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コロナ時代 商売の工夫さまざま

 新型コロナウイルスは「第4波」襲来が懸念され、感染症対策に予断を許さない状況が続いています。経済界でも苦しい状況が続く中、「非対面」や「オンライン」など新しい様式を導入し、難局を乗り切ろうとする静岡県内の企業・事業所の動きを紹介します。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・尾原崇也〉

函南の洋菓子店、ケーキ自販機導入 非対面で販売 父の介護と両立も

 函南町柏谷の洋菓子店「ケーキ・デポ」は、非対面で購入できるケーキの自動販売機を導入した。1人で店を切り盛りしながら父の介護も行う野田孝子さん(62)が、効率よくお客に商品を提供するために考えた。新型コロナウイルスの影響で人との接触に抵抗感が広がる中、時代と身の丈に合った売り方を模索している。

対面せずにケーキが購入できる自動販売機=函南町柏谷のケーキ・デポ
対面せずにケーキが購入できる自動販売機=函南町柏谷のケーキ・デポ
 35年前に洋菓子の道に入り、三島市でケーキ店のオーナーシェフも務めた。東京のホテルでパティシエとして働いていた2008年、両親の介護のために函南町に戻り、自宅を改装して店をオープンさせた。空いた時間で商品を作るため、受注は全てオーダーメード。アレルギーを持つお客の要望にも細かく応えてきた。
 認知症を患っていた母が3年前に亡くなり、今はベッドから起き上がれない父を介護している。手を離せないこともあり、接客しながら店に立つのは難しい。そこで思いついたのが自動販売機。新型コロナ対策として県の持続化補助金も申請し、3月から店の駐車場に両替機とともに設置している。
 小麦粉を使わないグルテンフリーのケーキや焼き菓子が並び、500円玉を入れて購入する。アレルギーの原因となる使用食材も表示され、事前に注文した品も自販機から受け取れる。野田さんは「コロナで接触を避けるのが普通になったことも導入のきっかけになった。工夫しながらできることを続けたい」と話した。
 (2021/04/05)

静岡の味、農家がネットで生配信 ライブコマース

 焼津市を拠点にライブ配信アプリを運営するマイスター社が、静岡県内農家を配信者に取り込み、需要を喚起している。インターネットの生中継で商品を売る「ライブコマース」の機能を活用。新型コロナウイルスの流行で「巣ごもり消費」が伸びる中、生産者と消費者をつなぐ新たな手法として注目を集める。

ネットの生中継でイチゴを紹介する藤田由香さん=2020年12月、牧之原市の藤田農園
ネットの生中継でイチゴを紹介する藤田由香さん=2020年12月、牧之原市の藤田農園
 「新鮮でとってもおいしいです」。2020年12月、牧之原市片浜のイチゴ農家「藤田農園」の作業場で、藤田由香さん(35)がスマートフォンに向かって話し掛けた。同社のアプリ「LIVE812(ライブハチイチニ)」で、イチゴの箱詰めの様子をほぼ毎日生中継している。
 藤田さんが、ライブ配信を行う「ライバー」になったのは同月から。これまで市場に出荷したり、オンラインギフトで百貨店に卸したりしていたが、コロナで売れ行きが不安になった。新たな販路を模索する中で、同社からライブコマース活用の提案を受けた。
 視聴者は商品が気に入れば、画面上の「商品一覧」のアイコンを押して購入する。収穫したその日のうちに発送する新鮮さや、藤田さんの明るい人柄が受け、全国の視聴者から連日注文が入る。藤田さんは「リスナー(視聴者)の質問にその場で答えられるので、味の魅力や栽培のこだわりを伝えやすい。消費者をすぐ近くに感じる」と手応えを語る。
 同社によると、同アプリのライバーは全国に約2千人。このうち農家は全体の5%に当たる約100人で、県内の配信者も多いという。広報部の山口明日実さん(32)は「配信内容について社内で厳正な審査があり、リスナーの信用につながっている」と話す。
 浜松市南区で白ネギなどを栽培する農家杉山連さん(29)も1月上旬から同アプリでライブコマースを始めた1人。「生産者の思いを直接伝えられるため、買う側も思い入れを持って購入してもらえるのでは。コロナの中で将来性を感じる販売方法」と指摘する。

