藤枝明誠、4年ぶり全国へ 高校サッカー選手権静岡県大会決勝
(2020/11/15 08:32)
第99回全国高校サッカー選手権静岡県大会(県サッカー協会、静岡新聞社など主催)は14日、エコパスタジアムで決勝を行った。藤枝明誠が後半一気に3点を奪い、3-0で東海大翔洋を下して4年ぶり3度目の頂点に立った。現校名で初の優勝を目指した東海大翔洋は最後までリズムに乗れなかった。
大会MVP(最高殊勲選手)は賀茂大紀(藤枝明誠)が選ばれた。賀茂は決勝トーナメント通算3得点で得点王も獲得した。得点王はほかに中沢勘太(東海大翔洋)、冨永日向(静岡学園)、加藤大晟(浜松開誠館)の3人。
全国高校選手権は12月31日に開幕する。
▽決勝
藤枝明誠 3(0―0 3―0)0 東海大翔洋
▽得点者【藤】賀茂(横山)中山(高野)村松(なし)
【評】堅い守りを軸とした藤枝明誠が、東海大翔洋に快勝した。
前半は互いに好機が少なかった。藤枝明誠は11分、右クロスに小林洸が頭で合わせたが外れた。東海大翔洋は24分、縦パスに市川が抜け出して相手ゴールに迫った。
後半13分、藤枝明誠が右サイドで得たFKから賀茂が頭で決めて先制。その後は相手にボールを支配されながらもシュートを打たせず、21分に自陣のクリアボールから速攻で中山が追加点。終了間際はFKからこぼれ球を村松が決めた。
■賀茂先制、村松ダメ押し
理想に掲げる攻撃的なパスサッカーは影を潜め、藤枝明誠は持ち味を表現できないまま前半を終えた。ロッカールームに戻った選手に、松本監督は畳み掛けた。「おまえたちは様子見をしているのか。こんなサッカーで楽しいのか。プライドはあるのか」。迎えた後半。悪い流れを変えたのは「自分たちの武器」と監督や選手が口をそろえるセットプレーだった。
13分に右サイドで得たFK。キッカー横山が鋭い弾道の球をゴール前に放り込む。180センチ台の長身選手2人に相手は引き寄せられ、173センチの賀茂がフリーになっていた。「大きい選手をおとりにする練習をしてきた」。静岡学園との準決勝でも2ゴールを挙げたボランチの先制ヘッドが決まった。
これでペースをつかむと、東海大翔洋を一気に飲み込んだ。8分後に中山が逆襲から加点。終了間際にFKの混戦から村松がダメ押しした。「選手が気持ちを見せてくれた。感動させてもらった」。試合後、取材エリアに現れた指揮官の声は震えていた。
昨年度、静岡学園が攻撃的なサッカーで全国を魅了する光景を、松本監督は埼玉スタジアムで目に焼き付けていた。喜びと同時に、「この舞台を子どもたちに踏ませてあげられない悔しさ」が込み上げたという。4年ぶりの全国に向け、「静岡代表の名に恥じない戦いをしなくちゃいけないのは分かっているが、まず一つ」。口元を引き締めた。
■主将中山は鮮やかカウンター
鮮やかなカウンターだった。藤枝明誠の主将中山が後半21分、FW高野が自陣から仕掛けたドリブル突破に呼応。左サイドを駆け上がって球を引き取ると、中に切れ込んで強烈なミドルシュートを決めた。
「ドリブルした時にゴールが見えた。相手のGKは見えてなかったけれど思い切って打った」。東海大翔洋を突き放す2点目を挙げ、ベンチに向かってさっそうと走った。
磐田ジュニアユース出身でトップ下や中盤右サイドでプレーする。決勝トーナメント1回戦後に体調不良で入院し、準々決勝の磐田東戦は欠場。万全とは言えない状態だった。
背番号10の主将は「自分たちは超攻撃的なサッカーを目指している。修正するところはたくさんあるが、やるからには全国優勝を目指す」と力を込めた。
■翔洋、名門復活ならず
東海大翔洋が掲げた名門復活は、来年以降に持ち越された。「決勝で追う展開は避けたかった」と太田監督。描いたゲームプランは、前半に我慢すること。藤枝明誠の攻撃に耐え、前半終了間際にMF大槻が惜しいミドルシュートを放った。0-0で折り返し、誰もが手応えをつかんで後半を迎えた。だが、13分に最も警戒していた相手のセットプレーから先制された。
反撃を試みたが、シュート1本に終わった。MF成沢は「後半は相手のプレスが弱くなると思ったし、自分たちらしさを出そうとしたが、1失点目でムードを持っていかれた」と相手の先制点が重くのしかかった。
現校名では初だが、かつて全国で名をはせた東海大一時代を含めれば第71回大会以来28年ぶりの決勝進出だった。太田監督は「勢いだけで静岡は勝ちきれなかった。大舞台でも自分たちのサッカーを貫かなければ勝てない」と話す。ベストイレブンに選ばれたFW市川ら2年生以下が、経験を生かして悲願につなげる。