開幕へスクラム 進む準備(5・完)普及策 地域の受け皿整備へ

 ナイター照明の下、約20人の小中学生が不規則に転がる楕円(だえん)形のボールを追い掛ける。静岡市葵区の西ケ谷総合運動場で11月中旬に始まった「放課後ラグビークラブ」。2015年度から開かれてきたスポーツ庁の普及事業「放課後ラグビープログラム」が18年度限りで終了する見通しになり、指導役を務めてきた村上勇静岡東高ラグビー部監督(47)が自ら企画して流れを引き継いだ。「このまま終わるのはもったいない。来年のワールドカップ(W杯)を見て、ラグビーをやってみたいと思う子の受け皿がないと」と話す。

プレーを楽しむ放課後ラグビークラブの児童ら=11月30日、静岡市葵区の西ケ谷総合運動場
プレーを楽しむ放課後ラグビークラブの児童ら=11月30日、静岡市葵区の西ケ谷総合運動場

 日本ラグビーフットボール協会によると静岡県の競技人口は17年度末現在で約1400人で、W杯の試合会場がある12都道府県別では2番目に少ない。中学生以下対象のラグビースクールは裾野、静岡、浜名湖など6カ所あるが、部活動は中学3校、高校13校のみ。W杯を追い風に、さらにラグビーを地元に根付かせていくには―。
 県協会は6月、「地域クラブの創設」という構想を打ち出した。石垣誠理事長(57)は「まだ青写真」と前置きした上で、「毎週どこかに大人も子どもも集まって、当たり前のようにラグビーをしているイメージ」と説明する。「少子化の中にあって、学校の部活動単位では人は集まらない。これからは地域貢献と教育をキーワードに、年代の枠を取り払った縦のつながりで人を育てる環境をつくりたい」。放課後クラブの延長線上に理想を描く。
 県の小中学生向けラグビー教本づくりに携わるラグビージャーナリストの村上晃一氏(53)は県協会の方針を歓迎するとともに、実現へのハードルの高さも指摘する。「強豪国のニュージーランドでは各地に地域クラブがあるが、日本では基本的に学校や企業のラグビー部でないとプレーできない。学校や企業が(地域向けに)グラウンドを開放する体制が必要ではないか」と持論を語る。
 世界中を魅了する最高峰の戦いが9カ月後にやってくる。大会を見て楕円球に興味を抱いた子どもたちが、気軽に参加できる受け皿が求められている。

 <メモ>W杯組織委員会と日本協会は6月、W杯を機に全国12開催都市でラグビーを普及させるための「未来計画」を策定。静岡県協会と県は地域クラブ創設の他、国際交流の促進や大会ボランティアの育成などの施策を盛り込んだ。県内のラグビースクールの選手数は未就学児、小中学生合わせて483人(9月現在)。日本が南アフリカに歴史的な勝利を挙げた2015年W杯以降に大幅に増えた。一方で高校の部員は年々減少し、8月現在で13校375人。12月16日に始まった県新人大会は7校が単独で、残り6校は合同チームを組んで出場している。

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