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わたしの街から 玉露の名産地・岡部

 朝比奈川沿いの山の斜面に茶園が広がる藤枝市岡部地区。ここで生産される「朝比奈玉露」は京都府宇治、福岡県八女と並び、玉露の日本三大産地に数えられています。豊かな文化と歴史で彩られた岡部地区の魅力を紹介します。

風情豊かな茶室「瓢月亭」 若い女性に人気

茶室「瓢月亭」
茶室「瓢月亭」
「ぬるめのお湯で抽出します」
 岡部地区の茶文化施設「玉露の里」にある茶室「瓢月(ひょうげつ)亭」。和装をした煎茶道静風流の塚本邦子さん(68)が、玉露の茶葉が入った急須に湯を注いだ。温度は46度前後。熱い湯だと玉露の香味が失われてしまう。
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 池のほとりにある瓢月亭は木々に囲まれ、四季折々の景色を眺めながら本格的な茶席を体験できる。湯が適温になるまで待つ上、急須に注いでから、さらに1分50秒ほど置く。その間、豊かな自然に囲まれた茶室内は、のんびりとした時間が流れる。
 玉露は一般的な緑茶に比べて渋みが少なく、甘みをより感じられるのが特徴。日本文化を堪能でき、「インスタ映え」する茶室は若い女性たちから大人気だ。新型コロナウイルス感染症が流行する前は大勢の外国人観光客も訪れていた。
 最高級茶の一つとされる玉露の生産は、摘採の20日ほど前に、わらで作った「こも」と呼ばれる被覆を茶園に施す。太陽光を遮ることでうま味成分を守る。生産者の一人の宮崎久仁代さん(68)は「適切な時期に被覆を行い、収穫も手摘み中心。しっかり手間をかけ、良質な茶葉の収穫につなげている」と話す。
 
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 ただ同地区では生産者の高齢化が進み、収穫量が低下するなど玉露栽培は存続の危機を迎えている。今期の摘採は初めて摘み子のボランティア制度を活用し、地域住民らが手摘みを手伝った。地域ぐるみで伝統産業を守ろうと取り組みを広げている。

大旅籠柏屋 東海道の旅情今に

 旧東海道の宿場町だった岡部地区は、難所の一つ「宇津ノ谷峠」を府中(静岡)側から越えた最初の宿として栄えた。規模が大きく地域屈指の名家だった「柏屋(かしばや)」は「大旅籠(はたご)」と呼ばれた。

東海道の旅情を今に伝える「大旅籠柏屋」。弥次さん、喜多さんの人形が出迎えてくれる
東海道の旅情を今に伝える「大旅籠柏屋」。弥次さん、喜多さんの人形が出迎えてくれる
 母屋は火事により2度焼失していて、現存する建物は江戸時代後期の1836年に建てられたとされる。本座敷や家族の生活空間だった仏間などがある。奥の間では、当時の衣装の体験コーナーを設け、宿場町の様子を今に伝えている。
 2020年には、地域の歴史や文化をテーマでまとめて伝承・発信する文化庁の日本遺産に、東海道の旅情を伝える「弥次さん喜多さん、駿州の旅」が認定された。柏屋は構成文化財の一つで、館内には弥次さんと喜多さんの人形も設置している。館長の大石佳弘さん(63)は「江戸の風情が色濃く残る地域の歴史をどんどん発信していきたい」と言葉に力を込める。

初亀醸造 地域に根差した日本酒 

 岡部地区にある酒蔵「初亀醸造」は1636年創業で、現存する造り酒屋では県内最古。南アルプスの伏流水や、本県産の酒米「誉富士」を使用するなど地域に根差した日本酒生産を続ける。

 中でも純米酒「岡部丸」は岡部地区で栽培した誉富士など、水、米、酵母の全てが地元産の「地酒中の地酒」。同社は今後も地元の原料にこだわった酒造りを進めていく方針という。
 手掛ける日本酒の多くは辛口で、すっきりとした飲みやすさが特徴。16代目の社長の橋本謹嗣さん(68)は「静岡には多彩な食材がある。料理の味を引き立たせる風味を追求している」と話す。

藤枝市岡部地区とは

 藤枝市は静岡県の中央に位置し、南北に長い地形が特徴。東京と名古屋の中間にあるため古くから交通が発達し、東海道の交通の要衝として栄えた。現在の岡部地区は、東海道の宿場町の一つとして発展してきた旧岡部町。2009年1月1日、藤枝市と合併した。