業界超え先手のBCP、今こそ策定を 静岡県内、支援態勢構築へ

(2020/5/10 11:00)
主な調査項目の回答内容

 大規模災害などの非常時における企業の行動指針をまとめた事業継続計画(BCP)。新型コロナウイルスの感染拡大下でも地震や津波が起きる可能性はあり、複合的な被災の際に先手を打つためには感染症対策を盛り込んだBCP策定が求められる。ただ、小規模事業所には「まずは資金繰り」「人員や時間を充てる余裕はない」との声が多く、作業を後押しする県内の関係団体や商工会議所、行政は危機感を強めるとともに、業界の枠組みなどを超えた支援態勢の構築を急ぐ。
 「BCP策定は経営者の生き残り戦略」
 「借金し生き延びることも立派なBCPの概念。今こそ重要性を再認識してもらう時」
 4月下旬、県内の中小企業診断士や行政書士ら専門家17人でつくる県BCPコンサルティング協同組合はテレビ電話で遠隔会議を行った。外出自粛要請で経営者との接触が制限される中、相談受理件数は増え続けている。
 各企業の存続はサプライチェーン(部品の調達・供給網)やインフラの維持、地域貢献につながる。コロナ禍で同組合が特に求めるのは業界の垣根を越えた対応だ。タクシー業界で始まった食料品の配達代行サービスは好例。観光業の需要低迷も踏まえて多くのホテル・旅館が休業する中、人手が足りない業界に代替人員を充てる措置などは「BCPに新たに盛り込める内容」と提唱する。
 商工会議所や商工会、市町は新たに改正施行された小規模事業者支援法に基づき、自然災害などへの備えや事後の復旧支援を目的とした事業継続力強化支援計画の作成作業を進める。県は2018年にBCPのモデルプラン入門編を作成し、感染症も念頭に専門家の派遣を後押ししてきた。
 県が19年度に中小企業千社を対象に行ったアンケートで43・1%にとどまった全体の策定率。2年前の前回調査から2・2ポイント上昇したものの、策定しない理由を尋ねると「ノウハウ・スキルがない」が47・4%で最多、「人手が確保できない」が38・0%と続く。
 特に従業員が10人前後の小規模事業所の策定率は「極めて低い」と訴える同組合の石井洋之理事(73)は「余裕がない零細企業にこそ、関係者が一丸で支援の手を差し伸べるべき事態。経営者も何ができるかを考えるまっただ中にいる」と強調。中小企業診断士の仲間らには感染症対策を含めたBCPの重要性を改めて周知する構えだ。

 ■感染症対策、道半ば
 BCP策定の進捗(しんちょく)状況は企業や施設の規模、業界ごとで異なり、特に感染症対策は道半ばであるのが実情だ。
 東日本大震災後、倒壊や津波の襲来を懸念し、本社を移転させた焼津市の複合型介護福祉事業所「池ちゃん家・ドリームケア」。策定済みのBCPに感染症対応の概念を盛り込み、最悪の事態に備えた各種防災訓練を欠かさない。しかし、今は目に見えないウイルスとの長期戦に、従業員約100人の負担と疲弊感は強まるばかりだ。
 元看護師の池谷千尋社長(62)は業界の枠を超えた人材供給支援の実現に期待を示し、「地域に迷惑を掛けないためにも先手でBCPの中身を充実させ、他の施設にも策定の動きが広がるようにしないと」と意欲を示す。
 浜松市に本社のあるメーカーは3月下旬、首都圏の従業員の感染確認直後に事実を公表した。ただ、BCPで感染対策に触れていたが「全世界に影響を及ぼす感染症の細かなマニュアルはなかった」(広報課)。製造には国内外のサプライチェーンからの部品確保が不可欠で、他社への周知徹底の必要性を再認識する。
 大災害発生時、応急の復旧に欠かせないのが建築・土木業だ。親族ら10人ほどで営む伊豆半島の建設会社の社長は「一人でも感染者を出したら工事はストップする」と感染症の恐ろしさを認識する。一方、BCP策定には未着手で「重要性は分かるが手が回らない」と理由を漏らす。地元に根付いた事業所のBCP策定は住民の防災意識向上に直結するとの認識はあり「『役に立つ』と分かれば策定の動きは活発化する。インセンティブなど、策定を促す仕掛けはもっと必要」と提案した。

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