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介護現場にエールを

 コロナ禍により職員の行動制限など厳しい職場環境を強いられている介護現場。それでも、前を向き、新たな取り組みを始める人々がいます。地域による支え合いの動きもあります。介護現場での心温まるエピソードを集めました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉

職員の輝く瞬間パチリ 浜松・小栗さん、寄り添う笑顔にフォーカス

 浜松市北区の介護福祉士小栗啓吾さん(42)が、介護職員が働く姿を撮影する「介護写真家」として活動している。新型コロナウイルス禍で行動制限が一段と厳しい職場ながらも、利用する高齢者らに笑顔で寄り添う職員を写し、介護の仕事の魅力を伝えようと励んでいる。

  4月下旬、同市中区のデイサービス施設で高齢女性に優しく語りかけながら手をもみほぐす介護職員に、少し離れた位置からレンズを向けた。「空気のような存在になることで被写体の自然な笑顔を引き出したい」。撮影は4時間、500回以上シャッターを切ることも。施設長の川端一弘さん(50)は「小栗さんの写真は自分たちが主役になったような気になれる」と喜ぶ。
  介護福祉士の資格を20代前半で取得し、15年ほど市内の施設で働いた小栗さん。「自分にしかできないことで介護への理解を広めたい」と趣味のカメラと本業を掛け合わせた活動を始めた。当初、施設側の反応は芳しくなかった。小栗さんは有名写真家の写真集を読み込み、プロカメラマンの指導で腕を磨くうち、プロフィル写真なら撮らせてもらえる施設もできた。利用者と接する姿も撮影が許されるようになり県外でも活動を広げたころ、感染が拡大した。
  重症化リスクの高い利用者と関わる仕事のため、行動の制限はひときわ大きい。職場では利用者が家族と面会できず、寂しがる姿にも心を痛める。「それでも介護士はみんな、利用者の皆さんに安心してもらおうと笑顔で接している」。マスク越しでも穏やかな表情が伝わる介護職員の写真には撮影した小栗さんの思いが表現されている。小栗さんは「介護は自らも輝ける仕事だと伝えたい」と語る。

 
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小栗さんが撮影した介護職員の写真
 
  <メモ>小栗さんは5月6~28日、写真展を浜松市浜北区の浜松いわた信用金庫きらりタウン支店で開く。介護職員が働く姿を捉えた約20枚を展示する。土日祝日は休み。
■元記事=介護職、輝く瞬間パチリ 浜松・小栗さん、寄り添う笑顔にフォーカス(「あなたの静岡新聞」2021年5月5日)

介護職の魅力を伝えたい 「介護写真家」小栗啓吾さん

 静岡県内外の介護施設で働く人たちを撮影する「介護写真家」として活動している。本業は介護福祉士で、浜松市内の施設で働く。厳しい仕事だと敬遠されがちな介護職の魅力を伝えようと励んでいる。

小栗啓吾さん
小栗啓吾さん

 ―介護写真家として活動しようと思ったきっかけは。
 「市内の専門学校に通って20代前半で資格を取り、15年ほど働いたときに、介護の魅力を自分ならではのやり方で多くの人に伝えたいと思うようになった。写真については専門的に学んだわけではない。有名な写真家の写真集を読み込んだり、プロのカメラマンに教えを請うたりして腕を磨いた。介護の仕事に理解を深めてもらうだけでなく、被写体になった介護職員が私の撮った写真を見返したときにまた頑張ろうと思えるような、人を励ませる作品を表現したい」
 ―介護の仕事の魅力とは。
 「高齢の利用者と話すのは楽しい。おむつ交換の作業を汚いと思う人もいるのだろうが、手袋をはめて行うことだし、洗えば平気だ。介護は利用者や家族ら多くの人に喜ばれる仕事だと思う。介護職員の輝きを写真で表現したい。最近は新型コロナウイルスの影響で職員もマスクをしているが、よく注意すれば穏やかないい表情が写せるはずだ」
 ―撮影時に気を付けていることは。
 「過剰な演出はせず、自然な表情でその人の最高の瞬間を切り取ろうという気持ちで臨んでいる。具体的には、離れた位置で望遠レンズを構える。カメラの設定は一瞬を逃したくないので自動にする。時には4時間近く施設にいて、500枚以上の写真を撮ることもある。撮れた画像もなるべく調整はせず、明度を上げる程度にとどめている」
 ―介護の課題についての考えは。
 「現在は新型コロナウイルスの感染拡大で、家族との面会が制限されていて利用者にとってもつらい状況にある。職員としては消毒の徹底といった介護に当たる際の注意事項が増えたし、県境をまたぐ移動の禁止などの行動制限もある。こうした中では難しいかもしれないが、感染が収まってきたら施設はコロナ前よりも地域や企業と接する機会を増やしてみてはどうか。介護を受ける人たちや介護職員に対する社会の理解が深まるきっかけになると思う」
 おぐり・けいご 県内の高校を卒業。浜松市内のホームセンターなどで働いた後、介護福祉士の資格を取得した。同市浜北区出身、42歳。
■元記事=介護職の魅力、写し取る 「介護写真家」小栗啓吾さん(「あなたの静岡新聞」2021年5月2日)

