原発事故一時避難テント「エアシェルター」 静岡県内、整備進む

(2020/3/8 13:59)
協力してエアシェルターを床一面に敷く参加者=1月29日、御前崎市比木体育館

 原子力発電所で過酷事故が発生した際の一時避難施設として、防災テント「エアシェルター」の整備が静岡県内で進んでいる。主に原発近くに住む要配慮者の安全を守る機能が期待され、「周知や訓練が浸透すれば住民自らの設営が可能」(関係者)という。一方で実際の利用ではプライバシーの確保など課題もある。

 ■御前崎で設営訓練 課題洗い出し
 1月29日に御前崎市の比木体育館で行われた県原子力防災訓練。中部電力浜岡原発(同市佐倉)の事故を想定し、県内で初めてエアシェルターの設営訓練が展開された。
 エアシェルターは専用フィルターで浄化された空気を送り込んで拡張する。空気を流し始めると15分程度で体育館内いっぱいに膨らんだ。
 エアシェルターは複数の種類があるが、同体育館に配備されたタイプは設営時の高さが4メートルになり、1人3平方メートル換算で計140人収容できる。中に入ると白を基調に天井が高く、圧迫感はそれほど感じない。男女用のトイレもそれぞれ確保され、非常食があれば数日間の生活が可能。非常用発電機を配備し、停電時にも備える。
 人の出入りで放射能に汚染された空気が入らないよう、内部には加圧が施されている。避難者は有事の際、エアシェルターで過ごした後、被ばくリスクが下がるのを見て広域避難計画に基づく避難先に移動する流れだ。
 県は浜岡原発から半径5キロ圏の予防防護措置区域(PAZ)の高齢者や障害者、妊婦らが一時的に退避する放射線防護対策施設を新たに整備するよりも費用が抑えられるとしてエアシェルターに注目した。2018年度に導入を開始し、これまでに比木体育館を含め8カ所に整備。1カ所約1億5千万円で、国の補助金を全額活用した。全国の原発立地県でも整備が進む。
 ただ、課題は少なくない。訓練に参加した70代の男性は「思いのほか簡単に設営でき、内部も広々している」とした上で、「やはり他人の目が気になり、ストレスがたまるのでは」と指摘。別の70代の男性も「想定人数以上の人が押し寄せないとは限らない」。60代の女性は市が一時避難生活を最長で3日間と設定している点を踏まえ、「それ以上になったら不安」と表情を曇らせた。
 寒暑の厳しい時期に事故が起きた場合の懸念もある。市民からは冬場なら厚着や毛布で比較的対応できるとの声があった一方、「夏場のしのぎ方には限界がある」との意見が相次いだ。市は冷房装置を設置する方針だが、限られた空間に身を寄せる多数の災害弱者が体調を維持し続けられるかは見通せない。
 県や御前崎市の幹部は初の設営訓練に「スムーズに取り組めた」と手応えを話した。一方で大規模地震との複合災害が起きれば自治体職員のマンパワーが不足する点については「検討課題だ」とそろって認めた。
 市は要配慮者の人数調査の結果によってはエアシェルターのさらなる整備も視野に入れる。その上で沢入厚志市危機管理課長は「運営マニュアルを策定し、有事に備えたい」と話した。

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