踏まえて審理を尽くすよう求めた最高裁の意向に応えた形で、東京高裁で続く差し戻し審への影響が注目される。弁護団は近く、知見に基づく意見書などを高裁に提出する方針。関係者は「最高裁の宿題に対する答えが出た。再審開始に向けた決定打になり得る」との見方を示した
-
乏しい規定 再審実現、至難の業 法改正に関心薄く
裁判をやり直す再審を巡り、法改正を求める声が強まっている。人権救済制度とされるが、規定が乏しく、当事者にとって再審の実現は事実上、至難の業となっているためだ。過去に改正されたことはなく、国政選挙で争点にもならない。議員立法という手段もある中、関係者は「政治家にとって票にならない分野で関心が薄い。誤判冤罪(えんざい)がある現実を知らなすぎる」と指摘している。 再審は刑事訴訟法第4編(再審法)に規定され、その手続きは再審開始の可否を判断する再審請求手続きと、再審確定後に始まる再審公判手続きの2段階構造になっている。再審を求める当事者や日弁連などが長年訴えてきたのは法の不備だ。 再審に関する条
-
若者向けに勉強会 袴田さん支援団体 浜松
旧清水市(静岡市清水区)で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(85)の支援団体「袴田さん支援クラブ」は16日、「中学生にもわかる袴田事件」を主題にした勉強会を浜松市中区の浜松復興記念館で開いた。 同クラブは勉強会を毎月開いているが、若年層の受講を念頭に置くのは初めて。中高生と大学生を含む約30人が参加した。検察官や弁護士の役割、裁判員裁判の仕組みについて理解を深め、仮の事件を想定して証拠を評価するプロセスを体験した。その上で「袴田事件」の経過を学び、どのように判断すべきかを考えた。 参加した菊地郁人さん(浜松西高2年)は「当事者の方々の
-
袴田さん支援団体 中高生向け学習会 10月16日に浜松
旧清水市(静岡市清水区)で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(85)の支援団体が16日午後1時半~4時、学習会「中学生にもわかる袴田事件」を浜松市の浜松復興記念館で開く。 袴田さん支援クラブが主催する。毎月第3土曜日に開催している学習会「袴田事件がわかる会」の特別企画。事件や裁判の経過などを説明し、どう判断するべきかを考えてもらう。袴田さんの姉秀子さん(88)も訪れる。 参加無料。同クラブは中高生の来場を呼び掛けている。希望者は直接、会場へ。
-
血痕変色、弁護団反論へ 袴田さん差し戻し審 3者協議
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(85)の第2次再審請求審で、東京高裁と東京高検、弁護団の3者協議が30日、高裁であった。みそに漬かった血痕の色調変化について議論し、弁護団が10月末までに高検への反論の意見書を提出することになった。次回協議は11月22日。 袴田さんの犯行着衣とされるシャツやズボンなど「5点の衣類」は、事件から1年2カ月後に現場のみそタンクで見つかった。弁護団は衣類に付着した血痕に赤みが残っているのは不自然だと訴え、みそに漬かった血痕は化学反応などで黒色化すると主張している。 一方、高検は7月に意見書
-
「狭山事件」問題点語る 袴田さん支援団体が勉強会 浜松
旧清水市(静岡市清水区)で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定し、再審請求中の袴田巌さん(85)の支援団体は21日、浜松市中区で定例の勉強会を開いた。63年に埼玉県で女子高校生が殺害された「狭山事件」で無期懲役となり、仮釈放された石川一雄さんの再審請求を支援する部落解放同盟中央本部の安田聡さんが、同事件について語った。 オンラインで登壇した安田さんは、狭山事件の捜査が行き詰まる中で警察が遺体発見場所に近い被差別部落に住む石川さんを犯人視したとし、「被差別部落が怪しいという発想は偏見」と訴えた。容疑を否認する石川さんに「自白しないなら兄も逮捕する」などと自白を強要する取り調べがあっ
