防災授業や教材、教職課程で模索 静岡大、「子ども守る」議論

(2020/2/9 10:45)
山本隆太特任准教授(右から4人目)の指導の下、高校生向けの教材を作成する学生たち。防災教育への理解を深めた=3日、静岡市駿河区の静岡大

 静岡市駿河区の静岡大人文社会科学部で教職を目指す学生13人が、講義の一環として水防災に関する高校生向けの教材づくりや授業方法について検討した。小中高校で2020年度以降、順次実施される新たな学習指導要領でも重視されている防災教育。学生たちは人の行動を促す「ナッジ理論」や災害リスクの知識を時系列で捉える「タイムライン」をテーマに、その効果や課題を探りながら防災教育への理解を深めた。
 「みんな逃げているよ」「避難勧告が出てる」「おじいちゃんが逃げたら僕も助かる」―。5段階で示される大雨・洪水警戒レベルに合わせ、生徒役の学生がカードに書かれた言葉を出すタイミングを話し合う。身内の高齢者に向けて避難を促す時の声の掛け方について考えるワークショップ。学生たちは危険度が高まるにつれて、「肘で軽く突く」と直訳されるナッジの要素とされる社会規範や利他性などが含まれるメッセージを無意識に選ぶ傾向を体感した。
 タイムラインに関する講習では、台風が迫る状況下で自宅から避難する方法を検討。ハザードマップで自宅やその周辺、避難所までの経路の危険性などを読み取りつつ、一つ一つの行動について「いつまでに判断すると安全か」という視点でスケジュールをつくる作業に励んでいた。
 いずれのテーマも防災活動を巡る最近の事象から、学生たちが主体的に興味を持った内容で仕立てられた。指導する教職センターの山本隆太特任准教授は新学習指導要領を踏まえて「教職課程で防災教育を扱う必要性は特に高くなった」とした上で、「ナッジやタイムラインによる防災活動はまだ新しく、社会評価も分かれる。だからこそ大学が革新的に取り組む使命がある」とその意義を語る。
 講義では山本特任准教授を交え、学生たちが意見を出し合う場面も。「行動を強く促すナッジで無理に避難させるべきでない」「緊急時はナッジの呼び掛けが有効」「タイムラインで早目の避難が意識づけられる」「避難開始が早すぎると現実とかけ離れてしまう」など、教材を前に議論を重ねていた。
 学生たちが手掛けた教材は今後、形を変えながら教員の免許更新講習や駿河総合高の防災授業で活用される予定という。講義に臨んだ高橋由伸さん(19)は「教える側の立場で防災を考えた経験はこれまでなかった。子どもたちの安全を守る責任もある教員を目指す上で、防災意識を高めることは欠かせない」と話した。

 <メモ>タイムライン(事前防災行動計画) 主に被害の発生や規模が想定される台風などの風水害を対象に、起こりうる状況を予測した上で、取るべき防災行動とその主体を時系列に整理した計画。従来は防災関係機関が主な対象だったが、2015年の関東・東北豪雨を契機に、各家庭や住民一人一人の事情に合わせた「マイ・タイムライン」の普及も進む。静岡県は本年度、モデル地区に定めた藤枝市で「マイ・タイムライン」の検討・作成支援を行っている。

 <メモ>ナッジ理論 経済学に心理学を応用し、人の意思決定を分析する行動経済学の研究理論の一つ。2017年ノーベル経済学賞の米リチャード・セイラー教授や、米法学者のキャス・サンスティーン教授が提唱した。人は必ずしも合理的な判断で行動しないことを前提に、選択の自由を残しながらより良いとされる行動を自発的に取れるように誘導する手法。公衆衛生分野などで活用が広がるほか、広島県は災害時のメッセージとして使用して避難行動を検証する取り組みを進めている。

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