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飲んでみたい泊まってみたい 静岡・用宗のクラフトビール醸造所

 静岡市駿河区用宗でクラフトビールを醸造・販売するウエストコーストブルーイング(WCB)。醸造所のそばに直営の宿泊施設が7月1日、オープンします。客室には生ビールサーバーがあり、宿泊者限定ビールも楽しめます。用宗地区の活性化に取り組むWCBの魅力に迫ります。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 寺田将人〉

どんな宿泊施設? 客室にサーバー、試飲ラウンジやビアパブも

 クラフトビール醸造・販売のウエストコーストブルーイング(WCB)は7月1日、静岡市駿河区用宗の醸造所の向かい側に直営宿泊施設「The Villa&Barrel Lounge(ザ・ヴィラ・アンド・バレル・ラウンジ)」を開業する。小規模ビール醸造所は全国に580カ所超、本県に20カ所超あるが、本格的な宿泊施設を運営するのは珍しい。30~50代の国内ビールファンをターゲットに年間稼働率6割を目指し、宿泊客の周辺回遊を促すことで、用宗地区一帯で開発が進む観光関連ビジネスの活性化に寄与する。

ウエストコーストブルーイングが開業する宿泊施設兼タップルーム=静岡市駿河区用宗
ウエストコーストブルーイングが開業する宿泊施設兼タップルーム=静岡市駿河区用宗
 「ブルワリーに泊まれる」をコンセプトにした全5室を提供する。各室とも生ビールサーバー付きで、宿泊者限定ビールが飲める。これまで醸造所内だったタップルーム(ビアパブ)を宿泊施設1階に移設。木樽で発酵・熟成した新ブランドが試飲できるラウンジも併設した。
 宿泊料は温泉施設の利用と室内限定ビール飲み放題付きで1人1万9800円から。すでに遠方の北海道や九州からも予約が入る。
 同社は2019年7月に醸造開始。米国スタイルを中心とした多種多様なビールで人気を高め、現在の月間醸造量は20年比約2・5倍の約2万リットル。今年10月以降に発酵タンクを2基拡充し、醸造量をさらに3割増やす計画もある。バストン・デレック社長は「宿泊施設開業を通じ、WCBの世界観やブランドを全国に発信したい」と話している。(文化生活部・橋爪充)
 〈2022.06.25 あなたの静岡新聞〉

定番の味は 果実感のあるとペールエールと優しい苦みのIPA

 定番の一つ「NEVER ENOUGH BASS」(右)は、白濁した黄色が特徴のペールエール。パイナップルやオレンジのような果実味が感じられる。アルコール度数は5.0%で飲み口は比較的軽い。飲み込んだ後に適度なほろ苦さが訪れ、心地よく持続する。

「GREEN LIGHT」(左)と「NEVER ENOUGH BASS」(右)
「GREEN LIGHT」(左)と「NEVER ENOUGH BASS」(右)
 「GREEN LIGHT」は、リラックス効果が期待できるとされ、数多くの米国の醸造所で採用されている成分「CBD」を使ったセッションIPA。清涼感のある香り、かんきつ系のしっかりとしたフレーバー、優しい苦みが楽しめる。(文化生活部・橋爪充)
 〈2021.05.31 あなたの静岡新聞「しずおかクラフトビール新時代⑬」より抜粋〉

ビール造りで大切なことは WCB醸造責任者・丹羽智さんに聞く

丹羽智さん
丹羽智さん
※2019年9月13日 静岡新聞朝刊より
 1996年からクラフトビール醸造に携わり、腕を買われて全国3カ所の醸造所を渡り歩いた。業界の栄枯盛衰を肌で知る。2019年、静岡市駿河区の新醸造所に移り、新たなビール造りへ意欲を高める。

  -新しい挑戦に至った経緯は
  「山梨県の醸造所で7年間お世話になり、60歳を過ぎた。通常なら定年退職の年齢だが、クラフトビールの仕事は終わりがない。どんどん新しいビールが出てくるし、消費者の好みも移り変わりが激しい。『ウエストコーストブリューイング』オーナーのバストン・デレックさんの誘いを受け、もう一回別のことを納得いくまでやってみたくなった。環境が変われば新しい発想が生まれるという期待もあった」
  -現在の醸造体制は。
  「発酵タンクが1200リットル3本、2400リットル3本。貯蔵タンクは1200リットル2本と2400リットル2本。私を含めて3人がビール造りに関わっている。これまで三つの醸造所で英国系、ベルギー系、ドイツ系などさまざまなビールを手掛けてきたが、ここでは米シアトル出身のオーナーの意向もあり、米国でよく飲まれているスタイルのビールを中心に醸造する。新鮮なホップをふんだんに使うことを心掛けている」
  -ビール造りで大切なことは。
  「レシピが3割、仕込みが3割、発酵と熟成の管理が4割。特に発酵時の温度管理には気を使う。放っておくと発酵の発熱で麦汁の温度がどんどん上がる。タンクに冷却装置が付いているが、適温を見極めなくてはならない。酵母は生き物なので、年中無休といった気持ちだ」
  -現在のクラフトビールの活況をどう見るか。
  「1994年の酒税法改正で醸造所が急増したが、2000年ごろから急速に落ち込んだ。まさに“暗黒時代”だった。10年前後からビアバーやビールのイベントが増え、上昇機運が感じられるようになった。1990年代と違うのは、各ビールの品質の高さ。消費者の嗜好[しこう]の多様化もある。今後はイベントや各醸造所の情報発信を通じて、まだクラフトビールと関わりがない方に、魅力を認識してもらうことが必要。ビールは多様性が特徴だから、これからもユニークな商品が次々出てくるだろう。自分も日本独特のスタイルを模索したい」(文化生活部・橋爪充)

 にわ・さとし 1996年、石材会社が立ち上げた博石館ブルワリー(岐阜)でビール醸造を開始。2009年から世嬉の一酒造(岩手)、12年からアウトサイダーブルーイング(山梨)のビール醸造責任者を務める。63歳。静岡市駿河区在住。
 ※肩書、年齢、表記などはいずれも当時

WCBの味、浜松でも 地元醸造所兼バーの隣に開店

 浜松市の中心街に19日(※2021年11月19日)、静岡市駿河区のクラフトビール醸造所「ウエストコーストブルーイング」がビアバーを初出店する。浜松市中区田町の醸造所兼バー「オクタゴンブリューイング」の隣に開店。両店がタッグを組み、コロナ禍で疲弊する中心街の活性化を目指す。

開店前イベントを開いた「オアシス」=18日午後、浜松市中区田町
開店前イベントを開いた「オアシス」=18日午後、浜松市中区田町
 ビアバー「オアシス」ではホップの風味をふんだんに効かせた米国流ビールを提供するほか、静岡産缶ビールや浜松の飲食店のフライドチキンも販売する。店の奥にはたき火台付きの中庭も構える。
 オクタゴンブリューイングを運営する丸八不動産(同市中区)が今回の浜松進出の話を聞き、誘致した。異なるクラフトビールの店舗が隣接して営業するケースは国内では非常に珍しいという。
 18日の開店前イベントに出席したウエストコーストブルーイングのオーナーで米国出身のバストン・デレックさんは「良い縁に恵まれて幸せだ。イベントや商品開発で連携し、県外のお客さんも呼び込みたい」と意気込んだ。丸八不動産の平野啓介社長は「われわれのまちづくりの思いに共鳴していただいた。一緒に浜松を盛り上げたい」と応じた。(浜松総局・高松勝)
 〈2021.11.19 あなたの静岡新聞〉