かんたん 自然あそび動画特集
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「かんたん自然遊び」は静岡新聞に2019年4月から月1回好評連載中の紙面企画「子ども&孫と挑戦 簡単自然遊び」を再編集したものです。家族で身近な自然で楽しみましょう。随時、本サイトで紹介します。
かんたん自然遊び【冬】道端に落ちている「キツネの小判」正体は?(山田辰美/常葉大名誉教授)
2021/02/18 9:43真冬の通学路で、子どもたちが夢中になって探しているものがあります。手のひらにのせて見せてくれたものは、1センチ弱の平たいだいだい色のもの。何かと尋ねると、目を輝かせて「キツネの小判」と口をそろえます。「100個集める」「川に流すと願いがかなう」などの言い伝えも教えてくれました。私や息子の子ども時代にはなかった新しい伝説です。 正体は何か?そこら中に落ちているのはなぜか?実際に調べてみたら、面白い現象が浮かび上がりました。正体は、ずばりハゼノキの種。明るい野山に自生し、晩秋に真っ赤に染まる紅葉が見事な植物。樹液に触れるとかぶれてしまう木の一つです。路上の至るところにある小判は、野鳥の排出する糞[ふん]の未消化物が、雨に洗われて残ったものだったのです。 たわわに実った果実は冬に熟してヒヨドリ、ジョウビタキ、メジロなど小鳥たちが厳しい寒さに負けないための高カロリーの餌として一気に食べられ、里にばらまかれるのです。ウンチとして。また、親木の足元に落ちた実は発芽できませんが、鳥に食べられて遠くに運ばれた種は、強い胃酸によって油脂が消化されて発芽が可能になります。地上に落ちた種は水を吸うことで、発芽のスイッチが入るというしくみです。 ハゼノキの実は和ろうそくの材料としてよく知られていますが、お相撲さんのびん付け油や軟こうなどにも使われ、栽培もされていたそうです。ハゼノキの実は鳥だけでなく、人々の暮らしに欠かせない有用植物だったことを、実験やろうそく作りを通して確かめてみましょう。実を10個分使えば3~5分間、魅力的な炎を楽しめます。 道すがらのキツネの小判探しなど「道草を食う」活動には、大判小判に勝る宝物が隠れています。地域を知るだけでなく、命のつながりや自然界の不思議に気付かせてくれます。子どもたちの行き帰りを急がせないで、道草をゆったり楽しむ時間を確保したいものです。(常葉大名誉教授、静岡県藤枝市) ■作り方と遊び方*実験「ろうそくの材料を見つけよう」(1)ハゼノキの実・皮をむいた果肉・種の3つを準備し、それぞれに火を近づける。(2)果肉だけがよく着火し、長く炎を上げることから、ろうそくの素材は果肉であると分かる(実際には蒸した果実を圧搾し、ろうの成分を集める) *簡単和ろうそくの作り方(1)10個の実から果肉を集める(2)ティッシュペーパー1枚を4分の1に切り、果肉をのせる(3)ティッシュペーパーの端からたばこのように巻いて、両端をこよる(4)木綿糸を巻いて硬い棒状にして完成(5)ろうそくを立てて火を付けると、ゆっくり燃える
かんたん自然遊び【冬】ススキで遊ぼう!かわいらしいキツネや人形ができるよ(山田辰美/常葉大名誉教授)