家でぜいたく楽しんで 職員ねぎらう支援企画 写真コンテストも 藤枝の特養

 コロナ禍でさまざまな行動制限を強いられる職員をねぎらうため、藤枝市大東町の特別養護老人ホーム「愛華の郷」が、家庭の食事でちょっとしたぜいたくを楽しんでもらう支援企画を実施した。職員に1万円ずつ支給し、それを原資に購入したテークアウト料理や食材の写真を披露し合うコンテスト。感染症の収束が見通せない中での施設側からの贈り物に、職員たちは「息抜きになった」「家族も喜んでくれた」などと笑顔を見せた。

ロビーの壁に貼り出されたちらしずしやカニなどの写真。職員は施設からの支援金で料理や食材を購入した=藤枝市の「愛華の郷」
ロビーの壁に貼り出されたちらしずしやカニなどの写真。職員は施設からの支援金で料理や食材を購入した=藤枝市の「愛華の郷」
  「こんな時だからこそ遊び心のある企画にしたかった」と語るのは、発案した阿井孝訓施設長(59)。支援金の対象は介護や事務職などの全職員約100人。クリスマスや正月を見据えて昨年12月中旬に支給した。年明けに施設のロビーに写真を貼り出すと、カニや伊勢エビ、すし、すき焼き、うなぎ、ケーキなど、壁一面が色とりどりに彩られた。
  職員は重症化リスクの高い高齢者と接する機会が多い。勤務中だけでなく私生活でも感染対策により神経質になり、外食もままならない。阿井施設長は「施設の安全は各職員の自己犠牲の上で成り立っている。家族にも苦労をかけているはずなので、報いることができれば」と話す。
  貼り出した写真を基に、職員投票によるコンテストを行った。最優秀賞には、焼津市の有名店でちらしずしの大皿を購入した介護福祉士の川口大輔さん(36)=島田市=が選ばれた。価格はちょうど1万円だったといい、「ずっと食べたいと思っていて、支援金が後押しになった。子どもの大好物で、すぐに平らげてしまった」と目を細めた。
■元記事=家食で ぜいたく楽しんで 職員ねぎらい支援金 藤枝の特養「愛華の郷」(静岡新聞2021年3月2日夕刊、肩書など表記はすべて当時)

クラスター発生施設に寄せ書きや食料品 支え合いの輪広がる 西伊豆

 新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した西伊豆町の介護老人保健施設に、励ましの寄せ書きや飲食料品など心温まる贈り物が多数寄せられている。クラスター発生から約1カ月半が経過する中、こうした支援が日々奮闘する職員を支え、施設では収束に向かっている。

施設を応援しようと、施設職員(左)に支援品を届ける住民ら=西伊豆町
施設を応援しようと、施設職員(左)に支援品を届ける住民ら=西伊豆町
  支え合いの輪は町内外に広がり、これまでに個人や団体からさまざま支援があった。住民有志でつくる「西伊豆町災害ボランティアコーディネーター連絡会」は2月から、手作りのおにぎりを届ける活動を毎日続けている。
  仁科認定こども園(同町)の園児からは千羽鶴が贈られた。
  クラスター確認直後、施設には誹謗(ひぼう)中傷の電話が複数寄せられた。施設の男性事務長は「苦しい時期もあったが、多くの励ましのおかげで何とかやってこられた」と感謝する。
  施設は2日から新規感染者が出ていない状況。今後の検査次第で近いうちに終息宣言を出せる見通しという。(※施設は3月16日に感染終息を発表)
■元記事=西伊豆・クラスター発生1カ月半 寄せ書き、おにぎり… 町内外に「支え合いの輪」 施設事務長「励ましに感謝」-新型コロナ(静岡新聞2021年3月13日朝刊、肩書など表記はすべて当時)