酪農王国オラッチェ どんなところ?
函南町丹那の酪農王国オラッチェを訪れたことはありますか? 地元で生産した牛乳やチーズ・バター、有機野菜の販売、地ビールの製造・販売などを手掛けます。毎年夏にはトウモロコシの巨大迷路がオープンし、大勢の家族連れが楽しみます。オラッチェの歴史や施設のポイントなど魅力をまとめます。
〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 安達美佑〉
トウモロコシ畑の巨大迷路オープン 難易度「やや高め」
酪農の飼料用トウモロコシ畑を活用した巨大迷路が23日、函南町丹那の酪農王国オラッチェでオープンした。広さ約6千平方メートルの休耕田を活用し、トウモロコシを刈り取って設けたコースが挑戦者を待ち受けている。

同地区で盛んな酪農の飼料用トウモロコシは高さ2メートルほどに成長し、畑に植えられた約4万本が視界を遮って迷い込ませる。コースはオラッチェのスタッフが考え、今年はルートを増やしたために難易度は例年と比べて「やや高め」。3カ所のチェックポイントが設置され、参加者はスタンプを集めてゴールを目指す。
初日から大勢の親子連れが訪れ、行き止まりを引き返したり声を掛け合ったりしてコースを進んだ。スタッフによるとゴールまでの平均時間は約30分だが、10分程度で攻略するリピーターや苦戦して1時間ほどかかる参加者もいるという。
入場料は小学生以上400円、3歳以上の未就学児は300円。営業時間は8月31日までの午前10時~午後4時。今年は9月の土日祝日限定で「第2迷路」も始まる予定。(三島支局・金野真仁)
〈2022.07.24 あなたの静岡新聞〉
初日から大勢の親子連れが訪れ、行き止まりを引き返したり声を掛け合ったりしてコースを進んだ。スタッフによるとゴールまでの平均時間は約30分だが、10分程度で攻略するリピーターや苦戦して1時間ほどかかる参加者もいるという。
入場料は小学生以上400円、3歳以上の未就学児は300円。営業時間は8月31日までの午前10時~午後4時。今年は9月の土日祝日限定で「第2迷路」も始まる予定。(三島支局・金野真仁)
〈2022.07.24 あなたの静岡新聞〉
いつ完成? どんな施設?

※1997年10月5日 静岡新聞朝刊から
田方郡函南町の丹那盆地に先ごろ(1997年9月23日)オープンした第三セクター「酪農王国オラッチェ」。地元で生産した牛乳やチーズ・バター、有機野菜の販売、地ビールの製造・販売などを手掛ける。首都圏の消費者団体が経営に参加し、安全性にこだわった食材の提供を基本コンセプトに開国した。
反響は予想以上だった。オープン初日に約一万三千人が入国。平日は三千―五千人、週末になると一万人以上の人出でにぎわう。
食材はどれも飛ぶような売れ行きを見せ品切れ続出。「入場者は当初見込みの倍以上。供給が追い付かず、生産体制の見直しを進めています」と加藤保明専務。しかし、「あくまでも食材に対するこだわりの姿勢は変えない」と言い切る。
百年を超す酪農の歴史に新たな一ページを加えた地ビール工房も自慢の一つ。
地下三百メートルからくみ上げた水と有機栽培の天城二条麦に輸入したモルトやホップ、酵母などのオーガニック原料を加えて多種多様なビールづくりを目指す。チェコやドイツ、米国などから技術者を招き、スタッフが直接指導を受け腕を磨いている。
乳牛の飼料には地ビールの搾りかすを使い、麦わらを牛舎に敷いて利用するなど循環型農業の確立も王国の狙い。
製造ゾーンに続き交流ゾーンの整備にも着手する方針で、パン焼きや手作りソーセージの体験施設、農家民宿、貸し農園などを構想に描いている。
加藤専務は「まず経済的基盤を安定させ、自力で事業化ができるようにしたい。第一次産業の復権を実現させるためにも、地域全体で王国づくりを進めたい」と意気込む。
※表記、内容はすべて当時
田方郡函南町の丹那盆地に先ごろ(1997年9月23日)オープンした第三セクター「酪農王国オラッチェ」。地元で生産した牛乳やチーズ・バター、有機野菜の販売、地ビールの製造・販売などを手掛ける。首都圏の消費者団体が経営に参加し、安全性にこだわった食材の提供を基本コンセプトに開国した。
反響は予想以上だった。オープン初日に約一万三千人が入国。平日は三千―五千人、週末になると一万人以上の人出でにぎわう。
食材はどれも飛ぶような売れ行きを見せ品切れ続出。「入場者は当初見込みの倍以上。供給が追い付かず、生産体制の見直しを進めています」と加藤保明専務。しかし、「あくまでも食材に対するこだわりの姿勢は変えない」と言い切る。
百年を超す酪農の歴史に新たな一ページを加えた地ビール工房も自慢の一つ。
地下三百メートルからくみ上げた水と有機栽培の天城二条麦に輸入したモルトやホップ、酵母などのオーガニック原料を加えて多種多様なビールづくりを目指す。チェコやドイツ、米国などから技術者を招き、スタッフが直接指導を受け腕を磨いている。
乳牛の飼料には地ビールの搾りかすを使い、麦わらを牛舎に敷いて利用するなど循環型農業の確立も王国の狙い。
製造ゾーンに続き交流ゾーンの整備にも着手する方針で、パン焼きや手作りソーセージの体験施設、農家民宿、貸し農園などを構想に描いている。
加藤専務は「まず経済的基盤を安定させ、自力で事業化ができるようにしたい。第一次産業の復権を実現させるためにも、地域全体で王国づくりを進めたい」と意気込む。
※表記、内容はすべて当時
こだわり続けたホンモノのミルク「丹那牛乳」