2020/12/28 14:34ススキで遊ぼうとすると、「危ないから駄目」と大人の声が聞こえてきそうです。葉っぱの縁にノコギリのような細かなギザギザがあり、子どもの柔らかな手を切ることがよくあるからです。野遊びで痛い目に遭った経験を通して、観察力や判断力が身に付いていくので、頭ごなしに禁じるのではなく、葉の縁にそっと触れさせ怖さに気付かせましょう。手のひらで握って引っ張るのは確かに危険なので、ハサミで切るのが無難です。秋から冬に風に揺れるしなやかな穂は小さな花の集まりです。冬になって花は種になりやがて白っぽく膨らみ、種が飛び散ると、すすけたほうきのようになります。造形遊びには白く膨らむ前のしっとりした穂を選びましょう。触っても種が飛び散らずに作りやすいからです。完成後に数日乾燥させると、ふっくらと見栄えが良くなります。よく知られたススキの造形はミミズク(フクロウ)ですが、大人でも経験を積まないと作れません。子どもでも簡単にできるのが、キツネです。モールという毛の生えた針金を使うと手早く作れます。穂の2カ所をモールでしばるだけで、頭と胴と尾の三つの部分ができます。足はホウノキの葉柄を使うと、地面に踏ん張る獣の雰囲気が出ます。耳は黄色い枯れ葉がお勧め。ポーズを決めて接着剤で固定します。尻尾の先をとがらせ、種が飛ばないようにするための秘密道具がヘアスプレーです。上級編では、ゴージャスなドレスを身にまとったお人形もできます。2本の茎を持って、穂をくるりと折り曲げて穂と茎をモールで束ねるだけで、ふわふわドレスの出来上がり。図を参考に挑戦してみてください。キツネの顔は、ユリの実を使うと良いです。リボンや木の実で飾りを付けたり、手や足のポーズを変えたりして遊びましょう。(常葉大学名誉教授=藤枝市、絵も筆者)※過去の連載記事と動画は本社サイト「おやこアットエス」へ。■作り方と遊び方*キツネ(1)穂の2カ所をモールでしばる(2)頭をつまみ上げて目を作る(3)耳となる枯れ葉を頭に付ける(4)足4本を接着剤で固定する(5)ヘアスプレーを全体に吹きかけ、形を整える*ドレスのお人形(上級編)(1)2本の穂を束ねて反転させてモールで止める(2)ボリュームが不足していたら、穂を1~3本加える(3)腕は穂を使って三つ編みで作る(4)動物の顔を木の実で作る(5)ピーナツの殻や唐辛子を靴にする(6)発泡スチロールなどの土台に刺して飾る(7)リボンや木の実などを飾り付けたり、ポーズを変えたりして遊ぶ
かんたん自然遊び【秋】木の実で表情豊かな野鳥を作ろう(山田辰美/常葉大名誉教授)
2020/11/24 11:27秋の野山で採集した木の実を使って、野鳥を作ってみましょう。猫や犬などに比べると、親しみを感じる子どもが少ないかもしれませんが、鳥は個性的な色とスマートな体で、空を自由に飛べる実に魅力的な生き物です。昔の話ですが、とある大学の入試でニワトリを描かせる問題が出題され、4本足のニワトリを描いた受験生がいたという報道が、物議を醸したことがありました。現在の小学生も大学生も1~2割程度は、ニワトリを4本足で描くようです。子ども時代に本物の生き物に触れる自然体験や生活体験が不足している影響だと考えられます。鳥の姿や形をまねするだけでなく、せっかくなら、表情豊かなクラフトを楽しみましょう。素材の木の実をくっつけるには、木工用接着剤を使うのが一般的ですが、今回は素早く作業できるグルーガンをお勧めします。グルーガンは電気を使い固形のり(ホットメルト)を熱で溶かすもので、やけどに注意しましょう。木の実などの材料は、ここに紹介した物でなくても構いません。代用できる物を見つけ出すのは皆さんの工夫次第。世界に一つしかないすてきな作品になりますよ。野鳥は身近に暮らす野生生物です。お散歩で近所の公園、神社やお寺、池や川などに出掛ければ、すぐに野鳥が見つかります。