 ■移住後押しも
 ライブ配信アプリ「LIVE812」を運営するマイスター社は焼津市栄町に本社を構え、2020年5月に事業を開始した。同社のスタジオを使用するライバー25人ほどが都市部から同市や静岡市に移住し、地域振興にも一役買っている。
 アイドルグループ「Sexy zone」に楽曲提供したこともある音楽家TAK(タク)さん(30)は昨年8月、家族3人で都内から静岡市に引っ越した。コロナ禍で仕事は自宅でもできるライブ配信中心になり、都内にいる理由が薄れた。「特にクリエイターの仕事は場所を選ばないことが多い。コロナをきっかけに地方への移住は加速するのではないか」と話す。
 (2021/01/25)

金融機関もオンライン活用 静岡銀と山梨中央銀、取引先の販路開拓支援 

 静岡銀行と山梨中央銀行が連携し、両行の取引先の販路拡大支援を強化している。新型コロナウイルスの感染拡大で集客イベントの開催が難しい中、オンライン形式の商談会を通じて県境を越えた事業者らとのマッチングの機会を提供する。静岡、山梨両県が進める地域経済交流を民間から後押しする狙いもある。

オンライン商談会で自社商品を売り込む静岡県内企業の担当者=10日、静岡市内
オンライン商談会で自社商品を売り込む静岡県内企業の担当者=10日、静岡市内
 10日にオンラインで開いた中日本高速道路のサービスエリア・パーキングエリアテナントとの個別商談会。静岡銀の取引先21社が参加し、ウェブ会議システムを使って茶やウナギ、菓子などをバイヤーに売り込んだ。
 水産加工品を手掛ける、まるかま静岡県水産(焼津市)の油井雅和さん(51)は「限られた時間の中でピンポイントに商品を紹介できた。事前にサンプルを送っていたため試食もしてもらえた」と手応えを口にした。
 商談会は両行の包括業務提携の一環で、コロナ禍で対面での取引が難しくなる中、売り上げ拡大の一助にしてもらおうと企画した。同様の商談会は2月にも実施し、計49社が137の商談を行った。
 あらかじめテナント側から「車内で手軽に食べられる」「自家消費向け」といった具体的な要望を聞き取り、効率的な商談につながるよう工夫した。実際、複数の商談が成約に至り、マッチングした企業間でさらに商談を詰めているケースもあるという。静岡銀地方創生部の担当者は「今後は両県のスーパーマーケットとの商談会も開催し、取引先に販路拡大の機会を提供したい」と意気込む。
 静岡、山梨両県は「バイ・ふじのくに」と銘打ち、互いの特産品を購入し合う取り組みを展開している。両行はこうした動きにも呼応し、中部横断自動車道の全線開通を見据えて人やモノの交流促進を図る。
 (2021/03/26)

静岡県は「新しい働き方」支援 2021年度予算

 静岡県は10日、2021年度当初予算案を発表した。一般会計の総額は川勝平太知事が就任して以降で最大の1兆3094億円。20年度当初に比べ302億円(2・4%)増となった。新型コロナウイルスの感染拡大防止や経済対策、新しい働き方に対応したライフスタイルの創出を重点に「ウィズコロナ・アフターコロナ時代の先導的な地域づくり」を目指す編成とした。

 21年度は同時に、総合計画「静岡県の新ビジョン」の最終年度となるため、命を守る安全な地域づくりや富をつくる産業の展開など八つの政策を通じ「人づくり・富づくり」の総仕上げを図る。
 新型コロナ対策関連は国の交付金を活用して537億7600万円を計上した。病床確保やPCR検査の実施、ワクチン接種体制の構築など、感染拡大防止とリスクへの備えに500億9800万円を振り向ける。新型コロナの打撃を受けた地域経済の再生に向け、山梨、長野、新潟県と連携した経済圏「山の洲(くに)」での農林水産物の販路拡大などに20億円を盛り込んだ。テレワークやワーケーションといったコロナ禍の新たな働き方の導入促進には16億7100万円を充てる。
 11の特別会計と5企業会計を合わせた予算総額は前年度当初を0・4%上回り、過去最大の2兆1891億円になった。
 一般会計の歳入は県税が新型コロナの影響で前年度当初比400億円(8・2%)減の4470億円。国庫支出金はコロナ対策などで前年度より293億9700万円(21・3%)増え、1677億1900万円を計上した。
 歳出のうち、投資的経費は国の「国土強靱化(きょうじんか)3か年緊急対策」が前年度で終了したことなどから、前年度に比べ174億6千万円(8・7%)減の1841億6千万円。義務的経費は子育て支援などで扶助費が増加した一方、災害復旧費が減り、前年度比7億1900万円(0・1%)減の6295億7500万円を積んだ。
 (2021/02/11)