スルガ銀行 “対立”の中、株主総会

 スルガ銀行は、筆頭株主の家電量販大手ノジマと経営再建手法を巡って対立が表面化する中、株主総会を沼津市内で開きました。両社の業務提携の行方や、今後の再建方法に注目が集まっています。これまでの経緯をまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・尾原崇也〉

「中期経営計画 着実に」 スルガ銀行社長、株主総会で発言 ノジマには触れず

 スルガ銀行は29日、株主総会を沼津市内で開いた。筆頭株主の家電量販大手ノジマ(横浜市)が経営再建を巡る対立から資本業務提携の解消に向けた協議を申し入れていて、嵯峨行介社長の発言が注目される。

スルガ銀行
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 株主総会では、今回の取締役選任議案に至った経緯について、スルガ銀とは異なる人事案がノジマ側から提出されていたことを認めた上で、指名報酬委員会と取締役会を経てスルガ銀の人事案を採用したと説明。松田清人取締役は「透明性の高い方法で、当社とノジマの双方の案を十分協議し、少数意見も加味しながら決定した」と述べた。嵯峨社長は「中期経営計画を着実に推進するための体制」と答えた。
 会場はシェアハウス問題の被害者らも詰め掛け、冒頭から立ち上がって抗議するなど物々しい雰囲気に包まれた。議長の嵯峨社長が静粛を求める場面もあった。
 スルガ銀とノジマを巡っては、シェアハウス問題の早期解決やコンプライアンス重視の組織改善を急ぐスルガ銀と、金融にインターネットや物販を融合させた新たなビジネスモデルの転換を目指すノジマとの間で対立が表面化した。
 5月には資本業務提携の解消に向けて協議を申し入れたノジマに対し、スルガ銀は同行副会長を務めていたノジマの野島広司社長が株主総会後に退任する人事を発表。直後に野島氏は株主総会を待たずに自ら副会長を辞任する対抗措置を取り、関係悪化が先鋭化している。
〈2021.6.29 あなたの静岡新聞〉 ⇒元記事

ノジマ社長、スルガ銀行副会長を総会前に辞任 退任案示した銀行へ対抗措置

 スルガ銀行筆頭株主の家電量販大手ノジマ(横浜市)は1日、野島広司社長(70)が同日付でスルガ銀の社外取締役副会長を辞任したと発表した。資本業務提携を結んでいる両社の経営方針を巡る対立が表面化し、スルガ銀は株主総会(29日開催予定)を受けて野島氏退任の人事案を示していたが、株主総会を待たずにノジマ側が関係解消を図った。

野島広司氏(ノジマのホームページより)
野島広司氏(ノジマのホームページより)
 野島氏の辞任で、ノジマの持分法適用関連会社からスルガ銀が除外となった。
 ノジマの広報担当者は「地域貢献の考え方や、新たなリテール(個人取引)商品の開発に対する方向性などで意見の相違があった」と説明。一方、資本業務提携の解消に向けた協議は継続中で、現時点でノジマが保有するスルガ銀株の売却などの動きはないとしている。
 スルガ銀は同日、野島氏の辞任届を受領したと発表した。担当者は「今後の協議に関しては真摯(しんし)に対応する」とした。
 ノジマは2019年10月、スルガ銀の創業家が保有していた全株式を取得し、筆頭株主になった。野島氏は昨年6月から、代表権のないスルガ銀の社外取締役と副会長に就任していた。
 〈2021.6.2 あなたの静岡新聞〉 ⇒元記事

シェアハウス問題で業績悪化 再建目指し2019年にノジマ、新生銀行と業務提携

 シェアハウスなど投資用不動産への不正融資で業績が悪化していたスルガ銀行は15日(※2019年5月15日)、新生銀行と家電量販店ノジマとそれぞれ同日付で業務提携に基本合意したと発表した。投資用不動産向け融資の全件調査(約3万7千件)の結果も公表し、不正行為が認められた物件数は7813件で、融資額は5537億円に上った。不動産業者が関与するなど「不正の疑いがある」ケースを含めると1兆円を超える。

不正行為が横行していた事実を説明するスルガ銀行の有国知男社長(右、当時)=沼津市
不正行為が横行していた事実を説明するスルガ銀行の有国知男社長(右、当時)=沼津市
 スルガ銀が同日発表した2019年3月期連結決算は不正融資に伴う貸倒引当金の計上が影響し、純損益が971億円の赤字だった。
  投資用不動産向け融資の全件調査では、不正が認められた融資のほか疑いがある融資は約860億円に上った。不正に関与したとして行員2人を新たに懲戒処分にした。さらに、行員の不正とは別に、不動産業者が頭金を「立て替えた疑いがある」ケースも約4300億円あると判明。全件調査を受け約9億円の貸倒引当金を追加計上した。
  新生銀行とは、住宅ローンなど個人向けローン、事業承継など法人取引分野での連携を進める。スルガ銀の株式を取得していたノジマとは、クレジットカード事業などを共同で取り組んでいく。
  沼津市内で記者会見した有国三知男社長は両社との業務提携について「新生銀の個人向け融資事業のノウハウと融合すれば新しい物が生み出せる。ノジマとも新しいことが実現できる」と期待感を示した。
  18年10月時点で488億円とされた創業家関連企業への融資残高について有国社長は、保有不動産売却により455億円に減ったと説明。創業家の保有株式取得については「(スルガ銀が)買い取ることも選択肢の一つ」と述べた。