家の軒下で繁殖したツバメはすでに南の国に帰りましたが、スズメやシジュウカラ、メジロ、ジョウビタキ、キジバト、カラスなどが忙しそうに動き回っています。体の色や鳴き声などの特徴はすぐ気付きますが、好きな食べ物やねぐらの場所、冬の過ごし方など、子どもと一緒に観察してみてください。図鑑で調べる楽しさも教えたいですね。(常葉大学名誉教授=藤枝市)*フクロウ①松ぼっくりの下側(お尻)を正面にして、顔になるヤマイモ(自然薯)の実を接着する②目玉は、ナンキンハゼの種の表面の白い蝋[ろう]質を削る③羽はキリの実の半分を使う④足はキリの実のヘタを、立たせる場所に合わせてから接着する*ウグイス①体はアオギリの実を使う。へりに付いている種は、実が破れないようにそっと取る②ティッシュペーパー1~3枚を丸めて、おなかの膨らみを作り、アオギリの実に接着する③目はドングリの殻斗[かくと]と黒い実で作る*おしゃべりカラス①キリの実を頭にする。大きく開いている物を選ぶと笑顔に見える②胴体、羽、尾羽は、いろいろな木の実で代用できる③足はフクロウと同じ*鳥の巣①クヌギの大きな殻斗をそのまま使う②鳥の卵は、食用のうずら豆、ジュズダマや大豆など
かんたん自然遊び【秋】色づいた落ち葉で動物や人形作っちゃお♡(山田辰美/常葉大名誉教授)
2020/11/24 10:00季節の巡りはたくさんの不思議を私たちに見せますが、秋の紅葉には、毎年驚かされます。今月は色づいた落葉の遊びを紹介します。公園や街路で拾えるイチョウと、庭や畑のカキの葉を使います。イチョウは葉脈がシンプルで分岐していない原始的な形態を残し、生きた化石と呼ばれます。中国原産ですが日本を経てヨーロッパに持ち込まれ、街路樹として人気があります。今では世界中の都市を見事な黄葉で彩っています。落葉しても数日はしなやかで、折り紙のように折ったり切ったりできます。出来上がった作品は乾いても、鮮やかな黄色は色あせることがありません。ハサミでいろいろな動物を作ってみましょう。まずは、基本の技が集約されているキツネからトライしてください。葉を二つに折って切ると、素早く作れます。同じ手順で切り方を変えれば、カエルやゾウ、パタパタと羽ばたくチョウやフクロウなどができます。共通するポイントは、縦半分に折った葉の折り目に小さな切れ目を入れること。長い柄をここに通すと完成します。カキの葉は春に天ぷらにしても食べられるほどおいしいので、虫たちが夏の間にかじったり汁を吸ったりします。不思議なことに、その吸い痕が紅葉した葉に丸い模様として残るのですが、これって和服の柄に似ていませんか。昔の人は色とりどりの葉を十二単ひとえに見立て、着せ替え遊びをしました。今回作った人形は着物を4~5枚重ねました。ホチキスを使うと簡単に服が留められます。かみしもやはかま、髪をどんな色にしようか考えるのも楽しい遊びです。(常葉大名誉教授=藤枝市)■作り方と遊び方*イチョウのキツネ(1)葉を縦に二つ折りし、イラスト(左下)の斜線部分をハサミで切り落とす。(2)折り目の中心線の端に近い所に小さな切れ目(おへそ)を作る。(3)葉を広げ、長い葉柄を(2)のおへその穴に通す。(4)油性ペンで目を描く。*柿の葉人形(1)葉をイラスト(左下)のように折り、顔と首を作る。(2)二つ折りした葉を、着物を着せるように(1)にかぶせる。(3)かぶせた葉がずれないようにホチキスで固定(完成時に見えない場所に打つ)。(4)色合いを考えて3~5枚着せる(最後の葉は彩りが美しい大きな葉を使うと見栄えがいい)。(5)はかまなど着物の合わせ目をつまようじで留める。髪の毛になる葉に頭部を差して完成。★カキの葉を使った人形の作り方【動画】はこちら
