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掛川市の副市長公募 全国から1498人 民間登用で改革加速、採用に試される目利き力【解説・主張しずおか】

 静岡県内で初めて副市長の民間公募に踏み切った掛川市で、選考作業が進んでいる。10月18日~11月14日の募集期間中、全国から1498人の応募があった。公募の副市長が担うのは、スピードと柔軟性を備えた市政改革。人事が行政運営の中枢に与える影響は大きく、採用に当たる市の目利き力が試されている。

エン・ジャパンの鈴木孝二社長とリモートで協定を交わす 久保田崇市長(右)=10月中旬、掛川市役所
エン・ジャパンの鈴木孝二社長とリモートで協定を交わす 久保田崇市長(右)=10月中旬、掛川市役所

 新たな副市長が決まれば、来春以降は副市長が2人体制になる。現任の高柳泉副市長が予算や人事など内部管理業務を担い、公募副市長は広報やデジタル技術による変革「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の強化に注力する。分業化で改革を加速させる狙いがある。
 公募では、人材サービス大手エン・ジャパン(東京)と協定を交わし、同社のサービスを利用した。副市長と同時に募った広報戦略官(課長級)には229人、副業人材のDX推進員には173人がエントリーした。市は職員育成ではなく民間登用を選んだ理由を「社会の変化に対応するには時間的余裕がない。即戦力を迎えて手を付けなければいけない課題だ」(行政課)と説明する。
 4月に就いた久保田崇市長にとって、民間公募は肝いりの事業と言える。スマートフォンなどで行政手続きができる「手のひら市役所」を目指し、広報戦略にも意欲的。就任半年を経て独自色が増してきた。
 その一つが民間人材登用と同時期に発表した「掛川茶リブランディングプロジェクト」。茶産地の暮らしに焦点を当ててブランド再構築を図る試みだ。従来の消費拡大策を「売り手にとって出したい情報の列挙」と総括し「消費者の共感と感動を得る手法」に転換すると踏み込んだ。物語性を重視したマーケティングの考え方で、新設した公式ウェブサイトは魅力的だ。
 一方で、市政全体を見渡せば、効果的なデジタル化と情報発信の取り組みは施策、分野によってまだら模様。授業のオンライン活用は進んだが、数年にわたってホームページの更新が滞っている学校があるなど、多分野で二極化やちぐはぐさも見える。
 外部の目でメスを入れられる民間人材の登用は歓迎したい。経験豊富で突破力があり、市の風土と相性が良い人が選ばれることが前提だ。市の採用責任は大きく、迎える人材に活躍してもらうための環境づくりは必須だろう。内定者の人柄や実績、市政での目標設定などについて、市民や市職員、市議会への丁寧な説明も欠かせない。

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