聖火リレー 1日目ダイジェスト

 東京五輪聖火リレーは25日まで、静岡県内22市町25区間でリレー中。96人のランナーがトーチをつないだ初日23日の様子をダイジェストでお伝えします。
 読む・知る・学ぶ…記事まとめ〈知っとこ〉は毎日4回更新を予定しています。次回は午後3時ごろ、おすすめ記事4本をまとめてお届けします。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・松本直之〉

注目を集めた鉄道区間 天浜線/西気賀→気賀駅

 全国的にも珍しい鉄道区間として注目を集めた天竜浜名湖鉄道の西気賀(浜松市北区)、気賀駅(同区)周辺には、聖火リレーをひと目見ようと地元住民が詰めかけた。

駅周辺で出迎えた観客に手を振って応える聖火ランナーの太田さん=浜松市北区細江町の気賀駅
駅周辺で出迎えた観客に手を振って応える聖火ランナーの太田さん=浜松市北区細江町の気賀駅
 当日限定のヘッドマークを装着した特別列車が、午前9時26分ごろに西気賀駅を出発。聖火は乗車前にトーチからランタンに移し替えられた。ホームでは天竜高吹奏楽部員約20人が「パプリカ」を演奏して出発に花を添えた。小林莞爾部長(17)は「練習通りの演奏で無事に送り出すことができ、一生の思い出になった」と喜んだ。
 同乗した同鉄道社員によると、ランナーの太田小夏さん(34)は車内から沿道に手を振るなど、リラックスした様子だったという。気賀駅到着後は、観客の声援に笑顔で応え、リレーをつないだ。
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聖火を乗せ気賀駅に向かう天竜浜名湖鉄道の特別車両

 松井宜正社長は「ランナーとともに無事に役目を果たすことができてほっとしている。全国でも数例しかない鉄道でのリレーに携われて光栄」と話した。
 気賀駅構内の花壇に、「WELCOME」の花文字を造ってランナーを出迎えた上町青葉会の宮野剛さん(77)=同区細江町=は「一瞬のことで目に留まったかは分からないが、おもてなしの気持ちが伝わっていればうれしい」と語った。
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静岡県らしい茶畑区間にもドラマが

 静岡県を象徴するような美しい緑が広がる島田市の茶畑区間。高橋春華さん(25)=同市=は利き手ではない左手でトーチを掲げ、聖火を受け継いだ。5年前の6月23日、仕事中の事故が原因で右腕の肘下を切断する手術を受けた。つらい日々をそばで支えてくれた人たちに「感謝の思いと元気な姿を届けよう」と最高の笑顔で大舞台を駆け抜けた。

茶畑の一本道を走る聖火ランナー=23日午後4時すぎ、島田市(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
茶畑の一本道を走る聖火ランナー=23日午後4時すぎ、島田市(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
 高校卒業後に就職し、「これから」という矢先の事故だった。周囲の目線に苦しみ、自然と右腕を隠すようになった。前を向くきっかけをくれたのが、障害者同士がつながる会員制交流サイト(SNS)。同じ悩みを抱えながら、ありのままの姿で何事にも挑戦する仲間たちの姿勢が励みになった。「今度は自分が走ることで勇気や希望を届けたい」とランナーに応募した。
 「これまでのさまざまな思いが募り、トーチに重みを感じた」とかみしめる高橋さん。「でも、ここがゴールじゃない。勇気を持って前に進んでいきたい」。晴れやかな気持ちで、新たなスタートを切った。
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トーチを手に茶畑が広がる中を走る高橋春華さん=島田市内
 

静岡市内では「密」も 声援控え拍手で盛り上げ

 各地の沿道には多くの観衆が詰め掛け、開催に向けた雰囲気を盛り上げた。場所や時間帯によっては「密」な状態になったものの、声援を控えるなどして静かにランナーを見守った。

聖火リレーを見ようと大勢の人が集まった=23日午後、静岡市葵区
聖火リレーを見ようと大勢の人が集まった=23日午後、静岡市葵区
 「密にならないように」「拍手で応援を」-。午後7時ごろ、初日の最終区間となった静岡市葵区の中心街にスタッフの声が響いた。会社員や学生らの帰宅時間とも重なり、一部の交差点ではランナーを迎える人々の姿が幾重にも連なった。トーチを手にした走者が現れると、手を振ったり、スマートフォンで撮影したりする人の姿が目立った。
 1964年の東京五輪聖火リレーで写真を撮った同市駿河区の竹下英男さん(86)は、人混みを避けてカメラを構えた。「コロナがなければもっと人が集まったと思うが、中心市街地で聖火リレーが実施できたことは意義深い。2度も見られて幸せ」とシャッターを切った。同市を走った渡辺翼さん(36)は「思っていたよりたくさんの人がいて驚いた。五輪の力を感じた」と振り返った。
 掛川市でも中心商店街に多くの見物客が集まり、歩道に人垣ができたものの、声援は抑え、拍手でランナーにエールを送った。走者を務めた生熊伸羊さん(71)は「コロナの心配はあるが、ランナーとしては大勢の人の前で走れてうれしかった」と口にした。
 開幕まで残り30日を切った東京五輪。県オリンピック・パラリンピック推進課の横井志伸課長は「交通渋滞などの課題はあったが、初日は大きな事故なく聖火を運ぶことができた」とした上で、「五輪の機運醸成を図るとともに、自転車ロードレースなどの沿道対策にも生かしたい」と話した。

ラストランナー10人 熱い思い胸に駆ける

 初日のゴール地点、静岡市葵区の駿府城公園に聖火を運んだのは静岡県内出身の若者によるグループランナー。学術、芸術、スポーツなどの道で活躍する10人が、五輪への熱い思いを胸に県都を駆けた。

静岡県内聖火リレー1日目の最終ランナーとして聖火皿に点火する岡本優真さん=23日午後7時46分、静岡市葵区の駿府城公園
静岡県内聖火リレー1日目の最終ランナーとして聖火皿に点火する岡本優真さん=23日午後7時46分、静岡市葵区の駿府城公園
 「お世話になった人たちに恩返しを」。掛川西高在学時に科学研究の世界大会で入賞し、走者に選ばれた菊川市出身の岡本優真さん(19)は、ともに研究に励んだ同級生塚本颯さん(19)と一緒に、支えてくれた人たちへの感謝を込めて走った。グループ代表として聖火皿に火をともす大役を務め「トーチの重みを感じた」と五輪の歴史をかみしめた。
 競輪選手を目指し、日々練習を積む静岡市駿河区出身の日高裕太さん(19)は「一生忘れられない経験になった」と感無量の様子。コロナ禍の五輪に賛否があることを理解しつつ「選手には自分の目標に向かってまっすぐ進んでほしい」とエールを送った。
 静岡聴覚特別支援学校に通う阿部圭佑さん(14)は「障害者でもできることがある。たくさんの人がいてびっくりしたけど楽しく走れた」と充実感をにじませた。
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1日目の聖火リレーが終わり、聖火皿に移された聖火=23日午後、静岡市葵区の駿府城公園