かんたん自然遊び【秋】くねくね曲がるイモムシ ドングリの帽子で作っちゃお(山田辰美/常葉大名誉教授)
2020/10/25 22:03子どもがドングリでポケットをいっぱいにして帰って来たら手作りの遊びを楽しみましょう。1本の木が落とすドングリの数は数百から数千。硬い殻に包まれた実は栄養満点で一つ一つが大木に育つ可能性を持っています。でもクマやイノシシ、シカ、タヌキなどの動物やゾウムシなどの虫に大半が食べられてしまいます。リスやネズミ、カケスなどが冬越しのため地面に隠す「貯食」が知られ、食べられずに残った実だけが芽生えることができます。土に埋められなかった実は1~2週間で乾燥し、発芽能力を失うようです。森の命を育む一方で動物の力を借りて子孫を残し分布を広げているのです。「どんぐりの背比べ」のことわざとは裏腹に、種類や環境、個体差で実も殻斗[かくと]と呼ばれる帽子部分も個性があり素材になります。例えばクマを作るならクヌギの大きく丸い実を顔、ミズナラの殻斗で鼻、コナラの殻斗で耳、といった具合です。一押しはイモムシです。くねくね曲がる手軽なおもちゃは子どもに大人気です。動物気分で新鮮な実を食べるのも一興です。渋がないスダジイ、ツブラジイ、渋の少ないマテバシイ、ブナの実は生でも軽くローストしても美味。甘みが口に広がります。究極の遊びは土に植えて木に育てることです。先端から根が伸び、芽が出ます。発根したらドングリが見えるように小さな鉢に植えると日々成長が観察できます。産毛に守られたもえぎ色の葉がかわいらしく、ドングリが命のカプセルであることに気付かされます。(常葉大名誉教授=藤枝市)■イモムシの作り方と遊び方(1)ドングリの帽子部分に当たる殻かく斗とを15個(好みで増減してOK)選び、直径の小さなものから順に並べておく。(2)殻斗の中央に錐(またはハンドドリル)で穴を開ける。この時、最小と中くらいの殻斗を各1個ずつ穴を開けずに残しておく。(3)約15センチの長さに切った手芸用モールを大きな殻斗のへこんだ側から刺し、同じ向きで大きさ順に刺していく。(4)刺し終わったらモールの両端を丸め、抜け落ちないようにする。(5)(2)で残しておいた殻斗を中くらいのサイズを頭部、最小を尻部分にかぶせ、接着剤で留める。(6)顔部に2個連なった殻斗または数珠の実2粒などで目を付けて完成。
かんたん自然遊び【秋】動き出しそうなムカデ クズの葉っぱで作れるよ(山田辰美/常葉大名誉教授)
2020/10/16 17:46今回はクズ(葛)を使って、子どもたちをびっくりさせる生き物を作ってみましょう。葉っぱをたくさん集めて組み上げると、なんと巨大なムカデができるのです。ムカデは「百足」と書きます。細長い体全体からたくさんの足が左右に伸びていて、体をうねらせて進む様子は不気味です。昆虫やミミズを食べる肉食で、自然界では大切な役割を担っていますが、鋭い大あごで人にかみつくことがあるので嫌われ者です。クズの葉は3枚の小葉と20~30センチの葉柄[ようへい](茎部分)からなり、葉枕[ようちん]というぷっくり膨れた部分でつるに付いています。葉柄を持って引っ張れば、簡単につるからむしり取れます。小葉を摘み取り、葉枕が付いた葉柄を30個以上集めます。これで準備完了。クローバーで冠を作るのと同じ要領で編んでいきます。出来上がったムカデをうねらせるとリアリティーが増します。手に持つだけでもワクワクしますが、大きな木などに張り付けておいて仲間を驚かせても楽しいです。