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焼津駅前通り商店街 にぎわい創出の兆し

 シャッター通りとなっていた焼津駅前通り商店街の活性化が進んでいます。周辺に子育て施設「ターントクルこども館」が昨年オープンしたのを機に、空き店舗を活用した出店希望が増え、子育て世代や若者が集まっています。商店街のにぎわいづくりに官民を挙げて取り組む駅周辺地区の様子をご紹介します。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・吉田直人〉

「こども館」効果 周辺に出店希望増

 焼津市の焼津駅前通り商店街に、にぎわい創出の兆しが徐々に見えてきた。子育て施設の開設を機に客層が変化。出店希望の相談が増えている。徒歩圏内の内港と一体化したまちづくりで、駅周辺地区に新たな可能性が広がりそうだ。

焼津駅周辺地区
焼津駅周辺地区
 商店街はJR焼津駅南口から約400メートルの道路の両側に店舗や事務所が連なっている。一時期はシャッター街化が進んでいたが、2020年ごろから地元の若者が中心となり、空き店舗を活用した私設図書館やカフェ&ワークスペースを開設。若い人が訪れやすい下地が整ったところで、昨年夏に市がターントクルこども館を開館させると、子育て世代が立ち寄り始めるようになった。
 営業店舗も増えている。21年は49店で19年に比べて5店舗増。空き店舗は2年間で10区画分無くなった。市には出店を希望する問い合わせが毎週のように来るという。市が17年度から実施する商店街の空き店舗を無料で貸し出す「チャレンジショップ」もここ数年、応募件数が増加。商店街への注目度が高まっているようだ。市の担当者は「人がざわついている感じに投資の可能性を見ているのでは」と出店者の思惑を分析する。
 市はさまざまな補助制度を用意し、出店を後押しする。店舗の改修費や家賃のほか、店舗を新築する事業者にも助成する。課題だった「職住一体」のため貸すことに難色を示すオーナーへの対策として、店舗と住居を分離する工事費の一部も補助する。市商工課の海野真彦課長は「流れが来ている。ここ2年が勝負だ」と語る。
 商店街で生まれつつあるにぎわい。これを少し先の内港エリアにつなげる可能性を持った施設が来年度から部分的に開業する。
 県外の事業者が焼津内港に立地する漁具倉庫を活用し、飲食・宿泊機能を備えたテレワークの拠点を整備している。港町らしいロケーションを背景に、新しい発想を持った人たちが集う場として期待されている。
 テレワーク拠点とこども館は1キロも離れていない。双方で活動する人たちがこのエリアで動き、交流し、融合すれば、従来と異なる新たな産業や事業が生まれるかもしれない。地元の若者や企業といった民間の活発な動きを、行政がサポートすることで、変化の兆しが生じた。両者の関係をより密にし、新たなにぎわい創出へとつなげてほしい。
〈2022.02.13 あなたの静岡新聞〉

空き店舗をシェアオフィスに 活用増える

 焼津市の焼津駅前通り商店街で新たなコミュニティー創出を目指し活動する一般社団法人「トリナス」(同市)が同商店街の空き店舗にシェアオフィスを開設する。今月内に改装工事に着手し、12月から開設する見通し。同法人の土肥潤也代表理事は「新しいことが生まれる交流の場にしたい」と構想する。

2階部分にシェアオフィスを開設予定の空き店舗=焼津市栄町
2階部分にシェアオフィスを開設予定の空き店舗=焼津市栄町
 シェアオフィスはJR焼津駅南口から約400メートル先にある昨年度まで営業していた骨董(こっとう)品店の2階部分に開設する。広さ33平方メートルで、机やスタンドデスクを並べ、本棚、カウンターバーを設ける計画。使用料は年間10万円に設定する。外から見えにくい作りなことから、土肥代表理事は「商談の場に適している」と話す。
 焼津駅前で事業に関心を持っていたり、サテライトオフィスとして利用したかったりする事業者を想定している。地域との連携に関心を持つ事業者には、豊富な知見を持つトリナス社員がサポートする。
 焼津駅前通り商店街は、「シャッター通り化」が進むものの、ターントクルこども館の開設を機に、子育て世代の出歩く姿が見られるなど変化しつつある。土肥代表理事は「まちづくりに関する情報を交換し合える場にしたい」と意気込む。
〈2021.10.19 あなたの静岡新聞〉

 ■市も空き店舗活用を支援 学生服販売店がオープン
 焼津市が焼津駅前通り商店街の空き店舗を無料で貸し出し、将来の起業を支援する「チャレンジショップ」として新たに、学生服の買い取り販売「学生服リユースShopさくらや焼津店」が6月までの期間限定でオープンした。出店した内藤真由美さん(44)は「ここで基盤を作り、将来的に店舗を構えたい」と意欲を燃やす。
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期間限定でオープンした「学生服リユースShopさくらや焼津店」=焼津市の焼津駅前通り商店街

 起業のきっかけは昨春、長女の高校入学で制服などの入学準備に多額の出費を要したことを疑問に持ったから。その頃、全国展開する学生服の再利用店の存在を知った。家に眠っている不要な学生服を買い取り、格安で販売して家計を支援する趣旨に賛同し、パートナー店として開業を決意した。
 昨夏から準備に取りかかった。長女をはじめ、3人いる子どもたちの友人の母親らに声を掛けると、支援の申し出が相次ぎ、使っていない学生服の提供を受けた。店舗をどうしようか考えていたところ、チャレンジショップの制度を知り、応募した。
 店舗では焼津、藤枝、島田各市を中心とした幼稚園、保育園、小中高校の学生服や体操服を定価の10~30%で販売する。指定された学生服の学校に通う児童や生徒の関係者のみ購入でき、不要になったおもちゃ、文房具、楽器などは一部を除き無料で提供する。内藤さんは「制服は選択肢のない必須の買い物で負担も大きい。その分、不要になっても捨てずに持っている人が多い。双方のニーズを支援していきたい」と語る。

