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御前崎のウミガメ保護 地域を挙げて

 御前崎市の海岸に毎年上陸しているアカウミガメ。上陸頭数は減少傾向にあり、卵を産むことができる砂浜の減少などが影響している可能性があります。今季のふ化の状況や、地元小学校で伝統的に行われているウミガメ飼育の様子などをまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉

上陸は過去最少50匹 5~8月 砂浜減、産卵周期影響か

 御前崎市の海岸に5~8月に上陸したアカウミガメの数が、記録の残る1981年以降で最も少なかったことが17日までに明らかになった。市のウミガメ保護監視員や調査団体は、卵を産むことができる砂浜の減少や産卵周期が影響したと推測する。

上陸したアカウミガメの足跡。産卵をせずに海に帰ることも多い=5月、御前崎市
上陸したアカウミガメの足跡。産卵をせずに海に帰ることも多い=5月、御前崎市
 アカウミガメは絶滅危惧種。市の委嘱を受けた保護監視員は毎年5~8月の産卵期に卵を採取してふ化場に運んでいる。市によると今年の上陸は50匹で、これまでの最少だった2019年、20年の82匹を下回った。特に海岸の一部が産卵地として国の天然記念物に指定されている旧御前崎町域は上陸14匹、うち産卵が7匹と極端に減った。20年以上保護監視員を務める高田正義さん(87)は「砂浜は年々減っている。今年は流木やごみも多く、カメが上陸できる場所は少なかった」と話す。

 
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御前崎市のウミガメの上陸頭数
 
 NPO法人日本ウミガメ協議会によると、産卵周期は2~4年に1度。その産卵シーズンではおおむね3回に分けて卵を産むが、1回目の産卵で防波堤にぶつかったり卵を埋める場所がなかったりすると、2回目以降は別の海岸に行くこともあるという。
 今年は全国的に上陸、産卵が少なく、松宮賢佑事務局長は「産卵する母ガメがたまたま少ない年だったかもしれない。引き続き来年、再来年の数を見ていきたい」と話す。
〈2021.09.18 あなたの静岡新聞〉

今季初めてのふ化は8月13日 63匹を海に放流

 絶滅危惧種アカウミガメが御前崎市の海岸で産んだ卵が13日、今季初めてふ化した。昨年より1日早く、例年並み。

御前崎市で今季初めてふ化したアカウミガメ=同市のふ化場
御前崎市で今季初めてふ化したアカウミガメ=同市のふ化場

 同市では卵を嵐や鳥獣から守るため、市のウミガメ保護監視員が産卵時期の5~8月に毎朝採取してふ化場に運び込んでいる。保護監視員の横山俊明さん(74)が同日午前5時半ごろ、ふ化場で体長数センチの子ガメ63匹が地上にはい出しているのを確認した。
 ふ化したのは今季の初産卵で6月11日に池新田地区で保護した卵102個の一部。横山さんは「(ふ化の目安の)2カ月を過ぎていたのでだめかなと思ったが、元気な姿を見られて良かった」と安心した様子で話した。子ガメは海に放流した。
 今季卵を産んだ親ガメは13日現在で25匹と少なく、特に旧御前崎町域では6匹と記録が残る1981年以降で最も少ない状況。監視員は8月末まで採取を続ける。
〈2021.08.14 あなたの静岡新聞〉

地元小学校では毎年飼育受け入れ 毎日休まず餌やりや掃除

 絶滅危惧種のアカウミガメの飼育を伝統とする御前崎市立御前崎小で15日、子ガメの受け入れ式が開かれた。市のウミガメ保護監視員が、同日朝にふ化したばかりの体長数センチの子ガメ10匹を児童に託した。

アカウミガメの子ガメに興味津々の児童=御前崎市の御前崎小
アカウミガメの子ガメに興味津々の児童=御前崎市の御前崎小
 保護監視員の高田正義さん(87)が同校に届けた。児童はたらいの中で手足をばたつかせる姿に「かわいい」と興味津々。飼育を担当する5年の川口いろ葉さん(11)は「少し心配もあるけど、みんなで協力し合って小さな命を大切にしたい」と話した。

 
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体長数センチのアカウミガメの子ガメ

 市の海岸の一部はアカウミガメの産卵地として国の天然記念物に指定され、市から委嘱された保護監視員が卵を採取してふ化場に運んでいる。
 御前崎小での飼育は1977年に始まった。例年5年生が飼育当番を担い、9月から翌年夏の放流まで餌やりや水槽の掃除などを毎日休まず行う。
〈2021.09.16 あなたの静岡新聞〉

御前崎小でウミガメ飼育を指導 秋野友美さんインタビュー

 御前崎海岸で生まれた絶滅危惧種アカウミガメの飼育を伝統とする御前崎小で、児童や教員の相談に応じる。金魚販売店経営。45歳。

秋野友美さん
秋野友美さん
 ―御前崎小との縁は。
 「父が水質管理の指導や機器のメンテナンスに行くようになったのがきっかけ。私も手伝っていた。父からは8年前に亡くなる直前、『御前崎小のカメを頼む』と言われた」
 ―児童の様子は。
 「毎年9月に保護監視員からふ化したばかりの子ガメを譲り受ける。最初はろ過槽の掃除などを面倒に感じる子もいるが、カメが成長すると愛着が湧くみたい。学校に行くと『大きくなってるよ』と声を掛けてくれる」
 ―カメをわが子のように感じているとか。
 「学校は育てたカメを例年6~7月に海岸に放流している。実は、最近まで放流会に呼ばれても、行っていなかった。見ると泣いてしまうから」
 ―どんな思いで飼育に携わっているか。
 「自分の幼少期に比べると、砂浜に来るカメはとても少なくなった。少しでも御前崎や相良の海に戻ってくることを願っている。子どもも先生も飼育を楽しいと思ってもらえるようにお手伝いしたい」

 学生時代は陸上走り高跳びの選手。日本選手権入賞、国体3位の経歴を持つ。
〈2021.07.16 あなたの静岡新聞〉