クズはマメ科植物でやせ地でもよく育ち、役に立つ有用植物でした。農村に牛馬やヤギなどが飼われていた昔は、優秀な飼料として刈り取られました。しなやかなつるは薪[まき]などを束ねるのに使われ、その繊維からは葛布が織られました。根は良質なでんぷんの葛粉が取れるだけでなく、葛根湯などの漢方薬になります。大きな赤紫の花房は美しく、秋の七草の一つです。虫が苦手な子には、ムカデの脚の長さを変えたり花を挿したりして、冠にすると喜ばれるでしょう。また、クズの太いつるを丸く絡めていくと、クリスマスリースのベース(輪)ができます。松ぼっくりやドングリなどの木の実を付けて楽しみましょう。(常葉大名誉教授=藤枝市)■作り方と遊び方①大きなクズの葉っぱを30~40枚集める②3枚の小葉を取り外して、葉枕の付いた状態の葉柄を使う③2本を長い触覚、2本を大あごとして計4本の葉柄を束にしてつかむ④❸の束と直角に葉枕のある方(脚)を5センチ程度横に出して、葉柄を絡める⑤➍と反対側に葉柄(脚)を出して、絡める⑥脚の間隔を詰めて、左右交互に固定していく⑦最後の脚の先は腹側に回して、隙間に差し込んで留める⑧木の実を触覚の付け根に付けて、目とする
かんたん自然遊び【秋】どろだんご、より丸く硬く輝く玉に!(山田辰美/常葉大名誉教授)
2020/09/17 15:49子どもを夢中にさせる泥遊びの中でも、日本の泥団子が進化を遂げています。幼少期に経験した人でも、あらためてピカピカに輝く玉を見ると感激します。世界中で、その神秘的な魅力や教育的な意義が高く評価されています。ぜひ挑戦してみましょう。昔、子どもたちは山や川できめ細かい砂や粘土のある場所を見つけて、玉を作っていました。田畑をスコップで掘ると、荒木田土と呼ばれる泥団子に適した粘土が取れます。売られている泥団子セットは使わないで、身近な場所の土を使いたいですね。泥の玉をきれいに固めるためには、三つのコツがあります。まず、土をよくこねること。次に「サラ粉(サラ砂)」とも言われる、建物の隅や家の軒下に吹き寄せられたきめの細かい土を使うことです。乾いた粘土を細かく砕いて、小麦粉用のふるいにかけて作ることもできます。泥玉にその粉を振りかけては表面にこすり付ける工程を繰り返すと、内部の水分が吸い出され、ぎゅっと硬い玉になります。三つ目は、ポリ袋や箱などに入れて暗い所に置き、ゆっくり乾かします。このことを「寝かす」と言いますが、表面のひび割れを防ぐために不可欠で、まさに寝る子はよく育つという感じ。完全に乾くまで転がしたり削ったりして、形を整えることができます。土と水をこねたただの泥が深い光沢を持つようになったのは、最後の磨きの方法が工夫されたからです。ストッキングなどの化学繊維やレジ袋や下敷きなどのプラスチックでこすると、不思議なほど輝きが出てきます。泥をこねて、おはぎのような団子を作るだけでも楽しめます。その遊びが日々繰り返されると、より丸く、より硬く、より美しくと子どもとともに発達していく。その都度、見せる幸せな表情が大人の楽しみ。大人になるのを急がないでと祈りたくなりますね。(常葉大名誉教授=藤枝市)■作り方と遊び方①良質な土(粘土)を見つけよう。スコップで粘り気のある土を採集して、石やごみを取り除いて使う。②土をこねる。もんだりたたいたりして、よくこねると、均一な塊になる。③丸い玉にする。両手で丸めて、平らな台の上で転がす。丸い玉にサラ粉をかけては掌でこすりつけることを繰り返す。④寝かす。数時間から1~2日、ゆっくり乾かすと、ひび割れしにくくしっかり固まる。❸と❹を数回、繰り返す。⑤磨く。ほぼ乾いた球を下敷きなどの上で転がすだけで、つやが出る。さらにレジ袋やストッキングなどで優しくこすると、輝きが増す。