 ■チャレンジショップ応募増加
 焼津市のチャレンジショップ事業は2017年度から始まった。JR焼津駅から徒歩5分ほどの好立地にある空き店舗を半年間貸し出す。これまで飲食や物販、美容などさまざまな業種が出店。「さくらや」は12件目となる。同市商工課によると、昨年のターントクルこども館開設を機に、商店街への出店を検討する動きが増加。チャレンジショップの制度にも注目が集まり、応募件数が伸びているという。
〈2022.02.04 あなたの静岡新聞〉

こども館が昨年7月にオープン にぎわいの拠点に

 焼津市がJR焼津駅前地区に整備していた子育て支援施設「ターントクルこども館」で6日、完成記念式典が開かれた。関係者ら約40人が出席し、新たなにぎわい創出拠点の誕生を祝した。

焼津おもちゃ美術館内のこどもが木製おもちゃで遊ぶフロア
焼津おもちゃ美術館内のこどもが木製おもちゃで遊ぶフロア
 こども館は地上3階建てで7月4日に開館する。絵本を取りそろえた「やいづえほんと」、木製のおもちゃで遊べる「焼津おもちゃ美術館」が入る。事業費は13億2673万円。
 おもちゃ美術館には、すし屋のカウンター、お茶やリンゴ畑に模した遊び場のコーナー、コマやけん玉といった懐かしいおもちゃの体験ゾーンを設けた。えほんとに入る絵本や図鑑は子どもが取り出しやすいように、表紙を正面に向けて陳列する工夫を施している。
 式典で中野弘道市長は「子どもだけではなく、多くの世代に焼津ならではの体験をしてほしい」と新施設に期待を寄せた。式典後に出席者による内覧会も行われ、真新しい施設を興味津々で見て回った。
〈2021.06.07 あなたの静岡新聞〉

 ■昨年10月には来場者2万2222人達成
 焼津市のターントクルこども館で10月30日、来場者2万2222人の達成を記念した式典が開かれた。来場者らが7月にオープンした地域の子育て支援拠点の節目を祝した。
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来場者2万2222人目となった浅井さん一家(左)=焼津市のターントクルこども館

 2万2222人目は名古屋市の浅井一志さん(44)と妻都さん(42)、長女澪さん(5)、次女舞さん(3)の一家。中野弘道市長から、卵の形をした木のおもちゃとこども館のロゴが入ったバッグ、招待券が贈られた。
 浅井さん一家は初めての来館。以前からこども館に興味を持ち、コロナ禍が落ち着いたら、行こうと決めていたという。一志さんは「木のおもちゃに絵本と温かい環境。一度来てみたかった」と話した。
 中野市長は「子育てのサポートの場、交流の場として多くの方が利用できるよう展開したい」とあいさつした。
〈2021.11.02 あなたの静岡新聞〉

私設図書館を運営する土肥さん 駅前活性化に取り組んでいます

 焼津市の焼津駅前通り商店街の空き店舗を借り、私設図書館「みんなの図書館さんかく」を2020年3月から運営する。人口減少の進展に伴い、公共サービスの縮小が危惧される中、民間の力で公共空間をつくり、補おうという新しい試み。県内外で取り組みが広がっている。

土肥潤也氏
土肥潤也氏

 -「さんかく」の概要は。
 「所蔵図書は約2300冊。登録料300円で図書カードを作れば、それ以降は無料で本を借りることができ、一般的な図書館と変わらない。大きな特徴として『一箱本棚オーナー制度』がある。月額2千円で本棚を借り、自分の好きな本を置いてプロデュースできる。用意した46箱中、現在43箱が埋まり、好評だ。主にこの本棚収入で黒字経営を維持している」
 -始めた理由は。
 「人口減少が進めば自治体の税収も減り、維持するのが難しい公共施設が出てくるだろう。公共施設が地域コミュニティーの受け皿を担う例も多く、なくなるのは住民にとっても損失。その空白を市民の営みで埋められないかと考えた」
 -他地域の広がりは。
 「さんかくを参考に、同様の私設図書館が石川県加賀市や兵庫県豊岡市に開館した。JR沼津駅前にある沼津信用金庫のまちづくり支援施設『ぬましんCOMPASS(コンパス)』に、さんかく自体の出店も決まり、4月の開館に向けて準備している。県内外のまちづくり団体などから計50人ほどの視察があり、価値観に共感してもらっている」
 -本棚オーナー制度が好調な理由をどう見るか。
 「自分のことを表現したい、共感を得たいという欲求に刺さっているのでは。機械的な冷たさが漂うSNSでのコミュニケーションに疲れ、アナログの温かさを求めている面もあるだろう。実際、本棚をきっかけに人がつながり、新たな事業やコミュニケーションが次々と生まれている」
 -今後の目標は。
 「本で人と人をつなぎ、まちづくりに貢献する人材として『まちの図書委員』を養成したい。3年以内に私設公民館をつくることも公言している。市民が行政になんでも頼る『お客さま』から脱却し、主体的にまちづくりに参画する社会を実現したい。市民が主人公のまちになれば、まちは変わる」
 
 どひ・じゅんや 一般社団法人トリナス、NPO法人わかもののまち代表理事。「さんかく」の取り組みで2020年「マニフェスト大賞」優秀賞受賞。県立大卒、早稲田大大学院修士課程修了。焼津市出身。25歳。
〈2021.01.10 静岡新聞朝刊「本音インタビュー」〉