※2011年8月21日静岡新聞朝刊から
近年、農商工連携といって、農業と商工を絡めて、新たな新商品を作ろうという動きが高まっている。しかし、これらの一部は商工の思惑が強すぎ、規格外や数量限定といった少量での取引で行われている。
そんな中、函南町の奥深くにある丹那盆地で、牛乳の製造、販売について仕掛け続けた人物、それが片野敏和さんだ。
平成9年に酪農を中心としたテーマパーク「オラッチェ」を設立。今ではバター、アイス等の製造体験や地ビールの製造販売など、多くを手掛け、夏休みに入り、子供連れの家族や、ツアー客などで連日にぎわっている。この経営はまさに先の農商工連携とは違い、自らの手で、商工事業を行う第1次×第2次×第3次の第6次産業である。しかし、ここまでできるのは、何かの基盤があるからだ。
その基盤は、なんと言っても牛乳である。約120年前から酪農が盛んだった丹那盆地だが、長年作り上げた牛乳の技術を見合わない価格の上下があったため、製造販売を自ら行う「丹那牛乳」を昭和30年ごろから作りはじめた。この時代ではあまり例がなく、まさに第6次産業化の元祖ともいえる。
低農薬の飼料作りから始まり、乳牛の管理、牛乳の低温殺菌など、こだわり続けたホンモノのミルクが存在する。この牛乳こそが、オラッチェや片野さんの基盤でもある。「目標ではなく、常に夢を持ち続ける。その夢がいいものに変えていく」と、片野さんは言う。夢や経営は変わっても、牛乳へのこだわりは変わらない。
※表記、内容はすべて当時
※片野敏和さんは酪農王国オラッチェの前社長。昨年(2021年)任期満了で退任されました。
近年、農商工連携といって、農業と商工を絡めて、新たな新商品を作ろうという動きが高まっている。しかし、これらの一部は商工の思惑が強すぎ、規格外や数量限定といった少量での取引で行われている。
そんな中、函南町の奥深くにある丹那盆地で、牛乳の製造、販売について仕掛け続けた人物、それが片野敏和さんだ。
平成9年に酪農を中心としたテーマパーク「オラッチェ」を設立。今ではバター、アイス等の製造体験や地ビールの製造販売など、多くを手掛け、夏休みに入り、子供連れの家族や、ツアー客などで連日にぎわっている。この経営はまさに先の農商工連携とは違い、自らの手で、商工事業を行う第1次×第2次×第3次の第6次産業である。しかし、ここまでできるのは、何かの基盤があるからだ。
その基盤は、なんと言っても牛乳である。約120年前から酪農が盛んだった丹那盆地だが、長年作り上げた牛乳の技術を見合わない価格の上下があったため、製造販売を自ら行う「丹那牛乳」を昭和30年ごろから作りはじめた。この時代ではあまり例がなく、まさに第6次産業化の元祖ともいえる。
低農薬の飼料作りから始まり、乳牛の管理、牛乳の低温殺菌など、こだわり続けたホンモノのミルクが存在する。この牛乳こそが、オラッチェや片野さんの基盤でもある。「目標ではなく、常に夢を持ち続ける。その夢がいいものに変えていく」と、片野さんは言う。夢や経営は変わっても、牛乳へのこだわりは変わらない。
※表記、内容はすべて当時
※片野敏和さんは酪農王国オラッチェの前社長。昨年(2021年)任期満了で退任されました。
オラッチェは県内屈指の古参醸造所 工場長木村岳司さんの思い
ビールの本場ドイツのベルリン工科大で醸造を学び、公的資格「ブラウマイスター」を取得した酪農王国オラッチェ(函南町)のビール工房工場長木村岳司さん(45)は、「職人」という言葉に特別な思いを込める。「顧客の好み、与えられた条件に従ってベストの仕事をするのが職人。そのためにはビールづくりの全てを知っておかないと」

