現職の議長逮捕 富士宮市議会
富士宮市議会でおととし行われた議長選挙を巡り、自身への投票を依頼し、別の議員に現金100万円を渡そうとしたとして、現職議長が逮捕されました。警察が現金の提供を持ち掛けた経緯などを調べています。現時点での情報をまとめました。
〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉
議長選で同僚市議に投票依頼 見返りは100万円
2019年10月の富士宮市議会議長選に絡み、同僚の市議に自身への投票を依頼し、見返りに現金100万円を渡そうとしたとして、富士宮署と静岡県警捜査2課は7日、贈賄申し込みの疑いで同市議会議長の遠藤英明容疑者(79)=同市小泉=を逮捕した。
関係者によると、市議は一度は遠藤容疑者から現金を受け取ったが、翌日、そのまま返したという。同署などは遠藤容疑者の認否を明らかにしていない。
同議長選は当時の議長が体調不良を理由に辞任したことに伴い行われた。遠藤容疑者を含めた2氏が立候補し、当時の議長を除く全市議21人が投票した結果、遠藤容疑者は8票にとどまり、13票を獲得した別の候補が当選した。現金の供与を受けた市議は遠藤容疑者に投票しなかったとみられる。
遠藤容疑者は2007年の市議選で初当選し、現在4期目。今年5月の市議会議長選では当選し、議長に就いた。
同署などは5月の市議会議長選でも投票を巡って現金の授受などがあった可能性もあるとみて調べを進める。
同署などは7日午前から、遠藤容疑者に任意で事情を聴いていた。
〈2021.09.08 あなたの静岡新聞〉
念願の議長就任から4カ月で逮捕
富士宮市議会の議長選挙を巡る贈賄申し込み容疑で7日に逮捕された遠藤英明容疑者(79)は、周囲に「最後に議長までやりたい」とたびたび口にしてきたという。4期目に懸けた今年5月の改選で念願の議長に就任後4カ月での逮捕劇となった。
当時の議長辞任に伴う19年10月の議長選では13対8で破れ、今回の贈賄申し込み容疑が浮上する事態となった。遠藤容疑者と関わりのある地元住民の男性は「議長になりたくてしょうがない印象だった。お金を渡してまで議長に固執していたとは驚き」と振り返る。再び巡ってきた21年5月の議長選で、唯一の立候補者となり、21票中14票を得て念願を果たした。
■地元住民怒り 現職市議 相次ぎ逮捕
2019年に行われた議長選挙を巡る贈賄申し込み事件で現職の市議会議長が逮捕された富士宮市議会。当時現職市議だった男が強制わいせつ容疑で逮捕・起訴された事件に続く不祥事に、地元住民や関係者から怒りや困惑の声が上がった。
地元で飲食店を営む40代男性は「市議会にあきれてしまう。コロナ禍なのに、今の議会は頼りにならない」と断じた。遠藤容疑者を知る会社役員の60代男性は「もともと金融関係の仕事をしていた人。賄賂に抵抗はなかったのか」とけげんな表情を浮かべた。
市議会と当局の関係について「市政の両輪」と強調していた遠藤容疑者。逮捕を受け須藤秀忠市長は「誠に遺憾で恥ずかしい。片側のタイヤがパンクしている」と憤った。現在市議会は3人欠員の19人態勢。「この人数で議会が回っていることから定数削減など本物の改革をしてもらいたい」と語気を強めた。
小松快造副議長は「再度信用と信頼を失墜させた事態を非常に重く受け止めている。もう一度一人一人が姿勢を正して信頼回復に全力で取り組む」とコメントを発表した。
〈2021.09.08 あなたの静岡新聞〉
静岡県警、市議会を家宅捜索
2019年10月の富士宮市議会議長選に絡み、同僚市議に自身への投票を依頼し、見返りに現金100万円を渡そうとしたとして贈賄申し込み容疑で富士宮署と県警捜査2課に逮捕された同市議会議長の遠藤英明容疑者(79)=同市小泉=が、市議会にある同僚市議の会派控室を訪ねて現金を手渡していたことが8日、関係者への取材で分かった。同署などは同日午前、市議会事務局を家宅捜索した。
関係者によると、遠藤容疑者は19年10月11日に行われた議長選の前日の同10日、同僚市議に所在を確認した後、1人で市議会内の会派控室を訪れ、現金100万円が入った封筒を手渡した上で、自身に投票するよう依頼したという。
同僚市議は議長選で遠藤容疑者に投票しなかったとみられ、議長選の後、遠藤容疑者に封筒をそのまま返したという。
19年10月の議長選には遠藤容疑者を含めた2人が立候補し、投票の結果、遠藤容疑者は5票差で落選した。今年5月の議長選では当選し、議長職に就いた。
〈2021.09.08 あなたの静岡新聞〉
受け取ったのは逮捕の辞職市議
2019年10月の富士宮市議会議長選に絡み、同僚市議に自身への投票を依頼し、見返りに現金100万円を渡そうとしたとして、贈賄申し込み容疑で富士宮署と県警捜査2課に逮捕された同市議会議長の遠藤英明容疑者(79)=同市小泉=が、議長選前に金融機関の口座から100万円を出金していたとみられることが8日、関係者への取材で分かった。
関係者によると、遠藤容疑者は19年10月11日の議長選の前日、市議会にある野本被告の会派控室を訪れ、現金100万円が入った封筒を手渡して自身への投票を依頼した。野本被告は一度は現金を受け取ったものの議長選後、そのまま返したという。遠藤容疑者は野本被告に渡すため議長選前に金融機関の口座から現金を引き出したが、返されたことから議長選の後に同口座に入金したとみられる。
野本被告は女児のスカート内を携帯電話で盗撮したとして、現職当時の5月、県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕された。関係者によると、押収した携帯電話の精査で、今回の贈賄申し込み容疑が浮上したという。
議長選では野本被告は遠藤容疑者に投票しなかったとみられ、遠藤容疑者は5票差で別の候補に敗れた。今年5月の議長選では当選し、議長に就いた。
同署などは8日午前9時55分から約3時間40分にわたって市議会事務局の家宅捜索を行い、関係資料を押収した。同署などは同日、遠藤容疑者を贈賄申し込み容疑で静岡地検に送致した。
■小松副議長謝罪「納得いただける形を」
2019年の富士宮市議会議長選を巡って現職議長の遠藤英明容疑者が贈賄申し込み容疑で逮捕された事件を受け、小松快造副議長が8日、報道陣の取材に応じ、直近の市議会9月定例会について、予定通り10日に開会する方針を示した。
小松副議長は「市民の皆さまに頭を下げなければならない。議会として、誠意ある、ご納得いただける形を示していきたい」と謝罪した。その上で「(遠藤容疑者の逮捕が)昨日のことで、まだ議員で集まって今後の対策を話し合えていない。9月定例会で何か方向付けをしたい」とした。
市議会9月定例会は議長不在のまま10日に開会し、会期は10月12日までの予定。小松副議長が議長の代理を務める。現在、市議会は議員定数22人のうち欠員3人。遠藤容疑者が今後、辞職となった場合、欠員は議員定数の6分の1に当たる4人となり、補欠選挙の実施が見込まれる。4人目の欠員が生じた翌日を起算日に、50日以内の実施になるという。
〈2021.09.09 あなたの静岡新聞〉