  【解説】経営足元 盤石と言えず 信用補完へ資本提携模索
  投資用不動産の不正融資で経営が悪化していたスルガ銀行は立て直しに向け、新生銀行、ノジマと業務提携を結ぶことになった。投資用不動産融資は全件調査を終え、弁護士らでつくる委員会の承認を受けて5月下旬には再開する方針だ。経営立て直しへと大きく動きだすものの、足元が盤石とは言えず、再建に向けた課題は少なくない。
  15日に発表した2019年3月期連結決算では、20年3月期の業績予想では105億円の純利益を予想する。個人ローンの貸出金残高で確保できると見据えた。また、今回の両社との締結は業務提携にとどまり、資本提携に至っていない。有国三知男社長は信用を補完するための資本提携は「企業価値に資するものであれば排除しない」と他の金融機関などとの連携も模索する考えを示す。創業家が保有する株式の売却を含め、創業家との決別など先行きを見通せない課題も多い。

  新生銀行 1998年に経営破綻し一時国有化された日本長期信用銀行が前身。2000年に現在の行名に改称し、04年に普通銀行に転換した。連結ベースで19年3月末の預金残高は5兆9221億円、貸出金残高は4兆9868億円。
  ノジマ デジタル家電や携帯電話に代表されるキャリアショップ、インターネット事業などを手掛ける大手家電量販店。設立は1962年。2019年3月期連結決算の売上高は5130億円、純利益は146億8000万円。総店舗数は851店舗。
 ■元記事=2019年05月16日付静岡新聞朝刊「スルガ銀 業務提携で再建へ 新生銀、ノジマと合意 不正融資は1兆円超 」

ノジマとの連携「中身、協議中」 スルガ銀行 中期計画に具体的な内容盛り込まず

 スルガ銀行が14日(※2019年11月14日)発表した2019年9月中間連結決算は、投資用不動産向けの不正融資問題に伴って前年同期に計上した多額の貸倒引当金などの与信費用が減少し、経常損益は200億9900万円の黒字(前年同期は857億2600万円の赤字)、純損益159億7200万円の黒字(同1007億8500万円の赤字)と2年ぶりに黒字回復した。

記者会見で質問に答えるスルガ銀行の有国三知男社長(手前右、当時)と嵯峨行介副社長(左、現社長)=沼津市
記者会見で質問に答えるスルガ銀行の有国三知男社長(手前右、当時)と嵯峨行介副社長(左、現社長)=沼津市
  経常収益は貸出金利息の減少を主な要因に、前年同期比14・6%減の640億6200万円にとどまった。
  単体は、本業の収益力を示すコア業務純益が33・1%減の198億2400万円。与信費用は94・4%減の66億8500万円で、内訳は一般貸倒引当金繰入額が16億3900万円、不良債権処理額が50億4600万円。
  期中平均の貸出金残高は個人ローンの減少などで12・6%減の2兆7393億6900万円、預金残高は18・7%減の3兆789億9900万円だった。9月末の不良債権残高(リスク管理債権ベース)は3989億9100万円。連結自己資本比率は3月末比0・43ポイント上昇の9・33%。
  20年3月期の業績予想を修正し、連結の経常利益を前回発表(5月)比43・7%増の230億円、純利益を47・6%増の155億円とした。経常収益は1165億円を見込む。
  中間配当は内部留保を充実して財務体質を強化するため、無配とすることを決めた。期末配当は未定とした。

  【解説】中期計画 経営再建 道半ば
 スルガ銀行が14日発表した中期経営計画は、法令順守やリスク管理強化による再出発の決意が強くにじむ。2019年9月中間連結決算も経常収益、純利益ともに黒字になり、業績の回復傾向をうかがわせる。有国三知男社長は「再建の道筋が固まったと考えていない」とし、計画を着実に実行すると強調した。
  計画は、コンプライアンスの徹底や市場性運用によるリスク分散の推進を再建の柱に据えた半面、投資用不動産ローンはニーズが根強く存在するとして、引き続き収益の核に位置付けた。こうしたリテール(個人取引)に特化した経営姿勢が、シェアハウスを巡る不正融資問題を起こす企業体質を生んだのではないかとの指摘に、有国社長は「投資用不動産ローンの全てが悪いわけではない。質の転換を図ってリスクを下げていく」とした。
  筆頭株主となったノジマとの連携は「中身を協議している」と述べるにとどめ、計画にも具体的内容は盛り込まなかった。計画策定を手掛けた嵯峨行介副社長も今後3年間は基礎固めの段階で、再建は道半ばであることを示唆した。
  計画は信用回復を第一に図っていく姿勢を鮮明に打ち出した。今後は有国社長の言葉通り、計画を着実に実行し、問題を二度と起こさない企業への転換が求められる。
■元記事=2019年11月15日付静岡新聞朝刊「スルガ銀 2年ぶり黒字 9月中間 コア業純は33.1%減」