駿河湾フェリー 収益改善なるか
新型コロナウイルスの影響で、乗客が減少している駿河湾フェリー。清水港と土肥港を結ぶ海の「県道223号」としての魅力を高め、需要回復につなげようとする企画も動き出しています。駿河湾フェリーを取り巻く環境や最近の動きをまとめました。
〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉
洋上を「学びの舞台」に 沼津高専と運営法人が企画準備
清水港と土肥港を結ぶ駿河湾フェリーを運営する一般社団法人「ふじさん駿河湾フェリー」(滝浪勇理事長)が、減少する乗客の回復につなげようと海洋研究に取り組む学生たちと駿河湾の魅力を伝える企画を練っている。道路整備などに伴う利用減に加え、新型コロナウイルスの影響で団体などの客足がさらに遠のく中、学生と連携した教育プログラムで学校などからの需要獲得を狙う。
フェリーを駿河湾の魅力を発信する教育の場にしたい法人と、研究発表の場として活用したいサークルの意向が一致し、昨年の夏ごろから計画を進めている。
学生は、海底の地形や深海生物の研究で培った知識を生かしたアイデアを披露した。小学生を対象にしたプログラムでは、バーチャルユーチューバーを登場させる駿河湾の紹介動画や、紙粘土を使った3センチ四方の海底模型の制作ワークショップを提案。乗船している間に、児童生徒にプログラムに参加してもらう方針だ。
今後、学生は秋ごろの実現を目指して沼津港深海水族館などを視察し、プログラムの内容を磨く。部長の鈴木檀さん(20)は「地元の人にとって駿河湾は当たり前の存在だが、奥深さを改めて知ってもらえるよう貢献したい」と話す。
滝浪理事長は「学生の新鮮な発想を生かした教育プログラムで、老若男女が駿河湾や富士山について学ぶ場になれば」と期待する。
<メモ>駿河湾フェリー 現在運航している船は全長83メートル、全幅14メートルで、乗客の定員は約400人。清水港と土肥港を結ぶ海の「県道223号」を約70分で航行する。2002年に就航し、富士山が世界遺産に登録された13年度には約24万人が利用したが、伊豆縦貫道など道路状況の改善で客数が減少した。20年からは新型コロナ感染拡大の影響を受け、同年度の利用者は約8万人にとどまっている。
〈2021.09.13 あなたの静岡新聞〉
20年度の輸送実績 乗客、運航率ともに最低 コロナ響く
一般社団法人ふじさん駿河湾フェリーは4月19日、清水―土肥港間を結ぶ駿河湾フェリーの2020年度輸送実績を公表した。輸送人員は新型コロナウイルスの影響で前年度比38・3%減の8万21人にとどまり、運航率も冬場の悪天候のあおりで前年度を6・5ポイント下回る83・3%だった。現行の1隻体制となった09年度以降、ともに最低を記録した。
輸送人員のうち旅客数は5万6234人(同47・1%減)だった。半額キャンペーンは20年7、8月と10月~21年1月、同3、4月に実施。二輪も3177台(同21・3%増)と堅調に伸びた。
感染流行の緊急事態宣言などを受け、20年4月下旬から6月に運休を余儀なくされた。21年1、2月は強風と高波で欠航が相次ぎ、運航率が50~60%台に低迷した。
法人は2月に策定した経営改善戦略で駿河湾フェリーを重要な社会資本と位置づけ、県と6市町の協定に基づく毎年の負担金1億200万円に加え、21年度から3年間は計4億4500万円を上乗せして運航を続ける。団体旅行の獲得やイベント収益が今後の鍵を握るとみて、21年度から営業職を2人増の3人体制にして経営改善を本格化させる。
〈2021.04.20 あなたの静岡新聞〉
映画やテレビ番組のロケに活路 新たな需要獲得へ
一般社団法人ふじさん駿河湾フェリーは、清水―土肥港間で運航する駿河湾フェリー「富士」を、映画やテレビ番組の撮影で活用を促す取り組みを始めた。長引くコロナ禍で個人や団体の輸送需要が低迷する中、新たな需要を獲得して収益改善につなげる狙い。
駿河湾フェリーの2020年度輸送人員は感染症の影響で前年度比約3割減の9万人程度にとどまる見通し。減収傾向は感染症が収束するまで当面続くと想定されるため、輸送事業を補う収益源としてロケ現場に船体や航路を活用してもらう戦略に打って出た。
強風などで欠航が多くなる季節も、停泊中の船内を撮影に提供することで収益の獲得につながる。撮影部分が放映時に露出する効果で、視聴者などの利用促進にも期待を膨らませている。
フェリーの運航コストは運賃収入では賄えず、県や6市町の負担金で補っている状況が続いている。滝浪勇理事長は「早期の収支均衡を実現するため、苦境を打開するための手だてを見いだしたい」と語る。
〈2021.04.05 あなたの静岡新聞〉
五輪聖火リレーのルートにも 広瀬アリスさん、思い出の地走る
静岡市清水区出身の女優広瀬アリスさん(26)は地元区間の第1走者として、思い出深い駿河湾フェリー「富士」から、同区の清水港フェリー乗り場に降り立った。
駿河湾フェリーは幼少期に何度も乗ったという。「とても光栄で人生に一度の経験。船外に広がる清水の景色を目に焼き付けようと走った。聖火の炎を間近に目にすると背筋が伸びるような気持ちだった」と笑顔を見せた。