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大往生 ハシビロコウの「ビル」

 伊東市富戸の伊豆シャボテン動物公園で飼育され「動かない鳥」として愛されたハシビロコウの「ビル」。昨年8月に推定50歳以上で天寿を全うしました。長年雄だと思われていましたが、死後の解剖で雌だと判明するなど、今なお話題を提供してくれているビルにまつわるエピソードを集めました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉

「生前の姿に思いはせて」 長年暮らしたバードパラダイスに剥製展示

 伊東市富戸の伊豆シャボテン動物公園はこのほど、昨年8月に世界最高齢とされる推定50歳以上で死んだハシビロコウ「ビル」の剝製の展示を始めた。長年暮らしたバードパラダイスに設けている献花コーナーで、生前と変わらない堂々とした姿を見せている。

生前のハシビロコウの「ビル」
生前のハシビロコウの「ビル」
 ビルは1971年にスーダンから来日。進化生物学研究所(東京)で飼育された後、81年に来園した。野生では餌の魚が顔を出すのをじっと待ち続けることから「動かない鳥」として人気が高まったハシビロコウの象徴的存在だった。当初は雄として来園したが、死後の解剖で雌と判明した。

 
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献花コーナーに展示されたハシビロコウ「ビル」の剥製(左)=伊東市富戸の伊豆シャボテン動物公園
 
 剝製の展示は来園40周年に当たる4月28日に始めた。中村智昭園長は「ビルが戻ってきたなと感じた。来園者の方々には生前の姿に思いをはせてもらえれば」と話した。
 ハシビロコウの飼育数は世界でも40~50羽とされ、剝製は非常に貴重という。骨格はかつて暮らした同研究所に収蔵された。

■元記事=ハシビロコウ「ビル」剥製に 伊東・伊豆シャボテン動物公園「思いはせて」(「あなたの静岡新聞」2021年5月4日)    

雄だと思われていたビルは「おばあさん」でした 死後解剖で判明

 伊東市富戸の伊豆シャボテン動物公園は28日(※2020年8月28日)、世界最高齢の推定50歳超の大往生を遂げたハシビロコウのビル(6日死亡)について、性別が雌だったと発表した。1981年の来園以来、雄として飼育され、晩年は「ビルじいさん」などと親しまれてきたが、死後の解剖で雌だったことが判明したという。

実は雌だったことが死後判明したハシビロコウのビル=伊東市富戸の伊豆シャボテン動物公園(同園提供)
実は雌だったことが死後判明したハシビロコウのビル=伊東市富戸の伊豆シャボテン動物公園(同園提供)

 ハシビロコウは、野生下で餌の魚が浮かび上がるのを数時間にわたって待ち続けることから「動かない鳥」として人気が集まり、最長老のビルはその象徴的な存在だった。
 同園によると、ビルは81年4月、ほかの雌と“つがい”で来園。40年にわたり雄とされてきた。ハシビロコウは外見上、雄のほうが平均的に大きいこと以外に雌雄の差がないが、自由に動き回るビルを捕獲し遺伝子検査のために採血することは体に負担を掛けるとともに、飼育員との信頼関係を損ねるとして性別判定をしていなかった。
 中村智昭園長は「人懐っこさや巣作りの枝をくわえて見せてくるなど、雌のようなしぐさはあった。ファンの皆さまを驚かせてしまったかもしれないが、ビルの存在自体は何も変わらない」と話した。

■元記事=ビル「おばあさん」だった 伊東のハシビロコウ、死後解剖で判明(「あなたの静岡新聞」2020年8月29日)  

飼育員に見守られ静かに息を引き取る 涙を流す来園者も 

 伊東市富戸の伊豆シャボテン動物公園で飼育され「動かない鳥」として愛されたハシビロコウ「ビル(雄)」が6日(※2020年8月6日)、死んだ。同園によると、1971年の来日時にはすでに成鳥だったため、推定年齢は50歳以上で世界最高齢。同園は当面の間、献花台を設ける。

多くのファンに愛されたハシビロコウのビル(伊豆シャボテン動物公園提供)
多くのファンに愛されたハシビロコウのビル(伊豆シャボテン動物公園提供)
 ビルはスーダンから来日後、研究施設で飼育された後、81年に来園。野生では川の中で餌の魚が浮かび上がるまで数時間も待ち続けることから、動かない鳥として注目されたハシビロコウの人気を象徴する存在だった。
 同園によると、ビルは数日前から餌を食べなくなるなど衰弱。同日午前に飼育員にみとられ静かに息を引き取ったという。近縁の鳥の寿命は35年とされ、記録的な“大往生”だった。中村智昭園長は「ハシビロコウという鳥を広めた立役者で、園内の他の鳥からも一目置かれる風格があった。ありがとうと伝えたい」としのんだ。
 献花台には早くも熱烈なファンが参列。神戸市から伊東市に移住し、週3~4回は来園するという女性(56)は「もう一度会いたかった。天国で幸せになって」と涙を流した。

■元記事=世界最高齢ハシビロコウのビル命尽きる 伊豆シャボテン動物公園(「あなたの静岡新聞」2020年8月7日)  

住まいは1981年完成 ビルはその頃からいたんだね【昔の紙面から】

 伊東市富戸、伊豆シャボテン公園に日本一の大フライング・ケージを備えた珍鳥の楽園「バード・パラダイス」が完成、1日から一般入園者に無料開放される。面積6600平方メートル以上のナイロン・ネットで造った巨大な“鳥かご”のなかで各国から取り寄せた鳥の生態を観察できる施設で、同公園では新しい目玉商品として今後PRに力を入れていく計画だ。

伊豆シャボテン公園に登場した珍鳥の楽園「バード・パラダイス」
伊豆シャボテン公園に登場した珍鳥の楽園「バード・パラダイス」
 同公園内マグノリアの谷約3千平方メートルの自然を生かして造られた楽園には、雑木林の間を縫うようにして延長700メートルの遊歩道が通っているほか、水鳥用の池2カ所、滝1カ所が完備。また、植物も楽園と呼ぶにふさわしく洋ラン、アナナス類をいたるところに植栽し、雰囲気を盛り上げている。
 この施設の特色はなんといっても巨大なネットによって作り出した空間の広さだ。支柱として30本の鉄パイプを使ってあり、ネットの高さは地上から約15メートルの位置を確保しているため野生の鳥でも比較的自由に飛ぶことができる。
 生息する鳥は27種類、250羽。アフリカ、中南米、オーストラリア、ヨーロッパなどに分布する珍しい鳥ばかりで特に、ナイル川上流にしかいないといわれるシュービルストーク(※和名・ハシビロコウ)は民間施設では日本で初めて公開される貴重な鳥。このほかヘビクイワシ、サケビドリ、ショウジョウトキ、ホオカザリヅルなどがそれぞれ生活区域を決めながら共存している。
■元記事=世界の珍鳥集めた日本一の“鳥かご” 伊豆シャボテン公園に登場(静岡新聞1981年5月1日朝刊、表記はすべて当時)