かんたん自然遊び【夏】水辺の石、積み上げ不思議な造形に(山田辰美/常葉大名誉教授)
2020/09/01 10:03静岡県内のほとんどの川には、石ころがたくさんある広い河原があります。そこで、誰もが気軽に楽しめる自然遊びが「石積み」です。簡単そうに見えて意外と奥が深く、子どもを夢中にさせて集中力を引き出し、悩める青少年の心も癒やしてくれます。自然界には奇岩と呼ばれるダイナミックで風変わりな形をした岩がありますが、石積みは自分の感性と感覚を総動員して、不思議な造形を目指します。石の組み合わせはバランス(調和)の美しさと力強さを感じさせる一方で、ガラガラと崩れてしまうはかなさ、危うさにゲーム的な魅力があります。大きい石から順に積み上げていくのが、初級編。接する面積が大きいので、多少斜めに積んでも摩擦で安定して崩れません。意外性や面白さ、美しさを引き出すには、小さい石に大きな石をのせたり、できるだけ接する面を小さくしたりしてみましょう。その極意は、石の表面にある小さな凸凹(くぼみや割れ目など)を探し出し、接点に使うこと。微妙な重心の片寄りを両手の指先で感じ取ることです。のせては落ちるを繰り返しますが、慣れると不思議なほど短時間で上手にのせられるようになります。子どものバランス感覚は繰り返すことで高まっていきます。植木鉢や木箱を土台として使うと、ぐっと安定します。石積みは古くからある遊びです。お盆の時期、河原で盆送りの棚を石で組む大人の傍らで、子どもたちは石を積んで遊んだものです。その醍醐味[だいごみ]は接着剤など文明の利器を使わず、自分の感覚だけを頼りに、自然にはない造形を生み出す自己実現にあります。石が立った時の気持ち良さが、また病みつきになるのだと思います。(常葉大名誉教授=藤枝市)■作り方と遊び方①手のひらより小さな石を五つほど集める②据わりの良い大きな石から積み上げよう(数や高さを競う)③次に積み上げた形の面白さを楽しむ④石の表面の小さな凸凹(くぼみ、割れ目など)に、石のとがった部分を付けて立てる⑤植木鉢(直径10センチ程)や一合升などを使うと、土台が安定するので、難しい石積みにも挑戦できる。石はすぐに転がってしまうので、けがをしないよう注意しよう
かんたん自然遊び【夏】キュウリ、ナス 先祖の霊運ぶ馬と牛(山田辰美/常葉大名誉教授)
2020/08/10 10:17今月はこの時期ならではのお盆のクラフトを紹介します。先祖の霊のためにお墓参りや迎え火、精霊流しなど、地域ごとに独特の風習が見られます。子どもに「お盆はご先祖様が家に帰ってくるのよ」と話しながら、身近な夏野菜で「おしょろ様」と呼ぶ馬と牛を作りましょう。正式には精霊馬[しょうりょううま]、精霊牛[しょうりょううし]と呼び、2頭セットで盆棚や仏壇、玄関先などに飾ります。動物にまたがり、海のかなたにある黄泉[よみ]の国から川をさかのぼって来るのだと祖父母に教えられました。あの世から早く帰れるように馬でお迎えし、戻る時は牛に荷物をたくさん載せてゆっくり送り出すのだと言い伝えられる地方が多いようです。このような愉快なお話や工作は、見えない霊を子どもに感じさせるための方便だったと思います。私が住む地域では盆棚などに飾った2頭のおしょろ様は身近な川岸に平らな石を並べて作った祭壇に連れて行かれました。ここで供物など最後のもてなしと家族の見送りを受け、再びあの世に旅立つのです。