-
袴田さん逮捕から55年 支援団体、少年期過ごした浜北で街頭活動
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人が殺害された「袴田事件」で袴田巌さん(85)=浜松市中区=が逮捕されてから55年となった18日、支援団体「袴田さん支援クラブ」が同市浜北区の遠州鉄道浜北駅前で街頭活動をした。浜北は袴田さんが少年期を過ごした街で、活動には姉の秀子さん(88)も加わった。 秀子さんは同クラブの猪野待子代表との対談に臨んだ。袴田さんが釈放された当時について「喜んで握った弟の手は柔らかかった。だって何もしていないのだから」と振り返り、今後について「再審開始に向けて頑張る」と語った。クラブのメンバーは、これまでの経緯や再審無罪を訴えるチラシを通行人に配った。 袴田さんは1980年
-
高検、袴田弁護団に反論 差し戻し審 意見書提出
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(85)の第2次再審請求審で、東京高検は30日、みそ漬けされた血痕の色の変化に関する弁護団への反論意見書を東京高裁に提出した。関係者への取材で分かった。 高裁で続く差し戻し後の即時抗告審は、袴田さんの犯行着衣とされる「5点の衣類」が現場のみそタンクに入れられた時期が焦点。弁護団は衣類の血痕に赤みが残っているのは不自然として、事件から1年2カ月後の発見直前に入れられた捏造(ねつぞう)された証拠だと訴えている。 高検は意見書で、血痕が黒色化する要因の一つとして弁護団が挙げた化学反応「メイラード
-
「5点の衣類」を解説 浜松 袴田さん支援団体勉強会
旧清水市(静岡市清水区)で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定し、再審請求中の袴田巌さん(85)=浜松市中区=の支援団体が17日、勉強会を浜松市内で開いた。 袴田事件弁護団事務局長の小川秀世弁護士が、血痕が争点となっている「5点の衣類」について解説した。衣類は事件から1年2カ月後にみそタンクの中から発見された。小川弁護士は実験から、みそ漬けされた血痕は4週間から半年で黒くなると説明。「1年2カ月もみそに漬かっていて赤みがあるのはおかしい」として、改めて捏造(ねつぞう)だと主張した。 袴田さんが日課としている散歩の様子や、支援団体による外出時の見守り同行が4年を迎えたことなども報告さ
-
差し戻し審「次回で審理終結を」 袴田弁護団が意見書
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(85)の第2次再審請求審で、弁護団は7日、新たな実験などから「犯行着衣」に関する確定判決の認定に合理的な疑いが生じたとして、次回の3者協議で審理を終え、再審開始決定を出すよう求める意見書を東京高裁に提出した。関係者への取材で分かった。 高裁で続く差し戻し後の即時抗告審は、犯行着衣とされる「5点の衣類」が現場のみそタンクに入れられた時期が焦点。弁護団は衣類の血痕に赤みが残っているのは不自然として、事件から1年2カ月後の発見直前に入れられた捏造(ねつぞう)証拠だと主張している。今回の意見書
-
「袴田事件」55年で支援団体 再審開始求め街頭活動 浜松
旧清水市(静岡市清水区)でみそ製造会社の専務一家4人が殺された「袴田事件」の発生から55年を迎えた30日、4人を殺害したとして死刑が確定した後釈放された袴田巌さん(85)=浜松市中区=の支援団体が、JR浜松駅前で再審開始を求める街頭活動を行った。 「浜松 袴田巌さんを救う市民の会」共同代表の寺沢暢紘さん(75)は「6月30日は袴田さんにとって全く関係のない事件の発生日だ」と声を張り上げた。会員らは防護柵を乗り越えて事件現場に侵入したとする検察の冒頭陳述に疑問が残るとし、防護柵を再現した検証実験も披露した。 別の支援団体「袴田さん支援クラブ」も同日夕、浜松駅前で通行人にチラシを配るなどして
