聖火リレー 1日目ダイジェスト
東京五輪聖火リレーは25日まで、静岡県内22市町25区間でリレー中。96人のランナーがトーチをつないだ初日23日の様子をダイジェストでお伝えします。
読む・知る・学ぶ…記事まとめ〈知っとこ〉は毎日4回更新を予定しています。次回は午後3時ごろ、おすすめ記事4本をまとめてお届けします。
〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・松本直之〉
注目を集めた鉄道区間 天浜線/西気賀→気賀駅
全国的にも珍しい鉄道区間として注目を集めた天竜浜名湖鉄道の西気賀(浜松市北区)、気賀駅(同区)周辺には、聖火リレーをひと目見ようと地元住民が詰めかけた。

同乗した同鉄道社員によると、ランナーの太田小夏さん(34)は車内から沿道に手を振るなど、リラックスした様子だったという。気賀駅到着後は、観客の声援に笑顔で応え、リレーをつないだ。

松井宜正社長は「ランナーとともに無事に役目を果たすことができてほっとしている。全国でも数例しかない鉄道でのリレーに携われて光栄」と話した。
気賀駅構内の花壇に、「WELCOME」の花文字を造ってランナーを出迎えた上町青葉会の宮野剛さん(77)=同区細江町=は「一瞬のことで目に留まったかは分からないが、おもてなしの気持ちが伝わっていればうれしい」と語った。

静岡県らしい茶畑区間にもドラマが
静岡県を象徴するような美しい緑が広がる島田市の茶畑区間。高橋春華さん(25)=同市=は利き手ではない左手でトーチを掲げ、聖火を受け継いだ。5年前の6月23日、仕事中の事故が原因で右腕の肘下を切断する手術を受けた。つらい日々をそばで支えてくれた人たちに「感謝の思いと元気な姿を届けよう」と最高の笑顔で大舞台を駆け抜けた。

「これまでのさまざまな思いが募り、トーチに重みを感じた」とかみしめる高橋さん。「でも、ここがゴールじゃない。勇気を持って前に進んでいきたい」。晴れやかな気持ちで、新たなスタートを切った。

静岡市内では「密」も 声援控え拍手で盛り上げ
各地の沿道には多くの観衆が詰め掛け、開催に向けた雰囲気を盛り上げた。場所や時間帯によっては「密」な状態になったものの、声援を控えるなどして静かにランナーを見守った。

1964年の東京五輪聖火リレーで写真を撮った同市駿河区の竹下英男さん(86)は、人混みを避けてカメラを構えた。「コロナがなければもっと人が集まったと思うが、中心市街地で聖火リレーが実施できたことは意義深い。2度も見られて幸せ」とシャッターを切った。同市を走った渡辺翼さん(36)は「思っていたよりたくさんの人がいて驚いた。五輪の力を感じた」と振り返った。
掛川市でも中心商店街に多くの見物客が集まり、歩道に人垣ができたものの、声援は抑え、拍手でランナーにエールを送った。走者を務めた生熊伸羊さん(71)は「コロナの心配はあるが、ランナーとしては大勢の人の前で走れてうれしかった」と口にした。
開幕まで残り30日を切った東京五輪。県オリンピック・パラリンピック推進課の横井志伸課長は「交通渋滞などの課題はあったが、初日は大きな事故なく聖火を運ぶことができた」とした上で、「五輪の機運醸成を図るとともに、自転車ロードレースなどの沿道対策にも生かしたい」と話した。
ラストランナー10人 熱い思い胸に駆ける
初日のゴール地点、静岡市葵区の駿府城公園に聖火を運んだのは静岡県内出身の若者によるグループランナー。学術、芸術、スポーツなどの道で活躍する10人が、五輪への熱い思いを胸に県都を駆けた。

競輪選手を目指し、日々練習を積む静岡市駿河区出身の日高裕太さん(19)は「一生忘れられない経験になった」と感無量の様子。コロナ禍の五輪に賛否があることを理解しつつ「選手には自分の目標に向かってまっすぐ進んでほしい」とエールを送った。
静岡聴覚特別支援学校に通う阿部圭佑さん(14)は「障害者でもできることがある。たくさんの人がいてびっくりしたけど楽しく走れた」と充実感をにじませた。