馬はキュウリ、牛はナスで作ります。家庭菜園では曲がったり太く育ちすぎたりした「ヘボ」と呼ぶ野菜が採れます。ヘボの方が動物らしさや動きが表現できますが買う場合は太めがお勧めです。足は昔から皮をむいた麻の茎「おがら」を用いますが、割り箸でOK。目は小豆や黒豆、尻尾はトウモロコシのひげ、角やくらはインゲンマメが定番です。耳は庭にある南天の葉を使いました。人以外のものに命や心の存在を感じ、擬人化する感性は特に子どもに強いようです。妖怪に代表される霊的な世界観は現代っ子も大好きです。おしょろ様作りもきっと喜ぶと思います。(常葉大名誉教授=藤枝市)■作り方と遊び方*おしょろ様(伝統的な作り方)(1)キュウリとナスを選び牛はヘタ側を頭にする。(2)足に使うおがらか割り箸を適度な長さに切り片方の先をとがらせる。(3)足は初めは浅く刺し、4本のバランスを取った後、深く刺す。(4)目に使う豆、耳の葉、尻尾のトウモロコシのひげ(無ければエノコログサ)を胴に刺す。<リアリティーを上げる工夫>▽キュウリの端を5センチ程度切り、馬の頭部を別にすると馬らしさが増す(つまようじで胴とつなぐ)。▽インゲンマメの先を牛の角に。頭につまようじで刺す。曲げて両端を固定すれば馬のくらになる。
かんたん自然遊び【夏】笑うヒマワリ!?描いてみよう(山田辰美/常葉大名誉教授)
2020/07/21 12:23英語で「サンフラワー」と言うようにヒマワリは太陽の花。お日様に向かって高く背伸びをして元気いっぱい大きな花を付けます。太陽の方向に合わせて花の向きが変わることから「日回り」と呼ばれ、太陽に向く性質(向日性)から漢字では「向日葵」と表します。今月は子どもが描くお日様そっくりのヒマワリに顔を描く遊びを紹介します。ヒマワリはマーガレットなどと同じキク科の花。みんなが一輪の花だと思っている部分は、実は小さな花の集まりです。外側に並ぶ黄色の花びらはその一枚一枚が独立した花(舌状花)。また、広く平らな中心部もおしべとめしべの両方を持つ小さな花(筒状花)の集まりで、ここにびっしり種ができます。小さな花たちは役割を分業し、「花はここだよ。蜜と花粉があるよ」と遠くの虫にも存在を知らせる宣伝役が黄色の舌状花。茶や淡い緑など色は地味でも甘い香りで虫を誘い、種作りを行うのが筒状花。筒状花は外側から開花し、ハチなどの虫に花粉運びと受粉を助けてもらいます。10日ほど咲いた後、黄色い花びらがしおれ始め、受粉した種が膨らみ、花全体が重くなって頭をうなだれ始めます。顔を描くのはこの時がチャンスです。種が熟してくると不要になった筒状花が落ちやすくなり、指や棒などで引っかくと簡単にしべの部分が落ち、熟し始めた黒や白の種が表れ、目や口が描けます。不思議なことに丸い枠に二つの点と一つの線があれば誰もが顔だと分かるもの。これは多くの動物に共通の「パターン認識」と呼ぶ働きで単純な点や線で喜怒哀楽が伝わります。君はどんな顔のヒマワリにするのかな。(常葉大名誉教授=静岡県藤枝市)■作り方と遊び方*笑うヒマワリ(1)舌状花のしおれ始めた花を探す。(2)花の中心部分にどんな顔を描きたいか決める。(3)爪や細い棒など先がとがったものでかき落とし、目や口を描いて完成。小さい花や若い花の場合は、つまようじなど先が細くとがった固いもので筒状花を傷つけると「酸化作用」で黒い線を描くこともできる。<注意>ヒマワリの品種によって描きやすさが異なる。役目を終えたしべをかき落とすので、ヒマワリの成長に影響はないけれど、人が育てた花に無断で顔を描くのはやめようね。