自分のつくりたいビールを追求するのも醸造家の在り方として認める。一方で、ドイツの伝統的なものづくりの考え方に共鳴する。「販路や会社の方針などに対して柔軟でありたい。ドイツで、そういう人間として育てられたから」
国内の大学では法律を学んだ。在学中にドイツ人留学生らを通じて、ビールの多様性を知り、醸造への憧れがふくらんだ。「ビール職人はカッコいい。その一念だった」。資金をため、26歳で渡独。現地の大学入学に必要だったため、中西部の都市ボーフムのビール工場などで約1年半修業した。
2005年10月、ベルリン工科大ビール醸造学部に入学。驚いたのは、講義の多様性だった。試験醸造も経験したが「実習より理論が主体。化学、微生物学、分析化学がメインだった」。ビール工場の管理者を育てようというドイツならではの教育方針に感嘆した。
10年から醸造に関わる酪農王国は、1997年オープン。県内屈指の古参醸造所として知られる。地下300メートルからくみ上げる水と、有機栽培の二条大麦を使ったビールづくりが特色だ。麦を発芽させるモルトの製造設備も備える。
有機栽培のモルトは粒がそろわないため、使い勝手が良いとは言えない。一般的なモルトに比べ、麦汁ろ過の作業時間が伸びる場合もある。だが環境に負荷をかけないオーガニック製品を、職人として肯定的に捉える。「制約はあるが、設立当初からの方針にできる限り対応する」
1516年にバイエルン大公が公布した、ビール醸造の材料を「麦、ホップ、水、酵母」だけとする「ビール純粋令」を意識する。「麦の自然な甘みがしっかり感じられる、飲みやすいビールをつくり続けたい」(文化生活部・橋爪充)
■ピルスナーと伊豆エール
「風の谷のビール」ブランドのピルスナーは、国内のビールで初めて「有機農畜産物加工酒類」の認証を受けた。柔らかい口当たりで、麦と酵母の甘みとうまみがじわりと広がる。きめ細かく、持ちが良い泡も長所の一つ。温泉地では、「熱海ビール」「箱根ビール」という名称で流通している。
伊豆エールは、地元で採れた二条大麦を自社の工房で加工したモルトと、英国産モルトを使用。フルーティーな香り、口に含んだ瞬間に感じられるホップの苦みが特徴。後味の切れがよく、すっきりした印象を残す。
〈2022.02.25 あなたの静岡新聞〉
国内の大学では法律を学んだ。在学中にドイツ人留学生らを通じて、ビールの多様性を知り、醸造への憧れがふくらんだ。「ビール職人はカッコいい。その一念だった」。資金をため、26歳で渡独。現地の大学入学に必要だったため、中西部の都市ボーフムのビール工場などで約1年半修業した。
2005年10月、ベルリン工科大ビール醸造学部に入学。驚いたのは、講義の多様性だった。試験醸造も経験したが「実習より理論が主体。化学、微生物学、分析化学がメインだった」。ビール工場の管理者を育てようというドイツならではの教育方針に感嘆した。
10年から醸造に関わる酪農王国は、1997年オープン。県内屈指の古参醸造所として知られる。地下300メートルからくみ上げる水と、有機栽培の二条大麦を使ったビールづくりが特色だ。麦を発芽させるモルトの製造設備も備える。
有機栽培のモルトは粒がそろわないため、使い勝手が良いとは言えない。一般的なモルトに比べ、麦汁ろ過の作業時間が伸びる場合もある。だが環境に負荷をかけないオーガニック製品を、職人として肯定的に捉える。「制約はあるが、設立当初からの方針にできる限り対応する」
1516年にバイエルン大公が公布した、ビール醸造の材料を「麦、ホップ、水、酵母」だけとする「ビール純粋令」を意識する。「麦の自然な甘みがしっかり感じられる、飲みやすいビールをつくり続けたい」(文化生活部・橋爪充)
■ピルスナーと伊豆エール

「風の谷のビール」ブランドのピルスナー/伊豆エール
「風の谷のビール」ブランドのピルスナーは、国内のビールで初めて「有機農畜産物加工酒類」の認証を受けた。柔らかい口当たりで、麦と酵母の甘みとうまみがじわりと広がる。きめ細かく、持ちが良い泡も長所の一つ。温泉地では、「熱海ビール」「箱根ビール」という名称で流通している。
伊豆エールは、地元で採れた二条大麦を自社の工房で加工したモルトと、英国産モルトを使用。フルーティーな香り、口に含んだ瞬間に感じられるホップの苦みが特徴。後味の切れがよく、すっきりした印象を残す。
〈2022.02.25 あなたの静岡新聞〉