-
袴田弁護団が期待感「再審開始は目前」 静岡で集会
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(85)の支援集会が27日、同区であった。弁護団報告で小川秀世事務局長は「検察官は追い詰められている。再審開始は目前と確信している」と期待感を示した。 再審請求審を巡っては最高裁が昨年12月、審理を東京高裁に差し戻す決定を出し、今春から差し戻し審が始まっている。焦点は、犯行着衣とされる「5点の衣類」が現場のみそタンクに入れられた時期。弁護団は衣類の血痕に赤みが残っているのは不自然として、事件から1年2カ月後の発見直前に入れられた捏造(ねつぞう)証拠だと主張してい
-
「着衣は捏造証拠」 差し戻し審 袴田弁護団 実験踏まえ改めて主張
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で再審を請求している袴田巌さん(85)の差し戻し即時抗告審で、東京高裁と東京高検、弁護団の第2回三者協議が21日、高裁で開かれた。弁護団は、事件から1年2カ月後にみそタンクで見つかった血染めの「犯行着衣」を巡り、実験結果を踏まえて「1年2カ月もみそに漬かれば(血痕は)赤みが消えて黒色化することが明らか」と主張し、捏造(ねつぞう)証拠だと改めて訴えた。 弁護団は同日、事件発生直後にみそタンクを捜索した元警察官の証人尋問を請求した。この元警察官は以前、静岡新聞社の取材に「棒で内部を確認したが、何もなかった」と証言して
-
証拠一覧表の開示拒否 袴田さん差し戻し審 東京高検「理由ない」
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(85)=浜松市中区=の第2次再審請求審で、東京高検は18日までに、未提出証拠の一覧表の開示に反対する意見書を東京高裁に提出した。関係者への取材で分かった。 弁護団は3月に開かれた差し戻し審の第1回3者協議で、一覧表の開示を勧告するよう高裁に求めていた。高検は今月に入り、再審段階の証拠開示についての規定が刑事訴訟法にないことを踏まえ、弁護団の訴えには「理由も必要性もない」とする意見書を出した。 確定判決は、事件発生から1年2カ月後に現場のみそタンクから見つかった麻袋入りの「5点の衣類」を袴
-
再審待つ袴田さん、85歳に 姉の秀子さん「明るくなった」
旧清水市(静岡市清水区)で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直し(再審)を求めている袴田巌さん(85)=浜松市中区=が10日、85歳の誕生日を迎え、姉の秀子さん(88)と暮らす浜松市中区の自宅で支援者から祝福を受けた。最高裁が2020年12月に再審開始を認めなかった東京高裁決定を取り消し、審理を高裁に差し戻す決定をして以降、袴田さんの様子に変化が表れている。 袴田さんは街歩きを日課にしてきたが、最高裁の決定後は車で物見遊山に出掛けることが増えた。1月中旬からの1カ月間だけでも計17日に上る。「世間の声が『頑張ってね』から『良かったね』に変わったことに、うんと反応し
-
袴田さん再審開始訴え 死刑判決から52年、浜松駅で街頭活動
旧清水市(静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして、死刑が確定し裁判のやり直しを訴えている袴田巌さん(84)=浜松市中区=の支援者が11日、JR浜松駅北口広場で、最高裁に再審開始決定を求める街頭活動を行った。袴田さんが静岡地裁で死刑判決を受けてから同日で52年を迎えた。 「袴田巌さんを救う市民の会」の関係者が「一刻も早い再審無罪を」と記した横断幕を掲げ、袴田さんの無実を訴えた。寺沢暢紘共同代表は「最高裁は6年前の静岡地裁の再審開始決定を重く受け止めてほしい」と訴えた。 袴田さんは2014年、静岡地裁の再審開始決定を受けて釈放されたが、東京高裁は18年に静岡地裁の決定を取り消し、再審請求を